「この饅頭は何処で買ったんじゃ?」

『沙羅双樹って和菓子屋さんです。一回食べたら美味しかったので買ってきました』

「美味いのう」

総隊長が僅かに雰囲気を和らげた。それを見て買って来て良かったなと思う。
只今一番隊舎の縁側で総隊長と雀部副隊長と僕と修兵さんでプチお茶会中。最初は緊張してた修兵さんも今ではすっかり寛ぎモード。今も僕の隣で雀部副隊長と将棋を指している。まぁ何回も連れ込めば慣れるか

「…こりゃ難しいな……」

将棋を指している修兵さんが盤面を見て唸る。将棋は難しいから判らないな
ぼんやりと盤面を見ていれば総隊長に話し掛けられた

「隊長業務には慣れたかの?」

『はい。他の隊長達も教えて下さってますし、順調です』

「ならば良い」

総隊長に頭を撫でられる。何だか凄く恐れ多い事をして頂いてる気がするのは気の所為か
ぱちりと将棋を指す音を聞きながらのんびりと庭を眺める。うん、凄く贅沢してる気分だ。良いねお茶会って

「…これで詰みっすね。王手」

「強くなりましたね。参りました」

勝負が着いたらしい。盤面を見れば雀部副隊長の王将を桂馬が追い詰めていた。将棋で雀部副隊長に勝つとか凄いな修兵さん

「雀部に勝つとはやりよるのう」

『うちの自慢の副隊長ですから』

そう言ってお茶を啜れば隣の修兵さんが笑った













『ただいまー』

「ちわーっす」

戸を開けて玄関に入る。此処最近は帰れていなかったから、凄く懐かしい
奥から出て来たのはお婆ちゃん。元気そうで良かった

「お帰りなさい、二人とも」

『「ただいま」』

少し照れくさそうに修兵さんが笑った



「まぁ、隊長さんになったの?」

『ん』

昼御飯を食べながらお婆ちゃんの声に頷く。お爺ちゃんも驚いた様に目を見開いていた。この漬け物美味しいな

『だから副隊長の時より少し多めに仕送り出来る』

そう言えばお婆ちゃんが馬鹿ね、と笑った

「独ちゃんからの仕送りは使いきれなくて貯金してるのよ?たまには貴女自身の為に使いなさい」

「そうだよ独月。自分に必要なものを買いなさい」

お爺ちゃんとお婆ちゃんにそう言われ少し考えてみるが必要なものなんて特にない。
そう言えば二人が困った様に笑った

「昔から変わらないのね独ちゃんは」

「まぁ檜佐木くんも居るし大丈夫だろう」

「任せて下さい」

大葉の天ぷらをかじる修兵さんがそう言えばお婆ちゃんがそうねと笑う。いや一人でも大丈夫ですけど

「早速飴生活始めやがったのは何処のどいつだ」

『すみませんでした』




「独ちゃんの副隊長さんが檜佐木くんで良かったわ」

太蔵さんと将棋を指していれば緑茶を淹れてくれたお琴さんがそう言った。

「あの子が一番頼ってるのは貴方だったから」

「…少しでも支えになれてれば良いんですけど…」

呟けば二人が首を傾げた。最近良く思う事だ。俺はあの小さな隊長の支えになれてるのか。
幾ら面倒見てるっつったってそれはあくまで俺の自己満足に過ぎない訳で。支えてるつもりでもほんとはずっとあいつを一人にしちまってるんじゃねぇかと不安で
考えていた事を全て話せば二人は穏やかに笑った

「お馬鹿さん。独ちゃんは貴方に支えられてるからあんなに柔らかい表情してるんじゃない」

「……表情…」

お琴さんが頷く。確かにあいつは最近良く笑う様になった。僅かに口角が上がる程度だがそれでも十分な進歩だ。けどそれは周りに人が居るからだと思ってた

「あの子の傍に何時も居てくれたでしょう?」

あの子は貴方が傍に居るだけで十分なのよ、とお琴さんが笑った。その笑顔に独月の微笑が重なる。ああ、あいつ笑い方はお琴さんに似たのか

「君が傍に居るだけであの子は笑えるんだよ。だから、これからも頼むよ」

太蔵さんの言葉に自然と口元が緩む。

「――勿論。隊長を支えるのが副隊長の仕事ですから」



その小さな背が潰れぬ様に



(はい、王手)

(強いなぁ檜佐木くんは)