『おはようございます』
八番隊舎。
既に数人の隊士が執務室に詰めていて、それぞれに手を動かしている。
隊長こそふんにゃりだらけて見えるが、彼に続く者は勤勉な隊なのだ
「桜花三席、聞きましたか?十三番隊の朽木が行方不明だと」
書類を隊毎に分けていた時、資料を手にした隊士が言った。
朽木ルキアは嘗て僕が在籍した十三番隊の隊士であり、今は亡き海燕さんを通して仲良くなった子だ。
確か彼女は駐在任務で現世に向かった筈だ。
実力のあるあの子が行方不明とは、何か事件に巻き込まれたのだろうか
『連絡もないんですか?』
「十三番隊の奴が電子書簡を送っても返答ナシ。でも虚討伐はやってるみたいです」
『……もし見付けたら?』
「今の所は発見次第連行、罪状としては現世滞在超過ってトコらしいですよ」
滞在超過に返信ナシ。
不真面目な者なら気にも留めないが、それがルキアとなるとどうにも気に掛かった。
おまけにルキアが見付かって帰ってきても、彼女は罪人扱いになってしまうらしい。
眉を寄せた僕を気にする事もなく、隊士は離れていった。
カタカタとキーボードを白い指が躍り、黒い画面には白文字の記号が羅列されていく。
僕には全く意味の判らないものだが、彼には簡単に理解出来るのだろう
『どう?直哉さん、判りそう?』
タン、と最後にキーボードを叩き、指が止まる。
問い掛けた相手はむっと口をへの字に曲げた
「────元々の配属先である空座町に潜伏している可能性が高い、としか言えんな」
『理由は?』
「此処二ヶ月程度で急にこの町に住む
者の霊圧が複数人上昇している。それは霊的濃度が高い魂魄に引き摺られて周囲が上がったと考えるのが妥当だろう。
一般論で言えば、死神が町に潜み、その周囲の人間の霊的濃度が上がったというものだ」
長い灰色の髪を揺らし、彼は嗤う
「俺としては既に朽木ルキアは死亡していて、能力を奪った誰かが現世に潜伏している、を推すがな」
『ルキアが死んでる?……理由は?』
「そう怒るな、ただの推測だろう」
知らぬ間に声が低くなっていたらしい。
咳払いした僕を他所に直哉さんはからりと足車付きの椅子を動かした。
────国後直哉。
八番隊四席の通称“奇人”。
大抵人を食った様な笑みを浮かべているからか、人は彼をそう呼ぶ。
肩まである灰色の髪を背に流し、若草と黒の二色を落とし込んだ羽織を肩に引っ掛けるこの人は、まぁ確かに癖が強い。
だが世間話も、こうした頼み事にも平然と応じてくれる、良い人だと僕は思うのだ。
相性、というヤツが彼の場合は激しく合いにくいのかも知れないが。
椅子ごと此方に身体を向けた直哉さんが指を立てた
「先ず一つ、朽木ルキアの人格から推測するに連絡を怠るなどとは考えにくい。お前の話からすると朽木ルキアは真面目で責任感のある死神だ。
席はなくとも定期連絡を怠る様には思えん」
『ん……ルキアはきっちり連絡入れると思うんだ。だから直哉さんに聞きに来た訳だし』
「そこで浮かぶのが朽木ルキアが死亡、若しくはそれに近い状況となり、尸魂界に戻れなくなっているのではないかという事だ」
『尸魂界に戻れない?』
思い付きもしなかった可能性に目を丸くする。
戻らないではなく、戻れない。
仮にそうだとすれば、滞在超過の罪には情状酌量の余地が生まれるのではないか
『それなら連絡を取れないのは?』
「大方朽木ルキアの伝令神機に何らかの異常が起きているか、破損したかのどちらかだろう。
お前の信じる方向で言えば、朽木ルキアは任務中に重傷を負い、その際に伝令神機を破損。斬魄刀を保てない程に衰弱している、となるが」
此方を試す様な物言いに眉を寄せる。
じっと見つめてくる赤い瞳を正面から見据え、ゆっくりと口を動かした
『ありがとう直哉さん。…空座町に向かえないか、京楽隊長に御伺いしてくる』
「礼はかのと屋の煎餅で良い。好きにしろ……許可が降りるとも思えんが、お前は言った所で納得出来んだろう」
開幕
八番隊舎。
既に数人の隊士が執務室に詰めていて、それぞれに手を動かしている。
隊長こそふんにゃりだらけて見えるが、彼に続く者は勤勉な隊なのだ
「桜花三席、聞きましたか?十三番隊の朽木が行方不明だと」
書類を隊毎に分けていた時、資料を手にした隊士が言った。
朽木ルキアは嘗て僕が在籍した十三番隊の隊士であり、今は亡き海燕さんを通して仲良くなった子だ。
確か彼女は駐在任務で現世に向かった筈だ。
実力のあるあの子が行方不明とは、何か事件に巻き込まれたのだろうか
『連絡もないんですか?』
「十三番隊の奴が電子書簡を送っても返答ナシ。でも虚討伐はやってるみたいです」
『……もし見付けたら?』
「今の所は発見次第連行、罪状としては現世滞在超過ってトコらしいですよ」
滞在超過に返信ナシ。
不真面目な者なら気にも留めないが、それがルキアとなるとどうにも気に掛かった。
おまけにルキアが見付かって帰ってきても、彼女は罪人扱いになってしまうらしい。
眉を寄せた僕を気にする事もなく、隊士は離れていった。
カタカタとキーボードを白い指が躍り、黒い画面には白文字の記号が羅列されていく。
僕には全く意味の判らないものだが、彼には簡単に理解出来るのだろう
『どう?直哉さん、判りそう?』
タン、と最後にキーボードを叩き、指が止まる。
問い掛けた相手はむっと口をへの字に曲げた
「────元々の配属先である空座町に潜伏している可能性が高い、としか言えんな」
『理由は?』
「此処二ヶ月程度で急にこの町に住む
者の霊圧が複数人上昇している。それは霊的濃度が高い魂魄に引き摺られて周囲が上がったと考えるのが妥当だろう。
一般論で言えば、死神が町に潜み、その周囲の人間の霊的濃度が上がったというものだ」
長い灰色の髪を揺らし、彼は嗤う
「俺としては既に朽木ルキアは死亡していて、能力を奪った誰かが現世に潜伏している、を推すがな」
『ルキアが死んでる?……理由は?』
「そう怒るな、ただの推測だろう」
知らぬ間に声が低くなっていたらしい。
咳払いした僕を他所に直哉さんはからりと足車付きの椅子を動かした。
────国後直哉。
八番隊四席の通称“奇人”。
大抵人を食った様な笑みを浮かべているからか、人は彼をそう呼ぶ。
肩まである灰色の髪を背に流し、若草と黒の二色を落とし込んだ羽織を肩に引っ掛けるこの人は、まぁ確かに癖が強い。
だが世間話も、こうした頼み事にも平然と応じてくれる、良い人だと僕は思うのだ。
相性、というヤツが彼の場合は激しく合いにくいのかも知れないが。
椅子ごと此方に身体を向けた直哉さんが指を立てた
「先ず一つ、朽木ルキアの人格から推測するに連絡を怠るなどとは考えにくい。お前の話からすると朽木ルキアは真面目で責任感のある死神だ。
席はなくとも定期連絡を怠る様には思えん」
『ん……ルキアはきっちり連絡入れると思うんだ。だから直哉さんに聞きに来た訳だし』
「そこで浮かぶのが朽木ルキアが死亡、若しくはそれに近い状況となり、尸魂界に戻れなくなっているのではないかという事だ」
『尸魂界に戻れない?』
思い付きもしなかった可能性に目を丸くする。
戻らないではなく、戻れない。
仮にそうだとすれば、滞在超過の罪には情状酌量の余地が生まれるのではないか
『それなら連絡を取れないのは?』
「大方朽木ルキアの伝令神機に何らかの異常が起きているか、破損したかのどちらかだろう。
お前の信じる方向で言えば、朽木ルキアは任務中に重傷を負い、その際に伝令神機を破損。斬魄刀を保てない程に衰弱している、となるが」
此方を試す様な物言いに眉を寄せる。
じっと見つめてくる赤い瞳を正面から見据え、ゆっくりと口を動かした
『ありがとう直哉さん。…空座町に向かえないか、京楽隊長に御伺いしてくる』
「礼はかのと屋の煎餅で良い。好きにしろ……許可が降りるとも思えんが、お前は言った所で納得出来んだろう」
開幕