「そないに刃向けんといてぇや、財前隊長。恐ろしゅうて適わんわぁ」

「ほんなら俺らを追わんとほかっとけば良かったんとちゃいます?」

「そらあかん。君ら見逃したんがバレたらボクまで怒られてまうやないの」

「そんなん知らんわ」

「十四番隊長サンは冷たいなぁ」


只今上空にて財前さん家の光くんと市丸さん家のギンさんが戦っております。え、何で僕が戦ってないのかって?隊長命令で待機を言い渡されたからだよこの野郎
おまけに手を出すなとまで言われちゃったから完全に暇。つまんない。誰かへるぷみー

「射殺せ 『神鎗』」

「地に堕とせ 『闇燕』」

始解しやがったよあいつら。
見た目に変化はない斬魄刀を市丸隊長は財前に向けた。市丸隊長の斬魄刀――神鎗の刃が伸びる。
市丸隊長の一撃を財前は双振りになった斬魄刀で防いだ。財前の斬魄刀、闇燕は二刀一対。二刀流と戦うだけでめんどくさいのに闇燕は刀身に風を纏える。鍔迫り合いになれば風で傷付くし距離を取ろうとしてもやたら速い財前から逃げるのは難しい
対して市丸隊長の神鎗は刀身が伸びる。能力はそれだけっぽいけどいや兎に角伸びる。やたら伸び縮みされたら戦い辛い
あれだよな。正に性格の悪さが刀に現れてるよな

「さっすが十四番隊長サン、強いなぁ」

「そんにやけ面、ひっぺがしたる」

暇だから取り敢えずは見てるけどさ、あれ。隊長同士で戦ってる暇あったっけ?
いや、何か市丸隊長が悪巧みしてそうだなってのは藍染隊長が暗殺された時から思ってはいたけど。

「何隠してはるんすか市丸隊長」

「嫌やなぁ。ボクはなーんにも隠してへんよ?」

「そのにやけ面の何処を信じればええんや」

さっきからあいつにやけ面って失礼だな。まぁ馬が合わないとは前からぼやいてたけど

「……何が起こってんだ此処は…っ!?」

『ん…?…ああ、修兵さん』

驚いた声に振り向けば居たのは顔に傷がある黒髪。檜佐木修兵――九番隊副隊長
彼は呆気に取られた様子で上空で戦う隊長二人を見ていた
そしてはっとした表情で僕を見る。何、何か付いてる?

「逃げるぞ独月っ!こんな所に居たら巻き込まれちまうっ!!」

『いやいや大丈夫だよ。隊長達も流石に部下巻き込んだりはしないでしょ』

多分だけどね。まぁ修兵さんは心配し過ぎ。取り敢えず此処なら建物にぶつかったり崩壊させたり刀身やたらと伸ばしたりしなければ大丈夫でしょ
そう思って修兵さんを見る。
修兵さんは上を見て固まっていた。ははは、青ざめてる

『修兵さん?』

「………独月」

『ん?』

「問題です。お前がさっき大丈夫だって言った理由は?」

『隊長達も流石に部下巻き込んだりはしないでしょ?』

「違う。その後」

『建物にぶつかったり崩壊させたり刀身やたら伸ばしたりしなければ大丈夫?』

「正解」

『わーい』

「じゃあ正解した賢い後輩に第二問目だ」

そう言った修兵さんが上を指差した

「第二問。――アレ、なーんだ」

『………ぜんざいたいちょーが僕達の真上の建物に衝突して闇燕の風で崩壊しちゃった建物の残骸と市丸隊長が考えなしに伸ばしまくった神鎗で斬っちゃった建物の上半分です』

「正解」

修兵さんに頭を撫でられる
そのまま僕の髪をくしゃくしゃにしながら修兵さんは落ちてくる建物の残骸を見ていた

「最終問題だ。この状態で俺達が取るべき行動は?」

『逃げる』

「大正解。百点だっ!」

ニヤリと笑った修兵さんを見たのと共に浮遊感に襲われる。丁度腹の辺りに圧迫感。修兵さんの腕だ。それを認識した瞬間聞こえた目ぇ瞑っとけ、の一言。その言葉に反射的に目を閉じて、ああ瞬歩を使うのかと納得。前に一回今みたいに小脇に抱えられた状態で瞬歩使われて酔ったんだよね、僕
初めて瞬歩で移動されるわ目は回るわで、半泣きになって修兵さんがおろおろしてた。
もうずっと前の事なのにまだ覚えていたのか、と少し笑った。

「いきなり抱えちまって悪かったな。酔わなかったか?」

『目閉じてたから大丈夫だったよ。ありがとう』

修兵さんが少し眉を下げて訊いてくる。何か犬みたいですよその顔
てかまだ足は地面についてない。現在進行形で小脇に抱えられている。何故

『そろそろ下ろして下さい修兵さん』

「お前より俺の方が瞬歩は速えんだ。このまま抱えられとけ」

『僕は荷物か』

確かに瞬歩は苦手だけどさ。でもそこらの奴らよりは速いと思うんだ。只やたら修兵さんが無駄に速いだけで。
ていうかね、抱えてくれるのはもう気にしてないんだけどさ。腕が食い込んで痛いよ修兵さん。あんたの無駄に露出された腕が僕の腹に痛みを与えてるよ。それについて文句を言おうとした瞬間

「動くぞ独月っ!」

急に修兵さんが僕を抱えたまま真横に跳んだ。いや言うの遅いんだけど

『今ぐえってなったからね。ぐえって』

「あー悪かった!だが今はそれ所じゃねぇっ!!」

『何焦ってんの?』

「上見ろ上っ!!」

『上?』

言われた通りに上を見る。見えたのは――焦った修兵さんの顔と修兵さんの頭すれすれまで迫った数え切れない程の瓦礫だった

「わり。逃げ切れねぇわ」

『あ、やっぱりかーあはははは』

「ほんとすまん、あはははは」

軽く言った僕に修兵さんもへらっと笑って返した。ノリ良いですね修兵さん
修兵さんが身を低くして僕を抱え込んでくれた。視界は死覇装で真っ黒。真上からガラガラと瓦礫が降り注いで来る音が聞こえる。うん、財前と市丸隊長絶対恨んでやる。死んだら枕元に立ってやろう
轟音と衝撃を感じて僕は意識を手放した。
最後まで感じていたのは僕を守ろうと包み込む温もりだった


視界は黒、外は白


(懴罪宮付近にて隊長同士の戦闘が発生!)

(副隊長二名が先程の建物の倒壊に巻き込まれた模様!直ちに四番隊上級医療班は現場に直行せよ!)