「桜花くん、少し良いかな」

『はい、何でしょうか藍染隊長』

五番隊舎内を歩いていると藍染隊長に呼び止められた。振り向けば申し訳無さそうな顔。ああ、またですか

「九番隊との合同任務に行ってくれるかい?」

『はい』



「あの子また九番隊と合同任務に行くんですって」

「また?東仙隊長に媚でも売ったの?」

「前は合同任務なんて殆どなかったのに」

ちらほらと聞こえる会話。明らかにそれ僕の事だよね。てか東仙隊長に媚なんか売っとらん。そんな下らない事してる暇があったら僕は修行か書類整理するわ。辟易しつつ隊舎内を歩いていれば後ろから頭に手を置かれた。振り向けば笑顔の市丸隊長。あんたこんなとこで何してるんですか

『こんにちは市丸隊長』

「こんにちはちびさぎチャン、元気しとった?」

頷けばええ子やね、と飴をくれた。僕は子供か

『藍染隊長に御用ですか?』

それくらいしか此処に来る理由はないだろうし。すると予想に反して市丸隊長は首を横に振った

「書類整理飽きてもうたからちびさぎチャン見に来たんや」

『………』

仕事しろ。あんた隊長だろ。隊長が書類整理ほっぽってぺーぺーの新米見に来るとかどんだけだよ。思わず頭を抱えるとどないしたん?と頭を撫でられた。いやあんたの所為だよ
ジト目で見つめると思い出した様に市丸隊長が言った

「それにしても最近九番隊との合同任務多いみたいやねぇ」

『……そうなんですよね…』

入隊して半年。七席になった僕がこなした任務の殆どが九番隊との合同任務だ。この前五席に上がった修兵さんを通じて九番隊の人達とは大分打ち解けた。だがその代わりに五番隊の人達とはあまり話は出来ていない。寧ろ溝が深まってる。僕に変わらず話し掛けて来るのは藍染隊長とぜんざい六席くらいだ。その事を言えば市丸隊長に頭を撫でられる。

「此処が嫌なら何時でも三番隊においで」

『三番隊ですか?』

確かに市丸隊長の隊は楽しそうだ。でもまだ逃げ出したくなる程居心地が悪い訳じゃない。この程度の陰口なら慣れてるし

『逃げ出したくなったらお邪魔します』

そう言えば市丸隊長が優しく笑った。

「そか。まぁちびさぎチャンやったら何時でも歓迎したるさかい遊びにおいで」

『じゃあ市丸隊長の書類整理が終わってる時に伺いますね』

じゃないと隊の人達に迷惑掛けるし。
そう言えば市丸隊長はお手上げやわ、と手を上げた。

「せやったら早よ終わらせんとアカンなぁ」

『そうですね』

そう返せばほなまた、と言って市丸隊長は去っていった。え、ほんと何しに来たんだあの人



「おう、来たか独月」

『今日から宜しくお願いします修兵さん』

「ん、任せとけ」

藍染隊長に言われて九番隊との合同任務に参加する。今回は長期任務、参加者は僕と修兵さんの二人。何かもう一緒の隊に入隊したんじゃないかって言う程一緒に任務してる。少しでも経験を積ませたいとか修兵さんが東仙隊長に進言したらしくそれが採用された事により二日に一回のペースで主に虚退治の合同任務が回って来る。まぁ良い鍛錬にはなるけど何故採用した東仙隊長。其処が非常に謎である

「任務は判ってんな?」

修兵さんに問われ僕は任務内容を思い出す

『現世での駐在任務、だよね?』

「そうだ」

本来なら入隊半年で駐在任務に向かわされる事はないらしい。けれど今月の当番は九番隊で修兵さんが行く。じゃあ丁度良いからちびさぎを連れて行きなさい、と言ったらしい。東仙隊長が。話を聞いた藍染隊長も承諾したとか。何故だ。何故東仙隊長が主に僕の任務を考えている。僕は今は五番隊なんだが

「忘れ物はねぇな?ちびさぎ七席」

『大丈夫です、檜佐木五席』

答えればにっと笑われた。藤凍月は背負って居るし伝令神機も飴も持っている。
そろそろ出立の時刻だ、と修兵さんが呟いた時誰かが近付いて来た

「…藍染隊長に東仙隊長!?」

「やぁ。見送りは間に合った様だね」

目が合った藍染隊長が優しく笑った。わざわざ見送りに来て下さったらしい。

「檜佐木、君なら大丈夫だとは思うが、気を抜かない様に」

「はい。わざわざ見送りに来て頂きありがとうございます」

東仙隊長と修兵さんを見上げていると僕の肩に手が置かれた。其方を見れば藍染隊長が優しく微笑んでいる

「桜花くん、君にとっては良い経験になるだろう。気を付けて行ってきなさい」

『はい。頑張ってきます、藍染隊長』

「桜花、初めてで不安になるだろうが、君なら大丈夫だ」

『ありがとうございます東仙隊長』

下げた頭を上げるとぽんと頭に手を置かれた。振り向けば笑顔の隊長

「間に合ったみたいやなぁ、良かった良かった」

『……市丸隊長、どうして此処に?』

東仙隊長達もきょとんとしている。
あんたまた書類ほったらかして来たのか
そう聞けば仕事は終わらせたんよ?と笑った市丸隊長。うん、胡散臭い

「ちびさぎチャン駐在任務で一月は帰って来いひんのやろ?せやから、お見送りになぁ」

ほい飴ちゃん、と飴を握らされた。飴常備してるなこの人
握らされた飴を礼を言いつつ懐に直して前を向く。

「では隊長方、行って参ります」

『お見送りありがとうございました』

修兵さんが斬魄刀を抜いた

「――開錠」

僕は肩に留まらせていた地獄蝶を空に放った。ひらひらと舞う蝶を連れ穿界門に足を踏み入れた。

「気を付けて行っておいで」

「たまには連絡するんだよ」

「怪我せんようになー」

ちらりと振り向けば見える三人の隊長。会釈をした時門は閉じられた


駐在任務、開始


(あ、また檸檬味)

(市丸隊長の飴か?)

(ん。この前も檸檬だった)