無闇に抱き着くのはやめましょう
『上がったよ』
「おー」
声はするのに定位置のソファには姿はない。あれ、何処だ?
見れば奥の部屋の畳の上に声の主は転がっていた
『暑いの?』
「おー……」
『夏生まれの癖に』
「ジメジメした暑さは駄目なんだよ……」
ぐてーっと伸びた半裸の修兵さんが怠そうにそう言った。ジメジメしてるのは梅雨だし仕方ない。クーラーを点ければ仰向けのまま修兵さんが此方を見た
僕を見上げてる状態だから、喉が仰け反った様に出ている。何で喉仏ってあんなに出てるんだろう。修兵さんに近付き、喉に手を伸ばす
「独月?」
不思議そうな修兵さんを無視してぐっと喉仏を押してみた
「ぐえっ」
『……引っ込まない』
修兵さんが蛙が潰れた様な声を出して咳き込んだ。そして涙目になって僕を睨む
「いきなり何すんだよ」
『喉仏は引っ込むのか試したかった』
「…お前はたまに全力でやらかすよな」
『そう?』
「まぁ良いけど……」
溜息を吐いて修兵さんは目を閉じた。何でだ。首を傾げつつ、鎖骨を掴んでみる。綺麗だよなこの人の鎖骨。撫でていれば修兵さんが目を開けた
「どうした?俺の身体なんか見慣れてんだろ」
『触りたくなった』
「そ。まぁ良いか…」
修兵さんがまた目を閉じた。左鎖骨の桜の刺青をなぞったりしても無反応。暑くて怠いんだろう。鼻を摘まむとぱちりと目を開けた
「鼻摘まむな」
『ごめん』
「つか水垂れてる。髪ちゃんと拭け」
『面倒』
「はぁ……ったく」
伸ばされた手が首に掛けていたタオルを掴み、僕の髪を拭き始めた。人にされるのって何か気持ち良いんだよね。目を細めれば修兵さんが笑った
「気持ち良いのか?」
『ん』
「判りやすいな、お前は」
『そう?』
「おう」
判りにくいなら腐る程言われた事あるけど判りやすいは初めてだ。目を瞬かせれば修兵さんがくつくつと笑った
「俺は昔からずっとお前の事判りやすい奴だって思ってんだけど?」
『……知らなかった』
「まぁ言った事はねぇな」
修兵さんにとっては判りやすいのか。長い事一緒に居るから?だとしたらお爺ちゃんとお婆ちゃんもそんな風に思ってる?
「良し、乾いた」
『ありがと』
「どーいたしまして」
優しく笑った修兵さんがまた目を閉じた。眠いのかな。
胸板をべちべちと叩く。硬い。腹筋凄いな。てか腰細い
『修兵さんって綺麗だよね』
僕の言葉に修兵さんが目を開けた
「お前……男に綺麗ってどうなんだ。つかんな事初めて言われた」
『そうなの?』
「おー」
頷いた修兵さんが僕の頭を撫でた。こんな風に手大きくなりたかったな
「で?何で綺麗だなんて思ったんだ?」
『鍛えられてるのにしなやかだから』
「ふぅん……」
未だに納得いってなさそうな修兵さんが返事をした。綺麗だと思うんだけどな。無駄な筋肉もなさそうだし
そう思いながら眺めていて、ふと思った
『…阿散井と吉良はどんななんだろう』
「は?」
『大前田は確実にアウト……斑目さんとかも凄そう』
「………………」
ぼんやりと呟いていた僕は、この時の修兵さんの表情に気付かなかった
「─────────という訳で、脱げ」
「「は?」」
至って真面目な表情の檜佐木さんに戸惑う。昼過ぎ、急に阿散井くんと共に呼び出されたかと思えば檜佐木さんは急に昨日の話を始めた。そして、さっきの一言
「あの先輩…何で脱がねぇといけないんすか?」
「馬鹿野郎話聞いてなかったのかてめぇは!」
阿散井くんが質問すれば檜佐木さんは眉を寄せた。そして自分を親指で差し、一言
「独月に俺が一番だって事を教える為だ!」
「「………………」」
何だ今のドヤ顔。物凄くイラッと来たんだけど。え、要は桜花隊長といちゃつきたいから僕らに脱げと?ふざけてるのかこの人…いや、本気だ。大真面目にこんなふざけた事言ってる
「判ったなら脱げ。上だけ脱いで待機だ」
そう言った檜佐木さんが上衣を脱いだ。自然と眺め、ふとある一点で目が留まる
「檜佐木さん、それって……」
「あ?これか?」
檜佐木さんの左鎖骨の辺りに刻まれている刺青。あれあの人の頬に同じのがある気がするんだけど気の所為かな。
「独月の桜の痣だ。結構前に阿近さんに彫って貰ったんだけどな」
「………………」
この人もう頭を四番隊に診て貰った方が良いんじゃないか?明らかに桜花病に掛かってる。末期だ、きっと治らない
「はー……めんどくせ…」
ぶちぶち文句を言いながら阿散井くんが上衣を脱いだ。そして二人から視線を寄越される。判ったよ、脱げば良いんでしょ。
深々と溜息を吐いて脱ぐ。今思ったんだけど隊首室で男三人で上半身裸ってどうなんだ。軽く不審なんじゃ………
そう考えた時、扉が開いた
『ただいま……って三人共何してんの』
「あら、あんた達何脱いでんのよ?」
しまった。桜花隊長だけじゃなくて松本さんまで居る。これは非常にまずい。不思議そうな桜花隊長の隣で松本さんが素早くカメラのシャッターを切った。ほらやっばり、ロクな事しない
「独月」
『ん?』
「良いか?今から正直に答えてくれ」
『?……判った』
桜花隊長の肩を掴んだ檜佐木さんが真剣な表情で、彼女に言った
「俺と阿散井と吉良……どの身体が一番好きだ?」
『…………はぁ?』
大真面目に問われ、桜花隊長がぽかんと口を開けた。ええ、普通はその反応が正しいです。でも檜佐木さんを暴走させたのは貴女です
「何よ、ちびさぎ隊長に選ばせるの?」
「はい。乱菊さんも選びます?」
「んー…アタシはねー……」
言いながら松本さんはカメラのシャッターを切り続ける。この人選ぶ気ないだろ。ただ悩んでるフリして写真撮ってるだけだ
「吉良は白過ぎるし…」
「…人が気にしてる事を……」
僕の見た目が弱そうに見えるのぐらい知ってるよ!ていうかそれ気にしてるんだから真正面から言わないでくれ!
「ドンマイ、吉良」
「その気遣いも要らない……!」
阿散井くんがぽんと僕の肩を叩いた。良いよね君は背も高くてがっしりしてて。僕なんか幾ら鍛えても見た目の所為でひ弱そうってすぐ言われるんだから
「恋次か修兵っていったらどっちが良いかしらねー……」
「…あの、写真撮り過ぎじゃないっすか?」
「何言ってんのよ!女性死神協会の活動費は重要よ?」
ああ、やっぱり売るのか。もうどうでも良いよ。好きにしてくれ。溜息を吐けば視界に銀色が見えた
『ごめん吉良。また修兵さんが良く判らん事を……』
「いえ、大丈夫です」
寧ろ貴女絡みで檜佐木さんが暴走するのにも慣れました。桜花隊長が困った様に微笑した
『確かに色は白いけど、十分鍛えられてる。だから気にする事はないと思う』
「はは…ありがとうございます」
あの、桜花隊長。後ろから僕を射殺しそうな視線で睨むあの人をどうにかしてくれませんかね。此方物凄く睨んでるんですけど。ピンポイントで僕にだけ殺気飛ばしてきてるんですけど
僕の願いが通じたのか、桜花隊長は僕から離れた。そして隣の阿散井くんに向かう。それと共に移動する殺気。あ、阿散井くんが顔引き攣らせた。発生源を見て、僕を見る。僕はゆっくりと頷いた。そうだよ、そこで松本さんに写真撮られてる人がその殺気を送ってるんだよ
「あの、ちびさぎ隊長……」
『お前随分がっしりしてるな。何だこの筋肉…』
阿散井くんは特にがっしりしてるからなのか、桜花隊長が興味を持った。彼の周りをぐるぐる回る。それを見る檜佐木さんがますます眉間の皺を増やした。多分僕を見ていた時より殺気と視線は酷い。阿散井くんは冷や汗をだらだら流している。目で助けてくれと訴えられた。だから僕は笑顔で彼に向かって口パクする。どんまい。
ぐるぐる回っていた桜花隊長が突如両手を広げ、阿散井くんに抱き着いた
『骨格が違うのかな……』
「いやあのちびさぎ隊長俺マジで殺される…ッ!!」
普通なら顔を赤くするんだろうけど彼は真っ青になっている。原因は無言で暗器を握った九番隊の副隊長。松本さんはレアだわと騒いで阿散井くんと桜花隊長を撮っている。
『うーん……やっぱり骨格…?それとも筋肉の付き方…?』
腰やら背中やらぺたぺた触って桜花隊長は首を傾げている。阿散井くんはもう涙目。多分殺気が怖いんだろう。松本さんは笑顔で写真撮ってる
散々阿散井くんで遊んだと思ったら、桜花隊長は僕の方に来た。あ、やばいこの人絶対やらかす。口を開く前に、目の前に来た銀髪が引っ付いてきた
『む?吉良も修兵さんとは違う……』
「そ、そうですか……そろそろ檜佐木さんに行った方が良いんじゃ…」
『吉良の方が薄いな』
駄目だ、この人聞いてない。ていうかこの人は自分が女性だって事をもう少し意識して欲しい。檜佐木さん馬鹿な所を除けば見た目も中身も良いんだから。そう考えていると改めて自分の状況を認識してしまい、恥ずかしくなった。途端に強くなる殺気。思わずその殺気の濃さに青ざめる。
『ぎゅってしたら折れそう』
そう言った桜花隊長が実行した。
何でこの人普段は頼りになるのに時々全力でやらかすんだろう。知ってますか、貴女がやらかすとあの人暴走するんです。今もまたビシバシ僕に殺気が向けられてます。多分僕と阿散井くんは生きて帰れません。笑顔で僕らを撮ってる松本さんもこの殺気を向けられたら良いのに
投げやりに考えていたら桜花隊長が僕から離れた。
やっと解放された…!床に座り込んだ阿散井くんの隣で小さな銀髪を目で追う。彼女は檜佐木さんの傍に行き、首を傾げている
『修兵さん?』
「……んだよ」
『何で拗ねてる?』
「…別に」
殺気を引っ込めて、口をへの字にしている檜佐木さんを桜花隊長は不思議そうに眺めていた。かと思えば檜佐木さんの身体に飛び込んだ。目を瞬かせつつ檜佐木さんは小さな身体を受け止めた
胸に顔を埋めたまま、桜花隊長が言った
『やっぱり修兵さんが良い』
「……!…そーかよ」
まだ不機嫌なフリをしたいらしいけど檜佐木さん、顔にやけてます。桜花隊長の一言が相当嬉しかったらしい。尻尾振ってる大型犬に見える
『何で拗ねてる?』
「……判んねぇなら良い」
「ちびさぎ隊長が吉良と恋次に抱き着いたからよねー?」
「ら、乱菊さんっ!」
『?それで拗ねてんの?』
もぞもぞと動いた桜花隊長が檜佐木さんを見た。檜佐木さんは赤くなった顔を背けた。バラした松本さんはニヤニヤしながらシャッターを切った
『……やきもち?』
「……悪ぃかよ」
『別に?』
小さく笑った桜花隊長がまた檜佐木さんをぎゅっと抱き締めた。それに応える様に檜佐木さんも桜花隊長の背に腕を回す。さっきまでの不機嫌は消し飛んでいる。
人前でいちゃつきだした二人を見ながら、僕は隣の阿散井くんに声を掛けた
「…これってさ」
「何だよ吉良…」
「最初から判りきってたオチじゃないの…?」
やらかすとこうなる
(もう他の奴にホイホイ抱き着くなよ?)
(はいはい。修兵さんにしかしないよ)
(なら良い。…俺が他の女にこうしてたらどうする?)
(凍らす)
(お前やきもちどころか殺意になんのか)
(死にたいならどうぞ)
(やらねぇよ。お前にしかこんな事しねぇ)
(……そ)
(くくっ、照れてんの?)
(…違う)
(やっぱりこの組み合わせがしっくり来るわねー)
(阿散井くん、今の内にこっそり帰ろう)
(そ、そうだな…)
(阿散井に吉良、お前らちょっと話があるから残ってろ)
((あ、死んだ))
純粋に抱き心地確認の為に抱き着いた独月の所為でこの後阿散井と吉良は檜佐木にシメられます。超理不尽
「おー」
声はするのに定位置のソファには姿はない。あれ、何処だ?
見れば奥の部屋の畳の上に声の主は転がっていた
『暑いの?』
「おー……」
『夏生まれの癖に』
「ジメジメした暑さは駄目なんだよ……」
ぐてーっと伸びた半裸の修兵さんが怠そうにそう言った。ジメジメしてるのは梅雨だし仕方ない。クーラーを点ければ仰向けのまま修兵さんが此方を見た
僕を見上げてる状態だから、喉が仰け反った様に出ている。何で喉仏ってあんなに出てるんだろう。修兵さんに近付き、喉に手を伸ばす
「独月?」
不思議そうな修兵さんを無視してぐっと喉仏を押してみた
「ぐえっ」
『……引っ込まない』
修兵さんが蛙が潰れた様な声を出して咳き込んだ。そして涙目になって僕を睨む
「いきなり何すんだよ」
『喉仏は引っ込むのか試したかった』
「…お前はたまに全力でやらかすよな」
『そう?』
「まぁ良いけど……」
溜息を吐いて修兵さんは目を閉じた。何でだ。首を傾げつつ、鎖骨を掴んでみる。綺麗だよなこの人の鎖骨。撫でていれば修兵さんが目を開けた
「どうした?俺の身体なんか見慣れてんだろ」
『触りたくなった』
「そ。まぁ良いか…」
修兵さんがまた目を閉じた。左鎖骨の桜の刺青をなぞったりしても無反応。暑くて怠いんだろう。鼻を摘まむとぱちりと目を開けた
「鼻摘まむな」
『ごめん』
「つか水垂れてる。髪ちゃんと拭け」
『面倒』
「はぁ……ったく」
伸ばされた手が首に掛けていたタオルを掴み、僕の髪を拭き始めた。人にされるのって何か気持ち良いんだよね。目を細めれば修兵さんが笑った
「気持ち良いのか?」
『ん』
「判りやすいな、お前は」
『そう?』
「おう」
判りにくいなら腐る程言われた事あるけど判りやすいは初めてだ。目を瞬かせれば修兵さんがくつくつと笑った
「俺は昔からずっとお前の事判りやすい奴だって思ってんだけど?」
『……知らなかった』
「まぁ言った事はねぇな」
修兵さんにとっては判りやすいのか。長い事一緒に居るから?だとしたらお爺ちゃんとお婆ちゃんもそんな風に思ってる?
「良し、乾いた」
『ありがと』
「どーいたしまして」
優しく笑った修兵さんがまた目を閉じた。眠いのかな。
胸板をべちべちと叩く。硬い。腹筋凄いな。てか腰細い
『修兵さんって綺麗だよね』
僕の言葉に修兵さんが目を開けた
「お前……男に綺麗ってどうなんだ。つかんな事初めて言われた」
『そうなの?』
「おー」
頷いた修兵さんが僕の頭を撫でた。こんな風に手大きくなりたかったな
「で?何で綺麗だなんて思ったんだ?」
『鍛えられてるのにしなやかだから』
「ふぅん……」
未だに納得いってなさそうな修兵さんが返事をした。綺麗だと思うんだけどな。無駄な筋肉もなさそうだし
そう思いながら眺めていて、ふと思った
『…阿散井と吉良はどんななんだろう』
「は?」
『大前田は確実にアウト……斑目さんとかも凄そう』
「………………」
ぼんやりと呟いていた僕は、この時の修兵さんの表情に気付かなかった
「─────────という訳で、脱げ」
「「は?」」
至って真面目な表情の檜佐木さんに戸惑う。昼過ぎ、急に阿散井くんと共に呼び出されたかと思えば檜佐木さんは急に昨日の話を始めた。そして、さっきの一言
「あの先輩…何で脱がねぇといけないんすか?」
「馬鹿野郎話聞いてなかったのかてめぇは!」
阿散井くんが質問すれば檜佐木さんは眉を寄せた。そして自分を親指で差し、一言
「独月に俺が一番だって事を教える為だ!」
「「………………」」
何だ今のドヤ顔。物凄くイラッと来たんだけど。え、要は桜花隊長といちゃつきたいから僕らに脱げと?ふざけてるのかこの人…いや、本気だ。大真面目にこんなふざけた事言ってる
「判ったなら脱げ。上だけ脱いで待機だ」
そう言った檜佐木さんが上衣を脱いだ。自然と眺め、ふとある一点で目が留まる
「檜佐木さん、それって……」
「あ?これか?」
檜佐木さんの左鎖骨の辺りに刻まれている刺青。あれあの人の頬に同じのがある気がするんだけど気の所為かな。
「独月の桜の痣だ。結構前に阿近さんに彫って貰ったんだけどな」
「………………」
この人もう頭を四番隊に診て貰った方が良いんじゃないか?明らかに桜花病に掛かってる。末期だ、きっと治らない
「はー……めんどくせ…」
ぶちぶち文句を言いながら阿散井くんが上衣を脱いだ。そして二人から視線を寄越される。判ったよ、脱げば良いんでしょ。
深々と溜息を吐いて脱ぐ。今思ったんだけど隊首室で男三人で上半身裸ってどうなんだ。軽く不審なんじゃ………
そう考えた時、扉が開いた
『ただいま……って三人共何してんの』
「あら、あんた達何脱いでんのよ?」
しまった。桜花隊長だけじゃなくて松本さんまで居る。これは非常にまずい。不思議そうな桜花隊長の隣で松本さんが素早くカメラのシャッターを切った。ほらやっばり、ロクな事しない
「独月」
『ん?』
「良いか?今から正直に答えてくれ」
『?……判った』
桜花隊長の肩を掴んだ檜佐木さんが真剣な表情で、彼女に言った
「俺と阿散井と吉良……どの身体が一番好きだ?」
『…………はぁ?』
大真面目に問われ、桜花隊長がぽかんと口を開けた。ええ、普通はその反応が正しいです。でも檜佐木さんを暴走させたのは貴女です
「何よ、ちびさぎ隊長に選ばせるの?」
「はい。乱菊さんも選びます?」
「んー…アタシはねー……」
言いながら松本さんはカメラのシャッターを切り続ける。この人選ぶ気ないだろ。ただ悩んでるフリして写真撮ってるだけだ
「吉良は白過ぎるし…」
「…人が気にしてる事を……」
僕の見た目が弱そうに見えるのぐらい知ってるよ!ていうかそれ気にしてるんだから真正面から言わないでくれ!
「ドンマイ、吉良」
「その気遣いも要らない……!」
阿散井くんがぽんと僕の肩を叩いた。良いよね君は背も高くてがっしりしてて。僕なんか幾ら鍛えても見た目の所為でひ弱そうってすぐ言われるんだから
「恋次か修兵っていったらどっちが良いかしらねー……」
「…あの、写真撮り過ぎじゃないっすか?」
「何言ってんのよ!女性死神協会の活動費は重要よ?」
ああ、やっぱり売るのか。もうどうでも良いよ。好きにしてくれ。溜息を吐けば視界に銀色が見えた
『ごめん吉良。また修兵さんが良く判らん事を……』
「いえ、大丈夫です」
寧ろ貴女絡みで檜佐木さんが暴走するのにも慣れました。桜花隊長が困った様に微笑した
『確かに色は白いけど、十分鍛えられてる。だから気にする事はないと思う』
「はは…ありがとうございます」
あの、桜花隊長。後ろから僕を射殺しそうな視線で睨むあの人をどうにかしてくれませんかね。此方物凄く睨んでるんですけど。ピンポイントで僕にだけ殺気飛ばしてきてるんですけど
僕の願いが通じたのか、桜花隊長は僕から離れた。そして隣の阿散井くんに向かう。それと共に移動する殺気。あ、阿散井くんが顔引き攣らせた。発生源を見て、僕を見る。僕はゆっくりと頷いた。そうだよ、そこで松本さんに写真撮られてる人がその殺気を送ってるんだよ
「あの、ちびさぎ隊長……」
『お前随分がっしりしてるな。何だこの筋肉…』
阿散井くんは特にがっしりしてるからなのか、桜花隊長が興味を持った。彼の周りをぐるぐる回る。それを見る檜佐木さんがますます眉間の皺を増やした。多分僕を見ていた時より殺気と視線は酷い。阿散井くんは冷や汗をだらだら流している。目で助けてくれと訴えられた。だから僕は笑顔で彼に向かって口パクする。どんまい。
ぐるぐる回っていた桜花隊長が突如両手を広げ、阿散井くんに抱き着いた
『骨格が違うのかな……』
「いやあのちびさぎ隊長俺マジで殺される…ッ!!」
普通なら顔を赤くするんだろうけど彼は真っ青になっている。原因は無言で暗器を握った九番隊の副隊長。松本さんはレアだわと騒いで阿散井くんと桜花隊長を撮っている。
『うーん……やっぱり骨格…?それとも筋肉の付き方…?』
腰やら背中やらぺたぺた触って桜花隊長は首を傾げている。阿散井くんはもう涙目。多分殺気が怖いんだろう。松本さんは笑顔で写真撮ってる
散々阿散井くんで遊んだと思ったら、桜花隊長は僕の方に来た。あ、やばいこの人絶対やらかす。口を開く前に、目の前に来た銀髪が引っ付いてきた
『む?吉良も修兵さんとは違う……』
「そ、そうですか……そろそろ檜佐木さんに行った方が良いんじゃ…」
『吉良の方が薄いな』
駄目だ、この人聞いてない。ていうかこの人は自分が女性だって事をもう少し意識して欲しい。檜佐木さん馬鹿な所を除けば見た目も中身も良いんだから。そう考えていると改めて自分の状況を認識してしまい、恥ずかしくなった。途端に強くなる殺気。思わずその殺気の濃さに青ざめる。
『ぎゅってしたら折れそう』
そう言った桜花隊長が実行した。
何でこの人普段は頼りになるのに時々全力でやらかすんだろう。知ってますか、貴女がやらかすとあの人暴走するんです。今もまたビシバシ僕に殺気が向けられてます。多分僕と阿散井くんは生きて帰れません。笑顔で僕らを撮ってる松本さんもこの殺気を向けられたら良いのに
投げやりに考えていたら桜花隊長が僕から離れた。
やっと解放された…!床に座り込んだ阿散井くんの隣で小さな銀髪を目で追う。彼女は檜佐木さんの傍に行き、首を傾げている
『修兵さん?』
「……んだよ」
『何で拗ねてる?』
「…別に」
殺気を引っ込めて、口をへの字にしている檜佐木さんを桜花隊長は不思議そうに眺めていた。かと思えば檜佐木さんの身体に飛び込んだ。目を瞬かせつつ檜佐木さんは小さな身体を受け止めた
胸に顔を埋めたまま、桜花隊長が言った
『やっぱり修兵さんが良い』
「……!…そーかよ」
まだ不機嫌なフリをしたいらしいけど檜佐木さん、顔にやけてます。桜花隊長の一言が相当嬉しかったらしい。尻尾振ってる大型犬に見える
『何で拗ねてる?』
「……判んねぇなら良い」
「ちびさぎ隊長が吉良と恋次に抱き着いたからよねー?」
「ら、乱菊さんっ!」
『?それで拗ねてんの?』
もぞもぞと動いた桜花隊長が檜佐木さんを見た。檜佐木さんは赤くなった顔を背けた。バラした松本さんはニヤニヤしながらシャッターを切った
『……やきもち?』
「……悪ぃかよ」
『別に?』
小さく笑った桜花隊長がまた檜佐木さんをぎゅっと抱き締めた。それに応える様に檜佐木さんも桜花隊長の背に腕を回す。さっきまでの不機嫌は消し飛んでいる。
人前でいちゃつきだした二人を見ながら、僕は隣の阿散井くんに声を掛けた
「…これってさ」
「何だよ吉良…」
「最初から判りきってたオチじゃないの…?」
やらかすとこうなる
(もう他の奴にホイホイ抱き着くなよ?)
(はいはい。修兵さんにしかしないよ)
(なら良い。…俺が他の女にこうしてたらどうする?)
(凍らす)
(お前やきもちどころか殺意になんのか)
(死にたいならどうぞ)
(やらねぇよ。お前にしかこんな事しねぇ)
(……そ)
(くくっ、照れてんの?)
(…違う)
(やっぱりこの組み合わせがしっくり来るわねー)
(阿散井くん、今の内にこっそり帰ろう)
(そ、そうだな…)
(阿散井に吉良、お前らちょっと話があるから残ってろ)
((あ、死んだ))
純粋に抱き心地確認の為に抱き着いた独月の所為でこの後阿散井と吉良は檜佐木にシメられます。超理不尽