邂逅


今更ながら、修二は恐ろしくスタイルが良い。
すらりと伸びた長い脚と、細い体躯。小さな顔。
190を越えた長身は日本では規格外で、服を見付けるのが地味に大変だったりする


『修二、あんたサイズ扱ってるアパレルってない?』


「シラネ。服って刹那ちゃんがくれてるし」


『それが正直好みじゃないんだよなぁ』


長身痩躯の体現みたいな修二にあげる服は、大体がオーバーサイズ。それは身長が高い=横にも大きいみたいな、薄い身体にはビッグシルエットになるものしか手に入らないからだ


「輸入品くらいじゃないか?日本じゃ180越したら服捜しにくいって聞くけど」


『だよねぇ。折角こんなにスタイル良いんだからさぁ、脚の細さが出るボトムスとか履いて欲しいんだよね』


「あー、脚キレイだよなコイツ」


『でしょ?一応輸入品取り扱ってる店で捜してるから服はあるんだけどさ…太いんだよね、服が』


「ベルトでギッチギチに縛ンねぇとずり落ちンだよなぁ」


「太れば」


「食っても太らねェンだよなぁ」


学校の昼休み、お弁当を広げながらそんな事を話し合う。
クーラーボックスに放り込んだ弁当箱は片や普通、片やLサイズで、これをほぼ毎日食べても太る気配がないのだから、きっと修二は一生細長いのだろう。


『修二ってぴったりめの服は嫌?』


「別にィ?着られりゃ何でも」


「お前、そんな風に言うから私らのマネキンにされるんだぞ?」


「刹那ちゃんに服選んで貰えんのは全然良い。寧ろ俺の世話焼いてくれンのめっちゃ好き」


「めんどくさがりと世話焼きが見事にマッチしてんのな」


「そんで刹那ちゃんの世話させてくれンの凄ェ好き」


「なんだコイツら」


卵焼きを頬張り、修二を見た。
今日は両サイドをピンで留めて、ブルーライトカットのメガネを掛けている。
制服が何処と無くだぼっとしているのは、まだ伸びた場合を考慮して2mの特注サイズというのもあるが、何より身幅が修二に合っていないからだ。


『萌え袖も可愛いけど、クール系もやってみたいよね』


「可愛くはないけど服見るのは楽しいわな」


「はぁ?刹那ちゃんがカワイイっつってンだから俺はカワイイんだよ。目ェ腐ってンのかァ?」


「お前こそ目ぇ腐ってんぞ。お前を可愛いって言うヤツは普通に居ないからな?」


『えっ』


「あ〜ホラ女子ィ、刹那ちゃん固まっちゃったじゃ〜ん」


「クソウゼェ」


「wwwwwwwwwwwwwwww」


爆笑する修二を鬱陶しそうな目で見て、硝子はきんぴらを口に入れた。
えっ、修二可愛くない…?一見ツンとしてるけど実は甘え上手な猫みたいじゃない…?


『という訳で、今日は新しいお店開拓に行きましょう』


「新しい店?」


「どこ行くん?」


目を瞬かせる二人に、私は笑った


『────渋谷行こ、渋谷!』



















『スクランブル交差点ってさ、はぐれたら出会えなさそうだよね』


「ハ〜イ刹那ちゃんは俺と手を繋ぎましょうね〜」


「寧ろしがみついときな。はぐれたらアンタの身長じゃ捜しにくい」


『私の信用のなさが凄い』


幾ら迷子になりやすいからってしがみつくのはちょっと…と思いながら、大きな手を掴んだ。
優しく握り返され、すっぽり包まれてしまった手に笑う


『修二の手のデカさヤバイなwwwww』


「刹那ちゃん手ェちっさ…うわ、相変わらずふにゃふにゃだァ…」


「反応が毎度初めてハムスター手に乗せたヤツなんだよな」


『硝子さん???』


話しつつ、渋谷名物のスクランブル交差点を抜けた。
此処はなんというか、若者が多いイメージだ。歌舞伎町も決して若者が居ない訳じゃないが、彼処はどちらかと言うと、夜の住人が多い気がする。


「つーかよォ、めちゃくちゃ見られてンのなんでェ?」


心底面倒そうな声が降ってきて、私は周りに視線を走らせた。
此方を見つめる視線は複数。多くは女性で、頬を赤く染めて私の隣の男を見つめていた。


『良かったね修二、カッコイイってさ』


「えぇ、今日の俺はカワイイ筈…」


『んふふwwwwwそうだねwwwwww』


周りの視線ガン無視で今日のテーマを口にする修二に、思わず笑ってしまった。
人混みを抜け、目的のショップに辿り着く。


『とうちゃーく』


「刹那ちゃんが好きそうな服はあるかねェ」


「限りなく他人事なのウケる」


『私らが選ぶのはあんたの服だよ』


「うーい」


お店の中は手前に少しだけ一般的なサイズを置いてあるが、殆どが大きいものの様だ。
客も大体大きい人ばかり。なんだか自分が小人になったみたいで、ちょっと面白い


『お、これとかどう?脚めちゃくちゃ長いよ?』


「もうちょい腰周り細いのない?あとさ、脚10cm足んない」


『この竹馬野郎…』


「ばはっwwwwwwwwwww竹馬wwwwwww」


人の顔を見て爆笑するコイツの脚なんか、短くなってしまえば良いのに。
むん、と口を尖らせつつ、ワンサイズ落とした物を捜す。逆に股下はプラスせねば…なんでコイツこんなに捜しにくいスタイルなんだろう…


「半間、これとかどうだ?」


「んあ?良ンじゃね?カゴ入れてェ」


「おー。ちょっとあっち見てくる」


『いってらー。修二、これは?』


「ん、オッケー。そういやぴったりめのボトムスって初めて見っけたわ」


『試着する?』


「だりぃ」


『はいはい』


大体ぱっと見ただけで着心地が判るらしいので、修二のオーケーが出たら買うというのが私達の買い物中のルールだ。野生の勘EXは様々な場面でめちゃくちゃ便利。


『あ、これ可愛い』


「刹那ちゃん着る?ワンピになるけど」


『いや袖が…長袖はキョンシーになるから却下』


「ああ…刹那ちゃん片腕15cmだもんね」


『お前の無駄に長い腕を千切って私の背中にくっ付けてやろうか』


「ばはっwwwwwwwww急にカーリーになるじゃんwwwwwwww」


『じゃあ握ってんのは修二の頭か…』


「俺あっさり死んじゃったwwwwwwwwかわいそうwwwwwwwww」


『青い肌のメイクして、精一杯歯を剥き出しにするね』


「もうむりwwwwwwwwwごめんwwwwwww」


『ねぇ知ってる〜?(豆しば風)
私はな、四捨五入したら2mあるんだ。つまりあんたと同じなんだよ。
そして44cmも盛れるから、たった8cmしか盛れないあんたより得をしている』


「ねぇwwwwwwwwwもうむりだってwwwwwwなんで念入りに殺すのwwwwwwww」


『私の腕を定規だって馬鹿にしたので。謝って』


「ごめんねwwwwwwwwゆるしてwwwwwww」


遂に修二が白旗を上げた。
お腹を抱えて震える巨人を放置して服を漁っていれば、聞き慣れない声が二つ、小さく笑っている事に気付く。
ああこれ絶対此方の話聞いて被弾したヤツじゃん…ちらりと修二の後ろに目を向けて、見た事を後悔した。


金色の辮髪に、龍の刺青。
淡い紫の短髪に、ピアス。


……やべぇ、思いっきりヤンキーやないかい。


固まった私に気付いたのか、修二が首を傾げた。
それから私が見ている方向を然り気無く見て、目を丸くする。
此方に視線を戻し、何度か咳払いをしつつ笑いを収めた…と思えばまた噴き出した


「ばはっwwwwwwwだめだwwwwwwwこれで2mしんどwwwwwwww」


『オイ笑い袋、良い加減お黙んなさい。あんたの声めちゃくちゃ通るのよ』


「だれのwwwwwwwwせいだとwwwwwwww」


『ウルセ〜知らね〜』


「クッソ他人事ォwwwwwwwwwwww」


「もうダメだwwwwwww腹痛ェwwwwwww」


「ぐふwwwwwwwwwwww」


おいヤンキー、お前らは頑張れよ。後ろで声を漏らすな。それお前ら此方に話し掛ける流れになるじゃん。今日はバトルの予定なんかないんだぞ。
此方を見下ろす修二は面白そうににんまり笑い、相手の様子を窺っている。やめなさい、バトルはしません。
取り敢えず服を選び終えると、修二が私にシャツを当ててきた。
半袖のさらっとした生地のシャツは黒地に金色の刺繍が入っていて、思わず笑ってしまった。


『自己主張がwwwww激しいwwwwww』


「え〜、カノジョが自分の色纏ってたらアガんね?」


『じゃああんたはコレか』


黒地に青紫の色違いがあったので、修二に当ててみる。…満更でもない事に気付いてしまい、苦笑いした


「あは、アガるっしょ?」


『確かに良い感じ』


「じゃあこれも買い〜」


へにゃりと笑った修二が、こんもりと山になったカゴを持つ。
そろそろ会計するかと考えていると、カゴを提げた硝子がやって来た。
彼女は合流するなり、噎せている不良二人に訝しげな目を向けた


「なんだお前ら、無関係のヤンキーにお笑いテロ仕掛けたん?」


『私は無罪です』


反射的にそう返した瞬間、ヤンキー三人が一斉に崩れ落ちた




















「いやー、悪かった。アンタ達の会話が面白過ぎて」


「人様の会話を盗み聞きするなんて、良くねぇって判ってるんだけどなぁ」


『いや、此方こそごめんね。コイツがうるさかったでしょ』


「いや俺被害者じゃね?刹那ちゃんに腹筋ズタボロにされてンだけどォ」


『黙れ竹馬』


「俺半間じゃなかったァ???」


「んふwwwwwwwwwwwwwww」


「そこの毬栗頭はゲラだな?」


「家入wwwwwwwwwwwwwww」


硝子のストレートで修二が沈んだ。ついでに辮髪も笑いそうなのを、顔を逸らして耐えている。
ヤンキー特有の距離の詰め方で仲良くなり、何故か五人でファミレスに入ったのはマジで謎。いや、八割修二の所為。


二人は龍宮寺堅と、三ツ谷隆と名乗った。
私達の一つ下、中三らしい


ぶっちゃけホコタテじゃない時のヤンキーの知り合いなんぞ、学校の小鬼コンビだけで十分なのだが。
でもまぁ、逃げようがないし仕方ない。
小腹が空いたのか、麻婆豆腐と天津飯を食べている修二。
デザートに杏仁豆腐を貰った修二に、目を丸くするのは三ツ谷くんだ


「半間くん、そんなに食って晩飯大丈夫か?」


「俺燃費クソ悪ィんだよね。だからこんだけ食っても、晩飯ン時にゃまた沢山食うの」


『五合炊きの炊飯器が直ぐ空になった時には、幻覚見てると思った』


「いや、あれはあんなに美味ェ唐揚げが悪ィよ。アレ食って米が進まねェとか男じゃねェ」


「お前は男を何だと思ってんの???」


『硝子wwwwwwwww』


「家入さんwwwwwww凄ェ目してるwwwwww」


「唐揚げで五合食えねぇと男じゃねェって何事wwwwwwww」


ほんとそれな。男は米を平らげるべしみたいな考えなのウケる。
隣から天津飯を乗せたスプーンを差し出され、口を開けた。


『ありがとう。美味しい』


「だろ?次コッチなァ」


『あー』


次に麻婆豆腐が差し込まれ、ぴりりとした辛さに唇がきゅむっとなる。
その様子に気付いた修二から、すかさず杏仁豆腐の乗ったスプーンを差し出された。
麻婆豆腐を飲み込んで、口を開く。
すっとした甘さに辛さが中和されて、ほっと息を吐いた


『……美味しいけど、辛い』


「ごめんなァ?牛乳頼む?」


『いや、もう大丈夫』


もう一口、と差し出された杏仁豆腐に口を開く。
むぐむぐと口を動かしていると、向かいに座る二人が此方を凝視している事に気付いた。
ドラケンくんは平然としているが、三ツ谷くんは少し顔が赤い。
どうしたのかと見ていれば、ドラケンくんが言う


「あー、白露さんって、半間くんのヨメ?」


『…ああ、そういう』


そこで解決した。
そうか、中学生の前で間接キスは良くないな。此方としては最早日常動作だが、初な子にはキツいだろう。
三ツ谷くんの反応に納得し、頷いた


「じゃあ家入さんは?」


「私はこの子の親友」


「間違ってもコイツとかねェわ。ゴリラはお断りィ」


「私だってごめんだわ猫被り蛇野郎」


「あ゙???」


「は???」


『修二、天津飯食べたい』


「良いよォ♡」


両サイドが私を挟んでメンチを切り出した場合、敢えて空気を読まず気を逸らすのが手っ取り早いと気付いたのは何時だったか。
笑顔で差し出されたスプーンを迎え入れ、甘みの強い餡と卵を楽しむ。
今の間に硝子はコーヒーを飲み撤退。修二は食べる私にハムスターを見る様な目を向けているので問題はない。
身内のみなら放置だが、流石に人目のある所でメンチ切るのはそろそろやめて欲しいな


「慣れてんだな、白露さん」


『修二は気分屋だからね。逸らせば大丈夫』


「え〜、俺そんなにチョロい?」


『わりと』


というか、この男は私に甘い。
本来なら片手で制圧出来る私に、笑顔でしゃがみ込んで頭を撫でろとねだる豹。それが半間修二という男だ。


『そういえば、今日会ったお店みたいに大きいサイズを扱うお店って知ってる?
修二の服を捜してるんだけど、なかなか良いのがなくて』


「ああ、半間くん細ェもんな」


「ボトムスとか、ベルト抜きだとフツーにすっぽ抜けるヤツしかねンだよなぁ。なに、デケェヤツ全部デブだと思ってんの?」


「あー、判る。なァんかデケェんだよな。肩幅は良いけどボトムスはマジで捜しにきぃ」


「つーか半間くんめちゃくちゃスタイル良いよな?脚何cmあんの?」


「んあ?…刹那ちゃーん」


『股下100cmですね』


コイツ、自分に興味無さすぎないか。あの衝撃的な数字を忘れてしまったらしい修二の代わりに答えれば、三ツ谷くんが目を丸くして固まってしまった。
じっと修二を見たかと思えば、その灰色の目が急にキラキラし始める


「マジで!?完全にモデル体型じゃねぇか!!」


「ん?なんか楽しそーね。何なん?」


「えっ、ちょっ、今度測らせてくんね?俺将来デザイナーになりたくてさ。
アンタみたいなパリコレレベルのヤツの服とか作ってみてぇんだ」


「あー、そういう。ちゃちゃっと終わンなら良いよォ」


「マジで!?やっりぃ!!」


ガッツポーズしている三ツ谷くんに良かったねぇと笑っていれば、隣で硝子が口を開く。


「刹那、次ドコ行く?」


『取り敢えず修二の服は確保したしな…ゲーセンかカラオケでも行く?』


「え〜、お前らの服も見りゃ良いじゃん。新宿にねェ店とかあンだろ?」


「じゃあどっか見に行くか」


「おー」


『新宿にない店捜すか』


ケータイで検索を掛ける間に、修二がドラケンくんと三ツ谷くんに声を掛けた


「なァお前ら、どっか良いトコ知らねェ?」


「アンタら新宿がシマなのか?」


「新宿だと愛美愛主と…矛盾っつー変わったチームのシマだろ?」


「シマ?…いや私ら族じゃないんだが」


硝子がちらりと此方を見た。
ホコタテが変わったチームなのはまぁ合っているので置いといて。
あ、これ修二が暴走族に所属するヤンキーだと思われてるパターンか?
そう推測を立て、二人を見る


『私達は基本新宿で遊んでるけど、修二は暴走族じゃないよ』


「つーか俺ヤンキーじゃねぇしィ」


「「えっ」」


修二の一言でヤンキーが硬直した。
あ、やっぱり本物から見ても、修二は同類に見えるんだな。というか正直私達だってヤンキーだと思っているし。
謎に不良じゃないと言い張っているのは修二だけなのである


「なァんでヤンキー扱いするかね。ちょーっと髪染めて、ピアス開けてるだけじゃんかよ」


「「「『雰囲気だろ』」」」


「はァいテメェら全員表出ろや♡」


マジでそういうトコ。
にっこり笑って言い放った修二に笑っていれば、隣からむすっとした視線を頂いた。
拗ねたらしい彼の金の前髪に数度指を通せば、機嫌が直ったのか、最後の一口となった杏仁豆腐を掬い上げる。
それを私に食べさせて、修二は手を合わせた


「ゴチソーサマでした。……ンで、何処行こっかァ」


















ドラケンくんと三ツ谷くんはとても話しやすい二人組だった。
女子の歩幅に合わせるのも慣れている様に思うし、話のテンポも良いし返しも上手い。
普通につるんで楽しいタイプではあるが、たった一つ、致命的にアウトな面があった。


「オイオイ、誰かと思えばドラケンと三ツ谷じゃねぇか。この間の礼、キッチリさせて貰うぞォ!!!」


「「あ?」」


この二人、恐らく有名なヤンキーだろうという事だ。
ドラケンくん達に良さげなお店を聞き、一緒に移動している途中でそれは起きた。
向かいから歩いてきた十人の不良達が、此方を見るなり怒鳴り声を上げたのだ。


「うわ、治安悪ィ」


「刹那、下がろう」


『うん』


硝子に手を引かれ数歩下がった時、リーダー格であろうリーゼントが此方に目を向けた。
私と硝子を上から下まで見るなり、にたぁっと笑う


「へぇ、良い女連れてンじゃねぇか。ちょっと貸してくれよ」


「あ゙?」


そこで反応したのがウチの不良である。
面倒臭そうな顔をしていた修二は、リーゼントの言葉を聞くなりドスの効いた声を漏らした。
一歩前に出て二人と並ぶと、眼鏡を外して胸ポケットに押し込む。
それから肩越しに此方に視線を送ってきた修二に、苦笑いを溢した


『ノーダメワンパン』


「りょ」


「半間くん、俺らが巻き込んじまってんだ。アンタは後ろに…」


「ダイジョーブ、あのリーゼントシバくだけだから」


立ちはだかった修二を見上げ、リーゼントは口角を吊り上げた


「はっ、ヒョロいテメェに俺が負ける訳ねぇだろ!!」


修二は細いから、威圧感はあっても勝てると踏んだのだろう。
馬鹿な男を見下ろして、修二は首をこてんと傾げてみせる


「ばはっ、知ってるかァ?
そういうの────弱い犬程良く吠えるって言うんだぜェ?」


「ブッ殺す!!!」


修二の煽りにまんまと乗せられ、リーゼントが駆け出した。
拳を握り、真っ直ぐに向かってくるリーゼントに修二が僅かに右足を下げた。
敵が間合いに入った瞬間、長い脚が鞭の様にしなる。鋭い一閃は不良の脇腹をしっかりと打ち据えて、吹っ飛ばした。
それは直ぐ後ろに付いていた三人を巻き込み、漸く止まった


「がふっ」


「うわぁ!?」


「いでぇ!!」


「んあー、三ピンだけかァ。
オイもう少し纏まっとけや、ストライク取れねぇじゃんかよ」


「アイツ人間プロボウラー諦めてなかったのか」


『何処にリアルでお前らボーリングのピンな!って言うヤツが居るのか』


「目の前に居るな」


『世も末じゃん』


三ツ谷くんとドラケンくんはポカンとしている。
それどころか相手までフリーズしていた。
そりゃそう。人を蹴っ飛ばした上にボーリングのピン扱いなんぞ始めたら、普通は今後の付き合いを悩むレベル。
伸びた四人をじっと見て、振り上げたままの長い脚を下ろす。
それから修二はドラケンくんと三ツ谷くんに顔を向けた


「アイツらも伸して良いん?」


「…いや、残りは俺らがケリ着ける。行くぞ三ツ谷」


「おう」


気を取り直して喧嘩を始めたドラケンくん達には目もくれず、修二は私達の方に向かってきた。
私を上から下まで確認する様に見つめてから、ゆったりとした動作で眼鏡を掛ける


「取り敢えずあの雑魚ブチのめしたけど、ファイトマネーどうする?」


『流石に中学生の前でやるのはねぇ…』


「何時もの行動取ったら半間がまた無限お礼参りになるかもだし、今日は見逃せば?」


『そうしようか』


「あーい」


しれっと盗ったらしい財布を放り出し、修二は喧嘩する二人をじっと観察し始めた。
何処と無く楽しそうに見ているのは、ドラケンくんか


『…ドラケンくん、強い?』


「おー、強ェと思う」


『……勝てる?』


問えば、梔子が静かに此方に向けられた。
ゆるりと細くなり、口の端が持ち上がる


「俺の魔法使いが望むなら」


つまり、最初から殺る気スイッチを入れた状態ならいけるという事か。
伏黒甚爾という人外レベルを除けば、初めてその評価に入った人間。
重い拳を振るうドラケンくんの喧嘩を眺めていれば、修二がゆるりと微笑んだ


「…誰が相手でも倒れねぇよ。俺は、お前の最強の矛だ」


『…信じてるよ』


「ばはっ」


三ツ谷くんが相手の腹を蹴り飛ばし、相手は動かなくなった。
此方に戻ってくるなり、二人は修二に詰め寄った


「半間くん!なんだあの蹴りカッケー!」


「アンタ凄ェな。あんな蹴りマイキー以外で初めて見たわ」


「なんか凄ェぐいぐい来んじゃん。人は蹴れば飛ぶのは普通だろォ」


「いやあんな無駄のない蹴りとかヤベェって!流石股下100cm…」


「悪ィな、なんか三ツ谷が珍しくアガってるわ。コイツ普段はもっと落ち着いてんだが」


「いーよ。つか俺の渾名股下100cmになりそうじゃね?」


『スタイルヤバいもんな。ほぼ脚じゃん』


「手長足長って妖怪居るよな」


「マジでキレそう♡」


本当に言葉と表情が一致しない男である。
あれ、というかマイキーってどっかで………あ、地獄の佐野家の次男坊か。
ドラケンくんはマイキーと親しいんだろうか。
という事は、彼と三ツ谷くんも東卍の人間か?
なんか妙な所でヤンキーと接点持っちゃったな。


「半間くんバイクとか乗ってンの?」


「乗ってねぇ。誕生日まだだし」


「おー、マジで不良じゃねぇんだ…」


「そういうオメェらはめちゃくちゃヤンキーなんだな」


「つってもタバコとか酒はやんねぇよ?バイクだけだ」


「その時点で不良〜」


「見た目不良が何か言ってら」


「wwwwwwwwwwwwwww」


いやめちゃくちゃ仲良さそうだな?
やっぱりアイツはヤンキー寄りのメンタルなんだな…改めてそう思っていれば、不意に修二が此方に振り向いた


「刹那ちゃん、俺がバイク買ったら乗る?」


『安全運転出来るならね』


「めちゃくちゃ蛇行運転してそう」


「信用ねぇなwwwwwwww」


「ウケるwwwwwwwww」


「テメェらそこにせいれ〜つ♡」












遭遇











刹那→洋服捜しに行ったらヤンキーに遭遇した。まさか東卍の副総長と隊長だなんて思いもしない。 

半間→洋服捜しに行ったらヤンキーに遭遇した。
直ぐに東卍の副総長と隊長だと気付いたが、敢えて黙っていた。
何故か三ツ谷からのウケが良い。

家入→洋服捜しに行ったらヤンキーに遭遇した。
直ぐに東卍の副総長と隊長だと気付いたが、敢えて黙っていた。



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