『……うーん…終わったぁ…』

席に座ったまま伸びをすると背骨がごきごき鳴った。ゆっくりと立ち上がる。書類整理って疲れるんだよなぁ。それもこれも善哉野郎が有給取った所為だ。奴の所為で僕の仕事が増えたんだし
ふと顔を上げると昼時はとっくに過ぎている。遅くなったがまぁお昼を食べた方が良いだろう。修兵さんに怒られるし。僕は執務室を後にした




注文したきつねうどんを持って手頃な席に座る。此処のは少し値段が高めだから席官クラスしか来ない食堂だ。確か安いとこは此処とは反対側にあった筈。まぁ行った事ないからうろ覚えだけど

「珍しいな、お前が自分から飯食ってんのは」

頂きますと手を合わせた瞬間頭に手が置かれた。見上げれば僕が昼食を食べないと怒られる原因が。

『食べないと誰かさんに怒られるから食べてますけど』

「ほー、そりゃ良いこったな」

修兵さんが向かい側に座り唐揚げ定食を食べ始めた。明らかに多い。良く食べるよなこの人。修兵さんを見つつうどんを啜る。あ、このスープ美味しい

「仕事は終わったのか?」

『ん』

「そっか」

只それだけ言ってまた食事を始める。僕もまたうどんを啜る。熱いから冷ましつつ食べていたら笑われた。悪かったな猫舌で

「この後何すんだ?」

『休憩がてら修行か対話』

正直する事もないし丁度良いと思う。そう言えば修兵さんが良いなそれ、と

「付き合ってやろうか?」

『修兵さん仕事は?』

「もう終わった」

つまり修兵さんも暇なのか。

『ならお願いしようかな』

「おう、任せとけ」

なかなか減らないうどんを啜る。熱っ。しまった、冷ますの忘れてた。水を飲んでいれば火傷したか?と笑われた。何かひたすら笑われてる気がする









「この時間帯に来るとは珍しいな、独月」

『今日はもう終わったからね』

辺り一面凍り付いた如何にも寒そうな世界。それが僕の精神世界らしい。個人的にはあまり好ましくはないんだけど。いや、だって凍り付けだよ?相当冷たい人みたいじゃん。
僕はそんな人間じゃないと信じたい

『修兵さんが来るまで付き合ってよ』

「暇を持て余し此処に来たのか」

「暇人めが」

毒を吐きながらすり寄って来る赤茶色の狐を撫でる。もう一頭の銀色の狐は僕の隣に座った
二頭とも藤凍月――僕の斬魄刀。何でも二刀一対型とは違ってまた珍しいタイプらしいが詳しい事は良く判らん。藍染隊長も珍しいって驚いてたし

『てかさ、風死格好良いよね』

銀色(そのまんま色で呼んでる)に言ってみると彼は首を傾げた

「形がか?」

『ん。慣れたら便利そう』

そう答えると赤色(色で呼ぶと長いから短縮)が膝を叩いてきた

「我等があれに化けるなど造作もない事なのだよ」

『………化ける?』

どういう事だ、と銀色を見れば彼はゆるりと尾を動かした

「我等は狐。欺き化かす者だ。故にお前が望めば我等は姿を変える」

「貴様の様な馬鹿でも試せば判るだろう」

『馬鹿言うな』

化ける、ねぇ…
考えていると銀色が空を見る

「時間だ。もう行け」

「もう来なくても良いからな」

銀色と赤色の頭を撫でて立ち上がる

『はいはい、また来るね』









「おう、帰ってきたか」

『……修兵さん…』

目を開けると修兵さんが此方を覗き込んでいた。どうだった?と頭を撫でられる。

『何か新しい力を発見したっぽい』

「は?」

立ち上がり藤凍月を抜く。

『虚空に色付け――『藤凍月』』

解号を言えば長刀と拳銃に変わる。そのまま思い浮かんだ言葉を口にした

『化けろ――『風死』』

ぐにゃりと歪んだ藤凍月が姿を変える。両方に刃の付いた真っ白な鎌に

『………出来た』

「………すげぇな」

試しに振り回してみる。回せるが何か凄く違和感。上手く回せてないんだろう。完璧に扱うのはなかなか難しそうだ。

「お前の斬魄刀で化けると真っ白になるんだな」

修兵さんは珍しいのか風死に化けた藤凍月を眺めている。片方を手にとって軽く振り回すとやっぱり僕とは違って違和感はない。扱い慣れてるからか

「風死を振り回す時は気を付けろよ?慣れてねぇ内は傷だらけになる」

『えぇえ……』

「俺も風死の軌道は読めねぇし」

マジか。危ないんだな風死。
取り敢えず扱い注意って事を覚えとこう

「なら今日はそれで修行するか」

『……風死で?』

こくりと頷く修兵さんを見て拒否権がない事を悟る。取り扱い注意だからもう少しゆっくり慣れていきたかったんだけど

『……宜しくお願いします』

「おう」



化けるのは狐の特技



(うわ此方飛んできた)

(ちゃんとキャッチしろよー)