その日も至って普通だった
あの男が此方に接触するまでは


「………?」

『どうしたの檜佐木さん』

斬魄刀を手に首を傾げる俺の隣に独月が来た。

「いや、気の所為なら良いんだけどよ…風死から何の反応も無いんだ」

『………風死から?』

「おう」

独月の手が風死の鞘に触れる。目を閉じて数秒。再び目を開いた独月が困惑顔で俺を見た

「…お前にも応えねぇか」

『………ん』

刀に触れれば斬魄刀と対話出来るこいつならと思ったんだが風死はこいつにも応えねぇらしい。独月が心なしか落ち込んだ顔をする。

「お前は悪くねぇんだから気にすんなよ」

『………ん』

頭を撫でてやればこくりと頷いた。藤凍月はどうなのか訊けば普段通りだと。つまりは風死が変なのか?
そう考えていればひらりと舞い込んで来た地獄蝶。窓から入って来たそれは独月の剥き出しの左肩に留まった

[双極の丘にて待つ。斬魄刀の異常を知りたくば来い]

『……斬魄刀の異常?』

首を傾げる独月。異常って事は他の奴等も風死みたいに可笑しくなってやがるのか?

「行こうぜ、隊長」

『ん』







「斬魄刀が死神から解放されるべき時が来た」

何だあの男。死神に包囲されているにも関わらず一切表情を変えない男に違和感を覚える。

「…貴様は」

ふと男と目が合った。
藤凍月が目を合わせるなと叫ぶ。目を逸らして一歩下がれば修兵さんが一歩前に出て僕を庇う様にして立った

「こいつに何か用かよ」

「………ああ」

男がすっと手を挙げた。すると男の周りに現れた集団。誰だと見ていれば一人見覚えのある武器を持つ男が目に入った。
変則的な形をした黒い鎌。隣に立った修兵さんをちらりと見る。彼はこくりと頷いた。やっぱり。あれは風死だ

「斬魄刀が死神より解き放たれる事を今此処に宣言する!」

その言葉を合図にする様に、謎の集団が襲い掛かって来た

「隊長下がってろ!」

修兵さんが斬魄刀を構えた
他の隊長達も斬魄刀を構え始める。いや隊長に下がってろって言うのもどうかと思うよ修兵さん。僕一応隊長なのに

『!』

不意に背後から聞こえた声に慌てて振り返る。長く伸びた爪の一撃を藤凍月で受け止めれば男は眉を寄せた

「貴様の斬魄刀は……」

『………?』

ぎちぎちと押し合っていれば修兵さんの声が聞こえた

「てめぇっ!」

「てめぇの相手は俺だ!」

此方に向かって来ようとした修兵さんに風死を持った男が斬り掛かる。修兵さんは慌ててそれを受け止めた

「貴様自身を使えば良いだけの話か」

不意に聞こえた呟き。
何だ、と思っていれば男の手が僕に向かって伸ばされた。

『!?』

それを防ごうとするも身体が動かない。伸ばされた手は僕の胸にずぶずぶと吸い込まれた

『…ぅ…あ…っ!』

痛みと圧迫感に襲われ眉を寄せる。遠くから聞こえる修兵さんの声。何も出来ないまま意識は強制的に闇へ沈められた



斬魄刀の反乱



(独月っ!独月っ!!)

(無駄だ。貴様の声は届かない)