罪は消えない
ぼんやりと書類整理をしていれば現れたそれ。座っていた財前にすっと差し出す
『財前、この書類うちのじゃないだろ』
「隊長付け。あー…それ十番隊のヤツやな」
一体何処で紛れてきたのか。取り敢えず誰かに持って行かせれば良いか。
そう思い書類を置けばやる気のない顔が僕を見た
「独、お前それ十番隊に届けて来い」
『やだ、めんどくさい』
「隊長命令や、行け」
『……ちっ』
最近人使い荒いなこいつ。書類を持って隊首室を出る。
あれか、暫く休んでた分働けと。確かに四番隊で長期療養してたけど…十年ぐらい。暫くは始解どころか斬魄刀抜けなくなってましたけど。
だからってこんな風に仕事押し付けなくても良いんじゃないか?まぁ仕方無いか、善哉野郎だし
十番隊隊舎に向かえばわいわい騒ぐ声が聞こえる。というか乱菊さんの大声だ、これ。
声のする方に近付いていけば乱菊さんがお皿を手にしていた
「隊長、見付けたわよ!!」
そう言って勢い良くお皿を投げた。投げられたそれが木に向かって突き進む。がさりと藪に突っ込んだ瞬間、響く悲鳴
「ぎゃああああああああああ!!」
『…………』
木の上から何か落ちてきた。
てかこれって話し掛けて良いのか僕。書類渡せればそれで良いんだが、こういうのは隊長か副隊長に渡すべきタイプのものだからそこら辺のヒラにも渡せない。
隊長らしき人と乱菊さんは言い合いしてる。どうしよう、早く帰りたいんだが
「ほら隊長、さっさと仕事して!」
「お前が俺の仕事こっそり増やしてんの知ってんだぞーこの鬼!魔女!」
『……あの』
このままじゃ埒が明かない。溜息を吐いて話し掛ければ二人が同時に此方を見た
「あら、ちびさぎじゃない!どーしたの?」
『書類持ってきました。うちの隊に紛れてたんで』
そう言って書類を渡せば悪いわねと頭を撫でられた。
「お前は十四番隊の……」
『……あ…』
声の方を見て、目を見開く。
────海燕、さん?
そう呟こうとして、口を閉じた。違う。海燕さんはもう居ないんだ。良い加減認めろよ
『…十四番隊副隊長、桜花独月です』
「おー、お前が初代天才児か」
『……初代?』
首を傾げればにっと笑った隊長が僕の頭に手を置いた
「うちの隊に二代目天才児が居るんだよ。あ、そういや自己紹介してなかったな」
二代目居るのか。てか僕はそもそも天才じゃないんだが。
「十番隊隊長、志波一心だ」
『……はじめ、まして』
やっぱり、あの人と関係がある人なのか。
絞り出した声は酷く掠れていた
折角来たんだし茶でも飲んでいけと言われ無理矢理貴賓室に通された。志波隊長は後から来るらしい。それまで僕は此処で待機。
や、もう十四番隊に帰りたいんですけど。更に言うなら財前に一発食らわせてから走って九番隊に行きたい。修兵さんに癒されたい
「どうぞ」
『…ありがとうございます……あれ?』
「あ」
湯飲みを置いてくれた隊士の顔を見て、目を瞬かせる。この子前に潤林安で見た……
『…お婆さんと一緒に歩いてた、男の子?』
「…覚えてくれてたんですか?」
そう言って男の子が翡翠色の目を細めた。目が合っただけだったけど、自分以外に初めて同じ様な髪の色の子を見たから、良く覚えている。
十番隊に入ったのか。という事は
『…君が、天才児?』
「その呼ばれ方は、あんまり好きじゃないっす」
『……僕もだ』
僕は天才でも何でもないのにそう呼ばれた。今も度々そう呼ばれるし、少しでも失敗すればすぐに天才の癖にと陰口を叩かれる。
僕にとって天才児という肩書きは、酷く重い
『じゃあ、はじめまして、ですよね。十四番隊副隊長、桜花独月です』
「はじめまして。十番隊三席、日番谷冬獅郎です」
日番谷冬獅郎。という事は彼が氷雪系最強の氷輪丸の持ち主か。僕も一応氷雪系の斬魄刀だから、彼がどんな風に戦うのか興味がある
隣に座る事を勧め、聞いてみた
『氷輪丸使うトコ、今度見せて貰えませんか?』
「俺なんかの始解見たって副隊長はつまらないんじゃないですか?」
『そんな事はないですよ。僕も一応氷雪系なんで、氷雪系最強の斬魄刀に興味があるんです』
そう返せば日番谷くんがああと小さく声を出した
「桜花副隊長は確か…特殊な斬魄刀でしたよね」
『あー…確かに特殊かも。始解の状態も二刀一対とはまた違うみたいだし…化けるし』
今考えると藤凍月は結構変わった斬魄刀かも知れない。始解したくない時はしてくれないし、具象化した時も二匹だし
「卍解もやっぱり特殊なんですか?」
『卍解?あれもやっぱり特殊なのかな……化けるし』
個人的にはそんなに特殊じゃないと思うんだけど。周りからしたらやっぱり特殊なのかも知れない。
そもそも拳銃になるのも僕だけだし。施条銃も勿論居ない。化ける斬魄刀も居ないな
『あれ、何で卍解の事知ってるんですか?』
僕話してないよね?そう聞けば日番谷くんが頷く
「桜花副隊長はもう卍解会得済み。次期隊長候補だって噂出てますよ」
『……うわぁ』
隊長とかなる気ないのに何その噂。つか誰だ卍解の事言い触らしたの
「財前隊長が総隊長にその事報告してるのをうちの隊長が聞いたみたいで」
『…つまりはうちの隊長か』
良しあいつシメる。冷蔵庫の善哉全部食べてやる。つか何で総隊長に報告してんの。別に報告義務なんかない筈なんだが
ああでもちょくちょく総隊長から御菓子頂く気がする。それもあれか、財前の所為か
そう考えつつ日番谷くんと話をしていれば貴賓室の扉が開いた
「悪いな独月!乱菊がまた書類俺の机に乗せててよー」
『…お疲れ様です』
入って来た志波隊長にソファから立ち上がり、頭を下げる。すると大きな手にわっしわっしと頭を撫でられた。……この撫で方、海燕さんに似てる
「そんなに固くなんなよ。俺は独月と仲良くなりてぇんだ」
そう言って笑った志波隊長を見て、僕の隣に立っていた日番谷くんが口を開く
「隊長、その言い方は変態くさいです」
「なんだとぅ!?このダンディーな俺が変態っ!?」
「ダンディーとか自分の顔鏡で確認してから言って下さいよ」
うわ、辛辣。や、格好良い部類に入る顔だと思うよ?ダンディーかどうかは知らないけど
「俺は書類整理に戻りますけど、くれぐれも桜花副隊長に迷惑を掛けない様に」
『や、寧ろ僕が迷惑掛ける気が……』
「桜花副隊長、其処のモミアゲに変な事されたらすぐ言って下さいね。シバきに行くんで」
「オイ冬獅郎!それ俺が居る前で言っちゃう!?何か今日冷たくない!?」
「失礼しました」
「無視っ!?」
…案外毒舌だな日番谷くん。僕と話してる時は全然そんな感じじゃなかったけど
日番谷くんが出て行くのを見送って、目の前の志波隊長を見る
『…仲が良いんですね、十番隊』
「まぁな。でもそれは十四番隊も同じだろ?」
『や、僕と隊長は仲良くないですよ』
「あれ、そうなのか?」
目を瞬かせた志波隊長に一つ頷く
『財前…隊長は無理矢理僕を九番隊から引き抜いたんで』
「…九番隊に戻りたいか?」
『はい。……でも、約束してるので、その時が来るまで待ちます』
修兵さんと約束をした。あの人が迎えに来てくれるまで、僕は十四番隊に居る
「そうか…早く戻れると良いな」
『はい』
小さく返事をして、志波隊長を見つめる。少し垂れ気味の、意志の強い目。見れば見る程、あの人の面影を見てしまう。
あの人はもう居ないのに。もう、会えないのに
「どうした?そんなに見つめて」
『へ?あ……』
見つめていれば志波隊長が首を傾げて、それからニヤリと笑った。あれ、何か嫌な予感
「もしや俺に惚れたか!?独月みたいに可愛い子なら大歓迎だ!!」
『……えーと』
やっぱり。や、多分格好良いけど僕のタイプではないです。てか僕は可愛くないし
どう返そうか悩んでいれば、ふっと志波隊長が笑った
「……俺がそんなに当主に似てるか?」
『っ!!』
言葉に詰まり、目を見開く。そんな僕を余所に志波隊長は湯呑みを口許に運んだ
「お前の事は良く当主から聞かされてたからな、前から知ってた」
当主…海燕さんからか。でも、あの人を死なせたのは……
目を伏せれば、静かに志波隊長が口を開いた
「全部、知ってるさ。当主と奥方がどう死んだのかも」
『……なら』
何で、仲良くなりたいだなんて言ったんですか。全部知ってるなら、判ってる筈だ。
────僕が、どれだけ罪深いかも
「お前は悪くねぇよ」
『っ…何で、そんな事言えるんですか』
僕が藤凍月を使っていれば、あの人は斬魄刀を失う事はなかった。あの時僕が一人で行っていれば、都さんや隊士達は死なずに済んだ
『僕があの虚を倒せていれば…ルキアにあんな事させずに済んだ…!海燕さんも都さんも隊士達も死なずに済んだんです…!!』
「……確かに、そうかも知れねぇ」
『なら……!』
「けどな、それは俺にも言える事なんだよ」
席を立った志波隊長が、僕の隣に座った
「あの日俺が虚の調査に行っていたなら、俺が虚を倒していたなら……当主と奥方は今も此処で笑ってたかも知れねぇってな」
『………………』
「お前はこの十年間、ずっと苦しんでたんだろ?でもな、もうお前自身を許してやれ。当主も奥方も、勿論俺も、お前が苦しむとこなんか見たくねぇよ」
肩に大きな手が乗せられた。優しく笑った志波隊長がもう片方の手で僕の頭を撫でる
「空鶴様や岩鷲様も怒ってなかったんだろ?だからもう、許してやれ。誰もお前を責めてなんかいねぇよ」
確かにあの二人は怒っていなかった。謝りに来たから、もうそれで良い、と。
『…何で…誰も僕を責めないんですか…』
「確かにお前は責められたら楽かも知れねぇ。けどな、ほんとに誰もお前を責める気はねぇんだよ。
あの日お前はお前の最善を尽くした。ただそれがあの虚に及ばなかったって話だ」
そっと引き寄せられ、やんわりと抱き締められた
「御二人も死神だったんだ。殉職も覚悟の上だった。
そもそも最初からお前を責めてなんかいねぇ。だからもう、お前がお前を許してやれ」
『………………』
許しても、良いんだろうか。僕の所為で死んだのに。僕は僕を許しても良いのか
「まぁどうしても許せねぇってんなら、毎年御二人の墓参りに行ってやってくれねぇか?そうしたら御二人も喜ばれるだろ」
『……判り、ました…』
明るい声でそう言った志波隊長に小さく頷く。視界がぼんやりと滲み出した。目蓋が熱い。え、何で。そう思った瞬間、急に扉が開いた
「隊長ー修兵が早く原稿出せって………」
扉を開いた状態で乱菊さんが固まった。え、どうしたの?
見ていれば、ゆっくりと乱菊さんが足を振り上げた。……え、足?
「何ちびさぎに手ぇ出してんのよこの変態っ!!」
「ぐほぉっ!?」
『……うわぁ』
乱菊さんの足が見事直撃した志波隊長が吹っ飛んだ。何か随分えげつない音がしたんだが大丈夫か。
ぼんやりと眺めていれば、志波隊長を蹴り始めた乱菊さんがかぱっと口を開けた
「しゅーへーっ!!!!」
「うるせっ…何すか乱菊さん…って何で志波隊長蹴飛ばしてるんですか」
乱菊さんが大声を出すと、片耳を塞ぎながら修兵さんがやって来た。僕に気付いた修兵さんが此方に寄って来て、目を見開く
「…おい独月、誰に泣かされた?」
『へ……?』
泣かされた?や、別に誰にも泣かされてないんだけど。そう言っても修兵さんは話を聞かない。ぱっと乱菊さんの方を振り向き、訊ねる
「まさか……乱菊さん、志波隊長こいつに何したんすか」
「この変態ちびさぎを抱き締めてたのよ!」
何か今物凄く勘違いされる事言ったぞあの人。でも抱き締められたのは確か…てか何で抱き締められた?
そう思いつつ弁明しようとすれば、ぎゅっと修兵さんに抱き締められた。頭を優しく撫でられる
「怖かったろ、良く耐えたな独月」
『いや、あの』
「俺があの変態シバいて来るから、お前は日番谷と茶でも飲んどけよ」
『や、修兵さんちょっと』
優しく笑った修兵さんが志波隊長の方に行った。止めようとすればくいっと手を引かれる。見れば日番谷くんが扉を指差した
「じゃあ修行付き合って下さいよ、桜花副隊長。氷輪丸見たがってましたよね」
『あ、見たい……じゃなくて志波隊長は』
「まぁ死ななければ大丈夫でしょ」
良いのかそんなんで。
ちらりと見つつ部屋を出る
『一旦隊舎に寄っても良いですか?藤凍月がお留守番してるんで』
「はい」
It is not allowed. Because you are not charged with a crime etc. from the first
(ちょっ待てお前ら話せば判るっ!!)
(俺あいつを泣かす奴には手加減出来ねぇっす。手ぇ出した奴には特に)
(無抵抗の女の子抱き締めるなんてサイテー!)
(だからそれ勘違いっ!俺は独月を慰めようとしてだな…っおふ!今ので俺のダンディーな鼻が折れたぁぁぁぁぁっ!!!)
(元々ダンディーじゃないから大丈夫よ)
(つか慰める為に抱き締めるとかないわ。マジでロリコンなんすか志波隊長)
(お前ら目が怖いっ!!ロリコンとは何だロリコンとは!可愛い子を愛でて何が悪…っのおおおおおおおお!!!!)
(ロリコンが手ぇ出す前に、コレ使えなくしときましょうか)
(そうね、きっとそれが良いわ)
(ちょっ待て待て待て待て踏むな檜佐木止まれあぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!)
(…志波隊長、大丈夫ですかね…?何か悲鳴が…)
(多分隊長が男として終わるだけなんで大丈夫です)
『財前、この書類うちのじゃないだろ』
「隊長付け。あー…それ十番隊のヤツやな」
一体何処で紛れてきたのか。取り敢えず誰かに持って行かせれば良いか。
そう思い書類を置けばやる気のない顔が僕を見た
「独、お前それ十番隊に届けて来い」
『やだ、めんどくさい』
「隊長命令や、行け」
『……ちっ』
最近人使い荒いなこいつ。書類を持って隊首室を出る。
あれか、暫く休んでた分働けと。確かに四番隊で長期療養してたけど…十年ぐらい。暫くは始解どころか斬魄刀抜けなくなってましたけど。
だからってこんな風に仕事押し付けなくても良いんじゃないか?まぁ仕方無いか、善哉野郎だし
十番隊隊舎に向かえばわいわい騒ぐ声が聞こえる。というか乱菊さんの大声だ、これ。
声のする方に近付いていけば乱菊さんがお皿を手にしていた
「隊長、見付けたわよ!!」
そう言って勢い良くお皿を投げた。投げられたそれが木に向かって突き進む。がさりと藪に突っ込んだ瞬間、響く悲鳴
「ぎゃああああああああああ!!」
『…………』
木の上から何か落ちてきた。
てかこれって話し掛けて良いのか僕。書類渡せればそれで良いんだが、こういうのは隊長か副隊長に渡すべきタイプのものだからそこら辺のヒラにも渡せない。
隊長らしき人と乱菊さんは言い合いしてる。どうしよう、早く帰りたいんだが
「ほら隊長、さっさと仕事して!」
「お前が俺の仕事こっそり増やしてんの知ってんだぞーこの鬼!魔女!」
『……あの』
このままじゃ埒が明かない。溜息を吐いて話し掛ければ二人が同時に此方を見た
「あら、ちびさぎじゃない!どーしたの?」
『書類持ってきました。うちの隊に紛れてたんで』
そう言って書類を渡せば悪いわねと頭を撫でられた。
「お前は十四番隊の……」
『……あ…』
声の方を見て、目を見開く。
────海燕、さん?
そう呟こうとして、口を閉じた。違う。海燕さんはもう居ないんだ。良い加減認めろよ
『…十四番隊副隊長、桜花独月です』
「おー、お前が初代天才児か」
『……初代?』
首を傾げればにっと笑った隊長が僕の頭に手を置いた
「うちの隊に二代目天才児が居るんだよ。あ、そういや自己紹介してなかったな」
二代目居るのか。てか僕はそもそも天才じゃないんだが。
「十番隊隊長、志波一心だ」
『……はじめ、まして』
やっぱり、あの人と関係がある人なのか。
絞り出した声は酷く掠れていた
折角来たんだし茶でも飲んでいけと言われ無理矢理貴賓室に通された。志波隊長は後から来るらしい。それまで僕は此処で待機。
や、もう十四番隊に帰りたいんですけど。更に言うなら財前に一発食らわせてから走って九番隊に行きたい。修兵さんに癒されたい
「どうぞ」
『…ありがとうございます……あれ?』
「あ」
湯飲みを置いてくれた隊士の顔を見て、目を瞬かせる。この子前に潤林安で見た……
『…お婆さんと一緒に歩いてた、男の子?』
「…覚えてくれてたんですか?」
そう言って男の子が翡翠色の目を細めた。目が合っただけだったけど、自分以外に初めて同じ様な髪の色の子を見たから、良く覚えている。
十番隊に入ったのか。という事は
『…君が、天才児?』
「その呼ばれ方は、あんまり好きじゃないっす」
『……僕もだ』
僕は天才でも何でもないのにそう呼ばれた。今も度々そう呼ばれるし、少しでも失敗すればすぐに天才の癖にと陰口を叩かれる。
僕にとって天才児という肩書きは、酷く重い
『じゃあ、はじめまして、ですよね。十四番隊副隊長、桜花独月です』
「はじめまして。十番隊三席、日番谷冬獅郎です」
日番谷冬獅郎。という事は彼が氷雪系最強の氷輪丸の持ち主か。僕も一応氷雪系の斬魄刀だから、彼がどんな風に戦うのか興味がある
隣に座る事を勧め、聞いてみた
『氷輪丸使うトコ、今度見せて貰えませんか?』
「俺なんかの始解見たって副隊長はつまらないんじゃないですか?」
『そんな事はないですよ。僕も一応氷雪系なんで、氷雪系最強の斬魄刀に興味があるんです』
そう返せば日番谷くんがああと小さく声を出した
「桜花副隊長は確か…特殊な斬魄刀でしたよね」
『あー…確かに特殊かも。始解の状態も二刀一対とはまた違うみたいだし…化けるし』
今考えると藤凍月は結構変わった斬魄刀かも知れない。始解したくない時はしてくれないし、具象化した時も二匹だし
「卍解もやっぱり特殊なんですか?」
『卍解?あれもやっぱり特殊なのかな……化けるし』
個人的にはそんなに特殊じゃないと思うんだけど。周りからしたらやっぱり特殊なのかも知れない。
そもそも拳銃になるのも僕だけだし。施条銃も勿論居ない。化ける斬魄刀も居ないな
『あれ、何で卍解の事知ってるんですか?』
僕話してないよね?そう聞けば日番谷くんが頷く
「桜花副隊長はもう卍解会得済み。次期隊長候補だって噂出てますよ」
『……うわぁ』
隊長とかなる気ないのに何その噂。つか誰だ卍解の事言い触らしたの
「財前隊長が総隊長にその事報告してるのをうちの隊長が聞いたみたいで」
『…つまりはうちの隊長か』
良しあいつシメる。冷蔵庫の善哉全部食べてやる。つか何で総隊長に報告してんの。別に報告義務なんかない筈なんだが
ああでもちょくちょく総隊長から御菓子頂く気がする。それもあれか、財前の所為か
そう考えつつ日番谷くんと話をしていれば貴賓室の扉が開いた
「悪いな独月!乱菊がまた書類俺の机に乗せててよー」
『…お疲れ様です』
入って来た志波隊長にソファから立ち上がり、頭を下げる。すると大きな手にわっしわっしと頭を撫でられた。……この撫で方、海燕さんに似てる
「そんなに固くなんなよ。俺は独月と仲良くなりてぇんだ」
そう言って笑った志波隊長を見て、僕の隣に立っていた日番谷くんが口を開く
「隊長、その言い方は変態くさいです」
「なんだとぅ!?このダンディーな俺が変態っ!?」
「ダンディーとか自分の顔鏡で確認してから言って下さいよ」
うわ、辛辣。や、格好良い部類に入る顔だと思うよ?ダンディーかどうかは知らないけど
「俺は書類整理に戻りますけど、くれぐれも桜花副隊長に迷惑を掛けない様に」
『や、寧ろ僕が迷惑掛ける気が……』
「桜花副隊長、其処のモミアゲに変な事されたらすぐ言って下さいね。シバきに行くんで」
「オイ冬獅郎!それ俺が居る前で言っちゃう!?何か今日冷たくない!?」
「失礼しました」
「無視っ!?」
…案外毒舌だな日番谷くん。僕と話してる時は全然そんな感じじゃなかったけど
日番谷くんが出て行くのを見送って、目の前の志波隊長を見る
『…仲が良いんですね、十番隊』
「まぁな。でもそれは十四番隊も同じだろ?」
『や、僕と隊長は仲良くないですよ』
「あれ、そうなのか?」
目を瞬かせた志波隊長に一つ頷く
『財前…隊長は無理矢理僕を九番隊から引き抜いたんで』
「…九番隊に戻りたいか?」
『はい。……でも、約束してるので、その時が来るまで待ちます』
修兵さんと約束をした。あの人が迎えに来てくれるまで、僕は十四番隊に居る
「そうか…早く戻れると良いな」
『はい』
小さく返事をして、志波隊長を見つめる。少し垂れ気味の、意志の強い目。見れば見る程、あの人の面影を見てしまう。
あの人はもう居ないのに。もう、会えないのに
「どうした?そんなに見つめて」
『へ?あ……』
見つめていれば志波隊長が首を傾げて、それからニヤリと笑った。あれ、何か嫌な予感
「もしや俺に惚れたか!?独月みたいに可愛い子なら大歓迎だ!!」
『……えーと』
やっぱり。や、多分格好良いけど僕のタイプではないです。てか僕は可愛くないし
どう返そうか悩んでいれば、ふっと志波隊長が笑った
「……俺がそんなに当主に似てるか?」
『っ!!』
言葉に詰まり、目を見開く。そんな僕を余所に志波隊長は湯呑みを口許に運んだ
「お前の事は良く当主から聞かされてたからな、前から知ってた」
当主…海燕さんからか。でも、あの人を死なせたのは……
目を伏せれば、静かに志波隊長が口を開いた
「全部、知ってるさ。当主と奥方がどう死んだのかも」
『……なら』
何で、仲良くなりたいだなんて言ったんですか。全部知ってるなら、判ってる筈だ。
────僕が、どれだけ罪深いかも
「お前は悪くねぇよ」
『っ…何で、そんな事言えるんですか』
僕が藤凍月を使っていれば、あの人は斬魄刀を失う事はなかった。あの時僕が一人で行っていれば、都さんや隊士達は死なずに済んだ
『僕があの虚を倒せていれば…ルキアにあんな事させずに済んだ…!海燕さんも都さんも隊士達も死なずに済んだんです…!!』
「……確かに、そうかも知れねぇ」
『なら……!』
「けどな、それは俺にも言える事なんだよ」
席を立った志波隊長が、僕の隣に座った
「あの日俺が虚の調査に行っていたなら、俺が虚を倒していたなら……当主と奥方は今も此処で笑ってたかも知れねぇってな」
『………………』
「お前はこの十年間、ずっと苦しんでたんだろ?でもな、もうお前自身を許してやれ。当主も奥方も、勿論俺も、お前が苦しむとこなんか見たくねぇよ」
肩に大きな手が乗せられた。優しく笑った志波隊長がもう片方の手で僕の頭を撫でる
「空鶴様や岩鷲様も怒ってなかったんだろ?だからもう、許してやれ。誰もお前を責めてなんかいねぇよ」
確かにあの二人は怒っていなかった。謝りに来たから、もうそれで良い、と。
『…何で…誰も僕を責めないんですか…』
「確かにお前は責められたら楽かも知れねぇ。けどな、ほんとに誰もお前を責める気はねぇんだよ。
あの日お前はお前の最善を尽くした。ただそれがあの虚に及ばなかったって話だ」
そっと引き寄せられ、やんわりと抱き締められた
「御二人も死神だったんだ。殉職も覚悟の上だった。
そもそも最初からお前を責めてなんかいねぇ。だからもう、お前がお前を許してやれ」
『………………』
許しても、良いんだろうか。僕の所為で死んだのに。僕は僕を許しても良いのか
「まぁどうしても許せねぇってんなら、毎年御二人の墓参りに行ってやってくれねぇか?そうしたら御二人も喜ばれるだろ」
『……判り、ました…』
明るい声でそう言った志波隊長に小さく頷く。視界がぼんやりと滲み出した。目蓋が熱い。え、何で。そう思った瞬間、急に扉が開いた
「隊長ー修兵が早く原稿出せって………」
扉を開いた状態で乱菊さんが固まった。え、どうしたの?
見ていれば、ゆっくりと乱菊さんが足を振り上げた。……え、足?
「何ちびさぎに手ぇ出してんのよこの変態っ!!」
「ぐほぉっ!?」
『……うわぁ』
乱菊さんの足が見事直撃した志波隊長が吹っ飛んだ。何か随分えげつない音がしたんだが大丈夫か。
ぼんやりと眺めていれば、志波隊長を蹴り始めた乱菊さんがかぱっと口を開けた
「しゅーへーっ!!!!」
「うるせっ…何すか乱菊さん…って何で志波隊長蹴飛ばしてるんですか」
乱菊さんが大声を出すと、片耳を塞ぎながら修兵さんがやって来た。僕に気付いた修兵さんが此方に寄って来て、目を見開く
「…おい独月、誰に泣かされた?」
『へ……?』
泣かされた?や、別に誰にも泣かされてないんだけど。そう言っても修兵さんは話を聞かない。ぱっと乱菊さんの方を振り向き、訊ねる
「まさか……乱菊さん、志波隊長こいつに何したんすか」
「この変態ちびさぎを抱き締めてたのよ!」
何か今物凄く勘違いされる事言ったぞあの人。でも抱き締められたのは確か…てか何で抱き締められた?
そう思いつつ弁明しようとすれば、ぎゅっと修兵さんに抱き締められた。頭を優しく撫でられる
「怖かったろ、良く耐えたな独月」
『いや、あの』
「俺があの変態シバいて来るから、お前は日番谷と茶でも飲んどけよ」
『や、修兵さんちょっと』
優しく笑った修兵さんが志波隊長の方に行った。止めようとすればくいっと手を引かれる。見れば日番谷くんが扉を指差した
「じゃあ修行付き合って下さいよ、桜花副隊長。氷輪丸見たがってましたよね」
『あ、見たい……じゃなくて志波隊長は』
「まぁ死ななければ大丈夫でしょ」
良いのかそんなんで。
ちらりと見つつ部屋を出る
『一旦隊舎に寄っても良いですか?藤凍月がお留守番してるんで』
「はい」
It is not allowed. Because you are not charged with a crime etc. from the first
(ちょっ待てお前ら話せば判るっ!!)
(俺あいつを泣かす奴には手加減出来ねぇっす。手ぇ出した奴には特に)
(無抵抗の女の子抱き締めるなんてサイテー!)
(だからそれ勘違いっ!俺は独月を慰めようとしてだな…っおふ!今ので俺のダンディーな鼻が折れたぁぁぁぁぁっ!!!)
(元々ダンディーじゃないから大丈夫よ)
(つか慰める為に抱き締めるとかないわ。マジでロリコンなんすか志波隊長)
(お前ら目が怖いっ!!ロリコンとは何だロリコンとは!可愛い子を愛でて何が悪…っのおおおおおおおお!!!!)
(ロリコンが手ぇ出す前に、コレ使えなくしときましょうか)
(そうね、きっとそれが良いわ)
(ちょっ待て待て待て待て踏むな檜佐木止まれあぎゃあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!)
(…志波隊長、大丈夫ですかね…?何か悲鳴が…)
(多分隊長が男として終わるだけなんで大丈夫です)