『ふぁあ……』

屋上で大きく伸びをする。此処は現世。僕は調査の為に現世に駆り出されていた
仕事は終わったしさっさと帰ろう。そう思った僕の頭にぽんと何かが乗せられた

「よ、隊長」

『檜佐木さん』

振り返ればにっと笑った修兵さん。何で瀞霊廷通信持って此処に居るんだろう。此処現世だよ?

「乱菊さんに届けるついでにどっかの小さい隊長サンを迎えに来た」

『それはそれはご苦労様』

それで目当ての乱菊さんにはもう会ったのかと訊けばまだだという返事。なら捜そうかと言っていた所で一つの霊圧が近付いて来た

「あら、九番隊コンビじゃなーい!」

何だその呼び方。
どうもと頭を下げればぎゅっと抱き締められた。真正面から行けば確実にあの爆乳による圧死計画が遂行されてしまうので胸に押し付けられる寸前で上を向く。若干首が痛いが息が出来ない苦しみよりはマシだ

「捜しましたよ乱菊さん。瀞霊廷の何処にも居ねぇし…はい。今月の瀞霊廷通信」

「あら、わざわざ持ってきてくれたの?悪いわねー」

『乱菊さんそろそろ解放して頂きたい』

「抱き心地良いからまだ駄目」

『何すかそれ』

離す気はさらさらないらしい乱菊さんに小さく溜息を吐く。ちらりと見れば修兵さんが頑張れって感じの目で僕を見てた。頑張れって何をだ

「よ、よぉ、何やってんだ?」

「あら、一護じゃない」

その声に乱菊さんが気を取られた隙に胸から抜け出す。修兵さんの方に避難すればお疲れさんと頭を撫でてくれた
彼方からやって来たオレンジ頭が僕達に向かって手を挙げる。だがその手の挙げ方が何だかぎこちない。どうしたんだろう

「三人で何してるんだ?」

「アタシは現世に少し用があってねー」

『僕は少し調べ物』

「俺は瀞霊廷通信届けに来たついでにコイツの迎えに」

それぞれの答えを返せば黒崎がちらちら此方を見ながらあーだのうーだの言っていた。かなり挙動不審。何だろう、何か言い辛い事っぽいけど

「あ、あのさ……乱菊さんと桜花にちょっと訊きてぇ事があるんだけどよ…」

「何?アタシ達に訊きたい事?」

『…僕に答えられる事なら』

取り敢えずそう返せばいよいよ黒崎が可笑しくなった
何か凄く焦ってる。冷や汗ヤバい。何、どんだけ聞き辛い事訊こうとしてんの?

「ど…どうやったら…乱菊さんみたく大きくなるんすかね…」

「大きくなる?」

きょとんとした乱菊さんが首を傾げた。良く判らなくて修兵さんを見れば彼は黒崎を凝視している。どうしたんだ修兵さん

「…ら…乱菊さんの…」

「アタシの?」

「…む………胸…みたいに…」

「ああ、アタシのおっぱいね!」

「『………………』」

今何て言ったあのオレンジ頭。あんなに挙動不審だったのはこれを訊く為?

「あああ…桜花にも訊きてぇ事が……」

『………何?』

まさかどうやったらそんなに胸が小さくなるのかとかじゃないよな。そんな事訊かれたら幾ら僕でもへこむぞ
黒崎を見ていれば不意に腕を引かれた

「おおおおおおおっぱいだとぉぉぉぉぉ!?」

『……修兵さんが壊れた…』

見れば何故か僕を後ろに隠す様にして修兵さんが立ち、そう叫んでいた。頭大丈夫か修兵さん。せめて胸と言え。おっぱいなんて言い方するから変態って言われるんだ

「てめぇまさか乱菊さんのおっぱいを狙って………はっ」

言いかけた修兵さんが不意に此方を振り返った。え、何?
只修兵さんを見ていればぎゅうっと抱き締められる。いやちょっとほんと何なの?

「てめぇ独月のおっぱいを大きくするつもりなのか…!!!」

『………はぁ?』

「は!?違ぇよ!!」

「てめぇ好みに独月を育てようったってそうは行かねぇぞ!」

いやその前に人の話訊けよ

『………修兵さん』

呼んでも反応はなし
駄目だこいつ自分の世界にのめり込んでる。
つか何で僕の胸の話になった。乱菊さんの胸についてだっただろ
ちらりと見れば黒崎が相当慌ててた。目が合って助けてくれっていうのがひしひしと伝わって来たが放置。この状態の修兵さんは止めるのが面倒臭い

「てめぇの様な変態野郎は俺が斬る!」

「話訊けよっ!」

「独月、お前は絶対に俺が護ってやるから安心しろ」

『いやちょっと』

修兵さんは僕を乱菊さんと下がらせて優しく笑った
いや勘違いだって。ちょっと黒崎見てよあの人超必死だから。僕の胸をどうこうとか微塵も思ってないから。てか胸を大きくする方法訊いただけで話が此処まで飛躍したあんたの頭を疑うわ

「刈れ――『風死』」

修兵さんが始解した。寧ろあんたの頭を刈って来い

「マジかよっ!」

何だか黒崎が凄く可哀想に見える。止めるべきか悩んでいれば隣で乱菊さんが笑った

「修兵も過保護よねー」

『過保護ってかもう暴走してませんかアレ』















「はぁ……はぁ…っ」

「…ほ…ほんと…話を…訊け…っ」

『はい終了』

膝に手を着いて肩で息をしている修兵さんの前に立つ。雷吼炮だけじゃなく滅多に使わない飛竜撃賊震天雷砲まで使うってどんだけ本気なんだこの人。

「ああ、なーんだ、その女の子が胸を大きくしたいって言ってるのね?」

息絶え絶えの黒崎から理由を訊いたらしい乱菊さんが笑った。ほらね、猛烈な勘違いじゃないか

『………修兵さん』

「……う…」

目逸らしたって駄目だよ。悪い事したって思ってるなら謝らないと

『今言わないといけない事は?』

「……悪かった…」

『言う相手が違うでしょ』

そう言えばばつが悪そうな顔で黒崎を見た。あの人治療してやらないと結構可哀想な事になってるな

「……誤解して悪かった…」

「い、いや…気にしてねぇよ」

そう言った黒崎は苦笑い。まぁあんな恥ずかしい事言わされて誤解されてボコられたらあんな顔したくもなるよね。
僕は修兵さんに傷がない事を確かめてから黒崎に近付いた

『黒崎、治療するから傷見せて』

「良いよこのぐらい。慣れてるし」

そう言った黒崎の頭を叩く。何すんだと騒ぐ黒崎を藤凍月の柄に手を置く事で黙らせた

『隊長命令だ。傷を見せろ』

「は……はい…」

若干黒崎が怯えた気がするが気にしない。さっさと従わないこいつが悪い。
治している時にふと黒崎が僕に何か訊こうとしていた事を思い出した

『そういえばさっき僕に訊こうとしてた事って?』

「ああ、桜花の髪の手入れ方法を教えて欲しいんだと」

『髪?』

そう言われて髪を見るが全然惹かれるものはない。てか手入れ自体してない。洗って自然乾燥するし
それを言えば黒崎が意外そうな顔で僕を見た

「そうなのか?でもすっげー綺麗だぞ?」

黒崎が僕の髪を撫でた。
――瞬間感じた寒気に反射的に飛び退く

「破道の七十三・双蓮蒼火墜!!」

「うわぁっ!?何すんだ檜佐木さんっ!!」

黒崎目掛けて青い炎が放たれる。今の寒気はあんたか。てか何してんの修兵さん


只今保護者暴走中



(てめぇやっぱり独月を狙ってやがるな!?)

(だから違ぇって!)

(修兵さんストップ)

(お前は下がってろ!)

(あんた達ほんと面白いわねー)

(刈れ――風死!)

(またかよっ!!)