Unforgettable tragedy happens3
現在夜中。
霊術院で用意した疑似虚退治に一回生は奮闘中。半分は魂葬の練習中
「もっと肩の力を抜け。さもねぇと…」
「ぎゃああああああ!」
「霊が痛がる」
魂葬を指導する修兵さんの隣でぼんやりと空を眺める。何だか落ち着かなくて、腰に差した藤凍月から手が離せない。それに気付いているからか修兵さんも片手を刀に、もう片方は僕の頭に置いていた。大変宜しくない事に僕のこういう胸騒ぎの様な予感は当たるのだ
『気のせいなら良いんだけど…』
呟いた僕の頭を修兵さんがぽんぽんと軽く叩いた
その後特に何か起こる事もなく実習は終わった
でも何だろう、まだ嫌な感じがする。何で?何も起こらなかったのに
修兵さんが僕を横目で見てから開錠しようと浅打を抜いた、瞬間
ドスッと、背後から中身の詰まった何かを貫いた様な音
それに振り向くと
「――蟹沢!!」
ついさっきまで僕の斜め後ろに立っていた蟹沢さんの身体が鋭い爪に貫かれていた。宙に浮かんだ身体がゆらゆら、揺れる。滴る赤。伝う爪の先には巨大虚。何で此処に。気配はしなかった筈
青鹿さんが駆け出した音ではっと我に返る
「よくも蟹沢を!!」
「っ止せ青鹿!!」
突進した青鹿さんの身体がその爪に斬りつけられる。それを見た修兵さんが尸魂界に救援要請をしていた
『………!』
気を取られていた一回生の後ろに影。咄嗟にその爪を藤凍月で受け止めれば聞き慣れた声が悲鳴を上げた
『――修兵さんっ!!』
振り向いた先には血だらけの修兵さん。一回生を庇ったのか
「ちっ…逃げろ一年坊共っ!出来るだけ遠くへ!」
修兵さんの声で一回生が慌てて逃げ出す。ならば僕がするのは虚共の足止めだ
『――散在する獣の骨、尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪、動けば風、止まれば空、槍打つ音色が虚城に満ちる』
せめて一回生と負傷した修兵さんが逃げられるだけの時間稼ぎを
『破道の六十三・雷吼炮!』
放たれた一撃は一体の巨大虚に当たった。だが倒れる事はない。詠唱したのに仮面に薄く傷が付いた程度。どんだけ頑丈なんだこの野郎
ちらりと確認すれば周りは撤退済み。良かった、取り敢えず時間稼ぎは出来たらしい
「馬鹿野郎独月てめぇも逃げろっ!!」
聞き慣れた声が後ろから聞こえて慌てて振り返る。いや何故修兵さんが残っている?
あんたにも逃げて貰うつもりだったんだけど
『引率補助の殿を勤めてますが何かっ!?――破道の七十三・双蓮蒼火墜!』
「殿なら俺がやる!てめぇは逃げろ!」
鬼道を放って隣に並んだ僕に怒鳴りつける修兵さん。この人自分の怪我判ってんのか
『今のあんたよりは僕の方が動ける!邪魔!!』
向かってきた巨大虚の顔面を蹴り飛ばす。斬りつけてみたが仮面は割れない。始解しないと駄目か
『虚空に色付け――『藤凍月』』
現れたのは鎖で繋がった拳銃と長刀。全力で斬りつければ仮面に罅が入った。これならいける
罅の入った部分に銃弾を撃ち込む。仮面の割れた巨大虚が一体消えた。やっと一体か
修兵さんの声を無視して僕は藤凍月を構え直した
『はぁ……はぁ…』
膝を着く。何か増えてる。倒しても倒してもわらわらと増える。何なのお前ら暇なのか
「独月もう良い。逃げろ!」
『まだやれる』
「怪我してんだろ。俺に任せてお前は逃げろ」
『自分の方が怪我人の癖に喧しいわ』
倒したのは二人掛かりでたったの五体。今居るのはその倍以上。他が寄って来ない様に雷吼炮と双蓮蒼火墜を何発撃った事か。それで藤凍月を全力で振り回せば流石に疲れる。僕は体力無尽蔵の化け物じゃない
てか何故怪我人と背中合わせになって戦っているのか。逃げろって言ったのに
ちらりと見れば血を流し過ぎたのか僕と同じ様に膝を着いている修兵さん。それを狙って腕を高く振りかぶった巨大虚
『っ修兵さん!!』
咄嗟に前に出て爪を鎖で受け止める。瞬間鎖が音を立てて千切れた。え、嘘
『―――っ!!』
右目の上から鎖骨辺りまで、勢い良く紅が噴き出した。血か。それを認識した瞬間に襲ってくる鋭い痛み。傷口がどくどく脈を打ってるみたいだ。
「独月っ!!――破道の六十三・雷吼炮!!」
更に腕を振り上げた巨大虚に修兵さんが雷吼炮を食らわせる。僕を抱えた修兵さんが体制を崩した巨大虚から距離を取った
『……畜生…油断した』
藤凍月の始解も解けた。多分僕が弱っているから始解の状態を保てないんだろう。
眼帯も爪の一撃で紐が切れ何処かに落としてしまった。あれお爺ちゃんとお婆ちゃんがくれた物なのに
右目蓋を少し動かしてみる。うわ滅茶苦茶痛い。でもうっすら景色は見えたから眼球は無事だろう。左目だけで相手を見る。
立ち上がれば修兵さんが背中を預けてきた
「もう引けって言いてぇ所だが……どうせお前は引かねぇんだろ?」
『修兵さんが引かないなら僕も引かない』
こいつら見逃してくれそうにないし
右目は見えないし左脇腹も引っかかれたし右手も動かない。修兵さんも僕と大して変わらない状態。正に劣勢。何か笑える
動かない右手に飾り紐を縛り付けて藤凍月を固定する。動かなくてもまぁどうにかなるだろう
『修兵さん』
「おう。任せろ相棒」
左手を横に持ち上げる。やりたい事が判ったらしい修兵さんは無事な右手を持ち上げた。というか何時から相棒になった
『「…血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」』
多分撃てるのはこれで最後。前方を倒せなくても隙が出来れば。
『「――破道の七十三・双蓮蒼火墜!!!」』
最期の足掻き
霊術院で用意した疑似虚退治に一回生は奮闘中。半分は魂葬の練習中
「もっと肩の力を抜け。さもねぇと…」
「ぎゃああああああ!」
「霊が痛がる」
魂葬を指導する修兵さんの隣でぼんやりと空を眺める。何だか落ち着かなくて、腰に差した藤凍月から手が離せない。それに気付いているからか修兵さんも片手を刀に、もう片方は僕の頭に置いていた。大変宜しくない事に僕のこういう胸騒ぎの様な予感は当たるのだ
『気のせいなら良いんだけど…』
呟いた僕の頭を修兵さんがぽんぽんと軽く叩いた
その後特に何か起こる事もなく実習は終わった
でも何だろう、まだ嫌な感じがする。何で?何も起こらなかったのに
修兵さんが僕を横目で見てから開錠しようと浅打を抜いた、瞬間
ドスッと、背後から中身の詰まった何かを貫いた様な音
それに振り向くと
「――蟹沢!!」
ついさっきまで僕の斜め後ろに立っていた蟹沢さんの身体が鋭い爪に貫かれていた。宙に浮かんだ身体がゆらゆら、揺れる。滴る赤。伝う爪の先には巨大虚。何で此処に。気配はしなかった筈
青鹿さんが駆け出した音ではっと我に返る
「よくも蟹沢を!!」
「っ止せ青鹿!!」
突進した青鹿さんの身体がその爪に斬りつけられる。それを見た修兵さんが尸魂界に救援要請をしていた
『………!』
気を取られていた一回生の後ろに影。咄嗟にその爪を藤凍月で受け止めれば聞き慣れた声が悲鳴を上げた
『――修兵さんっ!!』
振り向いた先には血だらけの修兵さん。一回生を庇ったのか
「ちっ…逃げろ一年坊共っ!出来るだけ遠くへ!」
修兵さんの声で一回生が慌てて逃げ出す。ならば僕がするのは虚共の足止めだ
『――散在する獣の骨、尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪、動けば風、止まれば空、槍打つ音色が虚城に満ちる』
せめて一回生と負傷した修兵さんが逃げられるだけの時間稼ぎを
『破道の六十三・雷吼炮!』
放たれた一撃は一体の巨大虚に当たった。だが倒れる事はない。詠唱したのに仮面に薄く傷が付いた程度。どんだけ頑丈なんだこの野郎
ちらりと確認すれば周りは撤退済み。良かった、取り敢えず時間稼ぎは出来たらしい
「馬鹿野郎独月てめぇも逃げろっ!!」
聞き慣れた声が後ろから聞こえて慌てて振り返る。いや何故修兵さんが残っている?
あんたにも逃げて貰うつもりだったんだけど
『引率補助の殿を勤めてますが何かっ!?――破道の七十三・双蓮蒼火墜!』
「殿なら俺がやる!てめぇは逃げろ!」
鬼道を放って隣に並んだ僕に怒鳴りつける修兵さん。この人自分の怪我判ってんのか
『今のあんたよりは僕の方が動ける!邪魔!!』
向かってきた巨大虚の顔面を蹴り飛ばす。斬りつけてみたが仮面は割れない。始解しないと駄目か
『虚空に色付け――『藤凍月』』
現れたのは鎖で繋がった拳銃と長刀。全力で斬りつければ仮面に罅が入った。これならいける
罅の入った部分に銃弾を撃ち込む。仮面の割れた巨大虚が一体消えた。やっと一体か
修兵さんの声を無視して僕は藤凍月を構え直した
『はぁ……はぁ…』
膝を着く。何か増えてる。倒しても倒してもわらわらと増える。何なのお前ら暇なのか
「独月もう良い。逃げろ!」
『まだやれる』
「怪我してんだろ。俺に任せてお前は逃げろ」
『自分の方が怪我人の癖に喧しいわ』
倒したのは二人掛かりでたったの五体。今居るのはその倍以上。他が寄って来ない様に雷吼炮と双蓮蒼火墜を何発撃った事か。それで藤凍月を全力で振り回せば流石に疲れる。僕は体力無尽蔵の化け物じゃない
てか何故怪我人と背中合わせになって戦っているのか。逃げろって言ったのに
ちらりと見れば血を流し過ぎたのか僕と同じ様に膝を着いている修兵さん。それを狙って腕を高く振りかぶった巨大虚
『っ修兵さん!!』
咄嗟に前に出て爪を鎖で受け止める。瞬間鎖が音を立てて千切れた。え、嘘
『―――っ!!』
右目の上から鎖骨辺りまで、勢い良く紅が噴き出した。血か。それを認識した瞬間に襲ってくる鋭い痛み。傷口がどくどく脈を打ってるみたいだ。
「独月っ!!――破道の六十三・雷吼炮!!」
更に腕を振り上げた巨大虚に修兵さんが雷吼炮を食らわせる。僕を抱えた修兵さんが体制を崩した巨大虚から距離を取った
『……畜生…油断した』
藤凍月の始解も解けた。多分僕が弱っているから始解の状態を保てないんだろう。
眼帯も爪の一撃で紐が切れ何処かに落としてしまった。あれお爺ちゃんとお婆ちゃんがくれた物なのに
右目蓋を少し動かしてみる。うわ滅茶苦茶痛い。でもうっすら景色は見えたから眼球は無事だろう。左目だけで相手を見る。
立ち上がれば修兵さんが背中を預けてきた
「もう引けって言いてぇ所だが……どうせお前は引かねぇんだろ?」
『修兵さんが引かないなら僕も引かない』
こいつら見逃してくれそうにないし
右目は見えないし左脇腹も引っかかれたし右手も動かない。修兵さんも僕と大して変わらない状態。正に劣勢。何か笑える
動かない右手に飾り紐を縛り付けて藤凍月を固定する。動かなくてもまぁどうにかなるだろう
『修兵さん』
「おう。任せろ相棒」
左手を横に持ち上げる。やりたい事が判ったらしい修兵さんは無事な右手を持ち上げた。というか何時から相棒になった
『「…血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」』
多分撃てるのはこれで最後。前方を倒せなくても隙が出来れば。
『「――破道の七十三・双蓮蒼火墜!!!」』
最期の足掻き