「…あー……眠ぃ…」

大きな欠伸をしつつ、あいつの居る十四番隊隊舎に向かう。俺昨日夜勤だったから部屋に帰ってねぇんだけど、あいつちゃんと朝飯食ったかな。飴で済ませてそうな気がする。てか飴さえ食ってねぇ可能性もある。

「……ゼリー飲料でも持たすか?」

でも持たせても飲まねぇ可能性もある。…結局俺が面倒見ねぇといけねぇじゃねぇか。別に良いけど。
隊舎内に入った時、やけに騒がしい事に気付いた。何だ?何かあったのか?
首を傾げつつ副官室に向かえば増えていく人集り。何だこいつら。まさか独月に何かあったのか?

「悪い、通るぞ」

集団を掻き分け副官室に入る。

「おい独月、無事か?」

『あ、修兵さん』

返事がした方を見て────

「…………あ?」

絶句。
銀色のものを頭の上でぴこぴこ動かした独月が首を傾げた

『どうしたの?』

「や、あの……おま、それ…」

やべぇ、上手く言えねぇ。指差せばそれに気付いた独月がああと声を出した

『何か、朝起きたらこうなってたっぽい。藤堂さんに言われるまで気付かなかったんだけど』

「馬鹿ね、普通は気付くわよ」

そう言って備え付けの給湯室から出て来たのは十四番隊の三席。確か独月と霊術院からの付き合いだったか?
藤堂はテーブルに湯呑みを三つ置いて、俺を見た

「お疲れ様です檜佐木副隊長。因みにこの子尻尾も生えてますよ」

「は?」

『ん、ほら』

頷いた独月がひょいと何かを掴み持ち上げる。や、ほらじゃねぇから。何だそれマジで生えてんのか。
近付けば不思議そうな顔をして独月が俺を見た。待て、今不思議なのはお前だから。何でそんな平然としてんだよ
手を伸ばして頭の上の物体に触る。やっぱりどう見たって猫耳。触ればそれはぴこぴこ動いた

「……本物、だな……」

『ん』

右の猫耳にカフスが着いてる辺り、独月の耳が変化したものだと考えるのが妥当だろう。

「何でお前はそんな平然としてんだよ」

『だって耳と尻尾は卍解で慣れてるし、原因はどうせ阿近さんだろうし』

や、確かにお前の卍解は獣耳に尻尾も生えるよ?でもそれとこれとは違ぇだろ。何でそんなに順応性高ぇんだよお前は。

「…取り敢えず、耳と尻尾隠せ」

『尻尾直したら袴の中がごわごわする』

ゆらりと尻尾を揺らした独月がそう言った。くそ、可愛いなお前。藤堂が呆れた顔で俺を見る。ああにやけてるよ悪ぃか、こいつが可愛過ぎるのが悪ぃだろ

『修兵さん?』

「…なぁ独月、にゃあって言ってみ」

『?…にゃあ』

「………………」

やべぇ、可愛い。何だこの可愛い生き物。口許を押さえれば独月は首を傾げた。藤堂がこれだから男は、と呟いて溜息を吐く。悪かったな馬鹿で。でも仕方ねぇだろ、こいつが可愛いのが悪い

「取り敢えず、嫌だろうが尻尾は隠せ。頭も何か被るか巻くかしろ」

『…めんどくさ』

「やかましい。さっさとしろ」

『……はいはい』

溜息を吐いた独月が引き出しを漁り出す。だが良い物はなかったらしく、すぐに閉めた

『見付からないから、このままで良い』

「…めんどくせぇだけだろ」

『………………』

独月が無言で目を逸らした。耳が垂れ、尻尾もだらんと床に落ちる。何だこれ、罪悪感半端ねぇぞ。俺が苛めたみてぇじゃねぇか

「…その、何か被るもん探してくっから…な?」

『…怒ってない?』

「おう。怒ってねぇ」

『……良かった…』

だらんと下がっていた尻尾が持ち上がり、大きくゆっくりと振られる。何かで読んだぞ、確か猫が大きくゆっくり尻尾を振るのは機嫌が良い時だった筈。何こいつ可愛い。ぎゅっと抱き締めれば小さな身体が僅かに強張った

『…びっくりした』

「お前が可愛過ぎて生きるのが辛いんだがどうすれば良い?」

『?普通に生活すれば良い』

「駄目だ、多分今日死ぬぞ俺」

『え、やだ。死なれるのはちょっと困る』

「…結局何しに来たのよこの顔面卑猥の独月馬鹿」








耳と尻尾が生えると彼は壊れます








(取り敢えず、阿近さんのトコ行くぞ)

(ん)