彼女にはちゃんと睡眠を取らせましょう
『………………』
そろそろぶん殴っても良いでしょうか?
最近酷い寝不足である。理由は猛烈な嫌がらせ。嫌がらせと言っても方法は沢山ありバリエーションに富んでいる。
先ずは夜十二時きっかりに始まる無言電話。伝令神機が休む間もなく着信音を鳴らし続ける。放っておけば彼が二時間程度で電池切れになり過労死する程ひっきりなしに。
伝令神機の電源を落とせばひたすら扉がノックされる。物凄く高速で。お前は啄木鳥になりたいのかと言わんばかりの猛スピードでノックが始まる。でも扉を開けても誰も居ない。閉めて少し経てばまた啄木鳥ノックが始まる。これにより只でさえ睡眠の浅い僕は転た寝すら出来なくなった
寝不足の中執務室に行けば僕の筆が全て柄を折られていた。他にも書類用の紙が破ってあったり机の中に虫の死骸が入ってたり。
何か一気に嫌がらせのランク下がったなおい。此処でまさかの露骨な嫌がらせとか駄目だろ。最後まで嫌がらせされてるってバレない様にしようよ。
そう思った僕は悪くない。もうあれだ、我慢の限界なんだ。
────物凄く苛々してるんだ
「あ〜ら、桜花三席目の隈酷いですね〜?」
「やだ、元々悪い目付きがもっと悪くなってるじゃな〜い?」
「そんな正直な事言っちゃ駄目よ〜」
『………………』
物凄く苛々する。間延びした話し方すんな。男に媚び売る女は嫌いなんだ。集団で嫌がらせしてくる奴等も嫌いだ
てか呼び出したんだからさっさと用件を言え
『僕に何の用だ』
「やだ、女の子なのに僕ですって」
「親の躾がなってなかったんじゃな〜い?」
「流魂街出身だし当たり前でしょ〜?それにこんな気味悪い目した子なんて、誰も拾わないわよ」
口喧しくほざき出した女性隊士三人に苛々する。こいつらは確か五番隊のヒラ共だ。名前は覚えてないけど、ちょくちょく僕の陰口を叩いていた気がする
「檜佐木副隊長も東仙隊長もこの子の何が良いのかしらね〜」
「もしかして身体でも売ったの〜?」
「あははっ!それじゃ東仙隊長達がロリコンになっちゃうわよ〜!」
『…下らん事を言うだけなら僕は仕事に戻るぞ』
早く此処を離れたい。その一心で言えば姦しい三人組がぴたりと口を閉じた。うん、静かになってくれて助かる。隊舎に戻ろうとすれば肩を掴まれた
『……何だ』
「…調子乗んなよ、クソガキ」
「どうせコネで三席になったんでしょ?」
「あんた檜佐木副隊長のお気に入りだもんね〜」
『コネだとしてもお前らよりは強い』
早く立ち去りたい。何か藪に沢山人居るっぽいし。こんな人気のない所に連れ込まれたんだ、どうせ良からぬ事しかないだろう
「…マジむかつくんですけど」
「一回痛い目見せてやった方が良くね?」
「それ良いね〜。この生意気なツラ歪ませたいわ」
そう言った金髪の女が指を鳴らした。するとぞろぞろと現れたのは擦り切れた着物の男達。流魂街の住民か。それも治安の悪い所の
「お金なら上げるからさ〜、ちょっとあのガキヤっちゃってよ」
「綺麗な顔のガキじゃねぇか…女か?」
「男でもあの顔ならイケるぜ俺は」
下卑た笑みを浮かべる男達に吐き気がする。自然と手が藤凍月に伸びていた。寄って来たら斬ろう。もう無理だ、我慢の限界だ
「あら桜花三席は流魂街の住民も斬っちゃう人なのね〜?」
「この事東仙隊長達に言ったらどうなるかしら〜?」
もしバレるとしてもこいつらに触られるよりはマシだ。そう呟き、目の前の男を睥睨する
「何だぁ?逃げねぇのかぼくぅ?」
「早く脱がせよ!」
馬鹿共が僕に向かって手を伸ばしてくる。にやついている三人組。黄色い歯を剥き出しにして笑う馬鹿共
汚れた手が僕に触れようとして─────
『────触んな、下衆共』
一気に霊圧を上げる。僕以外の人間が膝立ちになった。藤凍月に手を掛けたまま、ヒラ隊士三人組を見る
『三席にヒラ風情が敵うとでも?それとも数で掛かれば勝てると思ったか?』
「何であんたなんかが三席なのよ!あたしの方が頑張ってるのに!」
リーダー格っぽい金髪の女が僕を睨み付けた。そりゃそうかもね、僕は後から護廷隊に入った訳だし。あんたの頑張りを僕は知らない。
でも、正直そんな事知ったこっちゃない
「何であんたが檜佐木副隊長の傍に居るのよ!あたしの方があんたなんかよりずっと綺麗で可愛いのに!あたしの方があの人の事好きなのに…!」
『…まさか…僕が邪魔だったからこんな事した、とか言わないよな?』
「そうよ!悪い!?」
開き直ったその台詞に思わず固まる。え、そんな理由で一週間眠れなかったの?虫の死骸処理とかめんどくさい事しないといけなかったの?
『あー…そうか。そうだったのか』
自然と笑い声が漏れた。口角は下がったまま。只声だけが笑みを作る
深く息を吸って─────僕は口を開いた
『随分下らない理由でやらかしてくれたなお前ら。修兵さんが好き?だから邪魔?嫌がらせする?馬鹿かお前らそんな事して何になるんだよ。そんな事して修兵さんがありがとうって言うとでも思った?そんな訳ないだろ寧ろブチキレるわ。ものっすごく冷めた目で精神病むまで甚振られるのが判らんのか。そもそも嫌がらせして邪魔者排除とかお前ら何気取りだ。修兵さんの保護者か。飼い主か。管理人か。それで振り向いて貰える訳ないだろ気持ち悪い。そんな事してる暇があるなら修行しろ。ああそれともそんな事考えられる程頭がなかった?だって人の机に書類と間違えて虫の死骸入れちゃう様な人達だもんね?書類用の紙破ったり筆折ったりして頑張ってるって言い張るし?あ、そうかそれを仕事だと思ってるのか。いや済まない配慮が足りなかった。お前らの頭の悪さに深く頭を下げて嘲笑しながら謝罪しよう』
言い終わり奴等を見れば皆ぽかんと口を開けていた。あーすっきりした。取り敢えず嫌がらせしてくれた奴に文句言いたかったんだよ。流石にやられ続けて黙ってられる程僕の心は広くない。寧ろ狭い。そんな僕に嫌がらせするとか命知らずも良いとこだ
「むかつくのよあんた!何よその目!何であんたなんかが檜佐木副隊長のお気に入りなのよ!」
また金髪が突っ掛かってきた。あーもうめんどくさい。僕眠いんだけど
『そんなの修兵さんに聞け。────取り敢えず、頭が高い』
更に霊圧を上げれば男達が這いつくばった。三人組は今にも泣きそうな顔で僕を睨んでいる。やばい、眠くて変なテンションになってる
『跪け』
「っ…!」
四つん這いになった三人組を見下ろしながら藤凍月を抜く。怯えた表情が面白くて、もっと仕返しがしたくなった
『じゃあ、お仕置きの時間だ』
「………………」
今俺は有り得ないものを見てる気がする。てか夢じゃね?いや絶対嘘だろ。頬を抓るが痛ぇだけ。目の前の光景は変わらねぇ
『ほら、お前らの餌だろ?食えば?』
「ひっ……!」
あちこちに倒れている男達。四つん這いになった護廷隊士。それに向かって藤凍月を向ける、独月。切っ先で指しているのは虫の死骸だ。餌って。お前それ食いもんじゃねぇ
『あれ、てっきり僕はお前らが善意で虫の死骸を机の中に入れてくれたんだと思ったんだが違うのか?まぁそうだとしても僕のこれは間違いなく善意だ。だから有り難く食え』
いやいやいや、お前からは悪意しか感じられねぇんだが。てか何でお前そんな事してんの?何時もならそんな事しねぇだろ。俺が任務で居なかった一週間に何があった?
『ハムラビ法典って知ってるか?目には目を、歯には歯をってヤツだ』
完全な無表情で、でも声だけは楽しそうな独月が問い掛けた。ハムラビ法典って確か簡単に言えば仕返しされる様な事はすんなよってヤツだろ?間違ってもやられたらやり返して良いぜってヤツじゃねぇぞ
『勿論やられたらやり返して良いってものじゃないが、僕は今敢えてそちらの意味で使おうと思う。だって最初から仕掛けてきたのはお前らだろ?だからこれは有効だ。仕返しされる事をしたのはお前らだし』
また宙を舞う虫を藤凍月が斬り裂いた。それが金髪の女の頭の上に落ちる
「いやっ!いやあああっ!」
『どうした?そんなに嬉しいの?』
いやそれ嫌がってるから。明らかに喜んでねぇから。というかこれそろそろ独月止めた方が良くねぇか?
『ああ、そうそう。お前らがまた勘違いした愛情表現をしない様に言っておこう』
微笑む独月が前髪を掻き上げた。うわ、何か色っぽい…って何考えてんだ俺。止めねぇと。
『修兵さんは僕のものだ。好きになるのは構わないが奪おうなんて考えない方が良い。心の広い僕は間違ってお前らを斬ってしまうかもしれないからな』
茂みから出ようとした時に聞こえた言葉。思わず思考停止。え、マジで?俺そんなにお前に好かれてたの?や、嬉しいけど。嬉し過ぎてにやける
『そういえばさっき僕の目を罵ったな。お前らの目も縦に裂いてやればおあいこか』
酷く冷たい目でそう言った独月を見て、慌てて茂みから飛び出す。肩を掴めば鋭い目で俺を見た
「独月、もう止めとけ」
『何で邪魔する?お仕置きされたい?』
「や、遠慮する」
目が据わってやがる。こいつ本気だ。反射的に首を横に振れば僅かに口角を上げた。明らかに何時もの独月じゃねぇ。
…あれ、俺の天使何処行った
『なら黙ってて。…お前誰が寝て良いって言った?』
「っぐ…」
無表情な独月が近くで倒れている男を蹴飛ばした。そのまま頭を踏み躙り、呻く声を聴いて笑う。
何か独月が女王様に見えてきた。それか悪魔。普段が天使だからギャップが凄過ぎる。冷たい笑みが妙に色っぽい…ってだから俺は何考えてんだよ
「独月、落ち着けよ」
『邪魔しないで。…ほんとにお仕置きされたいの?』
振り向かせれば俺の頬を撫でて冷たく笑う。頷きそうになるのを必死こいて防いだ。危ねぇ。お前無駄に色気振り撒くなこの小悪魔め。そして一々惑わされるな、俺
「ったく…少し眠りな。後で沢山お仕置きしてくれよ、可愛い女王サマ」
『あ……?』
白伏を掛ければすぐに独月の目は閉じられた。倒れ込んできた小さな身体を受け止める。あれ、何か効き方早くね?そんなに強くしてねぇぞ?
見れば独月の目許には酷ぇ隈。…もしかしてこいつ寝不足でこうなったのか?深夜テンションならぬ悪魔テンション?厄介過ぎんだろお前。つか何日寝不足なんだ。やべぇよこの隈真っ黒じゃねぇか
すっと目を向ければ放心状態の三人組。一人は焦点の定まらない目でぶつぶつと何かを唱えている。まぁ高ぇ霊圧ぶつけられて虫食わされそうになれば当然か。てかあんな事されれば確実にトラウマになる
「十分お仕置きされたみてぇだから俺からは何もしねぇが……次はねぇぞ」
そう声を掛けてから独月を抱え、瀞霊廷内に入る。あの様子ならわざわざ忠告しなくても良い気もするが
『………ん…』
ゆっくりと目を開ける。映ったのは見慣れた天井。僕の部屋だ。あれ、何で此処に?
僕確か五番隊のヒラ隊士三人組に呼び出されてなかったっけ?それで話した気もするんだけど……もしかして夢?てか何処から夢?
「起きたか」
『…修兵さん?』
部屋に入ってきた修兵さんがベッドの傍に座った。そして何も言わずじっと僕を見つめ始めた。え、何?どうしたの?
『何か付いてる?』
「や…良かった。俺の天使が帰って来た」
『は?』
天使って何の話だ。聞いても修兵さんは答えない。僕を抱き締めて頻りに良かったと呟いている。だから何が?
「独月、頼むから寝不足になる前に俺に言ってくれ」
『?…話が見えない』
「うん、判らんで良い。次からはちゃんと言え、判ったな?」
何だか修兵さんが必死だったので取り敢えず頷いておく事にした。良い子だと笑った修兵さんが僕の頭を撫でる
「寝不足で悪魔になられちゃたまんねぇっての……」
『?』
寝不足だと彼女は豹変します
(なぁ独月、お前何日寝不足だった?)
(ん?…確か一週間ぐらい?)
(…マジか(一週間で悪魔になるのか))
(?……でも何時の間に寝ちゃったんだろう。呼び出し受けたのまでは覚えてたんだけど)
(…あれ、覚えてねぇのか?お前行く途中俺に会って寝ちまったじゃねぇか(うん、誤魔化そう))
(え、そうなの?)
(おう。よっぽど眠かったんだろうな(悪魔テンションでしたとか言えねぇし))
独月は寝不足でハイになると変なスイッチ入りますよって話
そろそろぶん殴っても良いでしょうか?
最近酷い寝不足である。理由は猛烈な嫌がらせ。嫌がらせと言っても方法は沢山ありバリエーションに富んでいる。
先ずは夜十二時きっかりに始まる無言電話。伝令神機が休む間もなく着信音を鳴らし続ける。放っておけば彼が二時間程度で電池切れになり過労死する程ひっきりなしに。
伝令神機の電源を落とせばひたすら扉がノックされる。物凄く高速で。お前は啄木鳥になりたいのかと言わんばかりの猛スピードでノックが始まる。でも扉を開けても誰も居ない。閉めて少し経てばまた啄木鳥ノックが始まる。これにより只でさえ睡眠の浅い僕は転た寝すら出来なくなった
寝不足の中執務室に行けば僕の筆が全て柄を折られていた。他にも書類用の紙が破ってあったり机の中に虫の死骸が入ってたり。
何か一気に嫌がらせのランク下がったなおい。此処でまさかの露骨な嫌がらせとか駄目だろ。最後まで嫌がらせされてるってバレない様にしようよ。
そう思った僕は悪くない。もうあれだ、我慢の限界なんだ。
────物凄く苛々してるんだ
「あ〜ら、桜花三席目の隈酷いですね〜?」
「やだ、元々悪い目付きがもっと悪くなってるじゃな〜い?」
「そんな正直な事言っちゃ駄目よ〜」
『………………』
物凄く苛々する。間延びした話し方すんな。男に媚び売る女は嫌いなんだ。集団で嫌がらせしてくる奴等も嫌いだ
てか呼び出したんだからさっさと用件を言え
『僕に何の用だ』
「やだ、女の子なのに僕ですって」
「親の躾がなってなかったんじゃな〜い?」
「流魂街出身だし当たり前でしょ〜?それにこんな気味悪い目した子なんて、誰も拾わないわよ」
口喧しくほざき出した女性隊士三人に苛々する。こいつらは確か五番隊のヒラ共だ。名前は覚えてないけど、ちょくちょく僕の陰口を叩いていた気がする
「檜佐木副隊長も東仙隊長もこの子の何が良いのかしらね〜」
「もしかして身体でも売ったの〜?」
「あははっ!それじゃ東仙隊長達がロリコンになっちゃうわよ〜!」
『…下らん事を言うだけなら僕は仕事に戻るぞ』
早く此処を離れたい。その一心で言えば姦しい三人組がぴたりと口を閉じた。うん、静かになってくれて助かる。隊舎に戻ろうとすれば肩を掴まれた
『……何だ』
「…調子乗んなよ、クソガキ」
「どうせコネで三席になったんでしょ?」
「あんた檜佐木副隊長のお気に入りだもんね〜」
『コネだとしてもお前らよりは強い』
早く立ち去りたい。何か藪に沢山人居るっぽいし。こんな人気のない所に連れ込まれたんだ、どうせ良からぬ事しかないだろう
「…マジむかつくんですけど」
「一回痛い目見せてやった方が良くね?」
「それ良いね〜。この生意気なツラ歪ませたいわ」
そう言った金髪の女が指を鳴らした。するとぞろぞろと現れたのは擦り切れた着物の男達。流魂街の住民か。それも治安の悪い所の
「お金なら上げるからさ〜、ちょっとあのガキヤっちゃってよ」
「綺麗な顔のガキじゃねぇか…女か?」
「男でもあの顔ならイケるぜ俺は」
下卑た笑みを浮かべる男達に吐き気がする。自然と手が藤凍月に伸びていた。寄って来たら斬ろう。もう無理だ、我慢の限界だ
「あら桜花三席は流魂街の住民も斬っちゃう人なのね〜?」
「この事東仙隊長達に言ったらどうなるかしら〜?」
もしバレるとしてもこいつらに触られるよりはマシだ。そう呟き、目の前の男を睥睨する
「何だぁ?逃げねぇのかぼくぅ?」
「早く脱がせよ!」
馬鹿共が僕に向かって手を伸ばしてくる。にやついている三人組。黄色い歯を剥き出しにして笑う馬鹿共
汚れた手が僕に触れようとして─────
『────触んな、下衆共』
一気に霊圧を上げる。僕以外の人間が膝立ちになった。藤凍月に手を掛けたまま、ヒラ隊士三人組を見る
『三席にヒラ風情が敵うとでも?それとも数で掛かれば勝てると思ったか?』
「何であんたなんかが三席なのよ!あたしの方が頑張ってるのに!」
リーダー格っぽい金髪の女が僕を睨み付けた。そりゃそうかもね、僕は後から護廷隊に入った訳だし。あんたの頑張りを僕は知らない。
でも、正直そんな事知ったこっちゃない
「何であんたが檜佐木副隊長の傍に居るのよ!あたしの方があんたなんかよりずっと綺麗で可愛いのに!あたしの方があの人の事好きなのに…!」
『…まさか…僕が邪魔だったからこんな事した、とか言わないよな?』
「そうよ!悪い!?」
開き直ったその台詞に思わず固まる。え、そんな理由で一週間眠れなかったの?虫の死骸処理とかめんどくさい事しないといけなかったの?
『あー…そうか。そうだったのか』
自然と笑い声が漏れた。口角は下がったまま。只声だけが笑みを作る
深く息を吸って─────僕は口を開いた
『随分下らない理由でやらかしてくれたなお前ら。修兵さんが好き?だから邪魔?嫌がらせする?馬鹿かお前らそんな事して何になるんだよ。そんな事して修兵さんがありがとうって言うとでも思った?そんな訳ないだろ寧ろブチキレるわ。ものっすごく冷めた目で精神病むまで甚振られるのが判らんのか。そもそも嫌がらせして邪魔者排除とかお前ら何気取りだ。修兵さんの保護者か。飼い主か。管理人か。それで振り向いて貰える訳ないだろ気持ち悪い。そんな事してる暇があるなら修行しろ。ああそれともそんな事考えられる程頭がなかった?だって人の机に書類と間違えて虫の死骸入れちゃう様な人達だもんね?書類用の紙破ったり筆折ったりして頑張ってるって言い張るし?あ、そうかそれを仕事だと思ってるのか。いや済まない配慮が足りなかった。お前らの頭の悪さに深く頭を下げて嘲笑しながら謝罪しよう』
言い終わり奴等を見れば皆ぽかんと口を開けていた。あーすっきりした。取り敢えず嫌がらせしてくれた奴に文句言いたかったんだよ。流石にやられ続けて黙ってられる程僕の心は広くない。寧ろ狭い。そんな僕に嫌がらせするとか命知らずも良いとこだ
「むかつくのよあんた!何よその目!何であんたなんかが檜佐木副隊長のお気に入りなのよ!」
また金髪が突っ掛かってきた。あーもうめんどくさい。僕眠いんだけど
『そんなの修兵さんに聞け。────取り敢えず、頭が高い』
更に霊圧を上げれば男達が這いつくばった。三人組は今にも泣きそうな顔で僕を睨んでいる。やばい、眠くて変なテンションになってる
『跪け』
「っ…!」
四つん這いになった三人組を見下ろしながら藤凍月を抜く。怯えた表情が面白くて、もっと仕返しがしたくなった
『じゃあ、お仕置きの時間だ』
「………………」
今俺は有り得ないものを見てる気がする。てか夢じゃね?いや絶対嘘だろ。頬を抓るが痛ぇだけ。目の前の光景は変わらねぇ
『ほら、お前らの餌だろ?食えば?』
「ひっ……!」
あちこちに倒れている男達。四つん這いになった護廷隊士。それに向かって藤凍月を向ける、独月。切っ先で指しているのは虫の死骸だ。餌って。お前それ食いもんじゃねぇ
『あれ、てっきり僕はお前らが善意で虫の死骸を机の中に入れてくれたんだと思ったんだが違うのか?まぁそうだとしても僕のこれは間違いなく善意だ。だから有り難く食え』
いやいやいや、お前からは悪意しか感じられねぇんだが。てか何でお前そんな事してんの?何時もならそんな事しねぇだろ。俺が任務で居なかった一週間に何があった?
『ハムラビ法典って知ってるか?目には目を、歯には歯をってヤツだ』
完全な無表情で、でも声だけは楽しそうな独月が問い掛けた。ハムラビ法典って確か簡単に言えば仕返しされる様な事はすんなよってヤツだろ?間違ってもやられたらやり返して良いぜってヤツじゃねぇぞ
『勿論やられたらやり返して良いってものじゃないが、僕は今敢えてそちらの意味で使おうと思う。だって最初から仕掛けてきたのはお前らだろ?だからこれは有効だ。仕返しされる事をしたのはお前らだし』
また宙を舞う虫を藤凍月が斬り裂いた。それが金髪の女の頭の上に落ちる
「いやっ!いやあああっ!」
『どうした?そんなに嬉しいの?』
いやそれ嫌がってるから。明らかに喜んでねぇから。というかこれそろそろ独月止めた方が良くねぇか?
『ああ、そうそう。お前らがまた勘違いした愛情表現をしない様に言っておこう』
微笑む独月が前髪を掻き上げた。うわ、何か色っぽい…って何考えてんだ俺。止めねぇと。
『修兵さんは僕のものだ。好きになるのは構わないが奪おうなんて考えない方が良い。心の広い僕は間違ってお前らを斬ってしまうかもしれないからな』
茂みから出ようとした時に聞こえた言葉。思わず思考停止。え、マジで?俺そんなにお前に好かれてたの?や、嬉しいけど。嬉し過ぎてにやける
『そういえばさっき僕の目を罵ったな。お前らの目も縦に裂いてやればおあいこか』
酷く冷たい目でそう言った独月を見て、慌てて茂みから飛び出す。肩を掴めば鋭い目で俺を見た
「独月、もう止めとけ」
『何で邪魔する?お仕置きされたい?』
「や、遠慮する」
目が据わってやがる。こいつ本気だ。反射的に首を横に振れば僅かに口角を上げた。明らかに何時もの独月じゃねぇ。
…あれ、俺の天使何処行った
『なら黙ってて。…お前誰が寝て良いって言った?』
「っぐ…」
無表情な独月が近くで倒れている男を蹴飛ばした。そのまま頭を踏み躙り、呻く声を聴いて笑う。
何か独月が女王様に見えてきた。それか悪魔。普段が天使だからギャップが凄過ぎる。冷たい笑みが妙に色っぽい…ってだから俺は何考えてんだよ
「独月、落ち着けよ」
『邪魔しないで。…ほんとにお仕置きされたいの?』
振り向かせれば俺の頬を撫でて冷たく笑う。頷きそうになるのを必死こいて防いだ。危ねぇ。お前無駄に色気振り撒くなこの小悪魔め。そして一々惑わされるな、俺
「ったく…少し眠りな。後で沢山お仕置きしてくれよ、可愛い女王サマ」
『あ……?』
白伏を掛ければすぐに独月の目は閉じられた。倒れ込んできた小さな身体を受け止める。あれ、何か効き方早くね?そんなに強くしてねぇぞ?
見れば独月の目許には酷ぇ隈。…もしかしてこいつ寝不足でこうなったのか?深夜テンションならぬ悪魔テンション?厄介過ぎんだろお前。つか何日寝不足なんだ。やべぇよこの隈真っ黒じゃねぇか
すっと目を向ければ放心状態の三人組。一人は焦点の定まらない目でぶつぶつと何かを唱えている。まぁ高ぇ霊圧ぶつけられて虫食わされそうになれば当然か。てかあんな事されれば確実にトラウマになる
「十分お仕置きされたみてぇだから俺からは何もしねぇが……次はねぇぞ」
そう声を掛けてから独月を抱え、瀞霊廷内に入る。あの様子ならわざわざ忠告しなくても良い気もするが
『………ん…』
ゆっくりと目を開ける。映ったのは見慣れた天井。僕の部屋だ。あれ、何で此処に?
僕確か五番隊のヒラ隊士三人組に呼び出されてなかったっけ?それで話した気もするんだけど……もしかして夢?てか何処から夢?
「起きたか」
『…修兵さん?』
部屋に入ってきた修兵さんがベッドの傍に座った。そして何も言わずじっと僕を見つめ始めた。え、何?どうしたの?
『何か付いてる?』
「や…良かった。俺の天使が帰って来た」
『は?』
天使って何の話だ。聞いても修兵さんは答えない。僕を抱き締めて頻りに良かったと呟いている。だから何が?
「独月、頼むから寝不足になる前に俺に言ってくれ」
『?…話が見えない』
「うん、判らんで良い。次からはちゃんと言え、判ったな?」
何だか修兵さんが必死だったので取り敢えず頷いておく事にした。良い子だと笑った修兵さんが僕の頭を撫でる
「寝不足で悪魔になられちゃたまんねぇっての……」
『?』
寝不足だと彼女は豹変します
(なぁ独月、お前何日寝不足だった?)
(ん?…確か一週間ぐらい?)
(…マジか(一週間で悪魔になるのか))
(?……でも何時の間に寝ちゃったんだろう。呼び出し受けたのまでは覚えてたんだけど)
(…あれ、覚えてねぇのか?お前行く途中俺に会って寝ちまったじゃねぇか(うん、誤魔化そう))
(え、そうなの?)
(おう。よっぽど眠かったんだろうな(悪魔テンションでしたとか言えねぇし))
独月は寝不足でハイになると変なスイッチ入りますよって話