(阿散井視点・生理ネタなので注意)






「乱菊さーん、書類持って来ましたよー」

「はーい。そこら辺に置いといてー」

「へーへー」

ソファに座って煎餅食ってる乱菊さんに言われるがまま、適当な位置に書類を置く。机の上は書類だらけ。何でこの人こんなに書類溜め込んでんだ。俺がこんな事したら朽木隊長にシバかれるけどな

「そういえば九番隊に持ってく書類があったのよねー。恋次、持ってってくれなーい?」

それそれと煎餅の油でテカテカした指で差され
た書類を見る。
これ隊長に直接渡さねぇといけねぇ書類じゃねぇか

「嫌っすよめんどくせぇ」

「えー」

「それにこれ隊長に直で渡さねぇといけねぇヤツっしょ?」

「大丈夫よ、ちびさぎってそこら辺ユルいから」

何だそりゃ。
てか意地でも俺に行かせるつもりかよ。

「どーしても俺っすか?」

「おねがーい!」

あんた仕事サボりてぇだけだろ。実際茶飲んで煎餅齧ってるし
深く溜息を吐いて書類の束を掴む

「ったく…しょーがねぇから持ってってあげますよ。今度奢って下さいね」

「さっすが恋次!吉良に奢らせる時は誘うわねー!」

あんたは払わねぇのかよ。
突っ込みを入れつつ十番隊舎を出た























すぐ近くの九番隊舎に入ろうとして、立ち止まる。目の前には護廷屋敷。ああ、今日は隊舎が中に入ってんのか
此処は護廷屋敷が隊舎の中に入ってたり、隊舎が護廷屋敷の中に入ってる事もある。普通は隊毎の敷地内で護廷屋敷と隊舎がそれぞれ存在してる筈なんだが。
そういや此処の三席が何かしたって言ってたっけ。
ちょくちょく良く判んねぇ事が起きる九番隊の護廷屋敷の中に足を踏み入れた
どうやら今日はめんどくせぇ混ざり方をしたらしく、隊士達の私室やら執務室やらごちゃごちゃに並んでた。
普通に迷いそう。俺この隊じゃ絶対やっていけねぇ自信がある

「阿散井副隊長、お疲れ様です」

「おう、お疲れ」

隊士は慣れてんのか、普通に俺に挨拶して歩いていく。ちょくちょく目に入る立て看板。隊首室はこの先か。つか立て看板なんか作るんならこんな事しなきゃ良いのに。
そんな事を思いつつ、何処の隊にも共通の扉の前に立つ。ノックをすれば低い声が返事した

「阿散井です。ちびさぎ隊長居ますか?」

「居るぞ。入れよ」

「失礼します」

扉を開けて、目を瞬かせる。
布団に横になるちびさぎ隊長と、隣で書類整理してる檜佐木先輩。え、布団を隊首室の中に運び入れたのか?
でもこの部屋って何回か見た事ある檜佐木先輩の居間に似てる。や、写真立てもあるから多分この人の部屋だ。
でも俺隊首室ってプレートの部屋に入ったよな?なのに何で先輩の部屋?
悩んでいれば座れよと檜佐木先輩に笑われた

「これな、国後がやったんだよ」

「国後…ああ、あの赤い目の。
そういやこれ、十番隊からの書類っす」

「さんきゅ。どーせ乱菊さんにパシられたんだろ。…部屋は独月の状態話したらこうなった」

「当たりっす。…ちびさぎ隊長の状態?」

その言葉で布団で横になるちびさぎ隊長を見る。そして思わず眉を寄せた

「あの…先輩?」

「ん?」

「ちびさぎ隊長…生きてます?」

「おう」

……ほんとか?
そーっと覗き込み、観察する。顔が青ざめてるっつーか、それ通り越して白い。血の気がねぇ。元から肌が白いから、死人みてぇな色になってんだけど

「具合悪いんすか?」

「んー…まぁ、月1でそうなる」

「月1!?」

檜佐木先輩が言った言葉にぎょっとする。月1で死人みてぇになんのかこの人。前から身体弱ぇとは思ってたけど、まさかこんなになるとは。もしかして、持病でもあんのか?
じっと見たのが悪かったのか、ちびさぎ隊長が目を開けた。

『……あばらい…?』

「ども。大丈夫っすか?」

『………良くはないな』

消え入りそうな声でそう返したちびさぎ隊長がもぞもぞ動き始めた。それに気付いた檜佐木先輩がちびさぎ隊長に手を貸す。
上体を起こしたちびさぎ隊長が、檜佐木先輩に支えられつつゆっくりと立ち上がった

「大丈夫か?」

『ん……ありがと』

「どーいたしまして」

よろよろしつつちびさぎ隊長がすぐ近くの扉を開いた。そのまま奥に入っていく。
それを見ていた檜佐木先輩が小さく息を吐いた

「んなに心配なら着いて行きゃ良いのに」

「ばっかお前、それはデリカシーってもんがなさ過ぎだ」

そう返された俺は首を傾げた。
歩いてくのを心配して着いて行くのがデリカシーねぇって、どういう事だ?
訳判んねぇと言えば檜佐木先輩はニヤリと笑った。あ、何か嫌な予感

「ほぉ……てめぇは女の子の手洗いまで着いてくってのか?へぇ、やるねぇ阿散井クン」

「なっ……厠っすか!?」

「馬鹿もうちょっと上品な言い方出来ねぇのか」

え、怒るトコそこか?
思わぬ言葉に目を丸くしていれば、先輩が溜息を吐いた

「あいつな、痛みが酷ぇ方なんだと」

「痛み?」

何の話か判んねぇ。
それを察したのか檜佐木先輩が半眼になった

「……お前、勘悪ぃって良く言われるだろ」

「え」

何でだよ。てかヒント少ねぇだろ。
言えば檜佐木先輩はまた溜息を吐いた

「じゃあ月1でなって、痛ぇのは?」

「月1でなって痛ぇ…?」

何故かげんなりした表情で問題を出された。つか何だよそれ。俺そんなのなった事ねぇし。毎月腹壊してんのか?

「俺もなります?」

「や、お前がなったら気色悪ぃ」

「何すかそれ」

若干引いた表情で言われた。何でだよ。
悩んでいれば物凄く面倒そうな顔で見られた

「じゃあすっげぇ大ヒント。女の子はなります」

「女の子がなる……?」

……判んねぇ。
呟いた瞬間、物凄く冷たい目で見られた

「駄目だお前。男失格」

「え」

「馬鹿。単細胞。ヘンテコ眉毛。ニブチン。そんなんだから鬼道もヘッタクソなんだよ」

「や、それ言い過ぎっす」

流石に泣くぞ。つか鬼道関係なくね?
言えば気持ち悪ぃと返された。マジで酷ぇ、泣いて良いかな。
涙目になれば頬杖を付いた檜佐木先輩がちらりと俺を見た

「お前、幼馴染…朽木だっけ?あの子もあんな風になった事ねぇの?」

「ルキアすか?え、あいつはあんな風に具合悪そうな事ってねぇ気がしますけど…」

「あー…お前の場合鈍いから気付いてねぇ可能性もあんな…」

「……気付いてねぇ…?」

やべぇ、ドツボに嵌まった。
一切閃かねぇ。や、確かに俺頭悪ぃけど。あれ、俺ってこんなに頭悪かったっけ?
まさかの閃き力ゼロ?てか閃き力って何だ?
俺がドツボに嵌まったのを見抜いたのか、深々と溜息を吐いた先輩が、言った

「……生理だよ」

「………え?」

……生理?
生理ってあの、血が出るってアレか?
思わず固まっていれば檜佐木先輩が頷いた

「あいつ、生理痛が酷ぇらしくてな。何時も卯ノ花隊長から貰った薬飲んでんの。けど今回のはそれも効かねぇぐらい痛ぇらしい」

だからあんな白くなってたのか。血も出てるし、痛ぇから。
そう納得して何か物凄く恥ずかしくなった。そうだった、あの人女だった。胸ねぇけど。全然女っぽくねぇけど
そういやルキアもたまに腹擦ってた気がする。もしかして、それか…?
俺只食い過ぎで腹壊したのかと思ってた。やべぇ、俺まさか鈍いのか……?

「あいつの場合何時も貧血だわ血は薄いわで通常の倍痛ぇのかもな。生理中は食欲落ちるから余計に体重落ちるし」

はぁ、と溜息を吐いた檜佐木先輩が湯呑を口許に運んだ

「確か子宮から血の膜削ぐのが痛ぇんだっけ?少しでも痛みを和らげてやれたら良いんだけどな」

「……何でそんな事知ってるんすか?」

「あ?このぐらい普通だろ」

や、普通じゃねぇだろ。呟けばがしがしと首の後ろを掻いた先輩が笑う

「ほら、俺は男だから代わってやれねぇだろ?だから、少しでもあいつが楽になる手伝いしてやりたくてさ」

「………」

「誰だって、てめぇの隊長が辛そうなのは嫌だろ?」

それって隊長と部下の関係じゃねぇだろ。
そう言おうとした時、がちゃりと扉が開いた。
血の気のねぇちびさぎ隊長が部屋に帰ってきたらしい

「大丈夫か?」

『ん……』

直ぐ様隣に立った先輩がちびさぎ隊長に手を貸す。ゆっくりと布団まで戻ってきたちびさぎ隊長はまた横になった

「ほら、ちゃんと被れ。体温下がってる」

『ん………』

布団を被らされたちびさぎ隊長は何か言いたげな目で先輩を見つめた。それに気付いた先輩が優しく髪を撫でる

「どうした?」

『……しごと、できなくてごめん』

「気にしてねぇよ。こんな時以外ゆっくり休んでくれねぇから、丁度良い」

くつくつ笑った檜佐木先輩がゆるゆるとちびさぎ隊長の頬を撫でた。

「何か欲しいもんあるか?」

『……て』

「て?」

優しく聞き返す檜佐木先輩に、小さな声で呟いた

『………て…にぎって、ほしい…』

「ん、判った」

「………………」

何だ今の先輩の笑顔。すっげぇ嬉しそうだったぞ。何でだろう、アレん時に頼って貰えると嬉しいのか?

「……寝たな」

「…早いっすね」

そっと髪を撫でながら檜佐木先輩が笑った。ちびさぎ隊長の手を握ったまま、また書類整理を始める

「生理中は眠くなるって言ってたからな。寝て痛みを忘れてくれるんなら丁度良い。普段から睡眠時間も足りてねぇし」

そう言った檜佐木先輩は嬉しそうで。

「…やっぱ女が生理の時って、頼って貰えると嬉しいんすか?」

「ん?まぁな。男にはねぇもんだから、神秘的っつーか…少しでも理解してぇと思うし、力になってやりてぇと思う」

「ふーん…」

「甘えられたら悪い気はしねぇぞ。そうだ、今度朽木にでもしてやったらどうだ?」

「え゙」

何をだよ。
つか何でよりによってルキア?目を丸くしていれば意地悪そうな表情で檜佐木先輩が笑った。

「弱ってる時に優しくされたら嬉しいだろ?もしかしたら良い感じになるかも知れねぇぞ?」

「や、あいつは只の幼馴染なんで」

家族同然に思ってる奴と良い感じになっても微妙だ。言えばつまんねぇのとぼやかれた。あんた俺で遊ぼうとしてたろ

「じゃああの子ってやっぱ黒崎とデキてんの?」

「さぁ?そういう話あいつとした事ないっす」

あいつと一護がくっつくならおめでとうって言えるだろうけど、果たしてそんな仲なのかどうか。どっちかっつったら戦友っつーか、親友?
何かサバサバしてっからな、ルキアって。

「付き合ってたら確実に一護は尻に敷かれてますね」

「マジか。案外気ぃ強ぇんだなあの子」

「そりゃあもう。男にアッパー食らわす様な奴っすよ」

そう言うと檜佐木先輩が面白そうに笑った
や、笑い事じゃねぇよ先輩。アレ地味に小せぇ拳がめり込んで痛ぇんだぞ

「護廷隊に居る女の子ってアレだよな、気ぃ強ぇ娘が多い」

「やっぱアレっすか。斬魄刀振り回すから?」

「それもあるし、単純じゃねぇからじゃねぇの?」

先輩の言葉に首を傾げた。
単純じゃねぇって、何が?

「男ってさ、単純だろ?食って寝てヤれたらそれで良い、とか言う奴も居るし
でも女の子はこういう身体の問題もあるし、考え方も男より複雑だろ。俺らが気付かねぇ事にも気付いたりするし」

確かにちょっとした気遣いって大抵女の子がやってる気がする。ああ見えてルキアも割と気が利くし
あ、これ言ったら朽木隊長とルキアにシメられるわ、俺

「だから、男なんかよりも強ぇんじゃね?こう、何つーか…芯が強ぇ感じ?
でも多分、繊細な部分もあんだろ。ちょっとした一言で傷付く、とかさ
それをカバーする為に、気が強くなったりするんじゃねぇの?」

「……それってまんまちびさぎ隊長っすよね」

思わず呟けば、檜佐木先輩はへらりと笑った

「そうだな。気が強いじゃじゃ馬。オマケに甘え下手だから、自分からは甘えて来ねぇんだよ」

「だから先輩から構いに行くんすか?」

「そ。こいつ甘えられねぇと寂しくなっちまうから。そうなる前に、俺から甘えさせに行くんだよ」

や、甘え下手って初めて知った。
呟けばだろうなと笑う

「あんまり表情に出さねぇからな、判り辛ぇかも」

そもそも表情に出さねぇどころか表情ねぇよ。基本無表情だよ。何時も何考えてるか判んねぇよ
でもこれ言ったら絶対シメられる。
そう思い口を開かずにいれば、湯呑に茶を注いだ檜佐木先輩がちらりとちびさぎ隊長を見た

「結構傷付きやすいんだよ、こいつ。でもこいつ自身が気付いてねぇ事もあるし、何より甘え下手だから言って来ねぇし」

溜息を吐いた先輩がぽつりと呟いた

「もっと頼って欲しいんだけどな…」

「先輩……」

「こいつが隊長になってからさ、前以上に甘えなくなったんだよ。壊れそうな癖に無茶しくさるし、支える俺の身にもなれっての」

俺が頼りねぇってのもあんのかも知んねぇけど。
そう自嘲気味に笑った先輩の表情があまりにも辛そうで、思わず目を逸らした。
優しくちびさぎ隊長の髪を撫でながら、先輩は続ける

「どうやったらもっと頼ってくれんのかなぁって、いっつも考えてんだよ。馬鹿みたいだろ」

きっとこれがこの人の本音。
檜佐木先輩はもっと頼って欲しいのに、ちびさぎ隊長が頼らねぇからこんな風に辛そうな顔をする。
頼りねぇとか有り得ねぇだろ。あんたは何時もその人の為に頑張ってんのに。
てかそんなの、伝えれば良いだけじゃねぇか。
何で変なトコで不器用なんだよ、あんた
辛そうな檜佐木先輩を見ているのは嫌で、俺は言った

「…だったら、言えば良いじゃないっすか」

「……え?」

目を丸くした檜佐木先輩に向かって、続ける

「俺の事もっと頼れって、言ってやりゃ良いじゃないっすか。こんな時ぐらい、聞き分けの良い優等生じゃなくても良いでしょ」

俺がそう言うと先輩は目を瞬かせた。何でだよ、俺普通な事言っただけだろ。
見ていれば先輩は小さく笑った

「…そうだな。俺が甘えさせてやらねぇと壊れちまうもんな、こいつ」

銀髪を撫でられちびさぎ隊長が小さく唸った。それに優しく目を細めた檜佐木先輩が俺を見た

「さんきゅ、阿散井。何か元気出たわ」

「そいつは良かったっす。先輩がヘコんでると気持ち悪いんで」

「良し阿散井後で覚えとけ」

あ、やべ地雷踏んだ。
にっこり笑った先輩がしたのは死刑宣告。思わず青くなり、唯一助けになりそうなちびさぎ隊長を見る。ちょっと起きてくれねぇかなちびさぎ隊長。あんたが起きればその人キレてた事なんか忘れてくれそうな気がすんだけど

『……しゅーへーさん…』

「ん?」

願っていればちびさぎ隊長が喋った。すかさず反応した先輩を見て内心ガッツポーズ。
ちらりとちびさぎ隊長を見れば、まだ目は閉じられたままだった。え、寝てる?
首を傾げた俺を他所に、檜佐木先輩が凄ぇ優しい顔で笑った

「夢でも傍に居られたら、嬉しいよな」

それは普段は絶対に見せねぇ表情で。
そんな顔を見た俺は、つい言ってしまった

「もう結婚しろよあんたら」









病人看護?









(え、何で?)

(気付いてねぇのかよ)






九番隊は基本的に独月の保護者。
国後が隊舎と護廷屋敷をごっちゃにしたのは仕事中も独月を一人にしなくて済む様にだったりする。
多分この後拳西と修ちゃんと国後がお見舞いに来ます。毎月一回はこの状態……大袈裟だな九番隊