ついにこの日がやってきた。
そう、卒業式
今までずっと僕となんやかんや馬鹿やらかしたりしたあの人が居なくなる日だ

『――以上で終わります。在院生代表、桜花独月』

送辞を述べて一礼し、席に戻る。続いて卒業生代表が前に立った。紙を広げ書かれた文章をつらつらと読んでいく

「――以上で終わります。卒業生代表、檜佐木修兵」

一礼をして修兵さんが席に着いた。またつまらない式典が続いていく。こんなもの、早く終わってしまえば良い



卒業式が終わり僕は木の下に座る。何時も修兵さんと食事を取っていた場所。これからは一人になるのかと考えると少しだけ寂しかった

「だーれだ」

不意に塞がれた目と、楽しげな声。こんな事僕にするのはこの人しか居ない

『檜佐木修兵さん』

「正解」

目を塞いでいた手は外され、そのまま後ろに引っ張られる。されるがままに倒れたら修兵さんに膝枕される形になった。普通逆じゃね?

「こうしてお前と居られるのも暫くお預けか」

『……そうだね』

まぁ一年だけど。でも一年ってなんだかんだで結構長い。今までは何時も修兵さんと一緒に居たから居ない時が想像しにくい

「落ち着いたら遊びに来てやっからな」

『ん』

僕の髪を弄るこの指先にも暫くお別れか。修兵さんの手好きなのに
暫く修兵さんの顔を眺めてふと思い付いた

『修兵さん』

「ん?」

『それ、下さい』

「あ?これか?」

指差したのは修兵さんの首輪。きょとんとしつつ直ぐに修兵さんはそれを外した

「何処に着けんだ?」

『手か藤凍月の鞘』

流石に今日は持ってきてないけどぐるぐる巻けば丁度良いと思う。じゃあ今は手に着けとけ、と左手首に着けてくれた

「お前腕細過ぎ。手もちいせぇし」

ぐるぐる巻いた結果なんか其処だけ厳つくなった。うん、やっぱり鞘に巻こう

「じゃあ俺はこれ貰うわ」

そう言った修兵さんが僕の左耳からカフスを外した。桜の描かれたそれを同じ様に左耳に嵌める。似合うか?と笑った修兵さんは悪戯っ子みたいだった

『物々交換?』

「一年離れんだ。そんぐらいは当然だろ」

まぁ良いか、と笑って修兵さんを見つめる。あの事件から完全に立ち直ったとは言い難いけど、修兵さんならきっと大丈夫だろう

「独月」

『ん?』

僕の眼帯を取った修兵さんが笑う

「護廷隊には席官入り確定で来い」

『………は?』

思わず目を見開く。いきなり何言い出すんだこの人

「おー目の色見やすいな」

『そりゃ目ぇ見開いたから…って違う。何故そんな無理難題を』

そう言えば修兵さんは全然無理じゃねぇよ、と笑った

「お前は眼帯取ってりゃ席官入り出来る。この俺がみっちり鍛えたんだ。その調子であと一年やれば八席ぐらいはいけんだろ」

何だその買いかぶり。確か修兵さんは七席だ。それの一つ下を狙えると?無理無理無理
修兵さんが否定する僕の目をその灰色の目でじっと見つめ、言う

「追い掛けて来い、独月。お前は俺の相棒だろ?」

『………っ!』

今まで無理だと考えていた事が修兵さんの一言で見事に吹っ飛んだ。あの事件以来言われる相棒という言葉。僕なんかがこの人の隣に立てるとは思わないけど、せめてそうなれる様に頑張りたい

『……頑張ります』

「おう。待ってるからな」



直ぐ追い付けよ



(絶対九番隊に入る)

(俺も負けてらんねぇな)