(バウント篇85話に独月が乱入)





「やっちまいな、リズ!」

「畏まりました!」

『ルキア!』

咄嗟に井上さんを庇ったルキアを撥ね飛ばし、藤凍月を構える。
しかし花の様なドール、リズは刀身を避けて僕に向かってきた

『──────────!!!』

「桜花副隊長!!」

「独月ちゃん!!」

「独月さん!!」

───────胸に、リズが突き刺さっていた。






















「独月ちゃんっ!しっかりして!」

「桜花副隊長!」

「独月さん!」

私を庇った朽木さんを庇った独月ちゃんが、お花みたいなドールの攻撃を受けて倒れた。目を閉じたまま独月ちゃんは動かない。ねぇ、大丈夫?目を開けて!

「くくくっ…さぁ、やれリズ」

コンテナの上から私達を見下ろしていたバウントの馬橋さんが指を鳴らした。
その瞬間、閉ざされていた独月ちゃんの目がぱちりと開いた

「独月ちゃんっ!」

『………………』

独月ちゃんはゆっくりと立ち上がって、上に居る馬橋さんを見上げた。その目は虚ろで、何時もの独月ちゃんとは違う

「さて…まずは君の名を教えてくれるかな?」

『……桜花…独月』

「独月か。良い名前だ」

笑った馬橋さんが目を細めた

「今からお前は新しい俺の奴隷だ」

「奴隷…?」

「さぁ、やれ」

『……畏まりました』

笑みを浮かべたまま、馬橋さんが指を鳴らした。
それに従う様に独月ちゃんが此方を振り向いて────────

「ぁ……う…!!」

「井上!!」

「織姫さん!?何をなさっているのですか独月さんっ!」

首を、絞められてる?
襟元を掴んで私の首を絞める独月ちゃんは無表情。あの胸の花は、馬橋さんのドール?

「何だこれは…!?貴様、桜花副隊長に何をした!?」

「あはははは!リズは体内に侵入して人間を操る事が出来る!つまりそいつは俺の操り人形なんだよ!やれ、独月!」

馬橋さんがそう言った瞬間、独月ちゃんが振りかぶり──────私を、宙に投げた

「魂魄を一つ喰っただけでこんなに変わるのかよ!凄ぇ!」

「井上!」

「織姫さんっ!」

「きゃああああ!!」

地面にぶつかる───────そう思ってぎゅっと目を瞑った時、身体がまた浮かぶ感じがした

「織姫さん、久し振り!」

「皆!」

助けてくれたのは盾舜六花の皆だった。皆が私の服を掴んで飛んでくれてる

「わぁ!私飛んでるっ!」

「馬鹿!んな事言ってる場合か!」

椿鬼くんに怒られた時、聞こえた朽木さんと蔵人さんの声

「井上!」

「避けて下さぁぁぁい!!」

『破道の三十一・赤火砲』

向かってきた炎を皆が避けてくれた。でも丸い炎がすぐ近くで爆発して、バランスを崩す

「さ…三天結盾!」

咄嗟に唱えれば地面スレスレでリリィ達が盾を作ってくれた。あ、危なかった…!
ほっと胸を撫で下ろしていれば朽木さんと蔵人さんが駆け寄ってきた。それと、独月ちゃんもゆっくりと此方に向かってきた

『破道の三十三・蒼火墜』

「三天結盾!……っきゃあ!」

「織姫さん!」

青い炎の勢いに負けて尻餅をつく。いたた…
心配してくれた二人に大丈夫と返し、立ち上がる

「良いぞ!リズ、独月の力を引き出せ!」

〔畏まりました!〕

明るい声が聞こえた瞬間、独月ちゃんが斬魄刀を構えた

『虚空に色付け───『藤凍月』』

「っまずい!まずいですぞ!」

「副隊長には敵わぬ!逃げるぞ!」

朽木さんがそう言った時、独月ちゃんが刀を振った

『縛裟氷映』

「三天結盾…きゃああああっ!!」

盾を出したけど押し負けて吹き飛ばされた。後ろに居た蔵人さんも巻き込んで地面に倒れる

「あ、ごめんなさい!」

「いえ」

「井上、蔵人……」

『破道の六十三・雷吼炮』

「うあっ!」

「朽木さん!」

私達に駆け寄ろうとした朽木さんを大きな雷が襲った。それに呑み込まれた朽木さんが壁に叩き付けられて、倒れる

「朽木さんしっかりして!朽木さん!」

気絶した朽木さんを抱き起こして、舜桜とあやめを出す

「双天帰盾──────私は拒絶する!」

「っ織姫さん!」

『破道の七十三・双蓮蒼火墜』

「三天結盾!!」

向かってきた青い炎を三天結盾で防ぐ。どうしよう、このままじゃ……

「孤天斬盾を使え!あいつをばっさり斬るしかねぇ!」

「駄目!独月ちゃんを斬るなんて出来ないよ!」

「んな事言ったって防御だけじゃ倒せねぇぞ!」

椿鬼くんの言葉に首を横に振る。それでも独月ちゃんを傷付けるなんて私には出来ないよ!

「ならばあのバウントを狙うのです!」

蔵人さんの言葉に顔を上げ─────また、首を横に振る

「バウントさんも人間だよ!斬るなんて駄目!」

「そんな事を言っていれば我々も独月さんもやられてしまいますぞ!奴は恐らく独月さんが肉体の限界を迎えるまで操るつもりです!」

「でも………!」

「ドールを使えない様に痛め付ければ良いのです!その後に捕らえて傷を治せば良いでしょう!」

蔵人さんに説得されて、渋々頷く。ほんとは馬橋さんも独月ちゃんも傷付けたくない。でも馬橋さんを止めなきゃ、独月ちゃんが操られたままになっちゃう

『はあっ!』

斬り掛かってきた独月ちゃんの腕を蔵人さんが捕まえた

「っ今です、織姫さん!」

「っ…孤天斬盾!私は拒絶するっ!!」

椿鬼くんを馬橋さんに向かわせた瞬間────銀の髪が現れた

『ぐっ……』

「独月ちゃん!?」

何で?今蔵人さんが捕まえてた筈なのに。太股に傷を負った独月ちゃんの後ろで馬橋さんが笑った

「俺が何も構えずにいた理由を考えなかったのか!?独月は俺を庇って死ぬ事も恐れない!」

『…散在する獣の骨、尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪、動けば風、止まれば空、槍打つ音色が虚城に満ちる』

嘘、じゃあどうすれば……
そう思った瞬間、独月ちゃんの掌が光った

『破道の六十三・雷吼炮』
























「もうそろそろ止めを差してやれ、独月」

『……畏まりました』

無表情の独月ちゃんがゆっくりと近付いてくる

「独月ちゃん、元に戻って!」

全身の痛みに立ち上がれない私に向かって、斬魄刀を振り上げた
─────やられるっ!
ぎゅっと目を瞑った時、金属音が響いた
…あれ、痛くない?

「………え…?」

「よぉ独月、何遊んでんだお前」

『………………』

目の前に立っていたのは袖のない死覇装の男の人。

「貴方は……」

「いきなり現れやがって…誰だてめぇ!」

「────護廷十四隊九番隊所属、副隊長の檜佐木修兵だ」























「随分死んだ目してるじゃねぇか独月」

藤凍月を弾けば独月が後ろに飛び退き、俺から距離を取った。
目は虚ろ。あいつの胸で根を張ってる花が怪しい。あれで独月が可笑しくなってると見るべきか

「これはあの男に何かされたと考えて良いんだよな?」

「独月ちゃんは馬橋さんのドールに操られてるの!!」

「操る、ねぇ…それがあいつの特殊能力か」

バウントのドールとかいう特殊能力。操るばかりで動かねぇ辺り、馬橋とかいうあの野郎は基本的には戦わねぇのか
そう踏んで馬橋に瞬歩で近付けば俺の前に独月が立ち塞がった
斬魄刀を振り下ろす訳にもいかず、距離を取る

「ちっ…盾にも使えますってか」

「はは!死神同士で潰し合いする気分はどうだ!?」

「悪趣味だなてめぇ」

「独月が壊れたら次はお前を使ってやるよ!」

「やなこった」

独月を壊れるまで使わせる気もねぇ。だがどうする?独月が操られてるこの状況じゃ馬橋に近付けねぇ。恐らく鬼道で捕まえても無理矢理破ってまた盾になる。
……洗脳が解けねぇ限り此方からは攻撃出来ねぇか

「独月、やっちまえ!」

『……ぁ……ぐ…っ』

「独月…?」

「独月ちゃん!」

馬橋が命令しても独月は動かなかった。ぎゅっと瞑っていた目を開く。意志の強い空と藤の瞳が現れた

〔ちょっと!言う事聞きなさいよー!〕

『……きれ…』

「え………?」

『…僕を……斬れ…!』

「そんな事出来ないよ!」

「…………………」

あいつはリズって野郎の支配に逆らって、今の言葉を伝えたのか。なら、俺は──────

「……判った」

「檜佐木さんっ!?」

静かに斬魄刀を構える。井上を目で制して、苦しむ独月を見た

「あいつは死神である誇りがある内に止めてくれと言ってんだ。ならそれを叶えるのが俺の役目だろ」

「でも…そんなの……っ!!」

「下がってな。あいつは俺がやる」

俺の目を見た独月が微笑んだ。かと思えば急に頭を抱え込む

『う…あ、あああああああああ!!』

〔まったくもー手間掛けさせないでよね!…ご主人様、コントロール回復致しました!〕

「そうか…やれ、独月!」

『……血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ』

あいつが唱えるのはあいつが得意な鬼道。詠唱してやがるし、下手に避ければ井上達に当たる

『破道の七十三・双蓮蒼火墜』

「縛道の八十一・断空!」

青い炎を防ぎ、一気に間合いを詰める。俺を映すのは感情のない瞳。

「大丈夫、安心しろ」

小さく笑って──────独月の胸に斬魄刀を突き立てた
その瞬間響く悲鳴と笑い声。それすらも無視して口を開く

「こいつは俺のもんだ。返して貰うぜ」

花を突き刺した斬魄刀に霊圧を流した。こいつが操られてるなら、俺の霊圧を流し込んでこいつの霊圧を増幅し、弾き出しちまえば良い。
ぐっと斬魄刀を持つ手に力を込めた時、悲鳴が上がった

「うぎゃあああああああああ!!何これぇ!気持ち悪いよぉ!!」

「リズ!」

悲鳴を上げた花が独月から抜け出した。それを見て斬魄刀を引き抜く。胸に倒れ込んできた独月に外傷はないか確かめた。うん、大丈夫みてぇだな。良かった

『……しゅーへー…さん…?』

「お帰り、良く頑張ったな独月」

『……ん…』

頭を撫でてやれば胸元に擦り寄ってきた独月がまた目を閉じる。魂魄にダメージ受けてんだ、そりゃキツいよな

「リズ!なら次はあいつだ!」

「前へ参りまーす!」

「させるかよ」

向かってきた花だか栗鼠だか判らねぇ物体を斬り捨てる。それは散り、花の種になった

「リズ!」

それを拾った馬橋が俺を睨んだ。悪ぃけど俺も怒ってんだよ。飛び掛かってきた馬橋に斬魄刀を振ろうとして──────受け止められた

「てめぇは…一之瀬か!」

「……此処は退かせて貰う」

黒髪の男が馬橋を気絶させ、瞬歩で消えた。辺りに霊圧がない事を確認してから斬魄刀を仕舞う。

「独月、大丈夫か?」

『…身体が怠い…』

横抱きにしながら話し掛ければ気怠げな表情で独月が答えた。

『でも……身体の中、あったかい……しゅーへーさんが居る…』

「霊圧注ぎ込んだからかもな」

ぼんやりした顔を井上達に向けた独月が眉を下げた

『ごめん……酷いことした…』

「大丈夫!独月ちゃんが無事で良かった!」

「ルキアさんも大した怪我じゃありませんし!」

『でも……』

言い淀む独月を見て、小さく笑う。それに気付いた独月が俺を見上げた

「お前は操られてたんだ。だから、助けて貰ったなら違う言葉があんだろ?」

そう言ってやれば独月が目を瞬かせ、それから小さく笑った

『───────ありがとう、皆』





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((どーいたしまして!))

(くくっ…どーいたしまして)