死神と罪と罰(半間と親友)


・捏造オンパレード





授業が終わり、ぐっと伸びをする。
肩甲骨をぐいぐいと動かしていれば、つん、と頬をつつかれた。
そちらを見れば、前髪が長めの男の子がにこにこしている。


『どうしたの修二』


「刹那ちゃん、今日ヒマ?」


『うん。何かあるの?』


「一緒にしゃぼん玉しよ♡」


……しゃぼん玉?
突然の、しかも中学三年生にもなってやる事でもない気がしたが、私は頷いた。
こいつの気紛れは何時もの事なので


『良いよ。硝子も誘う?』


「家入やっかな?ガキくせーとか言ってきそう」


『それは言うかも。でも一緒に来てくれるとは思うよ』


「アイツ優しいもんなァ」


鞄を持ち、廊下側の席に座るボブカットのクラスメイトに近付く。
彼女、家入硝子は此方に気付くと、口角をゆるりと持ち上げた


「お疲れ。マック行かね?」


『良いね。あのね、修二がしゃぼん玉したいんだってさ』


「ガキくせー」


「ばはっ♡ほォら当たった」


「言われるって判ってたのかよ」


呆れた様な表情をして、それから硝子は了承の意を示した


「まぁ良いか。マック行ってからやろうよ」


『はーい』


「はぁい♡」
















「何食う?」


「んー、照り焼きセットかな。飲み物烏龍茶で」


『マックシェイクのバニラとポテトで』


「え、刹那ちゃん食わなすぎじゃね?バーガー頼まねぇの?」


『ハンバーガー食べると晩御飯入んなくなるんだよね』


「んじゃ俺の半分あげんね。
あー…チーズバーガーのセットと照り焼きとてりたまとビッグマック。飲みモンはコーラで」


『化け物じゃん』


「カロリーの暴力じゃん太れよ」


「すーぐ腹減んだよねぇ。つかどんだけ食っても太れねぇんだって。コレ体質ってヤツ?」


注文して、席を取りに行く。
幸い店内はそう多くもなく、道路側に面した角の席が空いていた。
奥に私、隣に修二、私の向かいに硝子が座り、テーブルに頬杖を付く


「体質か。あんた痩せすぎだもんね」


『まだ身長伸びてるからっていうのもあるんじゃない?今幾つだっけ?』


「177」


『10cmだけで良いから分けて欲しいわ』


「10cm分けたら同じぐれぇの身長になんだけどぉ?」


「どうせまだ伸びんだろ、私にも寄越せ」


「身長のカツアゲってなんなんwwwwwww」


駄弁っていればレジで渡された機械が鳴った。
取りに行って席に戻り、隣のやべぇ奴のトレーに思わず笑ってしまう


『修二の量ヤバいなwwwwwww』


「コイツ一人で大食い大会してんじゃん」


「逆にお前ら食わなすぎじゃね?そんだけで足りる?」


「良く考えろよ、このあと晩御飯あんの。それ入んなくなるしそんなに食ったら太るわ」


「ふーん?お前らもっと太っても良い気がすっけどなァ…細過ぎない?」


そう呟いて、修二はチーズバーガーの包みを開ける。私もバニラシェイクのストローを咥えた


「そういやハゲセンの髪また抜けた?
アイツてっぺんお亡くなりになってたけどォ」


「マジかwwwwwwww知らなかったwwwww」


「たまたま上から見たらさぁ、ハゲてんの。五百円くれぇ」


『だいぶwwwwwwハゲてるwwwwwww』


マックシェイクを噴き出しそうになった。
修二の言うハゲセンとは数学の波瀬先生。ネチネチ小言を言う事で知られている先生だが、最近ますます地肌が露出している。
ハゼをハゲとしれっと呼ぶ生徒が多いのは、純粋に嫌われている所為


「そのうちドット柄みたいにハゲんじゃね?
あ、ゴリラが明日小テストするって話知ってる?」


『何それ知らない。そんなの言ってた?』


「昼休みに斎藤が職員室行ったらさ、ゴリラの机に抜き打ちテスト一覧みたいなのあったって。ウチのクラスは明日ってなってたらしい」


「あんのゴリラ、いっつもだりぃ事すんなぁ。ハイ刹那ちゃん、あーん♡」


『ありがと。シェイク飲む?』


「アリガト♡」


てりたまを一口貰い、お返しにシェイクのストローを向ける。たまごの白身とパティが美味しい。
ポテトを摘まむと硝子が口を開けたので、そこに放り込んだ。
お返しに硝子にポテトを差し出され、唇で挟む。じゅわりと口の中に広がる塩味と油。咀嚼していれば、隣で大きくてりたまを噛り取った修二が言う


「そういやお前ら何処の高校行くん?」


「○○」


『私も』


「んあ?偏差値二番目ってアレ?」


「そ。進学校だけど、上の大学狙うにも就職するにも良い高校の方が有利だし。
何より、勉強さえ出来れば制服とか髪どうしても良いっぽいし」


「ほーん……家入は医者で、刹那ちゃんは弁護士になりてぇんだっけ?」


『そう。女って性別で舐められる事もあるだろうけど、これからはきっと女性の社会進出ってヤツが大々的になっていくだろうし。
全く勝ち目がないって訳でもなさそう。
…つっても、これからってアプリとかネット系がどんどん発展しそうな気もするけどねー』


「刹那ちゃん機械と数字ダメだもんなぁ」


『組み立てとかパーツ必ず足りないし、プログラミングとか眠くなるし。
条約とか法とか覚える方がよっぽど向いてんだよね』


「私が院長になったら刹那を顧問弁護士にするわ」


『よろしくー』


確信も何もない未来を掲げて笑っている私達を、梔子の瞳がじいっと見つめていた。

















翌日、硝子から聞いていた通り、化学の先生:通称ゴリラによる化学の小テストは実施された。
私は化学式だの化学反応だの、計算という存在が非常に苦手なのだが、テストの存在を聞いていたお陰で無事八割は取れた。


それにほっと胸を撫で下ろしていれば、授業の終盤、順調に回答用紙を返却していたゴリラの動きが止まった。


何だろうと視線を向ければ、円らな瞳をまん丸くして、手許の回答用紙を見つめている。
漸く動いたと思えば、ゴリラは此方────正確には私の隣と手許を何度も見比べた。


『修二、なんかゴリラめっちゃあんたの事見てない?』


そっと小声で話し掛けると、頬杖を付いていた修二が目をぱちりと瞬かせた。
猫科を連想させる吊り目でじーっとゴリラを眺めたかと思えば、此方に視線を戻す


「ゴリラより刹那ちゃん見てる方が目に優しいわ」


『まぁゴリラよりは見た目が良い自信あるわ。……なに、もしかしてカンニング疑われてる?』


以前、修二は面倒だったからという理由で小テストに名前だけ書いて出した事がある。
その時ゴリラは顔を真っ赤にして怒っていたから、確実に今の反応とは違うのだ。
現状はどちらかと言えば信じられないと言っている様にも思えるので、思い付いた事を口にすれば、切れ長の双眸が弓を描く


「かもなぁ♡」


『マジか』


そんなこと、コイツがする筈ないのに。
にへ、と修二が笑った時、ゴリラが漸く動いた。黒板に化学式を書いたと思えば、修二に目を向ける


「半間、これ解けるか」


「あー?…ああ、それね。硫酸と水酸化バリウムの中和反応だろ」


さらっと修二が答えると、ゴリラが次の問題を書いた。それも回答すれば、ゴリラは目を丸くして、それからずんずんと此方に向かってくる


「半間!お前なんでこんなに解けるのに、今まで適当にテスト受けてたんだ!」


「だってキョーミねぇしぃ?まぁこれからはテストもちゃんとすっけどさぁ。
つーか触んな。加齢臭ヤベぇぞゴリラ」


「先生と呼ばんか!!!」


頭を撫でようとするゴリラの手を叩き落としている修二。
それよりも、机に置かれた小テストの点数に、私は目を丸くした


「え、昨日の今日でガリ勉になったん?」


昼休み。
修二が何処からか入手した鍵を使って、屋上で屯する。
棒付きキャンディを咥えながら硝子が見ているのは、件の回答用紙だった。


書かれた数字は100。
前回0点の事を踏まえれば、そりゃあカンニングも疑いたくなるだろう。


修二は登校がてら買ってきたらしいねるねるねるねの袋を開けながら、何て事はない様に言った


「教科書読んだ」


「『ん?』」


「化学の教科書読んできた♡」


ニコニコしながらトレーの中に粉を開ける。
それを尻目に私と硝子は目を見合わせた。


『…え?嘘でしょ?教科書読んできた?』


「教科書読んできただけで満点…?は?アイツもしかして瞬間記憶出来るタイプか?」


『読んだだけで全部解ける様になるって事…?』


鼻歌交じりに知育菓子を作っている男を見下ろしながら、持参したポッキーの袋を開ける。
それを硝子に差し出し、自分も一本咥えた


『修二』


「なーにぃ?」


『1価の陽イオンを全て答えよ』


「んあ?んーと…水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銀イオン、アンモニウムイオン」


『…正解』


「うぇーい。ポッキーちょーだい♡」


『どーぞ』


すらすら答えた修二に驚きつつ、ポッキーを差し出した。
昨日までの修二は、こんな風に答えられなかった筈だ。テストと授業態度で幾ら呼び出しを食らったって気にも留めていなかったのに、一体どんな心変わりなのか。


「半間、何で急に勉強に目覚めた訳?」


「目覚めたっつーか、必要に応じてってヤツ?」


『行きたい学校でも見付かった感じ?』


「そ♡」


にっこり笑って、大きな口は言葉を紡いだ


「刹那ちゃんも家入も行くってんならさぁ、俺も行こってなるじゃん?ボッチはやーよ♡」


『oh…』


「……おま、マジか…」


硝子も私と同じ考えに至った様だった。
水色のもったりした食べ物を、カラフルなキャンディチップに飛び込ませる。
ぱくりと紫のスプーンを口に含み、梔子は弓形に撓んだ


「俺、これからちょっと本気出すわ♡」

















────それから五ヶ月。
ウチの学校で素行不良の問題児として知られていた修二は、学校で一番頭の良い問題児として有名になっていた。
授業でも露骨に寝るのではなく、ノートに落書きだったり教科書を読んだりしながら過ごしている。恐らく内申点を気にしているのだろう。


『しゅーじ…もうだめだしゅーじ……数学が死んでくれない…』


「数学ってどうやっても殺せねぇかんなァ」


「なんで一つの単語で三個も四個も意味があるんだよ…既存のヤツに意味増やさずに新しい単語増やせよ…」


「んなモン、アングロ人とサクソン人とジュート人に文句言えよぉ」


『誰だよジュート人。アングロサクソンしか知らねー…』


「つってもそれ古英語ってヤツなんだって。
現代英語は、古英語にケルト系、ノルド語、フランス語、ラテン語とか混ぜてんだってさァ」


「凄ぇ細かいトコ足してくんじゃん…何だノルド語…」


「フィンランドとかー、ノルウェーとかー、そっち系の言葉ァ」


『聞けば聞くだけ答える…私ら何時から歩く辞書持ち始めたっけ?』


「ばはっ、五ヶ月前からじゃねぇ?」


図書館のテーブルに突っ伏す私と硝子を見ながら、修二は上機嫌に笑っている。
教科書を読破した修二は、今やすっかり歩く辞書だ。
現在パラパラと捲っているのは人体解剖書。読んでるものが地味に怖い。コイツ知識を悪用する気満々である


「俺今成長期じゃん?」


『そーね。またでかくなった?』


「180あるっぽい。でも成長痛まだあっから、まだ伸びっかも」


「タケノコみたいに伸びてんね」


「だからか知らねぇけどさ、めっちゃ不良に絡まれんのよ」


『ああ、こないだヤンキー殴って歯を折ってましたね』


「学生で入れ歯はヤだわ」


「正当防衛っつー事で、一発掌に食らう様にはしてんだけどさぁ」


『掌に食らうの?』


「顔に食らうのは癪じゃん?
雑魚に怪我させられんのもヤだし、口ン中切ったらだりぃし」


『正当防衛成立するか…?』


「正当防衛っつーかハンムラビ法典の悪用じゃね」


呆れた様に硝子が笑う。
掌で受け止めるってアリか?まぁ殴られたのを誰かが見ていてくれれば大丈夫だろうけど


「やっぱデケぇと喧嘩強そうに見えんのかな?」


「お前のツラと雰囲気の問題じゃね?」


「家入サン???」


『え、修二の顔綺麗じゃない?雰囲気は胡散臭いけど』


「刹那チャン???」


「あれか?ヘラヘラしてるからか?でもコイツクッソ無表情で突っ立ってる事ない?」


『下がり眉にツリ目だから胡散臭いとか?え、修二いつもヘラヘラしてない?
目が合うとふにゃってしてるから、コイツ毎日楽しそうで良いよなーって思ってた』


「そんなお気楽か?コイツ絶対サイコパスだって」


「テメェら表ェ出ろや。ちょーっと話し合おうぜェ?」


笑顔で青筋を浮かべている巨人を無視しつつ、数学の問題に目を戻す。
今躓いているのは、三角形の中で点が動き、とある面積になるまでの秒数を求めるもの。
ぶっちゃけそこの秒数を求める意味が判らない。日常生活で必要か?
そもそも何でコイツはウロウロするのか。何だよ動く点PとQって…


『コイツらマジで嫌い。点PとQ落ち着きないし』


「動かねぇと問題になンねぇんだけどwwwwwwwwwwwww」


「落ち着きがないwwwwwww動点問題なのにwwwwwwwwww」


『数学出来る奴らうるせー』


私のぼやきを聞いて机に崩れ落ちた二人に舌打ちを溢す。おい図書館で騒ぐなよ、怒られるだろ。
くるくるとシャーペンを回していれば、未だ笑ったままの修二が隣から問題集を覗き込んできた


「あー……此処までは合ってる。次の計算ミスってるわ」


『うえ』


「ここだな、X²出てきて焦ったァ?凡ミスしてる」


骨張った大きな手が私からシャーペンを取ると、サラサラと計算式を書き込んでいった。
それを隣で解き始めると、暇になったらしい大きな手が髪を一房掬う


『括弧付ける計算嫌いなんだよややこしい』


「つーか刹那ちゃん、数学に好きなジャンルとかあんの?」


『………』


「ないかぁ」


「その子典型的な文系だしね」


『和差積商が出来れば最低限生きていけると思います。出来た!』


「数学が出来ない奴ってすぐそう言うよね」


「ハイせいかーい。
刹那ちゃん焦んなきゃ出来るんだからさ、先ず落ち着けよ」


『教えてくれてありがとう。修二先生、次これ教えて』


「刹那ちゃんちょっとは自分で考えるフリしな???」

















帰り、修二と硝子と一緒に歩いていると、校門の前に人集りが出来ているのが見えた。
端に寄せられているのは、模範的な着こなしの女子生徒ばかり。逆に化粧をしていたりスカートが短かったり、腰パンしている生徒はスルー。
というか男子は見てないんじゃないかというレベルまである


「…なーんか、真面目チャンばっか並ばされてるっぽくね?」


「アイツらはスルーであの子止めんの?どういう事?」


服装検査じゃないんだろうか。
周りも怪訝そうな目で校門の方角を見ている。
其方をじっと見つめていると、シャツにスラックス姿の男が見えた。


『うわ、そこ立ってんの田中じゃん』


「げ、田中ぁ?エロジジィじゃん」


「は?だりぃヤツかよ。…お前ら俺に寄っとけ。声掛けられたら走んぞ」


「『イエッサー』」


田中は、大人しい女子生徒に絡む事で有名な教師だ。
校内で良くない噂が流れているが、被害に遭っていると目されるのは優等生や真面目な子ばかり。要は声を上げられないタイプの生徒を狙っている可能性が高い。
その点で言えば硝子は平気だろう。
制服はちゃんと着ているが、髪は落ち着いた茶髪。田中は髪を染めている子には手を出していないという噂だ。
そこまで考えて、ふと自分の格好を見た。
きっちりと着たセーラー服に、染めた事のない髪。化粧もしていない。


……妙に熱のある目と、目が合った


「そこの女子!止まれぇ!」


あ、やっぱり。
そう思った瞬間、ぐいっと腰が引き寄せられた


「ばはっ、よーいどん!!」


『はぁ!?』


「コラ止まらんかぁ!!!」


ひょいと腕に乗せる様に抱き上げられ、反射的に修二の首に腕を回す。
そのまま修二は長い足で走り出し、硝子も後ろから付いてきた。
近くの公園に入った所で私を降ろすと、修二はへらりと笑った


「刹那ちゃん、急にごめんなぁ?」


『いや、助かった。ありがとう修二』


「どーいたしまして♡」


「刹那、半間酔いしてない?」


『大丈夫だった』


「俺何時から乗り物になったん?」


ゲラゲラ笑い始めた修二を放置して、硝子は自販機に向かった。
私は取り敢えずベンチの端に座り、ポケットからブドウ味の飴を取り出す。それを口に放り込んだ。
カラコロと口の中で転がしていれば、復活した修二が隣にやって来た。
座ったと思えば蛍光グリーンのストローを咥えた。吹き出されるシャボン玉を眺めていれば、修二の隣に硝子が座る


「アンタまだシャボン玉ブーム続いてたの?」


「鞄に入れっぱだった」


『修二の鞄って何入ってんの?』


「ヒミツ♡」


「どーせ大したモン入ってないって」


「しばくぞ♡」


隣に置かれた鞄をそっと覗き込むと、何だかごちゃごちゃしていた。
そこから目を離し、ふわふわ浮かぶシャボン玉にケータイを向けた。
ぱしゃり、シャッター音が鳴ると隣から手が伸びてくる。
急に引き寄せられたかと思えば、犯人はにっと笑った


「ハイ、チーズ♡」


『マジで撮るなら言って。笑うので必死だわ』


「なんでお前はピースする隙も与えないで撮んの?パパラッチ目指してる?」


「高嶺の花ーズの取り繕えてねぇトコ撮りてぇの。俺だけの特権じゃん?お、俺写真上手くね?俺と家入におーくろっ♡」


そのまま人のケータイをカコカコやりだしたアホを一度どつく。
ケータイを返してもらってから、聞き馴染みのない言葉に首を捻った


『高嶺の花ーズって?』


「んあ、知らねぇの?お前ら二人、男からそう呼ばれてんぞ」


「名前がダサい」


「んなモン言い出したヤツに言えっての」


『高嶺の花、ねぇ…』


修二の向こうに座る硝子を見た。
垂れ気味の目に長い睫毛。抜群のプロポーションにダウナーな雰囲気は、確かに高嶺の花と言えそうだ。
それに比べて何故私まで……あ、あれか。
高嶺の花の引き立て役って事か(察し)


『そういえば修二も人気あるよね』


隣に座るこの男も切れ長の双眸に梔子色の目をしていて、すっと通った鼻と案外大きな口もバランスが良い。
整った顔立ちで高身長と来れば、だるいという鳴き声はダウナーとかアンニュイとかという風に都合良く変換される。
そんな訳で、修二に熱視線を送る女子は多い


「お前今日、隣のクラスの子に呼び出されたんじゃなかった?」


「そんなのあったっけぇ?」


『えっ、今日?どうする、修二だけ学校戻す?』


「はぁ!?ヤだよだりぃ!
何で知りもしねぇ奴に、半間くん好きです♡とか言われんの聞かなきゃなんねぇの?」


『てかその子強いね?女子二人とつるんでる男に告白って難しくない?』


私だったら気になる人が他の女の子とつるんでたら、諦めるけど。
呟いた私に、硝子が確かにと頷いた


「よっぽど自分に自信があるか、逆に女二人とつるんでるんだったら、自分も混ざれるとか思ってそう」


「はぁ?無理。なぁんでお前ら以外とつるまねぇとなんねぇの?」


『え、もしかして……私らって修二のオトモダチ(意味深)だと思われてるの?』


思わず過った嫌な予想を口にすると、修二が目を瞬かせた。
それからげんなりした表情で、しゃこしゃことストローをボトルに押し込む


「マジでヤだ、俺童貞なんですけどぉ?」


「クソ要らねー情報ブッ込むな馬鹿ノッポ」


「凄ぇ暴言祭りじゃん。えー、刹那ちゃんどぉ?」


『どう?どうってなにが…?
其処らのメスネコに言い寄られてそうなのに、ちゃんと守ってて偉いねって言えば良いの…???』


良く判らないフリにそう返すと、修二が噴き出した


「ばはっwwwwwwwwwwwマジかwwwwwwww童貞褒めるってなんなんwwwwwwwww」


「オイ刹那に品のない絡みすんな捥ぐぞ」


「こっわwwwwwwwww目がマジじゃんwwwwwwひいwwwwww」


お腹を抱えて痙攣する修二を、蔑む様な目で見つめる硝子。
隣で震えるデカブツの背を擦りつつ、そういえばと硝子を見た。


『明日って新宿に何時集合?』


「九時で良くね?」


「場所はぁ?」


「駅前」


「りょ♡」









三人仲良く









刹那→中3。
黒髪に菫青の目の女子。
入学一日目から前後になり話し掛けてきた半間と親友になった。
数学は怨敵、見たら殺せ。

半間→中3。
まだ身長も190ないし、染めてない。
入学一日目に前後になった刹那に絡み、俺ら赤ちゃんの頃からつるんでますけど?感を出す。
やる気があれば何でも出来る。

家入→中3。
落ち着いた茶髪にアンニュイな雰囲気。年上に見られがち。
どうやったって必ずデカい男とつるむんだな、と思ったりしている。
英語の文法がややこしくて好きじゃない。滅びろ。




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