真相

※マリオカートは最新作を基準にしておりますので、当時のものとは違うところがあるかもしれません。御了承下さい。







呪術師も必ずしも良い人間ばかりとは言えない。
私はそれを、親友達を通して理解していた。
呪術師とて人だ。
非術師とて人だ。
命の重さに違いはあれど、同じ生命である事に代わりはない。


呪術師は、非術師を殺してはならない。


それをすれば否応なく呪詛師に堕ちる。
判っている。理解している。
強者が弱者を踏み躙るのは容易い。だから、それを安易に行ってはならない。


そう。
呪術師は非術師を殺してはならない。
ならば────その逆はどうだと言うのだろう。


小さな子供が二人、獣を入れる為の檻に閉じ込められていた。
子供達は視える側だった。
恐らくは既に術式も自覚している、非術師の中で産まれてしまった子供達。
彼等が虐げられているのは?
これは、許される事なのか?




────良いかい、二人共。
これから先、非術師からどうしても許せない事をされたり、見たりしてしまったら。


その時は、君達の大事な人を頭に思い浮かべるんだ。


私はこいつらのこの行為がとっても嫌で、殺してやりたいぐらいなんだけど皆はどう思う?って、君達の大事な人に聞きなさい。
そうしたらきっと、君達の大事な人が、どうすれば良いか教えてくれるよ




……不意に、何時か孔さんが言った事を、思い出した。
猿が何かを喚いているが、それよりも先ず、背後に庇った刹那を……猿を消そうとしているであろう可愛い娘を、止めに入った。
刹那を止めて、それから脳内の悟に問い掛けた。


悟、今私達の目の前に殺したいぐらい憎らしい猿が居るんだけど、どうすれば良いと思う?


訊ねた私に、それは素晴らしい笑顔で親友は言ったのだ


スケキヨだろ!!と。
















「────という訳さ」


「まって???それってつまり?傑ン中の俺の所為って事???」


「完全な濡れ衣wwwwwwwwwwwww」


『面白かったよスケキヨ。傑がばんばん人を突き刺してくの!すっきりした!』


「刹那???嘘だろなんかオマエ可笑しくない???」


「スケキヨ写真館ってタイトルで先生に画像を送ったんだけど、今すぐ帰ってこいって怒鳴られちゃった」


「当たり前だろwwwwwwwwwwww」


爆笑する硝子の操るクッパがレーンから落ちていった。
その隣をすーっと刹那のヨッシーが走っていくが、アイテムボックスの足許に隠されていたバナナに引っ掛かり転倒。
足止めを食ったヨッシーで回転して速度を上げた傑のピーチ姫に、復活したクッパが赤亀を投げた。しかも二つ。
それが傑と、傑を追い抜こうとしていた俺のベビーデイジーに当たる


「「あっ」」


「お前らだけ行かせるかよ」


『うわ落ちた』


「ちょっと待てヨッシーなんで落ちた???」


『道に乗れなかった?』


「真っ直ぐ飛ぶだけなのに…?」


四位に居た筈のヨッシーはいつの間にか十位にまで落ちていた。
俺に抱え込まれた刹那の手許はふらふらと落ち着きがない。お陰でヨッシーも小刻みに揺れながら走っていた。酒飲んだの?


「刹那、DSは真っ直ぐだよ。そうしたらボタンだけで真っ直ぐ進むからね」


『真っ直ぐしてるよ?』


「良く見ろ手ぇガッタガタなんだけど。ヨッシー酒飲んだの?」


「飲酒運転wwwwwwwwwww」


爆笑した傑のピーチ姫が、後方から飛んできた緑亀にやられた。
アル中ヨッシーは背後から来たマリオのパックンフラワーにやられ、目を回している。
俺が火の玉を大量に投げ付ける中、一度も被弾せずクッパは一位でゴールした。
ベビーデイジーは二位。あー、燃えてれば順位も変わったのにな…


「はい一位〜」


「クッソ燃やしたかったのになー!」


「まってwwwwwwww私五位になってるwwwwwww」


『これを使ったら傑を轢いてしまうのでは…?』


「いや何してんだ使えよ」


『あっ』


小さな手が握るDSのボタンを押す。すると酔いどれヨッシーは漆黒のミサイルへと姿を変えて、先を行くキャラの猛追を始めた。
真っ黒いそれは先を行くノコノコや奇声を発するキノピオ、ワルイージ、ルドウィッグを撥ね飛ばし────最後に、傑の操るピーチ姫を吹っ飛ばした


「私がwwwwwwwwかわいそうwwwwwww」


『ああほら轢いちゃったじゃん…』


「敵に情けなんか要らねぇの。ハイ、千鳥足のヨッシーちゃんはゴールしましょうねー」


「なんでヨッシー飲酒運転確定なんだよwwwwwwwwwww」


「だって硝子も見ただろ?刹那のヨッシー真っ直ぐ走れねぇもん」


フラフラヨッシーが五位で帰ってきたあと、爆笑する傑のピーチ姫が六位でフィニッシュした。
苦笑いする刹那の頭に顎を乗せ、次のレースに備えてコントローラーを握る


「そんで?オマエらどのくらい謹慎なの?」


『一ヶ月だって』


「まぁ長期休暇だと思ってのんびりするよ。刹那、私と旅行でも行く?」


『いいね!』


「お前ら謹慎の意味知ってる?旅行行くなら私も拐っていけよ」


「はぁ??????
何でオマエらだけ楽しい事しようとしてんの???俺も行く!!!」


「それただの旅行になっちゃうな」


『私達謹慎なんだけどな』


「謹慎の意味辞書で引けよポンコツ親子」


目の前でフラフラしているヨッシーを押し退け、前に出る。
なんでコイツこんなにフラフラと…あ、もしかしてDS重い?嘘だろ??箸より重いモン持てねぇの???


「刹那?もしかしてDS重い?膝に乗せな?」


『いやDSは重くないんだよ?悟の頭は重いけど』


「今更…?毎日こうして抱いてるのに…?」


「悟、私の娘に如何わしい言い方をするんじゃない」


「オイツラ貸せよ前髪ピーチ。パックンフラワーで谷底に突き落としてやる」


「まってwwwwwwww硝子なんで私を執拗に狙うのwwwwwww」


「休みなのが羨ましい」


「完全な私情wwwwwwwwwwww」


「いや前髪ピーチって名前に突っ込めよ」


前髪ピーチって何だよ前髪に桃ぶら下げてんのか。
リビングに鎮座するソファーの背凭れに深く寄り掛かり、小さな画面の中で走り回るキャラクターを操作する。
一ヶ月謹慎か。うーん、そんだけあれば色んな所に行けるよなぁ…


『あっ!ごめん傑!亀投げた!逃げて!』


「無理wwwwwwwwww赤亀から手ぶらで逃げるのは無理wwwwwwww」


「あーごめーん夏油。赤亀投げた。逃げるな」


「だからなんで硝子は私を狙うのwwwww」


「休みなのが羨ましい」


「それ夜蛾先生に言ってくれよwwwwww」


「あっ、ゴメーン傑!赤亀投げちった!逃げて☆」


「お前は絶対に許さない」


「なんで?????????」











マリカー大会を終え、意味もなくテレビを点けてだらだらする。
リモコンを握る硝子と、茶を淹れる傑と、俺の膝の間で雑誌を読む刹那と、それを眺める俺。


…そういえば、最近はこうやって、四人でだらける暇もなかった。


簡単だ、今年は異常気象の所為で災害が多発し、呪霊が活発化したから。
故に全員が任務に忙殺され、自然と顔を合わせる回数が減っていたのだ。


「…なぁ、これって由々しき事態じゃね?」


「何が?」


「俺がオマエらの顔を眺める時間すらあんまり取れてないんだよ?ヤバくない?
何これ朝から晩まで任務とかふざけてんの?俺が大事な宝物を観察する時間すら与えないとか正気か?日本壊れても知らないよ?」


「オイ急に五条がイカれたぞ」


「そもそも学生に任務押し付けすぎじゃね?他の呪術師何してんの?生きてる?
何で俺達が西から東へ働かされてんの?
俺達まだ学生よ?学生の本分って何?青春でしょうよ」


『学生の本分は勉強だよ』


俺の言葉に律儀に突っ込みを入れた三人が、アイコンタクトで“イカれたぞ、どうする?”と話し合いを始めた。
勿論放置は嫌なので、膝の間に居た刹那にダル絡みする


「なぁなぁなんで俺達ばっかコキ使われてんだよー。他所の呪術師働かせろよ。なんで学生の俺達が東西奔走すんのよ。
つーか傑と刹那の謹慎羨ましいんだけど。なぁ硝子、俺達もコイツらにくっついて旅行行こーぜ」


「ちょっと待て悟。任務はどうする気だ?」


「遠方の任務だけ受ければ良いじゃん。それか俺達が滞在してる土地の任務だけ」


「そりゃ私だって行けるんなら行きたいけど、急患出たらどうすんの?」


「しょうこっち全員フル稼働すれば硝子五人分くらいの働きは出来るだろ。ちゃんと休憩取らせれば十分回せる。
刹那、あとで飛梅からしょうこっちのスペア一個だけ残して全部出せ」


『スペアじゃないよ、しょうこっちはしょうこっちだし。…悟、飛梅って?』


刹那に問われた事でふと気付いた。
そういえば、コイツに鉄扇の名前教えてないんだっけ?
あれ?という事は飛梅が出来るとっておきも知らない…?


「飛梅はオマエの鉄扇の名前」


『そうなの?…名前的に女の子?』


「え、刹那は呪具に性別を付けるのかい?」


『いや、そうでもないけど。なんか男の子っぽいって思ってて』


そりゃそうだろうな、材料俺だし。
内心同意しつつ、刹那の髪を指に巻き付けた


「飛梅は男で良いと思うよ」


『あ、やっぱり?』


「あとそれね、とっておきが使える」


『とっておき?』


それを聞いた傑がうわ…と呟いた。
オイ引くなよ。れっきとした防衛機能だよ。やめろ、ガチヤバヤンデレ呪具って言うな。刹那に聞こえんだろ


「それね、オマエが呪力を流しながら俺の名前呼べば、俺を召喚出来るの」


『は?』


「何だそのトンデモ機能」


驚いたのは刹那と硝子だ。
目を丸くした二人とドン引きした傑を眺めてから、指から逃げる黒絹を追い掛ける


「前にさ、あったでしょ?オマエらが身の程知らずの雌猿に殺されそうになった事。
あの時もさ、刹那が俺を喚んでくれたから直ぐに行けたんだよ」


俺が特級になるまでの一ヶ月の間に起きた、胸糞悪い事件。
硝子を傷付けられ、自身もクナイ型の呪具で刺された刹那は、気絶する寸前俺を呼んだ。
本人からすれば何気無い呟きだったのだろう。
けれど、飛梅に呪力を流したままのその呼び掛けは召喚となり、それに応じた俺は瀕死の刹那の許に降り立ったのだ。


「だからさ、何時でも俺を喚んでよ。オマエからじゃそんなにトべないけど、俺からなら必ず傍に行けるから」


にこにこしながら柔らかな頬を撫でれば、刹那は困惑しつつも頷いた。
それを見た硝子がげんなりした顔をする


「刹那、あんた一回身の回りの物チェックした方が良いかもよ。五条にプライバシー殺されてそう」


『いやいや、流石に悟もそこまではしてないって。ねぇ?』


同意を求められ、俺はにっこりと笑った。


「勿論。俺、刹那が嫌がる事はしねぇよ?偉いでしょ?褒めて!」


だって盗聴機能を付けたペンダントは、声だけを拾う様にしてあるし。
女の子だし、トイレの音とか着替えてる衣擦れとか俺に聞かれんの嫌だろうって思って。
ペンダントにもガッツリ呪力は込めてあるけど、猿に問答無用で赫とか発射しないし。
そうそう、飛梅だって勝手に茈を撃ち出したりしない。


こうして考えると、俺ってめちゃくちゃ出来る男なのでは…?


にこにこしている俺を、硝子と傑が何処か疑いの色を乗せた目で見詰めてくる。
何でよ、信用しろよ。
むうっと口を尖らせてみたものの、小さな手に頭を撫でられ頬が弛んだ


『そうだね。悟は頑張ってるもんね。
私が嫌がる事をしないでくれてありがとう』


「んふふ、もっと撫でて」


『はいはい』


ふわりと微笑んで、頭を優しく撫でてくれる刹那をじいっと見つめた。
大きな目が目尻を下げて、口許もふんわりと上がっている。
瞳からは俺に対する絶対的な信頼と、愛情が汲み取れて。菫青は、夜の海の様に穏やかに輝いていて。
…その笑みを見ていると、心臓がきゅうっとした。


「………あああああああああ…」


『えっ、なに?』


「心臓が…きゅうってする…」


『えっ』


誰かに握り込まれたみたいに、自ら縮こまったみたいに、心臓が柔らかな痛みに襲われた。
何処か甘さも感じるその締め付け。
妙な感覚だ。でも不快じゃない。
判ってる、コイツはぽかぽかだ。
でも何でだろう、今までより心臓がむず痒くて、むにゅってする。
薄い肩に顔を押し付け、ぐりぐりと擦りつく。
あー、まだどきどきする。良い匂い。んあー、刹那の匂いだ…
すりすりする俺に、少し離れた場所に居た二人が嬉々として話し出す


「パパ、これはもしかして…?」


「お?賭けるか?私は今年も気付かないに大吟醸」


「私は今年気付くに高級蕎麦」


『また私達で賭けを始めたな?』


「んあ?なんの話?」


「私が勝つか夏油が勝つかって話」


「?」


いやだからなんの話?
顔を上げ眉を寄せた俺に、傑が胡散臭い笑みを向けた


「悟、冷蔵庫にエクレアが入ってるよ。食べる?」


「食べる!!!!」






安堵





刹那→一ヶ月謹慎が決まった。
ママと一緒に旅行に行こうと思っている。
スケキヨカーニバルの撮影担当。
マリカーでのキャラはヨッシー。基本的に蛇行運転。
この度初めて鉄扇の名前を知った。あなた飛梅っていうのね!
因みに飛梅がガチヤバヤンデレ呪具である事は知らない。ペンダントに盗聴機能が備わっている事も知らない。

五条→脳内でスケキヨを薦めた戦犯。
ママとテディの旅行に着いていきたい。
後々送られてきた大量のスケキヨ写真に顎が外れそうなほど爆笑した。
マリカーでのキャラはベビーデイジー。小さい癖に車体をぶつけていく。
ぽかぽかが遂に甘い痛みも併発する様になった。その日はもうすぐ。

夏油→一ヶ月謹慎が決まった。
娘を連れて旅行に行きたい。
そぉい!そぉい!とスケキヨを呪霊が掘り起こしたふかふかの土に刺しまくった実行犯。
呪力や術式ではなく物理でやらかした為、一応謹慎処分で済んでいる。
助けた双子は現在検査入院中。
マリカーでのキャラはピーチ姫。バナナ投げの鬼。

硝子→一ヶ月謹慎が羨ましい。
どうせなら誘拐という形で連れていってほしい。
後々送られてきた大量のスケキヨ写真に腹筋が筋肉痛になった。
マリカーでのキャラはクッパ。気付けば赤い亀を握っている。

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