「一回生共に自己紹介してくっから、少し待ってな」

僕の頭をわしゃわしゃと撫で、修兵さんは一歩前に出た。後ろからその背中をぼんやりと眺める。髪が随分と短くなった。その所為か少し幼く見える

「護廷隊より派遣された九番隊七席、檜佐木修兵だ。てめぇら引率に迷惑掛けねぇ様にしろよ」

そう言うと一歩下がり、僕を軽く前に押した。え、何。凝視すれば今からの流れを説明しろ、と。うわ僕筆頭だから説明役か

『…じゃあ修兵さ…檜佐木さんも来た事だし、これから実習を始める』

そして大体をかいつまんで説明。皆だって自分がする事なんだから予定表なり何なり読んだでしょ

『今からあんたらを現世に連れて行く。まぁ怪我はしない様フォローするから』

「随分適当な説明じゃねぇの」

藤凍月を抜いた僕に修兵さんが呆れた様に言う。だって説明めんどくさい。そう言えば頭を叩かれた。痛い

『――開錠』

現世への扉を開く。あの日の再来にならない様に、僕がしっかりしなければ




「――っやぁ!!」

「破道の四・白雷!」

「もらったぁ!!」

疑似虚と戦っている一回生達をぼんやりと見つめる。疑似虚の他に怪しい霊圧はない。あの日もそうだった。感じ取れないからって油断は出来ない。
少し離れた所では別のチームを藤堂さんが監督してる。もう直ぐ終わるっぽいけど

「きゃああ!」

悲鳴が聞こえて其方を見れば女の子が疑似虚に襲われていた。チームを組んだ残り二人は見てるだけ。何やってんだ男の癖に

『縛道の一・塞』

腕を振り上げていた疑似虚を拘束する。その間に立ち上がった女の子に止めを刺す様指示した。無事に終わったのを確認して溜息。女の子がやたら目を輝かせてお礼を言うのを適当に流して交代時間を告げに来た小鳥遊くんと持ち場を代わった



『…うん。もう少し肩の力抜いて』

言った瞬間に柄尻でぽちりと判をした一回生。ちょっ話聞け

『あんまり力み過ぎると…』

「ぎゃあああああああ!!」

『霊が痛がる』

ああデジャヴ。確か修兵さんも似た様な事一回生達に言ってた。

「なかなか様になってるじゃねぇか」

頭を撫でられ修兵さんの顔を見る。今実習中なんでそういうの止めて欲しいんですけど。示し付かないし。ああほら一回生めっちゃ見てるじゃん
ちびさぎ先輩可愛いって言ったそこの女子後で覚えとけよ。つかちびさぎじゃない僕は桜花だ。
何か桜花先輩って呼んでくれるの吉良(さん付けしたら頼むから止めてくれって言われた)と雛森くらいしか居ない気がする。つか魂葬実習の方は楽だな。基本手を出す必要ないし
辺りの警戒に集中出来る

「…安心しな。お前の危惧する事態にはならねぇよ」

その言葉に驚いて見上げれば修兵さんが頭をわしわしと掻き回した

「もし何かあってもそん時は俺が護ってやる。だからお前は肩の力を抜け」

そんなんじゃ疲れちまうぞ、と肩に手を置かれる。力を抜け、か。確かにあの時みたいな嫌な感じはしない。一応藤凍月を持ってきたが柄から手を離せているし。此処は修兵さんに甘えておこうか。修兵さんに判ったと小さく頷けば彼は満足そうに目を細めた

「ほらそこいちゃついてないで指導してー」

藤堂さんが呆れた様に言ってきた。いちゃついてるって僕等か。いちゃついてないよ話してただけだし

「さて指導するかちびさぎチャン?」

『痒くなるからその呼び方止めて下さい檜佐木先輩』

「てめぇこそそれ止めろっ!」

修兵さんがぶるりと震えた。鳥肌が立ったらしい。ざまぁ



『今から尸魂界に帰還する』

あの後結局何も起こらなかった。今も何か起こりそうな気配もない
開錠しようと藤凍月に手を掛けて――咄嗟に飛び退いた

さっきまで僕が居た場所には太くて鋭いものが突き刺さっていた。此方に来た藤堂さんと小鳥遊くんに一回生を任せ、藤凍月を抜く。あの時とは違い普通の大きさの虚が五体。まぁ気配がないのはあの時と同じだが、これなら僕一人で十分だろう。そう考えふと後ろを見る。藤堂さんに小鳥遊くんに一回生。あれ、一人…あの人が居ない。修兵さん何処行った
襲い掛かって来た虚の爪を躱し、その手を切り落とす。背後から足元に影。うわ挟まれた。咄嗟に振り上げられた腕を受け止めようと藤凍月を構える

「――人の相棒に手ぇ出してんじゃねぇぞ!」

声が聞こえた瞬間目の前虚が縦に真っ二つになった。え、今何時斬った?全然見えなかった
他の虚も何時の間にか全部斬り伏せられていて、昇華される中立っているのは僕と修兵さんだけ。呆然として修兵さんを見ていると彼はニヤリと笑った

「言ったろ?俺が護ってやるって」

月明かりを浴びる彼は不覚にも格好良く見えた




惨劇阻止



(さ、帰るぞー独月開錠しろー)

(あ、はい…開錠)

((俺だって少しは強くなってんだよ))