夜の酒
『………?』
声が聞こえる。声、というか旋律?小さく口ずさむ様なそれに吸い寄せられるかの如く近付いていく。
「……独月?」
『……修兵さん』
庭に続く襖を開ければ修兵さんが此方に顔を向けた。修兵さんが歌ってたのか
「どうした?目ぇ覚めちまったのか?」
『ん』
手招きされ隣に座る。彼は手に握っていた御猪口を口許に運んだ。また酒飲んでたのか
『肝臓駄目になるよ』
「徳利一本分しか飲んでねぇよ」
そう言った修兵さんが徳利を振った。まだ入っているらしく液体が揺れる音がする
『毎日飲んでない?』
「これ俺の栄養源だから」
『嘘吐け』
というかそんなのがあってたまるか。酒が栄養源とか完全に飲兵衛の言い分だ。飲み過ぎで身体壊しても知らないから
そう言えば修兵さんが目を細めた
「そうなる前にお前が止めてくれるんだろ?」
『……どうかな』
「くくっ、期待しとく」
くっと御猪口を煽った修兵さんを眺めつつその肩に寄り掛かる。酒を飲んでるからか温かい
「冷えてんな…此処に来い」
『ん』
ぽんぽんと叩いた膝の上に移動する。寄り掛かれば受け止められた
『此処一番安心する……』
「お前専用の場所だしな?」
抱き付きながら呟けば修兵さんはそう言って笑った。え、僕専用なの?首を傾げれば頭を撫でられた
「他の奴をホイホイ抱き締めると思うか?」
『タラシなら有り得る』
「うわ、俺今傷付いた」
わざとらしく泣き真似をした修兵さんが僕の首もとに顔を埋めてきた
『何してんの修兵さん』
「傷付いた心を独月チャンに癒して貰ってる」
『傷付けた相手に癒して貰うってどうなの』
「そこら辺はスルーしろ。気にしたら負けだ」
『何に負けんの?』
頭をぐりぐりと押し付けてくる修兵さんをぎゅっと抱き締める。腰細いな。案外ポキッといくんじゃないか?
「安心しろ。お前の力じゃ俺の骨は折れねぇ」
『……何故』
「お前の考えなんか大体判る。それにお前の腕力は弱い。藤凍月で腕力強化したり速度で誤魔化してもその細腕の力なんざタカが知れてる」
『……腕力強化知ってたの?』
「ああ。お前が俺を横抱き出来る事自体可笑しいからな、藤凍月に訊いた」
マジか。
てか僕もこの間まで腕力強化の事知らなかったのに。藤凍月何も言わなかったし
「独月の匂いがする……」
『そりゃ僕だから』
擦り付いてきた修兵さんに小さく笑う。頭を撫でて僕も修兵さんの首もとに顔を埋める
『修兵さんの匂いがする』
「そりゃ俺だからな」
同じ様に返してきた修兵さんに笑いながら擦り寄っていれば、ふと甘い香りが鼻についた。何だこの匂い。修兵さんの匂いじゃない
『甘い匂いがする』
「あ?」
『酷いわ、私を騙してあの女と一緒に居たのね』
「おい何処でそんなの覚えてきた」
『昨日のドラマ』
因みに旦那に浮気された奥さんが言ってた。そう言うと修兵さんが溜息を吐いた
「三角関係のアレか」
『ん。裕子が包丁握ったとこで終わった』
「ああ…奥さんの方な。見るのは良いが言葉を真似するんじゃねぇ」
『そんな事あの女にも言ったんでしょ。私は騙されないわ』
「棒読みすんな。しかもこれ他に言っても大して支障はねぇだろ」
『確かに』
ただ思い出したから言っただけで意味はない。てか何でこうなった……ああ、修兵さんから甘い匂いがしたからか
『修兵さん香水甘い匂いの持ってたっけ』
「いや、持ってねぇよ。そんなに甘い匂いがすんのか?」
『ん』
身体を離せば修兵さんが自分の匂いを嗅ぎ始めた。腕の匂いを嗅ぎ、着流しの胸元を引っ張った修兵さんがああと声を出した
「判った」
『ほんと?』
「おう。原因目の前に居るし」
『?』
顎で指されたのは僕。…え、僕?念の為後ろを見ればあるのは庭。植物の匂いじゃなかった気がするし…やっぱり僕か
『僕?』
「ん。何時もくっ付いて寝るだろ。だからじゃね?」
『あー…』
てか僕そんなに甘い匂いするのか。自分の匂いを嗅いでみるが良く判らない。修兵さんを見れば目を細めて笑っていた
「まぁ自分の匂いなんて判んねぇよな」
『僕そんなに甘い匂いする?』
「おう。すっげぇ良い匂い」
御猪口を煽った修兵さんが僕を抱き寄せた。僕の耳許で低い声で囁く
「喰っちまいてぇくらいだ」
『…赤ずきんじゃないから素直に喰われないよ、狼サン』
てか無駄に良い声だよね修兵さんって。きっとその声で甘い言葉囁けば女の人は落ちるよ
そんな事を考えていればくつくつと修兵さんが笑った
「銃持ってるし、赤ずきんで猟師か?」
『そもそも赤ずきんじゃない気がする』
「狼が一番喰いてぇのは赤ずきんだから、お前は赤ずきんだ」
『てか赤ずきんが猟師だったら狼撃って終わり?』
「お前に俺が撃てるか?」
『無理』
「即答かよ。だったら赤ずきんが喰われて終わりだな」
え、修兵さん僕を食べるのか。吃驚していればまた修兵さんが笑った
「喰われるのは予想外か?」
『ん』
「もしかしたら喰わずにずっと傍に置いとくかもな?まぁ狼じゃねぇから判んねぇけど」
赤ずきんは喰えるのか
(あ、此処修兵さんの匂いがする)
(嬉しそうだな)
(ん。匂いがすれば何時でも修兵さんと一緒に居るみたいだから)
(…喰うぞ)
(え)
声が聞こえる。声、というか旋律?小さく口ずさむ様なそれに吸い寄せられるかの如く近付いていく。
「……独月?」
『……修兵さん』
庭に続く襖を開ければ修兵さんが此方に顔を向けた。修兵さんが歌ってたのか
「どうした?目ぇ覚めちまったのか?」
『ん』
手招きされ隣に座る。彼は手に握っていた御猪口を口許に運んだ。また酒飲んでたのか
『肝臓駄目になるよ』
「徳利一本分しか飲んでねぇよ」
そう言った修兵さんが徳利を振った。まだ入っているらしく液体が揺れる音がする
『毎日飲んでない?』
「これ俺の栄養源だから」
『嘘吐け』
というかそんなのがあってたまるか。酒が栄養源とか完全に飲兵衛の言い分だ。飲み過ぎで身体壊しても知らないから
そう言えば修兵さんが目を細めた
「そうなる前にお前が止めてくれるんだろ?」
『……どうかな』
「くくっ、期待しとく」
くっと御猪口を煽った修兵さんを眺めつつその肩に寄り掛かる。酒を飲んでるからか温かい
「冷えてんな…此処に来い」
『ん』
ぽんぽんと叩いた膝の上に移動する。寄り掛かれば受け止められた
『此処一番安心する……』
「お前専用の場所だしな?」
抱き付きながら呟けば修兵さんはそう言って笑った。え、僕専用なの?首を傾げれば頭を撫でられた
「他の奴をホイホイ抱き締めると思うか?」
『タラシなら有り得る』
「うわ、俺今傷付いた」
わざとらしく泣き真似をした修兵さんが僕の首もとに顔を埋めてきた
『何してんの修兵さん』
「傷付いた心を独月チャンに癒して貰ってる」
『傷付けた相手に癒して貰うってどうなの』
「そこら辺はスルーしろ。気にしたら負けだ」
『何に負けんの?』
頭をぐりぐりと押し付けてくる修兵さんをぎゅっと抱き締める。腰細いな。案外ポキッといくんじゃないか?
「安心しろ。お前の力じゃ俺の骨は折れねぇ」
『……何故』
「お前の考えなんか大体判る。それにお前の腕力は弱い。藤凍月で腕力強化したり速度で誤魔化してもその細腕の力なんざタカが知れてる」
『……腕力強化知ってたの?』
「ああ。お前が俺を横抱き出来る事自体可笑しいからな、藤凍月に訊いた」
マジか。
てか僕もこの間まで腕力強化の事知らなかったのに。藤凍月何も言わなかったし
「独月の匂いがする……」
『そりゃ僕だから』
擦り付いてきた修兵さんに小さく笑う。頭を撫でて僕も修兵さんの首もとに顔を埋める
『修兵さんの匂いがする』
「そりゃ俺だからな」
同じ様に返してきた修兵さんに笑いながら擦り寄っていれば、ふと甘い香りが鼻についた。何だこの匂い。修兵さんの匂いじゃない
『甘い匂いがする』
「あ?」
『酷いわ、私を騙してあの女と一緒に居たのね』
「おい何処でそんなの覚えてきた」
『昨日のドラマ』
因みに旦那に浮気された奥さんが言ってた。そう言うと修兵さんが溜息を吐いた
「三角関係のアレか」
『ん。裕子が包丁握ったとこで終わった』
「ああ…奥さんの方な。見るのは良いが言葉を真似するんじゃねぇ」
『そんな事あの女にも言ったんでしょ。私は騙されないわ』
「棒読みすんな。しかもこれ他に言っても大して支障はねぇだろ」
『確かに』
ただ思い出したから言っただけで意味はない。てか何でこうなった……ああ、修兵さんから甘い匂いがしたからか
『修兵さん香水甘い匂いの持ってたっけ』
「いや、持ってねぇよ。そんなに甘い匂いがすんのか?」
『ん』
身体を離せば修兵さんが自分の匂いを嗅ぎ始めた。腕の匂いを嗅ぎ、着流しの胸元を引っ張った修兵さんがああと声を出した
「判った」
『ほんと?』
「おう。原因目の前に居るし」
『?』
顎で指されたのは僕。…え、僕?念の為後ろを見ればあるのは庭。植物の匂いじゃなかった気がするし…やっぱり僕か
『僕?』
「ん。何時もくっ付いて寝るだろ。だからじゃね?」
『あー…』
てか僕そんなに甘い匂いするのか。自分の匂いを嗅いでみるが良く判らない。修兵さんを見れば目を細めて笑っていた
「まぁ自分の匂いなんて判んねぇよな」
『僕そんなに甘い匂いする?』
「おう。すっげぇ良い匂い」
御猪口を煽った修兵さんが僕を抱き寄せた。僕の耳許で低い声で囁く
「喰っちまいてぇくらいだ」
『…赤ずきんじゃないから素直に喰われないよ、狼サン』
てか無駄に良い声だよね修兵さんって。きっとその声で甘い言葉囁けば女の人は落ちるよ
そんな事を考えていればくつくつと修兵さんが笑った
「銃持ってるし、赤ずきんで猟師か?」
『そもそも赤ずきんじゃない気がする』
「狼が一番喰いてぇのは赤ずきんだから、お前は赤ずきんだ」
『てか赤ずきんが猟師だったら狼撃って終わり?』
「お前に俺が撃てるか?」
『無理』
「即答かよ。だったら赤ずきんが喰われて終わりだな」
え、修兵さん僕を食べるのか。吃驚していればまた修兵さんが笑った
「喰われるのは予想外か?」
『ん』
「もしかしたら喰わずにずっと傍に置いとくかもな?まぁ狼じゃねぇから判んねぇけど」
赤ずきんは喰えるのか
(あ、此処修兵さんの匂いがする)
(嬉しそうだな)
(ん。匂いがすれば何時でも修兵さんと一緒に居るみたいだから)
(…喰うぞ)
(え)