顔の右半分から鎖骨辺りまで鈍く疼いた。傷痕か。僕もあの日を引きずっていたらしい。もう吹っ切れたつもりだったんだけど

「――行くぜ、独月」

『はい』

ゆっくりと藤凍月を構える。気配はない。こいつもあの日の巨大虚と同じ特性を持っているらしい。
静かに深呼吸をする。傷痕はまだ疼く。大丈夫。僕は成長した。今度こそ護れる、倒せる

『虚空に色付け――『藤凍月』』

始解しない状態じゃ恐らく傷は付けられない。銃口を向ければ巨大虚が腕を持ち上げた

『――縛裟氷映』

一発放ってから瞬歩で躱しその腕に斬りつける。腕は斬りつけた場所から勢い良く凍り付く。悲鳴を上げた巨大虚が僕に向かって口を開いた。虚閃か?今にも虚閃を放とうとする巨大虚の上空から月明かりを浴びた黒い影

「刈れ――『風死』」

瞬間鎌の様な物が巨大虚の仮面に突き刺さった。びきびきと音を立てて仮面が割れていく。片手に持った鎌で斬りつければ呆気なく仮面が割れた。巨大虚の身体が消えていく。僕の前に修兵さんが降り立った

「引き付けご苦労さん」

『…修兵さん、強い…』

頭を撫でてくる修兵さんが少し困った様に笑った

「俺はあんまり好きじゃねぇんだけどな」

『?……何で?』

風死を見ながら言ったその言葉に首を傾げると修兵さんがじゃらりと音を立てる鎖を握った。鎌を逆さにしたまま目元まで持ち上げる

「――命を刈り奪る、形をしてんだろ?」

風死の刃がきらりと反射する。月明かりに照らされたその姿は一枚の絵の様で

『……格好良い…』

「………は?」

自然と出た言葉に修兵さんが固まった。ぽかんとしてアホ面ですね修兵さん。というか何でそんな顔されたのか判らないんだが

「………怖くねぇの?」

『怖い?何で?』

そっと風死に触れてみる。伝わってきたのは少しの困惑。怖くはない。寧ろ拒絶とかしないでいてくれる辺り優しいと思う。斬魄刀でも気難しいのは拒絶して来るし

『風死は優しいよ』

「………」

形も僕は格好良いと思うし。少し癖がありそうだけど上手く使えればかなり強いんじゃないかとも思う。

「………お前には適わねぇわ」

修兵さんに頭を撫でられる。呆れた様に言ったけれどその目は優しかった





Cross the scar





(ほんと適わねぇなぁ)

(………何が?)

(まぁ気にすんな)

(そう言えば疼き止まった)