迷い込んでパルデア2
・名前変換がやっと仕事する
・主人公がポケモン
・捏造パレード
「ところでカツキ、ゾロアのボールは決めたのかい?」
やべぇ研究者はそう言って、眼鏡を持ち上げた。
ズオウに妙にねっとりした目を向けられて、戦って二日。
普通に考えて、あんなに興奮していた男の許に身を寄せるのはどうかと思うのだが、ゾロア曰く、この世界の住人は大抵の物事をポケモンバトルで解決するらしい。
なので、勝った俺達の言う事を聞くのは当然。
衣食住から帰り方まで、負けたズオウが調べるのは当然と言うのだ。
ダメ元で言ってみろと言うので、此方の要望を伝えたのだが。
それが何故か…本当に何故か上手く行き、現在の奇妙な居候生活が始まっていた。
『別にどんなのでも良いよ。ボールなんてどれも一緒でしょ?』
「ボールっていごこちとかあんの?」
入る側であるゾロアが興味ないのは何故なのか。
基本ボールから出す気ではいるが、どうせなら見た目もカッコ良くて、それでいて過ごしやすいものを選んでやりたかった。
「あるらしいよ。基本的には捕まえやすさ…トレーナー側の都合だけど、ゴージャスボールはポケモンの過ごしやすさ優先で作られているそうだし」
「ゴージャスボール…コレか!」
リュックの内側に取り付けられたパネルを操作して、件のボールを検索する。
黒地に金と赤でラインが引かれたそれを見せると、ゾロアがコレかぁと呟いた
『カツキみたいな色だね』
「そうか?」
俺の目と髪の色だろうか。
ゾロアを抱き上げふわふわの毛を堪能していれば、ズオウがテーブルに置いたボールを手に取り、眺め始めた。
「カツキは元の世界に戻るつもりなんだよね?」
「おう」
「じゃあもし戻れた場合、モンスターボールのこの仕掛けは邪魔になるな」
「?」
『オイ何する気だ変態』
何かを呟いたかと思えば、ズオウはゴージャスボールにコードを取り付け始めた。
奥にある機械が稼働して、低い唸り声を上げた。
「此処を弄って、コレを取っ払って…」
「…なにしてんだ?」
「ボールにハッキングしてるの」
『悪さしてんの?』
「ゾロアになんかあったらブッころすぞ」
「何処でそんな言葉覚えてきたの?ゾロアに悪い様にはならないよ」
そう言いながら、ズオウはカタカタとキーボードを叩き始める。
「モンスターボールにはね、幾つかトレーナーに有利な機能が搭載されてるんだ。
大まかに言えば二つ。
一つは捕まえたポケモンに、技を四つしか使えない様にする。
もう一つは……捕まえたポケモンが、トレーナーに懐く様に暗示を掛けるのさ」
『うげぇ、ほんと人間って勝手だな』
舌を出したゾロアがぐるると喉を鳴らした。
不機嫌になった理由が判らなくて、俺は赤い目を覗き込む
「なぁ、なんでそれがダメなんだ?」
技云々は良く判らねぇけど、ポケモンとトレーナーが仲良く出来るのは良い事じゃないのか。
問い掛けた俺を見上げ、ゾロアが目をぱちりと瞬かせる
『ああ、カツキはゲットしてないもんね』
「ゲットってわるいことなのか?」
『んー、一緒に居たい人間がトレーナーになってくれたなら、それが一番良いけど…』
「カツキ、ゾロアは何て?」
「いっしょにいたいにんげんがトレーナーになってくれんなら、それがいちばんいいけどって」
「ああ、正しくポケモン目線の良い意見だ。…本当に会話出来るんだね、カツキ」
『オイ気持ち悪い目を向けるなナイトバーストすんぞ』
「ナイトバーストするってよ」
「やめて。固有技で研究所壊さないで」
今でこそ会話出来ているが、昨日、俺とゾロアが話せると判った時のコイツはヤバかった。
先ず異様な興奮と鼻息で俺に近付いてきて、ゾロアにバークアウトされた。
それから奇声を発しながらモニターに向き合い、気味悪がったギモーに叩かれていた。
何がそんなにコイツを掻き立てるのかは知らねぇが、取り敢えず気持ち悪い。
キモいヤツは機械を弄りながら、俺の疑問に答え始める
「カツキ、ポケモンのゲットってどうやると思う?」
「え?そりゃあ…バトルじゃねーの?」
「そう。ポケモン同士を戦わせるんだ。
じゃあ、捕まえたいポケモンが居る場合、トレーナーはどんな指示を自分のポケモンに出すと思う?」
「んー…ころすな?」
『すんごい極論来たな』
「ころ……まぁ…それに近いか…?
基本的にトレーナーはね、瀕死一歩手前…戦えなくなる寸前まで、捕まえたいポケモンを追い詰めるんだ。
それだけじゃなく、麻痺や毒みたいな搦め手を使ったりもする。
全ては、より確実にゲットする為に」
ズオウの言葉に、思わずゾロアを抱く腕に力を込めた。
色違いは珍しいって、ゾロア自身が言っていた。もしかして、ゾロアもそんな酷い目に遭った事があるんだろうか。
俺の視線に気付いた小狐がへにゃりと笑う
『大丈夫だよ。人間は吠えて追い払ってたから』
「いじめられてねぇ?」
『うん』
「…なんでもなおし、オレもっとたくさんさがすからな」
『んふwwwwwwカツキがゲットしてくれれば問題は解決するんだけどなwwwwwww』
ケラケラ笑って、それからゾロアは赤色の目を柔らかく細めた
『でも…ありがとうカツキ。優しいね』
「トーゼンだろ、こんなの」
当然の事をしただけなのに、何でそんな風に言われているのか。
首を傾げる俺をズオウが暖かな目で見てきた
「君の考え方は当然じゃないのさ、残念ながら。
この世界はさ、ゲットという文化に慣れきってる。
だからゲットしたいポケモンを痛め付けるのは当然だし、捕まえたポケモンが自分に懐いているのも、また当然なんだよ」
「……ゲットしたポケモンにしかえしされるとか、ねぇの?」
「今のところ、そういう報告は聞かないな。
モンスターボールはポケモンを収納すると、ポケモンにトレーナーの顔を強制的にインプットするんだ。
そして、そのトレーナーに自分は屈したんだと刷り込む。そこでメンタルをフラットな状態に調節出来ればゲット完了…ボールの赤いランプが消える仕組みさ」
『つくづく面倒なモン作ってんな人間』
「じゃあ、そこらへんにおちてるボールはぜんぶしっぱいしたヤツってこと?」
「ああ。一度ポケモンを収納すれば、捕獲システムは全部そのポケモンに使われる。二回目はないよ。それだけ高度な技術の塊って事。
因みに別のトレーナーが拾えば情報が上書きされるから、捕獲システムが再起動される。
ボール自体が新品状態に戻る仕組みになっているんだ」
「ふーん……ピンクのぬいぐるみがたくさんおちてんのは?」
「ピッピ人形かな?あれは野生のポケモンの気を引いて、その隙に逃げる為のものだ。
うっかり高レベルのエリアに迷い込んだトレーナーとかが良く使うよ」
『私達はオージャの湖から来たでしょ?あそこレベル50の巣窟だから、生半可な実力だと痛い目見るんだよ。
シャリタツとか見た目弱そうだもんね、返り討ちに遭ってる人間を良く見たよ』
「シャリタツ?」
『ポケモンセンター行く前に通った道に良く居るよ。次に見たら教えてあげる』
「おー」
「シャリタツ?君らオージャの湖に行く気かい?」
『カツキがそこに出てきた訳だし、手掛かりはありそうだよね』
「てがかりありそうだって」
「あー……まぁそうだね」
もう一度彼処に行くとなると気が重いが、帰る手掛かりがあるなら行くべきだろう。
ゾロアをもふっていると、ゴージャスボールからコードが外された。
「はい、出来た」
「はえーな」
「解除するだけだからね、忍び込めれば簡単さ」
目の前に置かれたボールに変化はない。
黒いボールをじっと見つめる俺に、ズオウが説明を始めた
「そのボールはポケモンの技規制と、暗示も解除してある。そもそもそれだけ懐いてるなら、その機能要らないだろうし」
「じゃあマジでただのボールってことか?」
「今のところはね。他の必要になりそうな機能は開発中。
まぁ、そのボールに納めてしまえばゾロアはカツキのポケモンになるから、その子が誰かにゲットされる心配はなくなるよ。
ボールのトレーナー情報は、他のボールが投げられても、ポケモンをゲット出来ない様に保護する役割も担ってるんだ」
「へぇ…すげーんだなこのボール」
「技規制に付いても一応教えておこうか。
バトルっていうのは、元々ポケモン達が野生の頃から行っているものだ。
それに人間が技っていう名前を付けて、指示する役として混ざったのがポケモンバトル。
ゲームを行うにはルールが必要だ。だから勝敗を決める為、攻撃は相手のHPが0になるまで、使える技は四つというルールが出来た。
技には威力、射程なんかの細かい設定がしてあって、モンスターボールに入ったポケモンは、それに従うルールになっている。言ってしまえば、設定されたもの以上の威力は出せない。
そこに個体値とか特性とか持ち物とか、あとは技自体の効果でバフが掛かるんだけど…それも計算してあるから、命を脅かす程の攻撃にはならない。
仮にHP1で破壊光線を食らった場合は、1以外のダメージはボールから放出されるバリアで吸収される仕組みだ。
…とまぁ、こんな感じで。
ポケモンバトルっていうのは、きっちり管理されたスポーツみたいなものって思って貰えたら良いよ。
別の地方じゃポケモンバトルが実際スポーツみたいになってるし」
『野生だと、ポケモン同士によっては相手が降参して小さくならない内に、殺そうとしたりするからね。まぁ小さくなっても殺るヤツはしつこく追い掛けるみたいだけど。
あ、小さくなるっていうのはバトルでいうHP0の事ね。野生のポケモンは小さくなって、死ぬ前に逃げるの』
「えっ」
ゾロアの言葉に目を丸くすると、ズオウが目を瞬かせた
「カツキ、ゾロアは何て?」
「…やせいだと、ポケモンによってはちいさくならないうちにころそうとするって」
「あー……」
ズオウは苦笑いを溢した。
否定しない辺り、本当なのだろう
「まぁ、彼らも基本的に殺しはしないんだけどね。時と場合によってはその手段を最上と考える。
言ってしまえば、戦った相手が生きようが死のうが、彼らには関係無いんだよ。
だから強い攻撃で相手が深傷を負っても、それで仮に死んだとしても、それはどうでも良い事なんだ。
野生のポケモンは、自分が仲間だと認識した相手以外には冷酷だから」
最初にゴルダックに敵意を向けられた事を思い出した。
明らかにあれは、俺の命を刈り取る一撃だった。
ぞっとして首を竦めた俺に、柔らかな毛並みが擦り寄る。
目を向ければ、赤い目がじっと此方を見つめていた
『カツキ、大丈夫だよ。私が護る』
「…そういえばオマエもやせいだな」
『ん?まぁそうだね。ボールそこだし』
「ゾロアは珍しいタイプだよ。
たまに野生のポケモンが人間を助ける話も聞くけど…捕まえてもない、バッジもないのにレベル50で言う事を聞く野生のポケモンなんて、聞いた事もない」
「バッジ?」
「特殊なコードが仕込まれたバッジだよ。
ジムリーダーっていって、トレーナーのレベルを測る試験官が居るんだ。
そのジムリーダーに自分の育てたポケモンで勝てれば、証にバッジを貰える。
そしてバッジには、どのレベルまでポケモンが言う事を聞くっていうコードが仕込まれている。それ以上になると、どんなポケモンでも言う事を聞かなくなるんだ。
バトル中に指示を聞かなくなったり、最悪日常生活にも支障をきたす事になる」
「…レベルって?」
「1から100まで測定出来るんだ。それ以上は一般的には成長しないと言われているけど…あくまで人間の主観だからね。ポケモンにとっては100以上の強さもあるかもしれない。
ポケモンはタマゴから産まれるんだけど、それから孵った時をレベル1、肉体の強化が最高レベルなのが100って考え方かな」
俺は無言で腕の中の小狐を見た。
ゾロアは鼻歌混じりにボールをつついている
「…ゾロアは?」
「レベル50。因みにゾロアはレベル30でゾロアークに進化出来るんだけど、その子は自分で進化を拒んでるみたいだね」
『ゾロアの方が相手油断するしね』
けろっとそう言ってのけると、ゾロアはボールを俺の手に転がした
『ま、これからは進化も候補に上げるよ。
じゃあカツキ、私をゲットしてみて』
俺は大きなボールをじっと見つめ、それから黒い小狐に目を向ける。
…俺がトレーナーで良いのか。
ほんの少し不安が顔を覗かせた時、小さな手がポチッとボタンを押した
「あ」
瞬く間に赤い光に包まれ、黒い狐の姿が消えた。カタリ、と一度だけ震えて沈黙したボールに思わずぽかんとする。
かと思えば勝手にボールが開いて、ゾロアがテーブルの上に立っていた
『良し、ゲット完了。カツキ、ボールは失くさない様にベルトに付けてね』
「おま、かってにでられんの?」
『うん。ロックを内側から外せばいけるよ』
「やっぱりゾロアも出られるタイプか。居るんだよね、勝手にボールから出てくる子。カツキ、ゾロアは何て?」
「うちがわからロックはずしたって」
「内側からロック…予想としてあったけど、まさか本当だとは…これはポケモン協会に報告すれば良い金になりそうだな…」
ニヤニヤしている研究者から目を逸らし、ゾロアと向き合う。
此方を見つめる彼女は、早速一つのものをねだった
『カツキ、名前ちょうだい』
「なまえ?」
「ああ、ボールに入れれば自分のポケモンにニックネーム…その子だけの名前を付けられるんだよ。
急にどうしたんだ?ゾロアがニックネーム欲しいって?」
「うん。なまえくれって」
『前に向かってきたキノガッサがトレーナーに名前貰っててさ。羨ましかったんだ』
「えっ、だいじょうぶだったんか?」
『ああ、吠えて追い払った』
良く判らないが、吠えると相手は逃げるらしい。その事をズオウに言うと、彼は苦笑いを溢した
「あー…ゾロアには特に向いてる手段だな、それ…」
「なんで?」
「普通は逃げ技…吹き飛ばしとか吠えるとか、バトルを強制終了させる技を使っても、野生のポケモンはその場から離れないんだよ。そこが縄張りだから。
でもゾロアは特殊でね、バトルが終わった瞬間にイリュージョンで逃げちゃうんだ」
「すげー!あたまいいなオマエ!」
『野生の色違いなんてこんなモンよ?』
そう返してきたゾロアをじっと見つめ、俺は名前を思い付いた
「オマエのなまえ、セツナってどうだ?」
『セツナ?』
「そう。…イヤ?」
閃いた名前を口で転がすゾロアを見つめる。コイツはメスだし、やっぱり男の考えた名前じゃ嫌だろうか。
不安になりつつ眺めていれば、ゾロアはにっこりと笑った
『私はセツナ!ありがとうカツキ、とっても良い名前!』
「……おう!」
ゾロア────セツナの笑顔に、ホッとしたのは内緒だ。
リュックを背負い、ズオウの用意したオレンジのパーカーと黒のパンツ。黒地に赤の目立つシューズを履いて、最後に黒に青紫のラインが走る帽子を被った。
隣に立ったセツナを見下ろして、背後のズオウを見る
「先ずは何処に行くんだっけ?」
「んーと、セツナはロトムってヤツつかまえるっていってた」
『だって、ソイツがくれたスマホにロトム居ないんだもん』
口を尖らせたセツナはそう言うと、煙を立てて姿を変えた。
鋼鉄の鳥になった彼女にスマホを向けると、アーマーガアという名前が読み上げられる。
『じゃあ行こうか。カツキ、乗って』
「おう!よるまでにはもどる!」
翼を広げたセツナの背に乗ると、地を蹴った身体は宙に舞った。
「ああ、いってらっしゃい。ほんと不思議だなあのゾロア…普通はあんなに飛べないんだけど…」
瞬く間に研究所の影が小さくなった。
鋼鉄の鴉は風を掴んで飛んでいく。
その背にくっつきながら、俺は改めてこの世界を眺めた
「すげー、しらねぇポケモンがいっぱいだ」
『まだチャンプルタウンとオージャの湖しか行った事ないんだっけ?じゃあきっと、ほんのちょこっとしか見てないよ。
此処は勿論、この地方には居ないポケモンだって沢山居る。
その中にはきっと、カツキを帰せるポケモンも居る筈だ』
「…うん」
俺は絶対、帰るのだ。
セツナを連れて、あっちに帰る。そしてヒーローになる。
黒い牛が屯する草原を通り、セツナは一直線に目的地を目指す。
「オレももっとくんれんしたら、ばくはでとべるようになんのかな?」
『出来そうだよね。ただ爆破だと音が凄いだろうから、隠密行動する時は私が乗せてあげる』
「…へへ、めちゃくちゃカッケーじゃん!
アーマーガアにのるヒーロー!!」
『飛べるポケモンは他にも沢山居るから、好きなの選ぶと良いよ。あとは環境に合わせたポケモンに化けても良いかも。
あっちだと人間が個性で戦うんだっけ?
ポケモンセンターみたいなのとか、元気の塊とかあるの?』
「びょういんはあるけど…げんきのかたまりみたいにすぐげんきになるヤツは……ねぇかも」
俺の言葉に一瞬黙って、セツナは気まずそうに言う
『…それで良く個性使って戦うね?下手すれば死ぬじゃん』
「でも、ヴィランはヒーローがたおさねぇと」
『ヒーローを否定する訳じゃないけど…ヒーローがヴィランっていうのを倒す構造を変えないなら、せめて医療分野はもっと発展すべきだよ。
元気の塊ナシで瀕死状態とか、私からしたら考えられないし』
「げんきのかたまり、あっちのいしゃにみせたらなんかかわるかなぁ?」
『カツキ達が私達と構造が近ければ、元気の塊の類似品とか作れる様になるかもね』
風を切って飛んでいく鋼鉄の鴉は、頭部を少し傾けた
『カツキ、彼処に灯台があるの判る?』
「トーダイ?あのたけぇヤツか?」
『そう。マリナードタウンって町なんだけどね、あの灯台の傍にロトムは良く居るよ』
「マリナードタウン…チャンプルとはぜんぜんちがうんだな」
『此処は競りがメインの町だからね。チャンプルもそんなに大きくはないけど、此処よりは色々あるかも』
橙色の屋根が坂道に沿って並ぶ、小さな町。
海と面したそこには港があって、船が沢山留まっていた。
港の前には屋根に覆われたスペースがある。
騒がしさから察するに、そこで競りが行われているらしかった。
『降りるよ。しっかり捕まっててね』
「おう」
すうっと黒い影が下降して、静かに灯台の傍に降り立った。
アーマーガアの背中から降りると、ぽふんと煙を纏ってセツナがイリュージョンを解く。
草原にはオレンジの小さなポケモンと、紫のヘドロみてぇなポケモンが居た。
セツナは耳をぴくぴくと動かしながら、オレンジのポケモンを見ている
『さて…どのロトムが良いかな』
「ゲットすんのか?」
『ううん、スマホに押し込む』
「……それってスマホこわれねぇ?」
普通に考えて、突然知らないヤツのスマホに押し込まれたら暴れるんじゃないだろうか。
それで折角の通信手段を壊されたら困る。
思わずポケットからスマホを取り出すと、俺を見上げたセツナが笑った
『そんな事出来ないって。
スマホって、モンボみたいに洗脳機能あるって話だし』
スマホにまで洗脳機能付きとかどんだけ恐ろしい世界だと思っていると、セツナがすっと身体を低くした。
次の瞬間には弾丸の様に黒が飛び出して、オレンジの小さなポケモンを押し倒す。
「ロトー!!!!」
『噛み砕かれたくなかったら、スマホに入れ。…ああ、スマホ壊そうとしたり、逃げようとしたら……判るよな?』
「うわ…」
可愛らしい小狐が牙を剥き出しにしながら恫喝する光景は、なかなかにインパクトがあった。
泣きながらガタガタと震えているロトムは、俺の手にあるスマホを見るなり飛び込んできた。
ぶつかるでもなく、文字通りにスマホに呑み込まれてしまった光景に、目を丸くする
〈ロトー! スマホロトム インストール チュウ !〉
『良し、気の弱そうなヤツにして正解だった』
「…だいじょうぶなんか、コレ」
『大丈夫だって。インストールが終わるまでマリナードタウン見に行く?』
「……そうする」
セツナが大丈夫と言うなら、大丈夫なんだろう。色々アレだけど。
歩き始めたセツナに付いていきながら、ふと視界の端で蠢くヘドロに目を向けた
「なぁセツナ、あのヘドロってなに?」
『あれはベトベターっていうポケモンだよ。バイ菌だらけだから触んないでね』
「へぇ…」
『まぁ足がないから、なんかあってもカツキを乗せれば逃げられるけど』
「バイキンってことは、わるいヤツか?」
『そうでもないよ。ベトベターとその進化のベトベトンは、ゴミとかヘドロを食べてくれるから。
アイツらは掃除屋だからね。居なくなったらきっと、パルデアはもっと汚くなってるよ』
「……ふぅん」
テレビでは、バイ菌やヘドロなんていうのは大抵敵だった。
でもセツナは、ソイツらが大事な役目を担っていると言う。…汚いイメージでも、必ずしも悪いヤツじゃないって事なんだろうか。
のそのそと蠢く毒々しい色から目を逸らし、坂道を降りる。
この世界にやって来て二つ目の町は、随分活気に満ちていた
「安いよ安いよー!」
「タイマーボールの競りを始めるよー!興味がある人寄っといで!!!」
「ロトムのカタログほしい人ー!!」
競りが行われている町の中心部では人がごった返していた。
わざわざ人の群れに飛び込みたいとも思えず、踵を返す。
それに気付いたセツナが、不思議そうにしつつ付いてくる
『カツキ?行かないの?』
「モブがおおい。オマエとはぐれたらこまるし、ふまれるかもしんねーだろ」
『いや、私も化けるかボールに入れば大丈夫だけど……ふふ、ありがとう』
くすくす笑う小狐は上機嫌で付いてきた。
人の少ない港の方に向かい、ポケットからスマホを取り出す。
画面をタップすると、愛想のないホーム画面に出迎えられた。
先程のオレンジの影は何処にもない
「…スマホ、なんもかわってねぇ」
『カツキ、ポケモン図鑑っていうのがある筈。それを押して、カメラを私に向けてみて』
「ポケモンずかん………?」
いやどれだ。変な記号でしかないから、そもそも文字が読めねぇ。
ホーム画面にも良く判らないアプリが並んでいる。パッと見図鑑っぽいものもない。
困惑して指を彷徨わせていると、突如知らない声がスマホから流れた
〈ポケモン図鑑 起動するロト!〉
「おっ」
『ソイツ予想以上に便利そう』
居なくなったと思われたオレンジの影がすいっと画面に現れると、一つのアプリをタップした。
軽快な音を立てて起動したアプリの画面に、またまた記号が羅列されている。
ロトムが稲妻マークの様な手で文字をタップすると、カメラの画面に切り替わった。
それをセツナに向けると、セツナの画像と音声が流れた
〈ゾロア わるぎつねポケモン あくタイプ
無口な子供に化ける事が多い〉
「…セツナはわるくねーのに」
『わるぎつねって総称だしねぇ。そんな怒らないの。ほら、初めてのスマホロトムはどうだった?』
可笑しそうに笑われて、短い前足でスマホを示された。
画面の中でもロトムが此方を見上げている。
その何処かそわそわした様子を見て、俺は笑った
「すっげーべんり。ロトム、これからよろしくな」
〈ロト!!〉
スマホを仕舞った俺を静かに見上げ、セツナがゆるりと目を細くする
『…ほら、ゲットっていうのは歪んだ行為でしょ?』
「……ココ、こえぇトコだな」
セツナの言いたい事は理解出来た。
ついさっき、脅される様にスマホに押し込まれたロトムが、今じゃ俺のサポートが当然という顔で此方を見上げている。
洗脳して俺に従う様に強制されたのだと知ってしまった今じゃ、この世界の在り方は、どうにも恐ろしくて仕方がなかった。
「セツナ、オレンジアカデミーってトコいこう」
早く帰りたい。オヤジとおふくろに会いたい。
此処は知らない事ばっかりで面白いけど、やっぱり俺の居るべき世界は此処じゃない
『良いよ』
そう言ったセツナの身体が煙に包まれる。
白煙が晴れて現れたのは鋼鉄の鴉ではなく、大きな鷲だった。
「かっけー!!なんだコレ!!」
〈ウォーグル ゆうもうポケモン ノーマル・ひこうタイプ
勇猛果敢な大空の戦士
身体の傷が多いほど 仲間から尊敬されるという〉
初めて見る大鷲は、見覚えのある笑顔を浮かべて言う。
『あんまりアーマーガアで飛ぶと、デカヌチャンに目を付けられちゃうからね』
「だからだれだよデカヌチャン」
ウォーグルはアーマーガアとはまた違う乗り心地だった。
鋼鉄の感触はなく、暖かな毛に覆われている。
後頭部の白い鬣をもふもふしていると、セツナがくすくすと笑った
『アーマーガアより此方の方が好き?』
「アーマーガアはかっけぇ。でもこっちはもふもふだ」
『ふふ』
大きな赤い翼が羽ばたいて、ぐんぐんと進んでいく。
軈て見えてきた、城壁にぐるりと囲まれた街。
門を飛び越えて降り立ち、ウォーグルの背から降りた。
『此処はテーブルシティ。あの目立つ建物が、オレンジアカデミーだよ』
「すげー…でっけぇ…」
長い階段の先にある、大きなモンスターボールを飾る城。
日本というよりは、夢の国と言われるテーマパークに近い街の外観に、俺は辺りを見渡した。
「セツナ、ココすげーな!ディズニーみてぇ!」
『ディズニーが良く判んないけど…気に入った?』
「おう!」
『なら良かった。調べものをする以上、来る頻度は上がるからね。楽しく過ごせるならそれが良い』
イリュージョンを解いたセツナが笑う。
早速案内を始めたロトムに従っていると、ふと肌がぞわぞわした。
辺りを見渡せば、何故か色んな連中と目が合う。中にはヒソヒソと言葉を交わすヤツらも居る。
それが気持ち悪くて睨み付ければ、足許のセツナが苦笑した
『やっぱり目立つよねぇ』
「ンだアイツら、ケンカうってんのか」
『色違いはそれだけ目立つんだよ。とはいえウザったいな…カツキ、そこの角でちょっと曲がるよ』
「?うん」
階段の途中、角を曲がって人気のない場所に出た。
そこで小さな身体が見慣れつつある煙に包まれる。
次はどんなポケモンに化けるのかと思っていれば、現れたのは灰色のブレザーを身に纏った、黒髪の女の子だった。
「はぁ!?」
『この辺り、同じ服の子供が沢山居るでしょ?
あれ、アカデミーに居る子達の服なんだよ。
まぁ色んな人間が出入りしてるのは見てるから、必ずこの服じゃないといけない訳じゃないと思うけど。
これに化けてた方が、色々スムーズなんだよね』
俺より少し歳上であろう彼女は、赤い瞳を細めてくすくすと笑った。
その笑い方で、漸く目の前の女の子がセツナだと結び付く。
『カツキ、リュック貸して』
俺のリュックを取り上げたかと思えば、セツナはそれを背負った。
かと思えば、俺にくるりと背を向ける
『尻尾、隠れてる?』
「ん?ああ、リュックでみえねぇ」
『なら良かった。じゃあ行こっか』
白い手が俺の手を引いて歩き出す。
…そういえば、此方に来てから誰かと手を繋いだのは初めてだ。
というか元の世界でも、個性が出てから手を繋ぐ事は殆どしなくなった。
おふくろは繋ごうとした。けどカッコ悪いし、もし俺の手が急に爆破したらって思ったら、手なんか繋げなくなった。
俺の手が爆破を起こせるのは、コイツだって知っている筈だ。
…なのに何で、セツナは俺の手を握っているんだろう
「…こわくねぇの?」
『何が?』
階段を上りながら、話し掛ける。
「…オレのて、ばくはできるんだぞ」
最初に見せた筈だ。そしてそれを、セツナが忘れているとも思えない。
爆破は強いけれど、怖い個性だと誰かに言われた事を思い出した。
今はまだ弱い力でしか出せねぇけど、いずれ簡単に人を傷付ける力になる、と。
…それでもし、この優しい狐を傷付けてしまったら。
ちらりと目を向ければ、赤い目がぱちりと瞬いた。
それから、ゆっくりと口が動く
『…え?それがどうしたの?』
「えっ」
思わぬ返答に目を丸くした。
セツナはそれが不思議なのか首を傾げ、それから、ああ!と納得した様な声を漏らす
『人間はそういうの出来ないんだっけ?じゃあ納得。
でもほら、私ポケモンだから』
大きなコートの様な模様のレンガの上を歩きながら、彼女は続ける
『確かに掌に爆破されたらびっくりするかも。でもね、此方には近付いただけで大爆発するポケモンとか居るのよ。
だから、カツキの爆破とか急に起きても平気。そもそもポケモンは頑丈だからね、ちょっと爆破されたってへっちゃらなの』
「……スケールちげぇな」
『うん?まぁ人間じゃないからねぇ。
あ、近付いただけで大爆発するヤツ、チャンプルのすぐ傍に居るよ。見てみる?』
「…ああ、うん」
…なんか、悩んでたのが馬鹿らしくなった。
きゅっと柔かな手を握れば、優しく握り返された。それで何故か家の近くを歩いている時の母さんを思い出してしまって、ぎゅっと眉間に皺を寄せる。
「……かえるほうほう、みつかるかな」
『見付かるさ、きっと』
「おかえり。どうだった?」
「セツナはセレビィってヤツのしわざかもって」
「セレビィか!それなら説明は付くね」
そう言ったズオウは、興奮した様子で本棚に向かっていった。
それを見送ったセツナが、リュックを漁りながら笑う。
『マルマインの大爆発、面白かったでしょ?』
「おう!ふっとぶのたのしかった!
なぁ、あしたもっかいクマにあいにいこーぜ!アイツをたおすんだ!」
『リングマのトコ?
良いよ、木の実持っていこうね』
「うん!」
────それからというもの、俺の遊び相手は野生のポケモンになった。
セツナが俺を乗せて飛び、そこに住むポケモン達と交流する。
ある日はチャンプルタウンの近くの丘で、リングマと力較べ。
またある日はナッペ山でモスノウの群れを眺め、ニューラの真似をして岸壁を登った。
彼方の世界には存在しないポケモンという生き物はとても賢く、また爆破を起こせる俺を、どちらかといえば同族として捉えている様だった。
だって扱いが、子供のポケモンと同じだったのだ。
その証拠に、生まれたてだというカルボウの傍に居ると、親のカルボウに子と纏めて木の実を与えられた事もある。
野生のチルットが頭の上で勝手に休んでいくのも日常茶飯事だ。
「オレってやっぱポケモンにちかいんか?」
『んー、まぁ普通の人間よりは近い感じあるよね』
「ぶいー」
「ぶいぶい」
「ぶい?」
見渡す限り茶色い毛玉。
大量発生というらしい、特定のポケモンが群れを作る現象。
今日はイーブイの日だったらしく、草原では毛玉と、それを捕まえようとするトレーナーで溢れていた。
バトルするトレーナーとイーブイを眺め、呟く
「ナカマになってくれそうなヤツがわかんねーのかアイツら」
「ぶいぶい」
『はは、それが判ればボールなんか作ってないでしょ。
嫌がるポケモン追い回して、いたぶって、ボール投げて、洗脳して従わせて。
それで目当ての子じゃなかったら逃がすとか、人間ったらほんと自己中』
「ぶいぶい!!」
「…オマエ、けっこうエグいこというよな」
『えー?これ割とポケモンの共通認識だよ?
アイツらバトルの為とかでポケモン孵化させまくって逃がすもんだから、結構縄張りのバランス崩してくるんだよ。本当なら此方には居ない筈のポケモンも逃がすし。だからトレーナーって嫌い。
…あ、カツキは別だから安心して。
君は、私が選んだパートナーだから』
にこっと可愛い顔をしてみせたって、此方は既にお前の腹黒さを知っている。いや可愛いけど。その冷めた思考回路も、パートナーとして頼もしいから大変宜しいし。
可愛い狐を抱き上げれば、周囲で屯していたイーブイが我も我もとよじ登ってきた。
「オイ!いっせいにのぼんじゃねー!」
「ぶいー!」
「ぶーいぶい♪」
「ぶーいー?」
『茶色まみれwwwwwwwww』
小型犬程度とはいえ、集団で来られれば五歳児が勝てる筈もなく。俺はセツナごと草原に引っくり返った。
黒い毛玉と茶色い毛玉にまみれ、思わず笑ってしまう。
人に乗って満足げなイーブイ達を撫でてやっていれば、真上から影が差した。
「あぎゃ?」
額に白と青の鬣を持つ、赤い身体で四足歩行の恐竜みたいなポケモン。
ソイツが黄色い目をぱちりと瞬かせると、頭の上から茶色い毛玉が顔を出した。
背中からも次々と存在を主張してくるイーブイ達に、更に笑う
「オマエもイーブイまみれかよwwwwwww」
「あぎゃす…」
『あー、あんた優しいもんね…小さい子にキツく言えないんだね…』
困った様に鳴くのみで、逞しい腕は茶色い毛玉を払い除けたりはしない。
長い尻尾を滑り台にされていたり、喉元の浮き袋をてしてしされたり。ソイツは完全にイーブイの玩具になっていた。
「オマエ、ツバサノオウっていわれてたんだろ?キレたりしねーの?」
数日前に出会ったコイツは、何故か俺達に着いてきた。
初めて見た時はビビったけど、此方を襲う素振りもなく……というかコイツ自身がビビリで。
セツナ曰く「戦いたくない。自分を乗り物だと思って連れていってくれ」とか言う訳の判らない事も言っている様で。
ズオウの研究所の本で調べたら、ツバサノオウという名と共に記されたコイツの記事があった
「オマエ、ぜってぇつえーのに。バトルはにがてか?」
「あぎゃす。ぎゃお、ぎゃあす」
『あー、そういう…』
「なんて?」
『同族との縄張り争いに負けた時にボッコボコにされて、バトルがトラウマなんだって』
「…え、オマエのしゅぞく、どっかにたくさんいんの?」
「ぎゃおす。あぎゅ」
『ずっと昔は多かった。…あんた、やっぱり化石ポケモンなの?』
「ぎゃう、あぎゅぎゅ。あぎゃす」
『……急に光って、気付いたらこの世界に居た。それで大きな建物の中に居たけど、一緒に来たコライドンに追い出されたって』
「…きゅうにひかって…?」
そのワードで思い出すのは、俺が此処に来た時の事。
…森を抜けると見知らぬ土地だった俺と、コイツは立場が似ていた。
「……ひとりぼっちなのか、オマエ」
「ぎゃう」
こくりと頷いたソイツに、静かに目を細める。
そうか。だからオマエは、そんな目を。
何処か寂しそうな目をするコライドンに、俺は口を開いた
「…オレたち、ずっとこっちのせかいにはいねぇけど。それでもいいなら、つれてってやる」
「!…あぎゃあす!!!」
「どんどんレアなパーティーになっていくな…」
「ソイツがいっしょにきたいっていうから」
「あぎゃす!」
『カツキの事情は大体話したけど、あっちの世界に一緒に行きたいってさ』
タイマーボールというらしいボールを選び、自ら入ったコライドン。
研究所でソイツを出せば、ズオウが苦笑いしていた。
「まぁ、ゾロアの苦手タイプを補えるって考えれば良いんじゃない?
どっちもフェアリーが苦手だけど、コライドンの方が耐久面は優れてるし。
技規制を外してるから、二匹共フェアリーの弱点突けるし」
『スカーレット、タンクは任せた』
「ぎゃおす!」
任せろ!と言わんばかりに胸を張るコライドン…スカーレットに、堪らず俺は首を捻る
「あれ?オマエ、たたかうのイヤなんじゃねーの?」
「ぎゃう。あぎゅぎゅ、ぎゃあす」
『本当は嫌だけど、仲間を護るのは当然だって』
「かっけー!やっぱオマエつえーヤツだよスカーレット!!」
「あぎゃす!!!」
ぎゅうっと抱き付けば、にっこり笑って抱き締め返してくれた。
これで一先ず俺のパーティーは揃った。
…そう、思ったのだが。
「カツキって、実は激レア吸引機なの…?」
「しかたねーだろ!ひとりぼっちだっつーから!!」
「なんだ、独りぼっち吸引機か」
「そのいいかたヤメロ!!!」
「グルル…」
水色の大きな角を生やした、紫の鬣のポケモン。
何故だか付いてきたソイツを連れてくると、ズオウが若干引いた目で俺を見た
「そのポケモンはまともな情報なんて殆どないよ。ウネルミナモっていう仮称で呼ばれてるくらいだ」
「なぁオマエ、名前は?」
「グルルゥ」
『好きに呼べって』
…つまりこれは、また俺が名前を考える事になるのか。まぁセツナもスカーレットも俺が考えた訳だし、コイツだけないのも可哀想か。
じいっと此方を見る赤い目は静かで、期待されているのを嫌でも感じる。
ふむ、と顎を撫で、俺はウネルミナモの象徴とも言えそうな角に目を向けた。
美しく輝く水色の角。その光は昔テレビで見た宝石に似ていた
「…アクアマリン」
「グル?」
「オマエのなまえ、アクアマリンな!」
「ングルル」
ゆるりと赤い目が細くなった。どうやら期待に応えられたらしい。
そっと寄せられた額を撫でていれば、ズオウが苦笑いした
出会い続ける
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