崩壊の足音2
『はっ……っは…』
動けなくなった隊士達を庇いつつ虚の攻撃を防ぐ。何故か藤凍月は抜かれる事を拒んでいる。鯉口を藤凍月によって凍らされた状態では鞘から抜く事も叶わない
ちらりと振り向けば脚を負傷した都さんや動けなくなった隊士達が心配そうに此方を見ている
『都さん、皆を連れて逃げて下さい』
「副隊長は!?」
『僕はこいつを引きつけます。その間に早く』
太い触手の様なものを跳んで躱す。そのまま空中で左手を翳した
『破道の六十三・雷吼炮!』
放たれた電撃が虚の触手を何本か焼いた。虚が悲鳴を上げる。森の奥に逃げ込んで行った虚を追う事はせず、都さん達に近寄った
『大丈夫ですか?』
「ええ…副隊長こそ傷だらけに……」
『僕は平気ですよ。それより早く撤退しましょう』
あの虚の能力は判らないが奴の頭から生えた触手が厄介だ。出来れば今此処で仕留めたかったが負傷者を庇いながら斬魄刀なしで戦うのは分が悪過ぎる。都さんの身体を支え隊士二人にも撤退の命令を出そうとした瞬間――
「っ……ああ…!!」
『……え…』
都さんの身体に何かが突き刺さった。丁度腹の辺りから生えたその太い何かはうねうねと動く。咄嗟に鬼道を放とうとすると誰かに突き飛ばされた。誰に?――都さんに
『都さんっ!』
「…逃げて……副隊ちょ…」
「副隊長…あぶな…」
「ちびさぎ副隊ちょ……逃げ…」
見れば後ろに居た隊士二人も貫かれていた。僕以外の隊士、全員が
――キヒヒヒヒヒヒヒ!!!
『―――っ!!』
向かって来た触手を躱す。その間に他の触手はするすると戻っていった。都さん達を貫いたまま
『………待てっ!!』
追いかけるものの距離はどんどん開いていく。何故。あの程度の速さなら直ぐに追い付ける筈。
ふと脚を見ると赤い液体が纏わり付いていた。何時の間にか左足を怪我していたらしい。だから速度が出なかったのか。出血部位に手を当てて凍らせる。一時的な止血を済ませると僕は再び走り出した
「小娘、もう追い付いたのか?」
『………………!!!!!』
目を見開く。身体が石の様に動かない。只呆然と虚を見る。虚の口から四本出ているアレは何だ。僕のモノと同じ。修兵さんや海燕さんが撫でてくれる時に使うモノ。手、だ。ぼりぼりぼり、と硬いモノを擦り潰す様な音が虚の口から聞こえる。虚に付いている赤。伝うアレは
奇妙な音が聞こえなくなった時、虚が徐に口に何かを運んだ。だらりと力無く垂れ下がる。それを口に入れごぎっと嫌な音を響かせた。ソレと目が合う。光を失った瞳。優しく笑った顔が浮かぶ。アレ、は
『……ああああああ!!!』
身体の硬直が解け虚に回し蹴りを食らわせる。仮面に当たり怯んだ隙に虚の口から彼女を奪い取った。上半身しかない都さんを抱きかかえ周りを見る。他の隊士は見当たらない。恐らくあの四本の手は、隊士達、の…
『………っ』
血の気が引いてまた動けなくなる前に瞬歩でその場を離れる。微かに聞こえる呼吸音。まだ生きてる。きっと四番隊に運べば大丈夫。
急いで瀞霊廷への道を引き返していれば都さんが激しく咳き込んだ。吐き出された血が僕の頬に付着する
『都さんっ…都さん…!!』
「ち………ぎ……逃げ………」
『大丈夫!あいつはもう居ないよ!もうすぐ瀞霊廷に着くから頑張って!!』
虚ろな瞳が僕を見る。その微かな呼吸音が、光が今にも失われてしまいそうで怖かった。もっと速く、もっと速く。気の遠くなりそうな道のりの中、ただただそう思い続けた
「桜花副隊長と志波三席、帰還!」
帰ったのかとソファから腰を上げるといやに外が騒がしかった。何だ?何かあったのかと見に行けばそこには人集り。掻き分けて前に出れば言葉を失った。血塗れの独月と、胸から下のねぇ都さん。座り込んだ独月の目は見開かれていた。その口が小さく動き、何度も同じ言葉を紡ぐ。都さん、と
「独月、独月、しっかりしろ。何があった?」
しゃがみ込んで近くで見ればこいつ自身の傷の多さに驚く。傷だらけじゃねぇか。何度も話し掛けるがその口は都さんと紡ぐだけ。瞳孔は完全に開いてるし震えは止まらねぇ。駄目だ、パニックになってやがる
一端落ち着かせねぇと。そう思った瞬間独月の身体がぐらりと傾いた
「独月!!」
小さな身体を受け止める。その目は閉じられていた
「少し眠らせて頂きました」
そう言って笑んだのは卯ノ花隊長。独月に纏わり付くこの感じからして掛けられたのは白伏か?
此方を見ていた卯ノ花隊長がゆっくりと歩き出す
「檜佐木副隊長、桜花副隊長を綜合救護詰所まで運んで下さい」
「……はい」
独月を抱きかかえて先を歩く卯ノ花隊長に続く。上級医療班が総出で都さんの治療をしているのを横目で見る。あの人は恐らくもう助からねぇ。だから卯ノ花隊長が治療に付いてねぇんだろう
――人集りを抜けた時、入れ替わりで人集りに飛び込んで行く黒髪が見えた
血塗れの帰還
((傷だらけだ…一体何があったんだ独月…))
動けなくなった隊士達を庇いつつ虚の攻撃を防ぐ。何故か藤凍月は抜かれる事を拒んでいる。鯉口を藤凍月によって凍らされた状態では鞘から抜く事も叶わない
ちらりと振り向けば脚を負傷した都さんや動けなくなった隊士達が心配そうに此方を見ている
『都さん、皆を連れて逃げて下さい』
「副隊長は!?」
『僕はこいつを引きつけます。その間に早く』
太い触手の様なものを跳んで躱す。そのまま空中で左手を翳した
『破道の六十三・雷吼炮!』
放たれた電撃が虚の触手を何本か焼いた。虚が悲鳴を上げる。森の奥に逃げ込んで行った虚を追う事はせず、都さん達に近寄った
『大丈夫ですか?』
「ええ…副隊長こそ傷だらけに……」
『僕は平気ですよ。それより早く撤退しましょう』
あの虚の能力は判らないが奴の頭から生えた触手が厄介だ。出来れば今此処で仕留めたかったが負傷者を庇いながら斬魄刀なしで戦うのは分が悪過ぎる。都さんの身体を支え隊士二人にも撤退の命令を出そうとした瞬間――
「っ……ああ…!!」
『……え…』
都さんの身体に何かが突き刺さった。丁度腹の辺りから生えたその太い何かはうねうねと動く。咄嗟に鬼道を放とうとすると誰かに突き飛ばされた。誰に?――都さんに
『都さんっ!』
「…逃げて……副隊ちょ…」
「副隊長…あぶな…」
「ちびさぎ副隊ちょ……逃げ…」
見れば後ろに居た隊士二人も貫かれていた。僕以外の隊士、全員が
――キヒヒヒヒヒヒヒ!!!
『―――っ!!』
向かって来た触手を躱す。その間に他の触手はするすると戻っていった。都さん達を貫いたまま
『………待てっ!!』
追いかけるものの距離はどんどん開いていく。何故。あの程度の速さなら直ぐに追い付ける筈。
ふと脚を見ると赤い液体が纏わり付いていた。何時の間にか左足を怪我していたらしい。だから速度が出なかったのか。出血部位に手を当てて凍らせる。一時的な止血を済ませると僕は再び走り出した
「小娘、もう追い付いたのか?」
『………………!!!!!』
目を見開く。身体が石の様に動かない。只呆然と虚を見る。虚の口から四本出ているアレは何だ。僕のモノと同じ。修兵さんや海燕さんが撫でてくれる時に使うモノ。手、だ。ぼりぼりぼり、と硬いモノを擦り潰す様な音が虚の口から聞こえる。虚に付いている赤。伝うアレは
奇妙な音が聞こえなくなった時、虚が徐に口に何かを運んだ。だらりと力無く垂れ下がる。それを口に入れごぎっと嫌な音を響かせた。ソレと目が合う。光を失った瞳。優しく笑った顔が浮かぶ。アレ、は
『……ああああああ!!!』
身体の硬直が解け虚に回し蹴りを食らわせる。仮面に当たり怯んだ隙に虚の口から彼女を奪い取った。上半身しかない都さんを抱きかかえ周りを見る。他の隊士は見当たらない。恐らくあの四本の手は、隊士達、の…
『………っ』
血の気が引いてまた動けなくなる前に瞬歩でその場を離れる。微かに聞こえる呼吸音。まだ生きてる。きっと四番隊に運べば大丈夫。
急いで瀞霊廷への道を引き返していれば都さんが激しく咳き込んだ。吐き出された血が僕の頬に付着する
『都さんっ…都さん…!!』
「ち………ぎ……逃げ………」
『大丈夫!あいつはもう居ないよ!もうすぐ瀞霊廷に着くから頑張って!!』
虚ろな瞳が僕を見る。その微かな呼吸音が、光が今にも失われてしまいそうで怖かった。もっと速く、もっと速く。気の遠くなりそうな道のりの中、ただただそう思い続けた
「桜花副隊長と志波三席、帰還!」
帰ったのかとソファから腰を上げるといやに外が騒がしかった。何だ?何かあったのかと見に行けばそこには人集り。掻き分けて前に出れば言葉を失った。血塗れの独月と、胸から下のねぇ都さん。座り込んだ独月の目は見開かれていた。その口が小さく動き、何度も同じ言葉を紡ぐ。都さん、と
「独月、独月、しっかりしろ。何があった?」
しゃがみ込んで近くで見ればこいつ自身の傷の多さに驚く。傷だらけじゃねぇか。何度も話し掛けるがその口は都さんと紡ぐだけ。瞳孔は完全に開いてるし震えは止まらねぇ。駄目だ、パニックになってやがる
一端落ち着かせねぇと。そう思った瞬間独月の身体がぐらりと傾いた
「独月!!」
小さな身体を受け止める。その目は閉じられていた
「少し眠らせて頂きました」
そう言って笑んだのは卯ノ花隊長。独月に纏わり付くこの感じからして掛けられたのは白伏か?
此方を見ていた卯ノ花隊長がゆっくりと歩き出す
「檜佐木副隊長、桜花副隊長を綜合救護詰所まで運んで下さい」
「……はい」
独月を抱きかかえて先を歩く卯ノ花隊長に続く。上級医療班が総出で都さんの治療をしているのを横目で見る。あの人は恐らくもう助からねぇ。だから卯ノ花隊長が治療に付いてねぇんだろう
――人集りを抜けた時、入れ替わりで人集りに飛び込んで行く黒髪が見えた
血塗れの帰還
((傷だらけだ…一体何があったんだ独月…))