「何でオメーら付き合わねぇんだ?」

「何ですか藪から棒に」

唐突な海燕さんの一言に二人で首を傾げる。酒飲んでただけなのに何でそんな話になったんだろう

「だってオメーらがやってんのは恋人がやる様な事だぜ?んな事やってんのに付き合わねぇとか気になんだろ」

『…そんな事してます?』

幾ら考えてもそれらしい事は浮かばない。修兵さんを見れば彼も同じ様で眉を寄せていた

「思い付かないんですけど」

「今やってる事見てから言えっつの」

海燕さんに言われ自分達を見る。修兵さんが僕の肩に手を置いてる、ただそれだけ。え、どれの事?
訊けば海燕さんは深々と溜息を吐いた

「はぁ……仕方ねぇか…無自覚天然バカップルだもんな。因みにそれは肩に手を回してるって言うんだよ。置いてねぇ」

『大して変わらない気が……』

「つかなんすかその嫌な呼び方」

『馬鹿は嫌です』

修兵さん馬鹿じゃないし。そう言えばお前もだろと修兵さんに笑われた。や、僕は馬鹿だと思うよ、頭悪いし

「どんな状況下でも冷静に最善を尽くせる。そんなお前が頭悪い訳ねぇだろ」

『買いかぶり過ぎ。僕はそんなに凄くない』

「お前は凄ぇよ。あんま自分を過小評価すんな」

『修兵さんの方が凄い』

「おだてても何も出ねぇぞ?」

「そこで惚気だすのかオメーら」

『「え?」』

首を傾げれば海燕さんが頭を抱えた。え、どうしたの?修兵さんも首を傾げた。

「アレか、二人で居れば何処でも幸せってか。ほんと付き合えよオメーら」

『やさぐれ海燕さんになってる』

「お前言う事可愛いな」

思い浮かんだのはやさぐれたパンダ。思った様に言えば修兵さんに頭を撫でられた。や、別に可愛くはないと思うんだが

「なんすか海燕さん、奥さんと上手くいってないんですか?」

「何でそうなる!?都とは上手くいってんよ!」

「なら何で俺らに付き合えだの何だの言うんですか。俺はてっきり奥さんと上手くいってないんだと……」

「オメーらが何時まで経っても煮えきらねぇからだろ!」

『うわ、逆ギレ』

「酔っ払いはめんどくせぇなぁ」

「ぶん殴るぞオメーら!!」

拳を振り上げた海燕さんを見て修兵さんと笑う。修兵さんを盾にして隠れれば頭を小突かれた

「ったく、早くくっつけよ?オメーらがくっつくのを待ってる奴等は多いんだからよ」





















居酒屋から修兵さんの部屋に行き、また修兵さんが酒を飲む。風呂に入った僕が近付けば呆れた様な顔をした

「何で俺の着流し着てんだよ。お前のあったろ?」

『気分』

修兵さんの紺色の着流しの裾を持って歩く。流石に大きいか。隣に座れば引き寄せられた

『…酒臭い』

「飲んでるからな」

左手で僕の肩を掴んだまま、御猪口を口許に運ぶ。ぼんやりとそれを眺めていれば灰色の瞳と目が合った

「飲むか?」

『今日はもう良い』

返せばそうかと呟いた修兵さんが唇を舐めた。視線は御猪口。さっきから酒の事考えてばっかりだな

『ねぇ修兵さん』

「ん?」

僕を見た修兵さんに、先程の海燕さんが散々聞かれた問いに関する疑問を投げ掛ける

『何で海燕さんはあんなに付き合えって言うんだろう』

「んー…何でだろうな」

目を細めて笑った辺り、この人何か判ってるんだろう。睨めばくつくつと笑われた

「なぁ独月、お前は俺に恋してるか?」

『恋?』

「まぁ、簡単に言えばそういうこった」

『……訳が判らない』

首を傾げても修兵さんは笑うだけ。もう少し判りやすく説明してくれないかな

「じゃあ、判りやすく教えてやる」

そう言った修兵さんの言葉と同時に────視界がぐるりと回転した
頭を打たない様に後頭部に回された手。映るのは天井と修兵さん。つまり、押し倒された?

『……え』

「たとえば」

すっと頬を撫でながら修兵さんが顔を近付けてきた。

「お前は俺にキスされても良いと思えるか?」

『………』

修兵さんの表情が何時もと違う。目が熱を帯びている。何これ、こんな修兵さん知らない
─────怖い
そう思った瞬間、ふっと修兵さんが笑みを浮かべた

「ほら、こういう事だ」

優しく笑った修兵さんが身を起こした。僕を起こし、額を合わせてくる

「恋愛感情と尊敬は似てるが別物だ。お前が俺に抱いてるもんは尊敬」

『………ん』

「もしお前が俺に恋愛感情を抱いたら…そん時は俺がお前を幸せにしてやる」

『……付き合うの?』

「まぁ、そうなるな」

背中に腕を回され至近距離で笑みを見る。もう怖くはない

『…じゃあ好きになったら一人にしないでね?』

「当たり前だろ。そうなったらもう離さねぇ」






恋愛感情と尊敬の違い






(あれ、僕が好きになったらって…修兵さんはどうなの?)

(さぁ?どうなんだろうな?)








独月が檜佐木に抱いてるのは尊敬の感情。でもたまに赤くなったりするから本人の言う様に恋愛感情は磨滅してない。
というか檜佐木限定で恋愛感情が反応します
それ以外には多分何されても何ともない