院生だった阿散井達が入隊して暫く。最近十四番隊の隊長になった財前から副隊長にならないかという誘いが来る様になった。返事は勿論お断りしますの一言。僕は九番隊三席から動きたくなんかない。そう言っても月に一回は誘って来る。何なのあいつ意味判らん

「眉間に皺寄ってんぞ」

隣を歩いていた修兵さんに額をつつかれた。マジか。額に触れていれば頭に手を置かれる

「何悩んでんだ?」

『……修兵さんはきっとそうしろって言うから絶対言わない』

「何だそりゃ」

首を傾げた修兵さんにこくりと頷く。だって絶対副隊長に誘われてるって言えばなれって言うでしょこの人

「まぁお前がそう考えてるって事はそう言うんだろうな」

話したくなったら話せよ、と言った修兵さんが笑う。
僕はまだこの人と東仙隊長の下で学ぶべき事が沢山ある。だからまだ副隊長にはなれない。なりたくないし

『出来ればその話を知っても引き留めて欲しいな、副隊長サマ』

「いきなりどうしたんだよ、三席チャン」

おどけて言えば修兵さんは優しく笑う。やっぱり此処は居心地が良いから離れたくないな













「よっちびさぎ!」

『こんにちは海燕さん』

阿近さんにパシられて資料室から十二番隊に資料を運んでいると海燕さんと鉢合わせた。頑張ってるじゃねぇかと頭を撫でられる。いやちょっと資料の山が崩れそうなんでもう少し手加減して撫でて頂きたい

「十二番隊に運ぶんだな?」

『はい』

なら手伝ってやる、と資料の山が殆ど海燕さんの手に渡った。いや、忙しいでしょ副隊長。大丈夫ですよと言えば遠慮すんなとわっしわっし頭を撫でられる。首がもげます海燕さん

『…ありがとうございます』

「おう!」

にかっと笑った顔が日溜まりの様だ、と何となく思った












「……あんたまで来たんですか志波副隊長」

「ああ、ちびさぎが大変そうだったからな」

若干顔を引きつらせている阿近さんに良い気味だと思いつつ資料を机に作った僅かな場所に置く。勿論周りの物を押して場所は作ったよ。
てか資料運びさせるなら置き場くらい確保しといて欲しい

『阿近さん、資料此処に置いときましたから』

「おう、ご苦労さん」

まぁコーヒーでも飲んでけや、とマグカップを渡された。渡されたそれにフラスコに入った液体を注がれる。何かフラスコがぐつぐつ言ってると思ったらそれコーヒーだったのか。いや普通にコーヒーメーカー使ってよ、怪しい物に見えるから

「俺にはねぇのかよ」

「自分で注いで下さい」

海燕さんと阿近さんが話しているのをぼんやりと眺めながらコーヒーを飲む。うん、美味しい。隣に座った阿近さんに訊いてみる

『阿近さん』

「あ?」

『もし他の隊から副隊長になってくれって勧誘が来たらどうしますか?』

「は?…まぁ断るな」

『ですよね。でも断っても月一回のペースで誘いが来たら?』

「……お前そんなしつこい事されてんのか」

無言で頷けば阿近さんに頭を撫でられる。マグカップ片手に隣に来た海燕さんが何処の隊だ?と首を傾げた

『十四番隊です。財前がしつこい』

「あー…あの隊は最近隊長が変わったばっかりだからな…」

自分に合う副隊長が欲しいんだろ、と阿近さんが呟く。え、僕とあいつ全然合わないよ?あのぜんざい野郎むかつくし

「だが財前隊長がオメーを高く評価してんのも確かだ」

だから勧誘されてんだろ?と海燕さんに言われる。そんな評価全然嬉しくない。僕は九番隊の三席で居たい訳だし

「檜佐木には言ったのか?」

『まだです』

あの人絶対に副隊長になれって言うし。それを言えば二人が頷いた。やっぱり。

「まぁ東仙隊長と檜佐木には話しとけよ。あの二人はオメーの上官なんだしよ」

『………はい』

「もし十四番隊に出された時は社会経験だと思え」

『社会経験?』

阿近さんの言葉に首を傾げる

「お前等の中では変わらねぇかも知れねぇが立場的には檜佐木と同じになるんだ。その苦労を知って、戻りたかったらまた九番隊の三席に戻りゃ良いだろ」

「お、良い事言うじゃねぇか阿近!」

『ちょっ痛い海燕さん痛い』

何故僕の背中をばしばし叩く
でも確かに阿近さんの考えは良いかも知れない。修兵さん何だかんだ忙しそうだし。只ぜんざい野郎の副官っていうのが気に食わないが

『…少し前向きに考えてみます』

そう言えば二人に頭を撫でられた。そんなに撫でやすいのか僕の頭は











阿近さんと海燕さんと別れて隊舎に戻る。すると隊首室から五色ピアスが出て来た

「お、居った」

『………こんにちはぜんざい隊長』

「財前や」

呆れ顔の奴の名をちゃんと呼ぶ気なんかさらさらない。何の用だと思っていれば財前はひらりと一枚の書類を見せてきた

『…何それ』

「もう許可貰てきた」

『は?』

会話になってない。何言ってんだこいつと思いつつ見ればそれは異動届。え、何か凄く嫌な予感がする

「東仙隊長と檜佐木さんの許可貰てきたんや。此処に判もある」

『なっ……は…?』

余りの事に上手く言葉が出て来ない。恐る恐る名前を見れば其処には桜花独月の文字。………僕だ
思わず藤凍月に手を掛ける。抜こうとすれば後ろから手を押さえられた

「何やってんだお前は」

『……修兵さん…』

「後は任せて下さい財前隊長。こいつ少し混乱してるんで」

「…せやな。ほなまた後で」

隊首羽織をひらめかせて歩いて行く財前を只ぼんやりと見送る。そっと手を離した修兵さんが向かい合わせになって僕を見下ろした。その目には先程の僕の行為を咎める色が浮かんでいる

「…何で俺が怒ってるか判ってるな?桜花三席」

『…隊長に向かい抜刀しようとしてすみませんでした、檜佐木副隊長』

そう言えば溜息を吐いた修兵さんが腰を曲げ目線を合わせてきた

「…俺絡みになると感情的になるのがお前の悪い癖だ」

『……修兵さん絡み?』

首を傾げれば判ってなかったのかお前とまた溜息を吐かれた

「お前財前隊長からの話も俺の下から離れたくないって理由で断ってたんだろ?」

『ん』

でもそれだけなら修兵さん絡みとは限らないんじゃない?
そう思っている僕の頬を抓みながら修兵さんが言う。

「前に俺の悪口訊いて十一番隊の奴等をシメただろ」

『……むかついたから』

「てめぇの悪口は気にしねぇのにか?」

『………』

確かに僕自身の悪口は何ともない。腹も立たないし
けど修兵さんの悪口を訊くと無性に腹が立つ。だって何も知らない癖に修兵さんの悪口言うから。……確かに修兵さん絡みだわ

「ほらな?」

『………』

小さく頷いた僕を修兵さんが引き寄せた。背中に手を回せば頭を撫でられる
肩に顔を埋めた修兵さんが言った

「独月、お前十四番隊の副隊長になれ」

『………』

ぎゅっとしがみつけば修兵さんの腕に力が篭もった。拒否権はない。そんなのは判ってるけどやっぱり行きたくない。此処を離れたくない

「……なぁ独月、俺はな、お前が俺と並ぶぐらい強くなったのが嬉しいんだ」

小さな声に耳を傾ける。僕の背中を一定のリズムで叩く手は優しい

「正直俺はまだ三席で居て欲しい。けどお前が認められて副隊長になるんだったら其方の方が嬉しい」

『………』

「お前が本当に嫌なら無理強いはしねぇ。俺から隊長達に頼んで異動を取り下げて貰う」

そっと身を離されて目を合わせられた。けどな、と言葉が続けられる

「俺は同じ立場でお前と一緒に歩きてぇ」

『………』

「財前隊長から話を訊いた時、同じ立場で、お前と肩並べて歩きてぇと思った」

灰色の瞳がじっと僕を見ている。同じ立場なんて僕には荷が重いのに。俯けば優しく顎を持ち上げられた

「……不安か?」

『…僕に副隊長なんか…出来っこない…』

そう言えば修兵さんが小さく笑った

「んなもん最初は不安になって当たり前だ」

俺もそうだったし、と修兵さんが頭を掻いた

「何かあったら聞きに来い。何でも教えてやるし手伝ってやるよ」

『……ん…』

でも出来ればまた九番隊に戻りたい。そう言えば修兵さんが少し悩んだ後ににっと笑った

「なら約束しようや」

『?…約束?』

「そうだ、約束だ。こうしようぜ独月――」



If I become captain if, at that time you go to pick up. Wait until it color



(……判った…)

(約束な)

(ん)