ぼんやりと意識が浮上して、窓から差し込む朝日に背を向ける。すると毛布が引っ付いてきた。何だこの毛布、追尾機能なんか付いてたか?阿近さんにそんな依頼をした覚えはないんだけど
それにしても枕硬い。しかも肌色。こんな枕使ってない筈

『………あ』

振り向いて納得。毛布だと思っていたものは修兵さんだったらしい。枕は修兵さんの腕。そりゃ硬いわな。てか前もあったぞこんな事
まぁ泊まって行く時は大概この状態だけど僕が朝起きたら修兵さんは既に朝ご飯作ってるのが何時もだから、正直この状況は数える程しかない。ぐっすりと眠っている修兵さんの髪を撫でてみる。さらさらなそれは撫で心地が良い。てか此処僕の部屋だ。て事はこの人僕を運んでそのまま寝たのか。部屋隣なんだからもう少し頑張ろうよ
時計を見ればそろそろ支度した方が良い時間。確か今日は修兵さん非番だったなと思い出し起こさない様にベッドから抜け出す事を決意。腕を外しそっと身を起こそうとすれば抱き込まれた。何故

「…ん……独月それは犬じゃねぇ…猫だ………」

『何の夢見てんだよ』

しかも犬と猫を間違えるってどうなの。あんたの中で僕はそんなに馬鹿なイメージなのか。ちょっとショック
必死こいて腕から逃げ出して溜息。何で朝からこんなに疲れないといけないんだ。
直ぐ傍に畳まれていた隊長羽織と立て掛けられていた藤凍月を持って居間に向かう。髪は面倒だから後ろで一つに括った。顔を洗って死覇装に着替えればもう時間。隊長が遅刻とか洒落にならん。取り敢えず飴玉を入れた巾着を引っ付かんで部屋を出た








ぼんやりとした空間の中、目の前の独月は黒猫をわんこと呼んで撫でている。何処をどう見たら犬なんだ。そいつ完璧猫じゃねぇか。ほら今にゃあって鳴いたし。それでも独月はわんこ可愛いねと笑って猫の頭を撫でる。いやだからそれ猫だって。笑ってんの見ると何か和むけどお前が撫でてるそれは猫だ

「だからそれ猫………ん?」

目を開けると見慣れた天井。今の夢だったのか
つかどんな夢だよ。意味判んねぇ。夢には意味があるとか訊いたが理解出来ねぇ。
ベッドからゆっくり身を起こす。二日酔いの頭が若干痛む。やっぱ昨日飲み過ぎたか。あの後飲み比べになったし
部屋の主の気配がない辺りからしてあいつはもう行っちまったらしい。せめて見送りぐらいはしてやりたかったんだが

「ふぁあ………」

休憩を知らせるタイマーはセットして隊首室の俺の机に置いてあるが独月なら無視しかねねぇ。休まずに上がりまで仕事してる可能性が高ぇし。つかどうせ四席も泣きついて来るだろうし。ちょっと待てよ。って事は俺行かないといけねぇじゃねぇか。非番だぞ俺。ああでも仕方ねぇのか。あいつ俺が居ねぇと何も食わねぇし

「しゃーねぇな…」

弁当でも作ってってやるか。着流しのまま行ってもまぁ大丈夫だろ












『………ん?』

ふと電子音がして其方を見る。音は修兵さんの机の上から聞こえてきた。立ち上がり近付けば黒くて小さい機械がピーピー鳴っている。手に取って停止ボタンを押せば直ぐに鳴り止んだ。タイマーセットしてあったのか修兵さん。時間を見れば丁度お昼。まぁ後少しやってから休めば良いかと思い書類を手に取った






「入るぞ隊長」

ノックをしても返事がないのは当たり前。寧ろ返事があったら体調を気にする。扉を開ければ独月は机に向かって書類に目を通していた。近付いても気付かねぇ。お前その内暗殺されそうで怖いわ。頭を叩けば驚いた面で俺を見た

『………修兵さん?』

「おう、休憩しろ隊長」

書類を引ったくってソファまで移動させれば渋々座った。もう少しだったのにってワーカホリックって奴かお前は

「おら、昼飯持ってきてやった」

『え』

予期してなかったのかきょとんとした顔で俺を見る。今日は俺が髪を弄ってねぇから普通に女だ。普段からそんなにしとけばモテるのにな。いや今もモテてるか、女に。まぁ男にもモテるがちびさぎ状態だと中性的だから女性隊員のファンが多い。この前も女性隊員に告られて顔を引きつらせてた

『…檜佐木さん今日非番なのに?』

「非番だからこそ、だな」

仕事中の呼び方に変わった事は無視しつつ弁当を広げる。正直何時もみたいに修兵さんって呼ばれねぇと変な感じだな。まぁこいつもこいつなりの考えがあってそう呼ぶ訳だから文句は言わねぇけど
箸を持たせれば完全に仕事を諦めた様で溜息を吐いた。俺に勝てる訳ねぇだろうが

「頂きます」

『………頂きます』

玉子焼きを口に入れてやると独月がもぐもぐと咀嚼する。小動物に餌やってる気分。

『…美味しい』

「そ」

頭を撫でてから俺も玉子焼きを口にする。うん、上出来。飯を食ってる間も部下が書類を持ってくる。それを見た独月が食うペースを早めようとするのを頭を撫でて止める。

「一時間は休憩しろ」

『いやいや長いから』

拒否する独月の口にトマトを突っ込む。お前に拒否権はねぇ。

『三十分後に打ち合わせが』

「俺が出てやるからお前は休め」

そんなもんに行かせてたら何時までたっても休まねぇだろお前。

『でも』

独月の口の中にブロッコリーを放り込む。でもだのだけどだの訊く気はねぇぞ

「何処と何の打ち合わせだ」

『八番隊と定例会の』

「それこそ俺が行くべきじゃねぇか」

来週隊首会と同時に開かれる定例会。合同のそれは俺と伊勢が仕切るんだからお前は行かなくても良いだろ
また何か言おうとする独月に海老の天ぷらを食わせる

「三十分後の打ち合わせは俺が行く。良いな?」

睨めばこくこくと頷いた。お前青ざめながら口から海老の尻尾出して面白い顔になってんぞ














強制的な休憩を取らされて三十分。つまらない。書類整理をしたら修兵さんに怒られるしする事がない。一番隊に茶しばきに行こうか、でも邪魔になる気がするし。うだうだしていると扉が叩かれた。修兵さん?さっき行ったからそれはないか

『はい』

「ちびさぎ隊長書類届けに来ましたよーっ」

『あ、乱菊さん』

扉を開けて入って来た乱菊さんにどうもと挨拶する。昨日散々飲んでたのに元気ですね

「今からうちの隊に遊びに来ない?」

『え』

「はい行きましょーっ!」

ひょいと抱えられて連れて行かれる。ちょっと僕一応隊長なんですけど。ぬいぐるみみたいに抱っこで連行ってどういう事だ。
恐らく離してくれる気はさらさらない。ああ、修兵さんに連絡しとかなきゃ



強制連行


(日番谷隊長に怒られますよ?)

(大丈夫よ多分)

(多分て)