死神と罪と罰2(半間と親友)
・捏造オンパレード
コートのポケットに手を突っ込みながら、冬の寒さに包まれた駅前に立つ。
季節は十二月。受験の追い込みが過熱する時期だが、たまの休憩も良いだろうと今日は遊びに来ていた。
『今日めちゃくちゃ寒くない?』
「ねー。帽子持ってくりゃ良かったな」
マフラーに口許を埋めながら硝子と話していると、足音が傍で止まった。
最後の一人が来たのかと顔を其方に向け、二人揃って眉を寄せたのは仕方ないと思う
「ねぇねぇ、誰か待ってんの?」
「今日寒いしさ、一緒にカフェでも行かない?」
『「結構です」』
「えー、でももう十分ぐらい待ってね?良いじゃん、少しぐらい」
「『結構です』」
「友達も一緒で良いからさ」
『「結構です」』
ちらりと腕時計を見て、そろそろかと内心思う。チャラついた男二人の後方に見えた影に、ひらりと手を振った
『時間ぴったりじゃん』
「お前居れば面倒減るんだから、五分前には来いよ」
「ばはっ、善処しまーす♡」
「えっ、でか…」
「うわ…」
音もなく背後に180オーバーの男が立っているなんて、普通に怖い。チャラ男はビクッと肩を揺らした。
ただへらりと笑った修二の雰囲気の所為か、それともひょろりと縦に長いだけに見えてしまうからか、はたまた人数の差か。
男二人は顔を見合わせると、ニヤリと笑った
「なぁ女一人余んじゃん?そうなると可哀想だからさぁ、お前帰れよ」
「今なら黙って見逃してやっからよぉ」
口々に馬鹿な事を宣う男を見下ろして、修二はげんなりした表情になった。
それから、ちらりと此方に目を向ける
「ダリィ………ルールは?」
『…ワンパン。今からお出掛けだし、ノーダメ推奨』
「歯はァ?」
『一本』
「りょ♡」
梔子色の瞳がキュウッと細くなり、薄い唇がにんまりと吊り上がった。
「────オニーサン達、前歯一本ずつ貰うなぁ?」
雑魚を秒でワンパンした修二を連れて、三人で新宿の街を歩く。
適当なお店を冷やかしたりゲーセンを梯子しつつ、改めて周囲に目を向けた
『やっぱり不良多いね』
「此処って誰か仕切ってるんだっけ?」
「誰も居ねぇからあちこちのチームが居るんじゃねぇの?」
『どっかのチームの縄張りの方が穏やかだったりするの?』
「んー…必ずって訳でもねぇけど、六本木とかは割と安全って聞くよな。
結局は仕切るヤツによんじゃねぇ?」
「六本木…カリスマ兄弟の縄張りか。確かに前に行ったけど、そんなに喧嘩はなかったかも」
『へぇ』
赤やら白やら黄色やら、色んなカラーの特攻服を身に纏った男達があちこちで屯する。今も斜め前を歩いていたサラリーマン風の男性が、目が合っただけで難癖を付けられていた。
それを尻目に、右隣を歩く修二を見上げた。
赤い特攻服を眺めているかと思えば、私の視線に気付いたのか、此方に柔らかな梔子色を向けてくる
「どしたん?」
『いや…カリスマ兄弟ってどんな?』
やっぱりふにゃっとした目で生きてるよなぁ。
そう思いつつ問えば、んー、と顎を擦ってから薄い唇が動いた
「三つ編みの兄貴と、眼鏡の弟じゃなかったっけ?」
「確かやり過ぎて、相手殺して年少入ったって聞いたけど」
『ひえ』
「刹那ちゃん、六本木行きたかったら俺に言えよ?用心棒になっからさァ」
『ありがと…怖いからあんま行きたくない…』
硝子の補足で一気に六本木に行く気力が失せた。幾ら安全と言われても、それは怖い。
左隣を歩く硝子は、小さく笑って私の頭を撫でた
「そうしな。まぁ、行くなら私も一緒に行くよ。半間を前衛にして、私が後衛に付けばいけんだろ」
『ありがとう硝子、好き』
「私も好きだよ。はは、両想いだな」
私の親友がカッコイイ。
思わずニコニコした所で、隣から長い腕が絡み付いてきた
「はぁ〜???ちょっと刹那チャン???お前俺と家入の対応違い過ぎない???」
『ん?』
「俺にも好きって言えよ」
『えっ、修二知らないの?男子にそう簡単に好きって言っちゃいけないんだよ…?』
「お前、この間勘違い野郎がストーカーした挙げ句に女子大生殺したの知らないの?」
一般的に、同性への好きは親愛だと認識される。けれどそれを異性の友人に伝えてしまい、起きたのが先日の事件だった。
女子大生は一度だけ、男に好きだよと伝えたそうだ。
女子大生からすれば、何時もの何気無い会話。
ただそれを恋愛感情だと受け取った男は、女子大生を彼女として認識する様になった。
可笑しいな、そう最初に思ったのはどちらだったのか。
ある日、男は女子大生が男性と仲睦まじく歩いているのを見てしまった。
それを目撃した男は激怒。
その日の晩に女子大生の家に乗り込み、包丁で滅多刺しにしたそうだ。
悍しい事件の詳細を思い出した所で、肩を擦った
『やだよ私。修二に殺されたくない』
「えー、俺刹那ちゃんがヤな事しねぇよ?多分」
『多分って何???』
「刹那ちゃんは嫌がってっけどめちゃくちゃ面白そうならやる可能性」
「本能に素直かお前は」
「ばはっ♡」
ショッピングを済ませ、三人でカフェに向かう。席に座ると、硝子が大きく息を吐いた。
「マジでヤンキー多過ぎ…ピクミンかよ」
『赤ピクミンも青ピクミンも、修ちゃんピクミンがブッ飛ばしたんですけど』
「修ちゃんピクミン力持ち♪」
「お前いつから紫ピクミンだったの?」
『オリマー誰?』
「アンタでしょうよ」
『え、じゃあ硝子何ピクミン?』
「白ピクミンじゃね?ぜってー毒あるって」
「殺すぞ紫ピクミン」
「殺意ヤバwwwwwwwwwwwwww」
取り敢えず、私の周りのピクミンがめちゃくちゃ強そう。
確か紫ピクミンって赤ピクミンより強いんだっけ?白ピクミンも足が速くて毒を持ってる、トリッキーなやべぇヤツ。
紫ピクミンの姿を思い浮かべ、隣でコーラを飲む巨人に目を向けた
『でも紫ピクミンってデブじゃない?
どっちかって言ったら、修二は体型が赤か青ピクミン』
「混ぜたら紫だし良いって。多分コイツ稀少種なんだよ。痩せた紫ピクミン」
「この上なく雑wwwwwwwwwwwww」
『wwwwwwwwwwwww』
雑な硝子の説明に二人で笑う。
ジャスミンティーを飲みつつ、店内に流れるBGMに耳を澄ました
『そう言えば来週クリスマスじゃん。プレゼントいつ渡す?』
「確か平日だよね。放課後にクリパする?」
『さんせー。
確かホワイトクリスマスになるって予報だったよね。防寒しっかりしよ』
「なぁ雪積もったらさァ、屋上から無差別雪合戦やろうぜ?標的は歩いてる奴等な♡」
『なんで修二はこう……職員室まっしぐらな遊びを考え付くんだろうね?』
「思考が反社なんじゃね?」
『ヤンキー通り越してwwwwwwww反社wwwwwwww』
「は???オイ家入、此方見ろ家入」
「半間も反社もそんな変わんねーって。よっ、クレイジー半間!」
「あ゙???
だァれがンな売れねぇ芸人みてぇな渾名付けろっつったよ表出ろマジ殺す」
『もうむりwwwwwwwwwwwwwwwww』
「おい男子ィ、刹那ちゃんの腹筋死んだじゃーん」
「何これキレそう♡」
何が凄いって、こんだけ人の腹筋を殴り付けておきながら、硝子はしれっとした顔という所だ。もうその落差だけでも笑える。
耐えきれずテーブルに突っ伏した私の背を、大きな手が擦ってくれた。
暫くして笑いが収まった所で、のろのろと身を起こす
『あー苦しかった』
「おうおう良く笑ってたなぁ?」
「クレイジー半間の所為じゃね?」
「サイコパス家入は黙ってろよ」
「は???」
「あ???」
『紫ピクミンクレイジー♪
白ピクミンはーサイコパス♪個性が色々ピークーミン♪』
あ、丁度歌に嵌まるじゃん。
何気無く口ずさんだ瞬間、隣と向かいが沈没した
「wwwwwwwwwwwwwwwwww」
「まってwwwwwww刹那ちゃんまってwwwwwwwww」
『クレイジーサイコ共凄い笑うじゃん』
何の話してたんだっけ?
そう思いつつ、隣からコーラを奪った
安全な街と、そうじゃない街の違いって何なんだろう。
そんな事を考えているのは、きっと疲れたからだ。
『マジで…何でこんな絡まれんの…?』
「やっぱアイツのツラと雰囲気じゃない?」
「おいテメー聞こえてンぞ」
今日も性懲りもなく絡んできたヤンキーの顔面を蹴飛ばしながら、修二がじろりと此方を睨んだ
「輩を殲滅してドーゾ」
『一発食らう毎に紫ピクミンの奢りな』
「良いぜ、目の前に財布居るし♡」
にっこり笑って修二は相手を盛大に煽った。
「調子乗んなよテメー!!!」
「やっちまえ!!!」
「ユウくんの仇ィ!!」
「ひゃはっ、粋がってんなよザーコ♡」
長い脚が鞭の様に撓り、ヤンキーの胴を打ち据えた。
崩れ落ちるソイツを片腕で持ち上げ、野球宜しく振りかぶる。
デッドボール(人間)が見事決まり、敵は総崩れになった。
修二は大きく踏み込んで、倒れ込んだ二人の上に着地。綺麗にトドメを刺した
「うぇーい、雑魚共生きてるぅ?
全くよぉ、希望を持つ様になったらおしまいだよってさァ、バーテンが言ってんじゃん?
────なぁンでテメーら、俺に勝てるなんて希望持っちゃったんだろうなァ?」
「何の話してんのアイツ」
『多分、寺山修司の幸福論だと思う』
確か、希望とは人間の罹る最後の病気という話だった気がする。
読んだ事がないと判らない高度な煽りを落とす姿に、硝子が呟いた
「ヤンキーに絡まれんのってさ、もしかしなくてもお礼参りじゃね?」
『…お礼参りダルいし、紫ピクミンが特定されてるっぽい理由調べなきゃかな』
「おっ、コイツ金持ちじゃーん♡」
ゆるーく笑った後、早速屍達の財布を漁り始めた紫ピクミン。
お札とカードの様な物を引き抜くと、腰を上げる。
屍を表に引っくり返して一列に並べると、修二はピースして自撮りを始めた
『何あれ。マグロ競り落とした業者みたいな構図なんだけど』
「あれ生徒証か?ボコした奴等の個人情報押さえてんな」
『え、じゃあアイツらってボコられて、歯まで折られて、お金と個人情報まで押さえられてんの?
なんか……可哀想だね…?』
「クレイジーピクミンに喧嘩吹っ掛ける方が悪いだろ」
それはそう。
頷いた瞬間、真後ろから影が落ちてきた。
「アイツらの仇ィ…!!!」
『!』
しまった、アイツら四人じゃなかったのか。
慌てて振り向こうとした、瞬間
「────お前、今この子を狙ったね?」
スカートに包まれた脚が、ヤンキーの頬を蹴り飛ばす。
ぐるんと白目を剥いて崩れ落ちたのを見届けると、硝子は修二を睨み付けた
「おい!一匹逃してんぞ!」
「え、マジで?
…つーかさぁ、ソイツ今ァ、俺らのオリマーちゃん狙ったァ?」
────にっこり。
微笑みを浮かべながら、ゆら、と立ち上がった修二。
……その笑みが、すこんと抜け落ちる様を見てしまった。
『あかん(アカン)』
「…やべ、生きて帰れっかなコイツら」
呆然と呟く私達の前で、地の底を這う様な低音が、ねっとりと耳を舐った
「────鏖だァ♡」
数日後の図書館にて。
とん、とケータイのキーを叩き、両サイドから覗き込む二人に目を向けた
『えー、現在、“△△中の男”が不良達の間で話題です』
「へー」
「初耳だなァ」
『ソイツは同じ中学の女子二人を連れて主に新宿に出没、出会った不良を見境なしにボコります』
「へー」
「初耳だなァ」
『対峙した不良は歯を折られるらしいです。
知識がなきゃ判らない高度な煽りをするのと、何人かは女子にボコって良いか確認を取っているのを見たそうです。
そして先日五人組でその男に喧嘩を吹っ掛けた際、一人が女子を襲おうとしました。
それに男がブチギレ、不良達は強制抜歯(残った方が少ない)と骨折の刑に処されました。
そのキレ具合からして、女子がその三人組の…リーダーじゃないかという……噂が…』
「へぇwwwwwwwwwwwwwwww」
「初耳だなァwwwwwwwwwwww」
『んのクソ共め』
机をだん!と叩くも、掌が痛くなって秒で後悔した。
不良が使っているらしいと噂のある掲示板、それを覗いてみたのは────最近矢鱈と修二が絡まれる所為だ。
道を歩けばまぁ絡まれる。
道路ってポケモンの草むらか?ってレベルでコラッタ(不良)が沸く。
ソイツらをボコすだけならまぁ、百歩譲って許せるのだ。実質私達に被害はない。
修二も敵を蹴飛ばしてストレス発散、ファイトマネー()も得られるしOKらしいので。
ただ、問題は量である。
おまけに推定:私が三人組のリーダーだと思われているという事。
『修二……お前の所為じゃん…毎回喧嘩の前に私にルール設定求めるから…あの時ブチギレたから…』
「だーって、そうじゃねぇと毎回半殺しにしちまうってぇ。
流石に受験前に問題起こすのはダリィわ。
つーかさぁ、刹那ちゃん狙われてキレねぇの無理じゃね?」
「三日に一回のレベルでバトルしてると思ったら、掲示板に書き込まれてたのか」
『どうするかなぁ…管理人に削除依頼して通るかどうか』
「三人組って書いてあっから来るって感じあるよなぁ。俺を潰せれば女二人だしラッキー、みたいな?」
『女子の片っぽはめちゃくちゃ強いけどな』
「止せよ、向かってきたヤンキーの頬骨陥没させただけだって」
「いや狂ってンじゃん。そこ照れるトコじゃねぇよ?お前実はしれっとバーサーカーだな?」
「おい半間此処にツラ置けよ。瓦みたいにデコから真っ二つにしてやるから」
『こわいこわいこわいwwwwwwwwww』
実はめちゃくちゃ武闘派な硝子がゴキゴキと拳を鳴らすのに笑いつつ、頬杖を付く。
実際言うと、学校名が割れているのが痛い。
これじゃあ卒業するまでこのまま……そう考えて、ふと隣でパソコンの専門書を捲る修二を見た
『修二さっきさ、三人組だから来るのかもって言ってたよね?』
「ン。だから頭数増やせば押し切れるっつー考え方なんじゃねぇかな。
今んトコは良いけど、チームごと向かってきたら流石にキチィよ」
「刹那を安全な場所に隠して私達だけって状態なら…ギリギリってとこか」
「まぁ無傷は無理だけど、五十くらいならいけっかァ?」
「地の利と闇討ちと武器アリならもう少し…六十って感じか」
『お前らって無双武将だっけ???』
コイツら相手も同じ人間だって判ってるんだろうか。
なんか、戦国無双の武将が足軽を薙ぎ倒していくイメージに思えてきたんだが。
でも実際修二は一蹴りで三人は吹っ飛ばせるし、その痩身からは想像出来ない膂力で平然と人を投げ飛ばせる。人間ボーリング(ピンもボールも人間)は結構目にするので。
硝子は蹴りで人の頬骨を折れるし、元が隠し持ったトンファーで殴り散らかすという、脚の速さを生かしたスタイルだ。
…あれ、二人共やばいな???
『私のピクミンって無双武将だった…?』
「一騎当千しろってェ?良いけどぉ、せめて初手長物で払いてぇわ。
敵の体勢崩してからなら結構イケそう」
「私はパス。催涙ガス投げ込んで殴って良いならやるけど」
「何それズリィ。俺もそっちが良い」
『いや一騎当千やめよう???』
というか何の話を……思い出した、人数の話だ。
『確認です。私達は三人組だから、ヤンキーが向かってくる可能性がある』
「うい」
「私が戦えるってバレたら余計ダルそうだな」
『マジそれな。
じゃあ仮に、チームとかに属して三人だけじゃなくなったとする。
そしたらどうなると思う?』
「んあ?あー…そりゃチームによるだろうな。
黒龍とか、フツーに手ェ出したらやべェチームもあるし」
「愛美愛主とか、最近大きくなりだしたけど良い噂を聞かないチームもあるしな」
不良事情に詳しい二人はそう言った。
修二は本を閉じ、次のプログラミング関連の本を手にしながら私を見る。
その瞳には、此方を諫める様な輝きが在った
「俺ヤだよ、刹那ちゃん以外の下に付くの。
況してや命令なんざ聞きたかねぇ」
『え、私達普通に親友じゃないの?何時から主従関係が発生していた…?』
えっ、私と修二は親友では…?
目を丸くした私を見つめ、梔子がゆうるりと細められた。
端整な顔が甘い笑みを象り、低い声が優しく響く
「ばはっ、喩えだよォ♡
俺も刹那ちゃん大好き♡ずーっと一緒に居るからな♡」
『うおお、面が良い…』
…なんだか蜂蜜を直飲みさせられた気分で、思わず口をきゅむっとさせる。
すると硝子がすかさず口を開いた
「おい刹那騙されんな、ソイツ親友とは言ってないぞ。気付け、大好きとしか言ってないぞ」
「あ?サイコピクミンちょーっと黙ってろや」
「は?クレイジーピクミンこそ口閉じてろ」
秒速でメンチ切り合うピクミンコンビは、果たして仲が良いのか悪いのか。
私を挟んで喧嘩しそうな二人を掌で押し留め、声を上げた
『はい、話を戻すよ。
修二は私以外の言う事を聞きたくない』
「そォでーす♡」
『硝子はどう?』
「私も御免だね」
正直三人だけだと、これからも面倒は湧き続ける。
でも二人はチームに入って誰かに付くのは嫌だと言う。
……そうなると、やはり選べるのは一つしかなかった
『作ろっか、チーム』
「「は?」」
ぽかんとした二人の顔は見物だった
『ほら、無料でサイト作れるヤツあるじゃん?
これで先ずサイトを作る。
そんで、此処にはパスワードを知らないと入れない様にすんの。
パスワードも、アドレスを登録して教える感じ。
知り合いから教えて貰った人だけ入れる、みたいな。そういう風にすれば良いと思う。
人間ってちょっとした秘密とか、ちょっと悪い事とか好きだから』
菫青の瞳を煌めかせ、刹那ちゃんはそう言った。
柔らかな癖に瞳の奧に鋭さを隠した、その笑みに思わず背筋がゾクリとする。
知らず口角が上がっていて、静かに掌で覆い隠した
『此処に置いておくのは掲示板だけ。
総長も幹部も判らない、首なしのチームにする』
「んあ?刹那ちゃん総長やんねぇの?」
「幹部も?じゃあ私らもヒラか?」
『いや、私達がチームの主導権は握る。
けど表から見たら、誰が総長か判んないチームにしたいんだよね』
刹那ちゃんの発言を脳内で繋ぎ合わせる。
パスワード制のサイト。
総長も幹部も不明のチーム。
俺らで仕切るが、表から見たら総長がない、その、意味。
「────ああ、ハリボテかァ」
呟いた俺に、刹那ちゃんはにっこりと笑った
『正解!
虎の威を借る訳じゃないけど、被る皮を自分で作る感じかな?』
「うぇーい、撫でて♡」
『いーよー』
細い指が髪を梳くのを受け入れる。
刹那ちゃんの計画は、こうだ。
先ずはハリボテを育てる。
そして、ハリボテに俺らが所属しているという噂を流す。
そうすれば、少しでも考える頭のあるヤツは、ヤベェ噂のあるチームに喧嘩を売ろうなんてしなくなる筈、という考えだった。
刹那ちゃんの意図を理解した家入が、髪を自分の指に巻き付ける
「ハリボテ、ねぇ…噂とか広めて、ヤバイチームだって思い込ませるとか?」
「まぁそうすりゃ、今のダリィ状態も終わりそうだけどよ」
相槌を打ちつつ、読み込んでいくプログラミングの専門書。
人の話を聞きながら本を読むとキレられるが、刹那ちゃんは俺の好きにさせてくれる。
そういう所が一緒に居て楽だし、好きだ
『そうそう。
でもこれ、使い方によってはヤバイ犯罪とか出来ちゃうよ』
「あ?」
「…パスワード知ってるだけの連中で、どうやって?」
さらっと溢された一言に、俺と家入は疑問符を浮かべた。
だって、刹那ちゃんが言うハリボテのチームは、俺ら以外顔も知らねぇ奴等が繋がるものだ。
繋がりだって、パスワードなんていうちっぽけなモノ。
そんな脆弱な関係性で、一体何を為せると言うのか。
首を捻る俺らに、猫目がきゅうっと眇められた
『例えばの話。
ハリボテを使って、買い物させます。
そしてそれを、とある公園に置いておきます』
「おー」
『ハリボテを使って、公園に置いてある鞄を駅まで運べって命令を書きます』
「ふむ」
『更に、運ばれてきた鞄を、そうだな…国会議事堂前でいっか。そこに運べって書き込みます。
すると、鞄はどうなると思いますか?』
「あ?あー…運ぶだけ、だもんなァ…近くに居るヤツとかは、暇潰しにやりそう」
「つまり、国会議事堂前に行くって事か」
『そう。そして……』
花が綻ぶ様に、柔らかく微笑む。
ただし柔らかそうな唇が溢す言葉は、猛毒に充ちていた
『────買わせた物が圧力鍋だったとして。そこに釘やら何やら仕込んで爆弾にしていたら……国会議事堂前は、どうなるでしょうか?』
「」
「」
『正解はテロ発生でしたー。
はい、こうやって知らない間にテロの片棒担がせたりとか出来ます。覚えておきましょうね』
「うわぁ、私のオリマーやべぇわ」
『何で?え、普通に考えない?』
「いや考えないんだよなぁ。なんで国会議事堂?」
『総理官邸と悩んだ』
「例題で容易くテロ現場にすんなよ」
『因みにもっときっちり詰めていけば、もしかしたら完全犯罪とか目指せそう』
「将来の夢テロリストか?」
『弁護士だよ』
「犯罪やらせて弁護するマッチポンプか?」
『なにそれ悪徳wwwwwwwwww』
家入と話している刹那ちゃんをじっと見つめる。
灰色に見える、つまらない世界の中で鮮やかな女。
その光が、今の喩えで周りに波及した。ぱちりぱちりと踊る、光の流星群。
周りも鮮やかに色付けていく、全てを塗り替えていく、菫青の彗星。
視界一面で弾ける輝きの中、目を瞬かせる。
漠然と、思った。
────あァ、魔法みてぇだ。
その眼を灼かんばかりの輝きを脳味噌に焼き付けて、俺は華奢な身体を抱き締めた。
『ぎゃっ、何!?』
「あーーーーーーーーヤバイ大好きっっっっっっ」
語彙は死んだ。
だって誰が、虫も殺せなさそうな顔をしておいて悪辣なテロ計画を口にするというのか。
柔らかな笑みを浮かべている癖に、瞳だけはギラリと鋭いのもキた。
あれなのだ、こう…ぎゅうっと心臓を鷲掴まれたみたいな。
なんか判んねぇけど取り敢えずやべぇ。死にそう。
ああ、ダメだ、心臓バクバク言ってる。
やべぇ。なんかもう全部やべぇ。キラキラしてる。ドキドキしてる。泣きそう。ウケる。
込み上げる衝動のまま、ぎゅうぎゅう小さな身体を抱き締める。花みてぇな良い匂いがした。
軈て彼女は、俺がアガっている理由を察したらしい。
物凄く困惑した声が耳許で漏れた
『えっ、……えっ?
まって…?犯罪計画でこんなアガってんの…?
潜在的反社じゃん…』
「刹那、悪い事は言わん。紫ピクミンを捨てろ」
「刹那好き。好き。大好き。一生付いてく」
『あっ、これ捨てても付いてくるパターンだ』
「呪いの装備じゃん」
『なにそれウケるwwwwww
……ねぇ私そこまでやらないからね?
テロリストにはならないからね?』
「好き」
『好き好きbotかな???
あ、ちょい待ち。無駄に凶暴化させると要らん火の粉も掛かるから、基本新宿のタチの悪い不良だけボコる事にしよう』
「自警団的な?」
『そうそう。…修二もそれで良い?』
「ばはっ、良いぜぇ♡」
もうなんでも良い。
俺は俺の魔法使いに死ぬまで付いていくので。
学校終わりの図書館で、早速無料のレンタルスペースを使い、サイトを作った。
トップページでパスワードを入力し、ログイン出来る様に設定する。
そこでふと、一番大事な事を決めていない事に気付いた
『ねぇ、チームの名前何にする?』
「ホコタテにしようぜ」
「ドルフィン号は?」
『ピクミン縛りでいくん?』
「こんだけ俺らの事ピクミンって呼んでンのに?」
「逆に他のでいくん?とはなるよな」
なー、と顔を見合わせるピクミンコンビ。なんだコイツら仲良いな。
参考書を開きつつ、上がった二つを候補にする。
『ねぇねぇ、族ってさ、やたら漢字使いたがるじゃん?私らも夜露死苦!みたいにしないとなの?』
「そういや愛美愛主とかフツーに読めないよな。私最初まなみあいすかと思ったわ」
「ばはっwwwwwwww誰だよマナミwwwwwwwww」
『彼女の名前かなって思う。凄く彼女が好きな総長なのかなって』
「違ェだろwwwwwwwwwww」
「別れたら名前変えなきゃだよなって思ってた」
『彼女変わる度に名前が変わるチーム…
私、最初は愛美愛主をアイビーアイシーって読んだ』
「カッケーじゃん。
あ、夜ノ塵って書いて何て読むと思う?」
『えー…?排気ガス?二酸化炭素?副流煙?』
「wwwwwwwwwwwwwwwww」
「ガチのヤツじゃん。チーム名ね?一応カッコつけてる」
『あ、シーオーツーだ!』
「CO2何もカッコ良くねぇwwwwww
正解はナイトダストらしいよ。上野で凄ぇデブが仕切ってんだってさ」
『何でちょいちょいカッコ付けるんだろうね?もう普通に片仮名で良いじゃん。
塵って書くのダサくない?』
「もうやめろwwwwwwチーム名でwwwwwww大喜利すんなwwwwwwwwwwww」
「何だこのクソゲラ」
『読めない名前付ける方が悪くない?』
ねー、と硝子と顔を見合わせた。
ゲラゲラ笑って崩れ落ちた修二を放置して、適当に検索してみる。
ヒットした漢字を何となく組み合わせてみたものの、何とも言い難い結果になった
『流石にさぁ…毒琉風寅はゴツ過ぎない?』
「いや読めん。何これ…?」
『ドルフィンに当て字した』
「イルカっつってンのに寅入れたん?刹那ちゃんオモロすぎない???」
『だって雰囲気かっこよかった』
「まぁイルカも海豚だし」
「虎違いだけど海虎にしたらシャチになんぞ?イルカなのかシャチなのか判んなくね?」
「不良が全部お前みたいに見たら覚える系だと思うなよ。普通にドルフィン…?あ、イルカかー!で終わるわ」
『寧ろ修二みたいなインテリ不良って少ないんじゃない?
そう言えばさ、何で不良って難しい漢字書けるし読めるんだろ』
「カッコ付ける為じゃね?」
「つーかよぉ、お前ら俺の事不良みてぇに言うけどォ、俺別に不良じゃねぇからな?」
『「えっっっっっっっっっっ」』
「ばはっ、キレそう♡」
にっこり笑っているが、目が全然笑ってなかった。
思わず硝子と目を見合わせるが、やっぱり判らない。コイツ不良では?
改めて、隣で脚を組み頬杖を付く男を観察してみる。
先ずは髪。
染めている訳ではないが、学校規定の男子は耳に掛からない程度の長さ、を余裕でシカトしている。
次は耳。
問題なし。ただしクリスマスにピアスをプレゼントしてしまったので、これから開けるかもしれない。
学ランとシャツ。
学ランはボタン全開、シャツは第二まで開放。鎖骨がきれい。
ただ外に出ると、寒さに勝てずに閉める。
予想以上に背が伸びたのだろう、学ランの手足の裾が足りていない。
最後、靴下。
先日お揃いで買ったクロミを履いている。かわいい。
上から下までじっくりと見て、改めて思った
『いや不良じゃね?』
「えー?俺こんなに可愛いのにィ?」
『可愛いけど不良』
「いや可愛くねぇって良く見な???」
きゅるん、と可愛い顔をしたのでつい頷けば、硝子から鋭い指摘が入った。
その直後に修二が目を尖らせたので、やっぱり可愛くないかもしれない
「は???
テメーだって不良だろうが、髪染めてるし」
「私はパッと見判りにくいし、セーラーだってそんなに崩してねぇよ」
「そんなに…?見たくもねェ脚そんなに見せといて…???
自覚ねェの大丈夫?良い医者紹介しよっか?」
「オラ首を差し出せクソ野郎、その目ン玉カラスにつつかせてやる」
「ばはっ、メンチの切り方がどう見てもカタギじゃねぇってwwwwwww
ねぇ刹那ちゃん、どっちが不良?」
『どっちも不良ー』
「「あ゙???」」
ド低音が二重に聞こえたがスルー。
ピクミンコンビはガラが悪い。今更だけど
『話を戻すよ。チームの名前何にする?』
そうだった、という顔になった硝子に笑う。
ぎっこんばったんと木製の椅子を揺らしながら、修二が口を開いた。
周りの目が痛いから、行儀悪く遊ぶのはやめて欲しい
「もうホコタテでさァ、漢字は矛と盾にすりゃ良くね?
ムジュンって読めるし、ある意味俺らに合ってンじゃん?」
無言で二人を見た。
『矛の人〜』
「はぁい♡」
『盾の人〜』
「はーい」
『決定したわ。ホコタテね』
散々蛇行と迂回を繰り返した癖に秒で決定した。今の時間は一体…
その事に何とも言えない気分になりつつ、編集画面に名前を打ち込んだ
結成
刹那→中3。卒業して貰うつもりだったのに、長引いて卒業してくれなかった。
ホコタテの原型は、首なしの妖精がバイク乗ってるあの小説。
オリマーなので、チーム内のナンバーはゼロ。
因みに喧嘩は出来ない。受け身も取れないレベル。痩せっぽちの貧弱。
呪術やヒロアカで一応持っていた運動神経は、今回全て策を練る才能になった様だ。
半間→中3。卒業して貰うつもりだったのに、わちゃわちゃしたもんだから卒業してくれなかった。
校則違反と素行不良の問題児だけど、本人不良じゃないつもり。だって悪い事してねぇもん。
この度、魔法使いオリマーに一生付いていく事を決めた。
白ピクミンとの壮絶な争い(じゃんけん)に勝ち、ナンバーは1番。はじまりのピクミンになった。
原作通りの強さだと色々心許ないので、これから彼には強化イベント(受験生なのに)が待っている。
家入→中3。卒業して貰うつもりだったのに、脱線しまくるから卒業してくれなかった。
髪染めてたりするので此方もしれっと問題児。ただし怒られない様にそつなくこなす。
オリマーは親友なので、勿論付いていく。
紫ピクミンとの壮絶な戦い(じゃんけん)に負け、ナンバーは2番。とても不服。
2番だった腹いせの様に半間に強化イベントを持ち込むのはこの人。
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