黒髪と勉強2
家の近くの小さな丘。
其処で修兵さんと向かい合う
「よーし、始めるか」
『…お願いします』
一礼して、背中に背負っていた斬魄刀を抜いた。
今日は実技練習らしい。一通り剣術の訓練をして、始解の訓練も少しするとか。
言い渡されていた素振り百回は朝のうちに済ませてあるので、今から行うのは修兵さんとの試合。実戦の雰囲気に少しでも慣れる為らしい。
すぅ、と息を吐き、地面を蹴った。
斬魄刀を振り上げ、修兵さんに飛び掛かる
『………はっ!』
「打ち込みが甘ぇ!」
『……たぁっ!』
「軽い!」
全力で行っても弾き返される。斬り掛かってもいなされる。だからといって修兵さんの打ち込みを待てば此方が怪我をする。
なら一体どうすれば良いのか
『っ…!』
斬り掛かってきた修兵さんを受け止めようとすれば膝が折れた。それを見た修兵さんが僅かに力を弛め、叱咤する
「てめぇが俺の斬撃を受けきれる訳ねぇだろ!受け流せ!」
『…受け、ながす』
ぶっちゃけ受け流すという行為が判らない。受けて流す訳だから、一旦受け止めて流す?いやそれだと流す前に受け止めてるから駄目だ。
修兵さんは受け止めずに受け流せと言った。だとすれば、触ってその速度を落とす感じ?
そう考え、張り詰めていた右腕の力を抜いた。するとそれに沿う様に修兵さんの身体が傾ぐ。ああ、受け流すとはこういう事か。
にっと笑った修兵さんが僕の頭を撫でた
「そうだ。てめぇの細腕じゃ相手の斬撃を受け止めるなんてまず出来ねぇ事だと考えろ。てめぇより体格の良い相手なら、まず受け流せ」
『はい』
「だが何度も同じ手は通用しねぇ。基本的には最初の一撃を目安にしろ」
『……最初』
「一撃目を受け流して、出来た隙を仕留める。お前足速ぇから、瞬歩出来たらそれでいけるだろうし」
瞬歩って何だ。
疑問符を飛ばしていれば、それに気付いたらしい修兵さんが補足した
「瞬歩ってのは霊術院で習う歩法だ。こう…足に霊圧を溜めて、瞬間移動みてぇに移動すんだよ」
『……見たい』
「…今やれと」
『ん』
瞬間移動見たい。
頷くと頭を掻いた修兵さんがしゃーねぇなと笑った
「良し、じゃあちゃんと見とけよ」
『ん』
じっと見ていると、修兵さんがふぅ、と息を吐いた。その瞬間、一瞬で修兵さんが消えた
『……へ?』
辺りを見渡すが修兵さんらしき姿はない。え、何処?修兵さん何処行った?
頻りにキョロキョロしていれば、上から低い声が降ってきた
「独月、此方だ」
『……はぅ?』
「はは、間抜け面」
何だか失礼な事を言われたがそれを気にしている場合じゃない。
だって修兵さんが浮いているのだ。
何で何もない所に立っているのか。じっと足許を見ていれば僕を見下ろす修兵さんが笑う
「これも死神の初歩だ。足許の霊子を固めてる」
『…すごい…』
「そりゃどーも。お前もやってみるか?」
『無理』
「即答かよ」
だってそんなの出来る気がしない。僕なんか霊圧を撃ち出すのもまだ難航してるのに。
足許を固めるなんて絶対無理だ
「じゃあ一緒にやってみるか」
『え』
あれ、たった今無理だって僕言わなかったっけ?
すとんと降りてきた修兵さんは僕を抱え上げた。そしてぐっと足に力を込める。
瞬間────────景色が物凄い速度で流れた。
気付けば修兵さんが先程と同じ様に宙に浮いていた
『……え?』
「今のが瞬歩だ。瞬歩はあくまでも歩法だ。確かに見てる側からは瞬間移動に見えるけど、厳密に言えば物凄ぇ速度で移動してるだけなんだよ」
つまりテレポートではなく走って移動している、と。滅茶苦茶足速いな修兵さん。
感心していれば修兵さんが目の前でにっこりと笑った。素晴らしく爽やかな笑み。
…あれ、何か嫌な予感がするんですけど
「独月、さっき俺が教えた空中での立ち方言ってみ?」
『……足許の…霊子を、固める』
「そうだ。じゃあ、やってみろ」
そう言った修兵さんが────────僕の脇に差し込んでいた手を離した。
『は……!?』
当然僕の身体は重力に従い下に落ちる。
いやいやいやこれ無理だって!上下の重力は人体が苦手なものなんだぞ!
これで頭から落ちたら死ぬぞ!死んだら修兵さん呪ってやる!
そう考える間にも頭が下に下がりそうになる。
やばいこのままじゃほんとに地面に真っ逆さまだ。死ぬのは嫌だ。まだ死にたくない。
ぎゅっと目を瞑り、足に力を込めた。
瞬間────────足が急に何かの上に立った。え、地面?でも地面はまだ大分離れてた筈じゃ…?
そう思った時、重力に沿って前傾姿勢になりかけていた身体が更に傾いた。
あ、転ぶ。そう思った時、腰に大きな何かが回された
「良し、合格」
『……え?』
恐る恐る後ろを振り向く。修兵さんが笑いながら後ろに立っていた。
「瞬歩はまだ無理だろうし、今回はこれぐらいにしとくか」
笑顔の修兵さんを凝視する。
この笑顔と今の発言から考えられる事は一つあるが、流石にそれは違うと思いたい
『………しゅーへーさん』
「ん?」
『……なんで…落とした?』
手が滑ったんだよね?間違ってもわざとじゃないよね?
もしわざとだったら僕本気で泣きたくなるんだけど。修兵さんそんな酷い人じゃないよね?てか頼むそうじゃないと言ってくれ。
じっと見つめていれば、修兵さんはへらりと笑った
「良く言うだろ?ライオンは子を崖から突き落とすって」
『………………』
こいつ鬼だ
「独月、見とけよ」
『…ん』
あれから半泣きで逃げた僕は敢えなく捕まり、今は鬼道の練習中。
掌に青白い霊圧の塊を作った修兵さんは、それを真っ直ぐ前に放った。
一直線に飛んだそれが木の幹にぶつかり、柔らかく砕けた
「イメージは掴めてんだろ?やってみな」
『……ん』
まずは掌に集中する。
掌から水を出す感覚。真ん丸なそれをイメージしていれば、掌に青白い塊が出来た
「大分早くなったな。じゃあ次だ、真っ直ぐ飛ばしてみろ」
『ん』
手を真っ直ぐ前に伸ばす。
水が手を離れて真っ直ぐ飛んで、木にぶつかるイメージ。
とん、と押す様にイメージを持つ。
手から離れた塊が真っ直ぐ飛んでいき────────丁度木と僕との中間地点で壊れた
『……あ…』
「うん、良い感じだ。後はもうちょい外を固める事かな」
外を固めるって何だ。
修兵さんを見上げればすぐに解説してくれた
「飛ばす前にもう少し塊の外側を固くするイメージしてみろ。そうすりゃきっと次は木に当てられるさ」
『……ん』
頷いてもう一度集中する。
掌に青白い塊を作り、さっき言われた通り固くするイメージを浮かべる。
固くする、だから……ああ、凍らせたら良いんだ。表面を氷で覆う。でも中は水だから、当たったら砕ける。良し、これでいこう。
手を伸ばし、青白い霊圧の塊を撃ち出した。
撃ち出された塊が真っ直ぐに飛んでいく。あれ、何かさっきより白っぽい様な…
ぼんやりとそんな事を考えていれば、先程の到達地点を通り越した。
そして目標だった木の幹にぶつかり────────ばきり、と
「……うん?」
何故か木が白くなった。え、何で?
修兵さんが木の傍に走っていく。木の幹に触り、それから僕に向かって手招きした。
駆け寄れば頭を撫でられた。
そして不思議な事を言われる
「お前、氷雪系か」
『…ひょーせっけー…?』
「何だそのセコさを冷やかすみてぇな言い方。氷雪系だ、ひょーせつけー」
『…ひょーせつけー』
「そ。氷に雪で氷雪系」
つまりは寒い感じなのか。やだな、僕寒いの嫌いなのに。
でも何でそんな事を言うのかと修兵さんを見上げれば、彼は木の幹を指差した
「凍ってんだろ、これ。お前の霊圧が当たったからだ」
『……冷たい』
「そりゃ氷だからな」
この木だけ霜が降りた様に白くなっている。ぺたぺた触っていれば手が赤くなった。うえ、冷たい
「まだお前の霊圧がコントロールし始めて間もねぇからこの程度なのかも知れねぇ。始解した斬魄刀に乗せて撃ち出せば、氷とか飛ばせるかもな」
『…無理』
そんな凄いの普通に無理
げんなりとしているであろう僕をまるっと無視して、嬉々とした表情で修兵さんは言った
「良し、明日から本格的な鬼道の練習だ。詠唱を覚えさせるからな」
『……え』
「因みに覚えてなかったら罰ゲームな?」
『………………』
やっぱこいつ鬼だ
黒髪と訓練
((そろそろ言わねぇとな……))
執筆訂正
20140314
其処で修兵さんと向かい合う
「よーし、始めるか」
『…お願いします』
一礼して、背中に背負っていた斬魄刀を抜いた。
今日は実技練習らしい。一通り剣術の訓練をして、始解の訓練も少しするとか。
言い渡されていた素振り百回は朝のうちに済ませてあるので、今から行うのは修兵さんとの試合。実戦の雰囲気に少しでも慣れる為らしい。
すぅ、と息を吐き、地面を蹴った。
斬魄刀を振り上げ、修兵さんに飛び掛かる
『………はっ!』
「打ち込みが甘ぇ!」
『……たぁっ!』
「軽い!」
全力で行っても弾き返される。斬り掛かってもいなされる。だからといって修兵さんの打ち込みを待てば此方が怪我をする。
なら一体どうすれば良いのか
『っ…!』
斬り掛かってきた修兵さんを受け止めようとすれば膝が折れた。それを見た修兵さんが僅かに力を弛め、叱咤する
「てめぇが俺の斬撃を受けきれる訳ねぇだろ!受け流せ!」
『…受け、ながす』
ぶっちゃけ受け流すという行為が判らない。受けて流す訳だから、一旦受け止めて流す?いやそれだと流す前に受け止めてるから駄目だ。
修兵さんは受け止めずに受け流せと言った。だとすれば、触ってその速度を落とす感じ?
そう考え、張り詰めていた右腕の力を抜いた。するとそれに沿う様に修兵さんの身体が傾ぐ。ああ、受け流すとはこういう事か。
にっと笑った修兵さんが僕の頭を撫でた
「そうだ。てめぇの細腕じゃ相手の斬撃を受け止めるなんてまず出来ねぇ事だと考えろ。てめぇより体格の良い相手なら、まず受け流せ」
『はい』
「だが何度も同じ手は通用しねぇ。基本的には最初の一撃を目安にしろ」
『……最初』
「一撃目を受け流して、出来た隙を仕留める。お前足速ぇから、瞬歩出来たらそれでいけるだろうし」
瞬歩って何だ。
疑問符を飛ばしていれば、それに気付いたらしい修兵さんが補足した
「瞬歩ってのは霊術院で習う歩法だ。こう…足に霊圧を溜めて、瞬間移動みてぇに移動すんだよ」
『……見たい』
「…今やれと」
『ん』
瞬間移動見たい。
頷くと頭を掻いた修兵さんがしゃーねぇなと笑った
「良し、じゃあちゃんと見とけよ」
『ん』
じっと見ていると、修兵さんがふぅ、と息を吐いた。その瞬間、一瞬で修兵さんが消えた
『……へ?』
辺りを見渡すが修兵さんらしき姿はない。え、何処?修兵さん何処行った?
頻りにキョロキョロしていれば、上から低い声が降ってきた
「独月、此方だ」
『……はぅ?』
「はは、間抜け面」
何だか失礼な事を言われたがそれを気にしている場合じゃない。
だって修兵さんが浮いているのだ。
何で何もない所に立っているのか。じっと足許を見ていれば僕を見下ろす修兵さんが笑う
「これも死神の初歩だ。足許の霊子を固めてる」
『…すごい…』
「そりゃどーも。お前もやってみるか?」
『無理』
「即答かよ」
だってそんなの出来る気がしない。僕なんか霊圧を撃ち出すのもまだ難航してるのに。
足許を固めるなんて絶対無理だ
「じゃあ一緒にやってみるか」
『え』
あれ、たった今無理だって僕言わなかったっけ?
すとんと降りてきた修兵さんは僕を抱え上げた。そしてぐっと足に力を込める。
瞬間────────景色が物凄い速度で流れた。
気付けば修兵さんが先程と同じ様に宙に浮いていた
『……え?』
「今のが瞬歩だ。瞬歩はあくまでも歩法だ。確かに見てる側からは瞬間移動に見えるけど、厳密に言えば物凄ぇ速度で移動してるだけなんだよ」
つまりテレポートではなく走って移動している、と。滅茶苦茶足速いな修兵さん。
感心していれば修兵さんが目の前でにっこりと笑った。素晴らしく爽やかな笑み。
…あれ、何か嫌な予感がするんですけど
「独月、さっき俺が教えた空中での立ち方言ってみ?」
『……足許の…霊子を、固める』
「そうだ。じゃあ、やってみろ」
そう言った修兵さんが────────僕の脇に差し込んでいた手を離した。
『は……!?』
当然僕の身体は重力に従い下に落ちる。
いやいやいやこれ無理だって!上下の重力は人体が苦手なものなんだぞ!
これで頭から落ちたら死ぬぞ!死んだら修兵さん呪ってやる!
そう考える間にも頭が下に下がりそうになる。
やばいこのままじゃほんとに地面に真っ逆さまだ。死ぬのは嫌だ。まだ死にたくない。
ぎゅっと目を瞑り、足に力を込めた。
瞬間────────足が急に何かの上に立った。え、地面?でも地面はまだ大分離れてた筈じゃ…?
そう思った時、重力に沿って前傾姿勢になりかけていた身体が更に傾いた。
あ、転ぶ。そう思った時、腰に大きな何かが回された
「良し、合格」
『……え?』
恐る恐る後ろを振り向く。修兵さんが笑いながら後ろに立っていた。
「瞬歩はまだ無理だろうし、今回はこれぐらいにしとくか」
笑顔の修兵さんを凝視する。
この笑顔と今の発言から考えられる事は一つあるが、流石にそれは違うと思いたい
『………しゅーへーさん』
「ん?」
『……なんで…落とした?』
手が滑ったんだよね?間違ってもわざとじゃないよね?
もしわざとだったら僕本気で泣きたくなるんだけど。修兵さんそんな酷い人じゃないよね?てか頼むそうじゃないと言ってくれ。
じっと見つめていれば、修兵さんはへらりと笑った
「良く言うだろ?ライオンは子を崖から突き落とすって」
『………………』
こいつ鬼だ
「独月、見とけよ」
『…ん』
あれから半泣きで逃げた僕は敢えなく捕まり、今は鬼道の練習中。
掌に青白い霊圧の塊を作った修兵さんは、それを真っ直ぐ前に放った。
一直線に飛んだそれが木の幹にぶつかり、柔らかく砕けた
「イメージは掴めてんだろ?やってみな」
『……ん』
まずは掌に集中する。
掌から水を出す感覚。真ん丸なそれをイメージしていれば、掌に青白い塊が出来た
「大分早くなったな。じゃあ次だ、真っ直ぐ飛ばしてみろ」
『ん』
手を真っ直ぐ前に伸ばす。
水が手を離れて真っ直ぐ飛んで、木にぶつかるイメージ。
とん、と押す様にイメージを持つ。
手から離れた塊が真っ直ぐ飛んでいき────────丁度木と僕との中間地点で壊れた
『……あ…』
「うん、良い感じだ。後はもうちょい外を固める事かな」
外を固めるって何だ。
修兵さんを見上げればすぐに解説してくれた
「飛ばす前にもう少し塊の外側を固くするイメージしてみろ。そうすりゃきっと次は木に当てられるさ」
『……ん』
頷いてもう一度集中する。
掌に青白い塊を作り、さっき言われた通り固くするイメージを浮かべる。
固くする、だから……ああ、凍らせたら良いんだ。表面を氷で覆う。でも中は水だから、当たったら砕ける。良し、これでいこう。
手を伸ばし、青白い霊圧の塊を撃ち出した。
撃ち出された塊が真っ直ぐに飛んでいく。あれ、何かさっきより白っぽい様な…
ぼんやりとそんな事を考えていれば、先程の到達地点を通り越した。
そして目標だった木の幹にぶつかり────────ばきり、と
「……うん?」
何故か木が白くなった。え、何で?
修兵さんが木の傍に走っていく。木の幹に触り、それから僕に向かって手招きした。
駆け寄れば頭を撫でられた。
そして不思議な事を言われる
「お前、氷雪系か」
『…ひょーせっけー…?』
「何だそのセコさを冷やかすみてぇな言い方。氷雪系だ、ひょーせつけー」
『…ひょーせつけー』
「そ。氷に雪で氷雪系」
つまりは寒い感じなのか。やだな、僕寒いの嫌いなのに。
でも何でそんな事を言うのかと修兵さんを見上げれば、彼は木の幹を指差した
「凍ってんだろ、これ。お前の霊圧が当たったからだ」
『……冷たい』
「そりゃ氷だからな」
この木だけ霜が降りた様に白くなっている。ぺたぺた触っていれば手が赤くなった。うえ、冷たい
「まだお前の霊圧がコントロールし始めて間もねぇからこの程度なのかも知れねぇ。始解した斬魄刀に乗せて撃ち出せば、氷とか飛ばせるかもな」
『…無理』
そんな凄いの普通に無理
げんなりとしているであろう僕をまるっと無視して、嬉々とした表情で修兵さんは言った
「良し、明日から本格的な鬼道の練習だ。詠唱を覚えさせるからな」
『……え』
「因みに覚えてなかったら罰ゲームな?」
『………………』
やっぱこいつ鬼だ
黒髪と訓練
((そろそろ言わねぇとな……))
執筆訂正
20140314