アスター(ピンク)

・「真相」よりあとの話ですが、其方を読んでいなくても楽しめます。
・夏油が離反しておらず、灰原が生きている事さえ押さえておけばOK
・色々捏造あり
・原作五条がゴミ箱に来る話









────目を開けた。


アイマスクの奥でぱちりと目を瞬かせる。
眠った…訳ではない。しかし、今のは眠りから目を覚ました時のそれに近かった。
どういう事だろう。己は今まで、伊地知の運転する車に乗って移動中だった筈だが。
五条はゆるりと首を倒し、軽く筋を伸ばす


「んー…?」


目の前にあるのは木製の門。
立て掛けられているのは、見慣れた東京都立呪術高等専門学校の文字。
周囲は鬱蒼とした木々に覆われていて、葉の擦れ合う音が耳に届くのみ。


何時もと同じだ。
けれど────五条の勘は、何かが違うと訴えていた。


こういう時の直感は良く当たる。
恐らく、高専の中で何かが起きていると考えるのが妥当だろう。天元様の隠す此処であっても、侵入出来るというのは身を以て知っている。
若しくは、この空間自体が呪霊による領域の可能性もある。今の所呪力が視えないのが気に掛かるが、その可能性が一番高いと五条は踏んでいた。
場所が此処である理由も、五条か伊地知か、それか高専関係者の記憶を再現すれば良いだけの話。
そういえば、伊地知は何処だろう。
念の為スマートフォンの画面を起こし、日付を確認する。九月十日。日付は変わっていなかった。ただし圏外ではある。


うーん、喜久福食べたい。


五条は何時もより少しだけ身構えて、けれどもそれを表に出す事はなく、門を潜った。










門を潜った先は猫の楽園でした。
……そんな三流の台詞を、まさか己が抱く事となろうとは。


〈ナニヤツ!〉


〈ナノレー!〉


〈アレ?〉


〈ナンカ ヘン!〉


…丸いサングラスを掛けた真っ白な猫が、口々に喋っている。
おまけになんだか声も僕に似ている気がするし、見た目なんかまんま僕に寄せている様に見える。
本物の猫にも見えるが、猫達がその身に刻んでいるのは無下限呪術。それを固定しているのが、五条の良く知る恩師の術式だった。
彼の得意分野は呪力を帯びた人形生成。
つまりこの猫達は全て、呪骸だった。


「核が四つ…?パンダとも違う作りなのか…?」


〈ブレイモノ メ !〉


〈キンキュウレンラク!〉


〈フシンシャ!〉


猫の呪骸をまじまじと見つめる。
頭部、両肩、臀部に呪力の核が一つずつ。
脳の呪力は明らかに己のもので、両肩のものは五条も良く知る二人のもの。
臀部の一つは初めて視るものだが、何故この呪骸は四つも核を持っているのか。


…ああ、判った。
僕の呪力が表の人格だけど、術式を使えばどんどん呪力が減って安定しなくなるから、後ろの呪力はそのサポート役か。


そこまで解き明かした所で、五条は改めて周囲を見渡す。
自分を包囲している猫の群れは、三十は下らない。


……え?この数をちまちま作ったの?
夜蛾さん幾ら何でもヤバくない???


あの髭面のサングラスが、夜な夜な白い猫のぬいぐるみをデカい手で作っているのを想像して、五条は口許を歪めた。
夜蛾さん、疲れてんのかな。
ウケるけど、流石にこの数を作る程疲れているとなると…ちょっと可哀想だ。帰ったら酒でも買ってあげよう。
というかこの領域マジでどうなってんの?


…そう考えたその時、水の様な呪力が音もなく背後に降り立った。


『どちら様でしょうか?』


落ち着いた少女の声。
首だけを背後に向け、声の主を確認する。
アイマスク越しの眼が捉えるのは、随分カスタムした学ランを身に纏った女子生徒。
術式は温度使役術式。
使い勝手の良さそうな良いモノをお持ちの様だ。


「…やぁ、こんにちは。何個か訊ねたいんだけど、良いかな?」


『…こんにちは。質問とは?』


果たしてこの少女は呪霊の手の者か。それとも此処は、本当は領域ではなく、全く別の何かなのか。
五条はアイマスク越しに己の肩ほどまでしかない少女を観察しつつ、ちらと足許の猫達に目を向けた。


「この呪骸は?」


己の学生時代に掛けていたものと、良く似たサングラスを掛けている猫の呪骸を指で指せば────少女は怪訝そうに眉を潜め、それからにこりと笑みを浮かべた。


『ああ、もしかして京都所属の方ですか?それならこの子達を初めて見るかもしれないですね』


「そうそう。随分久し振りに此方に来てね。そしたら同じ呪骸が沢山居たもんだから、びっくりしちゃって」


少女の肩に白猫が飛び乗った。
見た目よりタフなのか、それとも猫の呪骸が軽いのか。
大きな猫を肩に乗せたまま、彼女は言う


『この子達はさとるっちって言います。呪術師のサポートをしてくれる、優秀な子ですよ』


「…へぇ」


────確実に僕じゃん。


そうなると、本格的に此処の在り方が解らなくなってきた。
呪骸で人として保てない存在を補っている?そうならば、白猫の呪骸に呪力を仕込んでいるのに人として存在しているこの少女が敵となる訳だが。
ちら、と少女の様子を窺う。
細い指は慈しむ様に猫の呪骸の顎を擽っていて、表情も柔らかい。
最初こそ五条を警戒していた様だが、此方を京都の呪術師と判断すると、それすらもなくなった。


…いや、警戒はしてるな。
左手が然り気無く太股のホルスターに掛かってる。


あくまでも自然に武器に指を掛けている少女は、明らかに戦い慣れていた。
良いね、この自然に警戒してる感じ。僕じゃなきゃ気付かなかったかも。
悠仁達にも見習わせたい


「此処の学長に会いたいんだけど、案内して貰っても良いかな?」


『学長と面会ですか?案内するのは問題ないんですが…』


何気なく訊ねた五条に少女は一度だけ逡巡した。
それから此方をじっと見つめ、ゆっくりと口を開く。


『彼方にある別校舎なら問題はないんですが、本校舎は準一級より下の等級の呪術師を立ち入らせない縛りが働いています。
規定としてこれを、校舎に入る前に結んで頂く必要があるんですけど…大丈夫ですか?』


いや待ってそれどんな状況???
え?本校舎に縛り?なんで?
そんな事しないといけない程、準一級より下の等級が頻繁に本校舎に来るってこと?
一気に大量の疑問符を浮かべているのを察したんだろう。少女は苦笑いして、とある方向を指し示した


『彼処に別校舎があるんですが…見えますか…?』


何処か戸惑う様に問われ、不思議に思うも、彼女が見ているもので理由を察した。
アイマスクをしているのを見て、五条が盲目である可能性を考えたのだろう。
この程度で絆されるつもりもないが…なんだろう、妙に気が削がれる。
…ただ、この状況は五条にとっては好機でしかなかった


「ごめん、少しだけ見えにくいから、肩を貸して貰えるかな?」


『はい、良いですよ』


「出来れば左肩を貸してほしいな。僕は右手で何かを支えにした方が楽だから」


少女は呪具を左太股に固定している。
右で抜くには難しいそれであるのに、領域に招き入れた敵を左側に触れさせるのか。


これで断れば…高確率で、敵だろう。


ある程度案内させて、捕獲する。
五条が内心そう算段を立てた所で、少女は────五条の右隣に立った


『はい、どうぞ。私の肩、判りますか?触っても良いなら手を肩に乗せますけど…』


「…いや、判るよ。ありがとう」


…受け入れるなら、それは限りなくシロ。


五条は溜め息混じりに言葉を吐き出して、黒い肩に手を伸ばした。
猫の呪骸は警戒する様にじいっと五条を見ているが、少女は微笑んだまま此方を見上げるのみ。
左手は、完全に力を抜いている。


…え?
なんで君、僕を警戒する事すらやめたの?


なんだこの生き物。
内心困惑しつつ、学ランに包まれた肩をしっかりと掴んで────ぞっとした。


なにこれほっそ…生きてる?もしかして呪霊が人間の皮被ってんの…?
いや、でも呪霊じゃないんだよな…それにしても学ラン越しに骨の感覚伝わるのってヤバくない?
ご飯ちゃんと食べてる?まさか苛めに遭ってんの?


あまりの細さに優しく包み直した。
内心荒れ狂う五条の事など気にもせず、少女はにこりと笑った


『じゃあ行きましょうか。あ、そういえば、名乗ってませんでしたね。
私は呪術高専三年、桜花と言います。一級です』


「ご丁寧にどーも。僕は────」


名乗ろうとして、ちらりと猫の呪骸を見た。
さとるっちと呼ばれているそれ。
それが存在しているとなると、本名を名乗るのは少々不味いかもしれない。


「……僕は菅原。京都所属の一級だよ」


なので、取り敢えず先祖の苗字を名乗っておいた。
少女────桜花は疑うでもなく、頷いて見せる


『菅原さんですね。菅原さん、最近の呪術高専の事はどのくらいご存知ですか?』


「あー…僕は最近まで海外に居たから、実は疎いんだよね。簡単にで良いから教えてくれると助かるな」


息する様に嘘を吐いている状況だが、仕方無い。
それを素直に信じる桜花が、眼が良くないと思っている五条を気遣いゆっくり歩いているのも、段差を教えてくれるのも五条の良心をチクチク刺してくるが、仕方無い。
此処が領域である可能性は六眼とこの状況によってほぼ掻き消えてはいるが、この少女が味方であると判断するには、まだ材料が乏しすぎた


『えーと、近年呪力を持った人が増えていまして、今年も90人くらいかな?入学してます。大体全学年これぐらいなので、沢山居ますね』


「…うん」


『その中でもやはり実力の差が出ますので、準一級から上、若しくは特殊な術式を使いこなせている者は本校舎。
他は別校舎という分け方がされています。
クラスの呼び方も別校舎は普通、本校舎は特進と分けられています』


「……ほうほう」


『因みに別校舎の生徒が意味もなく本校舎に入れなくなったのは、大体が色仕掛けに来るからです』


「まっっっっっっっって???」


もうダメだちょっと待って欲しい。
最初から可笑しかったけど最後!
色仕掛けってなんだよ、こんな綺麗な顔してしれっとなんて事言ってんの!?
驚く僕をくすくすと笑っている桜花は楽しそうだ。
彼女は五条を見上げてから、また前に向き直った


『前は同じ校舎だったんですけどね。私達が一年の頃にこの制度になって』


「…という事は、特に強い子が入学したのかい?」


『そうです』


桜花はふわりと微笑んで、何処か誇らしそうにその名を口にした


『五条悟と夏油傑────最強の二人がね、大人気なんです』













『菅原さん、この道を真っ直ぐ行けば学長室ですよ。一人で行けますか?』


珍妙な縛りを結び、足を踏み入れた本校舎。
内部は五条の知る呪術高専の内装と目立った違いはなく、妙な呪力も人影もない。


校舎内に侵入出来たのだ、独りで動くのもアリ。アリではあるが…


此方を見上げている桜花を見下ろして、五条は笑みを浮かべた


「ああ、その前に、自販機はあるかい?道案内をしてくれたお礼に、飲み物でもご馳走したいんだけど」


『えっ、お気持ちだけで十分ですよ!私はお礼して欲しくて案内した訳じゃないし…!』


慌てて首を振った桜花に思わず笑みが漏れた。
真面目だ。道案内をしてくれていた時から思ってはいたけど、真面目でお人好し。
この反応は相手が知らない人間だからとか、歳上の男と二人になるのが怖いとか、そういうものじゃないだろう。
純粋に案内しただけだから、お礼は不要だと断っているのだ。
…不味いな、なんか妙に絆される。
それを心の隅で感じつつ、五条はゆるりと口角を持ち上げた


「実は、慣れていない土地を歩くのは苦手でね。待ち合わせまで時間もあるし、お茶でも飲んで落ち着いてから学長と面会する予定だったんだ。
…だから、君さえ良ければ、僕の話し相手になってくれない?」


こういう真面目なお人好しは、“君さえ良ければ”というワードに弱い。
断るも受け入れるも己の判断に任せられるというのは、断るのが苦手なお人好しには些か重く感じるだろう。
おまけに話し相手になって欲しい、なんて誘い方を、目が不自由だと思い込んでいる相手にされてしまえば。


『……判りました。私で良ければ』


はいチョロい。
承諾した彼女に、僕はにっこりと笑った












桜花の此方を気遣う歩調に合わせ、木造の校舎をのんびりと進む。
脚が長い五条からすればペンギンごっこをやっている様なものだが、隣の少女は真剣なので、微笑みながら見守っている。


『菅原さんは海外にいらっしゃったんですよね。何処か印象的な国ってありますか?』


「んー、フランスかなぁ。彼処はスイーツが美味いよ。フォンダンショコラとか20個は食べたかなぁ」


『20個!?…甘いものがお好きなんですか?』


「うん。君は?」


『私も人並みには好きですよ』


ペンギンごっこの傍ら、緩やかに言葉を交わす。
何やってるんだろう、とは思うものの、桜花から離れるべきではないと直感で判断してしまった以上、彼女を逃がすつもりもない。


『着きましたよ。菅原さん、何飲みたいですか?』


「今日は暑いよね。なんか甘くてさっぱりしてそうなのある?」


『甘くてさっぱり…?アクエリアス…?』


「ふふ、じゃあそれお願い。はい、お金」


ポケットに突っ込んであった小銭を掴み、小さな手に乗せた。明らかに二人分ある金額に桜花は口を開こうとするも、やめた。
ふわりと微笑んで、会釈する。


『ご馳走になります。直ぐ後ろにベンチがあるんですが、座れそうですか?』


「大丈夫だよ。ありがとう」


『じゃあ買ってきますね』


演技として手でベンチを確かめる動作をしてから座って見せれば、彼女は安心した様に笑った。
それから小走りに自販機に向かった小さな背中を見送って────背後に現れた人物に、口角を上げた。


良し、釣れた・・・


「────オマエ、何?
刹那に何の目的で近付いた?」


己の声というのは頭蓋に反響する事で、実際に出しているものより低く認識するんだったか。
背後から抑揚もなく囁かれた声に、五条はそんな感想を抱いた。
猫の呪骸と話しながらアクエリアスのボタンを押す彼女の背を眺めながら、五条は気になった事を口にした


「────あの子、刹那っていうんだ?可愛い名前だね」


「オマエが呼んでんじゃねぇぞ」


背後の呪力が熾きる。
五条は慌てず、ひょいとベンチから離れた。
次の瞬間、ベンチがべきょべきょと見えない何かに圧縮されていく。


『菅原さん!?って、悟!何してんの!?』


騒音で漸く此方の状態に気付いたらしい。振り向いた桜花は目を丸くしていた。
彼女は乱入した人物に驚いてはいる様だが、誰何する事はない。
つまり、五条悟が存在するのは当然であると、考えている。


領域である可能性はゼロ。
そして桜花刹那は僕の過去には居ない。
ただし男子生徒と桜花刹那は面識がある様子。
そうなると、此処は────


「ごめんね、刹那ちゃん。ちょっと協力してもらうよ」


困惑している桜花に手を伸ばす。
この世界を、己の中で漠然とではあるが定義付けられる存在が釣れたのは良いが、如何せん彼方が殺気立ち過ぎている。


ちょっと声掛けただけじゃん?何でそんなキレてんの?


まぁ良い。興奮した相手と話す方法は大まかに言って二種類。
自分が敵意がないと証明するか────弱い方を捕らえ、交渉材料にするか。
選択するのは勿論後者だ。
薄い肩に指が触れる、寸前────


〈バーリア!〉


「!…成程、そういう使い方なワケね」


ぐっと、その場に留められたが如く進まなくなった手を引っ込めて、大きく横に跳ぶ。
ごしゃあ!!とけたたましい音を立て、つい先程まで五条が立っていた位置が陥没した。
ひえ、と小さく叫んだ桜花に向かう飛礫は、猫の呪骸が展開したままの無限が阻む


『悟!私居るんだけど!?』


「俺がオマエに当てるかよ。それより早く構えろ、刹那」


『なんで…』


「判んない?ソイツ、此処に存在する筈がないんだよね」


サングラスの向こうから、此方を射抜く蒼。
困惑する桜花を下がらせ、男子生徒は────学生服姿の五条悟は、吐き捨てる様に言った


「その眼を持ってるヤツが同じ時代に産まれてたなんて聞いてないし────何より、背格好も術式も同じなんて有り得ねぇだろ」












破壊音が響く。
別校舎の屋根に飛び乗り駆ける五条を、氷の牙が追い掛けた。
重い音を立てて瓦を貫く氷杭を尻目に、折れ曲がった屋根をそのまま進む。
下では何事かと出てきた生徒達が、此方を見上げきゃあきゃあと騒いでいた。


「あの二人は僕を敵視しているけど、彼等は違うのか…?」


普通は学生の五条と桜花の反応が正しいだろう。
だが下に居る彼等は、五条を見上げて黄色い声を出しているのだ。
明らかに可笑しい。突然高専内で戦闘を始めた黒ずくめの不審者に向ける視線ではない。


そうなると────彼等はを知っていると考えるのが、妥当だろう。


下にはわらわら出てきているし、どれでも良い。適当な学生を捕まえて、話を聞くか。
降りようとする寸前、殺気を感じて五条は真上を見た


「!」


「術式反転・赫」


真上から声が落ちる。
此方を見下ろす細身の影。逆光になった彼の指先に宿る呪力は、五条の殲滅を目的としていた。
五条は瞬間移動で回避しようとして────下に居る生徒達を見てしまった。
…確かに彼等は、自分の生徒ではない。
自分に護る義務はない。


ただ────別人とはいえ自分の術式で大量に未来の呪術師が死ぬのは、少し寝覚めが悪い。


五条は目隠しに指を掛けた。
するりと首もとに引き下ろし、指を立てる。
放たれた赫い呪力の凝縮体を見上げて、笑った。


「甘いね。赫は、こうやるんだよ」


指先に呪力を集める。
緻密に精密に練り上げ、制御する。
あの五条は、確かに赫を放てている。
けれど、それは撃てているだけだ。
未だ研鑽の足りぬその身では────最強には、成っていない。


「術式反転・赫」


深紅の弾丸が指から離れる。
赫と赫が、ぶつかる瞬間。
一瞬世界から音が消え────全てを真っ赤に染め上げた。












「おーい、生きてるー?もしかして死んだ?」


「ふざけんな当たってねぇよ!」


「あはは、そりゃそうよ。手加減したもん」


へらりと笑った五条を、忌々しげな顔で睨みながら降りてきた学ランの五条。
その隣に並んだ桜花は二人の五条を見比べ、えっと声を漏らした


『悟、お兄さん居たの…?』


「似過ぎだろ。せめてクローン疑って?」


「残念ながらお兄さんでもクローンでもないんだよねぇ」


『ていうか菅原さん、目、見えるんですね…』


「ごめんね?君が優しいからちょっとからかっちゃった」


「オイなに偽名名乗ってんだ。刹那、ソイツがオマエに言ったの多分殆ど嘘だよ」


『えっ』


「メンゴ☆」


『えっ…』


大体正解である。九割嘘。
にっこりと笑う五条に引いた顔をして、桜花はそっと目を逸らした。あ、その反応傷付く。


「で?オマエ何で此処に居るの?じゃないよな?別の軸だ。どうやって此処に来た?」


「あ、やっぱ見たらお互い判るモンなんだ?そうそう、僕は君じゃない。
気付いたら僕も此処に居たんだよ。
だから来た方法も、帰る方法も判らない」


『???』


不思議そうに此方と彼方の五条を見上げる桜花が、小動物みたいでかわいい。
なんだかほっこりしつつ、五条は遠くからやって来る見知った呪力に目を向けた。


「悟ぅ!!!今度は何を仕出かしたぁ!!」


「俺だけじゃねぇし!コイツの方が壊したよセンセー!!」


サングラスを掛けていない、今よりも若い恩師が、肩を怒らせ此方に向かってくる。


「何やってんだよ五条。ぐっちゃぐちゃじゃん」


「何で俺にばっか言うの!?だから俺より壊したのコイツだって!!」


その後ろをのんびりと、今じゃてっきり見なくなったクマのない顔の少女が歩いてくる。


そして────有り得ない・・・・・影に、五条は目を大きく見開いた


「悟、今日は何に怒ったんだ?あれほど壊すのは呪霊と廃墟と上層部の会議場だけにしなさいと言ったのに…」


「だーかーらー!!此方怒れよ!!!」


遅れて校舎から出てきて、少女に並んだ男子生徒。
特徴的な前髪に、高い位置で作ったお団子。真っ黒なピアスを着けた福耳。
今時鳶職しか穿いていないだろうボンタンで颯爽と歩く、その人物は。


「────え?」


思い返す。
窶れた顔。疲れた笑顔。何処かぼんやりとした表情。
返ってこなかったメール。日付は、九月八日。
ヒグラシの声が響く廊下。憔悴しきった担任の姿。
もう一度送ったメール。日付は、九月十日。
血眼になって探した黒い背中。
……俺が殺せなかった、親友呪詛師
……………僕が殺した、呪詛師親友


あの日遠ざかっていった男は、此方を順に見て、それから可笑しそうに笑った


「水臭いな、悟。お兄さんが居るなら教えてくれたって良いだろう」


「俺は独りっ子だよ!!!」


「其所に直れ馬鹿者!!!」


「いっでぇ!!!」


がぁん!!と怒りの鉄拳が白い頭に叩き込まれた。
無限を張らず、敢えて鉄拳制裁を受け入れた学生の五条は、その場にしゃがみ込んで呻いている。
桜花は掌の温度を下げ、そっとたんこぶに手を翳していた。
その様を静かに見つめてから、もう一度視線を下に向ける。
五条の視線に気付いて此方を見上げた男が、胡散臭い笑みで、言葉を転がした


「────何です?
死人を見た、みたいな顔をしてますよ?」













「コイツ、五条悟だよ。
ただ俺だけど俺じゃない。限りなくそっくりな他人。何処までも似てない同一。三歩隣くらいのヤツ。ご近所の俺」


「悟…解る様に説明せんか…」


「えー?じゃあ…教科書の5ページ先?」


「もうちょっと判りやすく言えよ」


「理解力ねぇな。俺が月見うどんならコイツはきつねうどん」


「悟、判りにくい」


「もー、ちゃんと理解する気あんの?じゃあねー、選ばなかった方の進化ルート!あ、待ってコレ例えが違ぇわ。
んーと、えー………ブイモンがエクスブイモンになるか、マグナモンになるかの違いとか?
お、これは判りやすいんじゃね!?」


『悟………』


「嘘だろ???これで通じねぇの…???
オマエら想像力貧弱過ぎない…???
乾涸びたペンネみたいな想像力じゃん…」


「お前が原因だって気付けヘタクソ」


「硝子ちゃん??????」


とうとう全員がげんなりした顔になるのを見て、五条は噴き出した。
学生の五条の言いたい事は判る。五条からすればその例えは全て非常に判りやすいのだけど、夜蛾達からすればただの脳トレになってしまったのだろう。
大体例えが独特すぎるのだが、そこを指摘する五条ではない。だって面白いし


一旦落ち着く為に案内された三年特進の教室で、五条はぐるりと白猫の呪骸に囲われていた。


いざ五条が何かしようとすれば、即座に無限で阻む魂胆らしい。杞憂だけど、悪くない作戦だ。
帰る時にこの呪骸、一体貰えないだろうか。便利だし。


「僕からしても、エクスブイモンとマグナモンが一番判りやすいと思うけどな」


「お、やっぱり!?流石俺!俺じゃないけど俺なだけあるよね!」


五条が肯定してやれば、学生の五条は表情を明るくさせた。
対する四人は渋い顔。夏油が首を捻りながら手を挙げた


「悟、質問良いかな?」


「いいよー!」


「何故ブイモンなんだ?アグモンがメタルグレイモンになるか、スカルグレイモンになるかの違いとは違うのか?」


まぁ妥当な質問だろう。
何故通常進化じゃなく、わざわざアーマー進化を例に出したのか。
夏油の問いを聞いた学生の五条は、大きな目をぱちりと瞬かせた。


「だってコイツ、進化間違ってはないでしょ」


さらりと己を肯定する言葉に、五条は口角を上げた


「まぁね」


それを見た学生の五条が、当然の様に頷いた


「だからアーマー進化の方だよ。知ってる?マグナモンってアーマー体で唯一ロイヤルナイツに入ってんだよ。ロイヤルナイツは基本究極体しか居ないのに」


「オマエデジモンは02派なの?」


「無印が神だろ。でも02もテイマーズも捨てがたいよね」


「デジモン談義はやめろ。判りやすく言わんか」


夜蛾に止められ、五条が口を閉ざした。
口を尖らせるのは学生の五条だ


「もー、夜蛾センセもパンダとデジモン観てるんだろ?じゃあ判れよ。
コイツがマグナモンなのは、一人で最強だから。
俺がエクスブイモンなのは、オマエらが居るから」


「私達かい?」


夏油の問いに頷いて、学生の五条は指を指した。


「傑はスティングモン」


次に白い指は家入を指した。


「硝子はチンロンモンのデジコア」


最後に、長い指は桜花に向けられた


「刹那はオメガブレード。…ほら、俺エクスブイモンじゃん?」


「「『いやいやいやいや』」」


「wwwwwwwwwwwwwwwwww」


とうとう五条は爆笑した。













「ところで」


もうややこしいので彼方と此方の違いを簡単に板書しよう、という事になって、夜蛾が教壇に立っていた。


「そっちの…五条は悟とは違うと言っていたな。お前は悟の十年後ではないのか?」


「違いますよ。僕の学生時代はこんなに生徒も居ませんでしたし」


今は任務に出ている同級生が三人も居ると言う。おまけに別校舎には、一学年で三クラスも作れる程に生徒が在籍していると言うではないか。
そんなもの、明らかに五条の世界ではない。此方は毎年人手不足だ。
そう考えつつ返した瞬間、全員が何とも言えない顔で五条を見た。


「え、なに?」


「いや………悟が敬語を使える様になるのかと思うと…」


「はぁ?俺だってあれぐらい出来ますー!」


「悟が将来こんなに穏やかに話せる様になるなんて…」


「つーかずっと気になってんだけど、なんで目隠し?不審者感凄くない?」


『硝子wwwwwwwwwww』


楽しそうに話す四人と、それを見守る一人。
その光景を、五条は静かに見つめていた。
教室に掛けられている日めくりカレンダーは、二○○七年の九月十日を指している。


「なぁオマエ、まさかそれで外歩いてんの?冗談だろ?」


「いやー、これで歩くと楽よ?人が避けるし」


『えっ、人避けの為に不審者ルックに…?』


「誘蛾灯かラフレシアにしかなれないの笑う」


「硝子wwwwwwwwwwwwww」


「オイ硝子。流石に俺もラフレシアとか嫌なんですけど?ラフレシアってアレだろ?腐った死骸みたいな臭いするんだろ?
幾ら俺とは違うっつってもラフレシアは嫌なんですけど???」


「じゃあハウリングか」


「居るだけで迷惑な音wwwwwwww」


「あ゙ぁ゙ん?????????」


『おなかいたいwwwwwwwww』


誰かが話せば誰かが乗っかり、そのままどんどん転がっていく。
けらけらと笑っている四人に不自然な所は何もなく、四人居るのが当たり前とでもいう様な、そんな雰囲気だった。
…五条はもう一度カレンダーを見る。
それから一人、五条が知らない少女を見た。
五条と、学生の五条との違いで最たるものはきっと、彼女だ。
……彼女が居れば、アイツは今も僕の隣で笑っていたんだろうか。


「お前達、そろそろ落ち着け」


「いやこれは硝子が笑わせるからでは?」


「硝子が俺をラフレシアとかハウリングとか言うから!」


『例えがやばいwwwwwww』


「いやお前が将来目隠しなんかするからだろ」


「待ってwwwwww僕に飛び火するじゃんwwww」


「もう良い。全員落ち着け」


騒ぐ面々に、夜蛾が一人溜め息を吐いた。
漸く笑いの波が引いた頃、軽く黒板をチョークの先で叩いた。


「五条、簡単に其方の状況を言えるか?」


「んー、別に良いですけど。何から話そうか…」


のんびりと顎を擦る。
正直に言ってしまえば、何処まで話して良いのかが判らない。
五条が今下手に過去に起きた事を話してしまって、それが彼等に何らかの影響を与えてしまったら?
影響を与えないかもしれない。けれど、その確証がない。


五条悟は出来るだけ軽薄に振る舞い、執着せず頓着なく生きている。


だがそんな男でも、もう二度と会う事のない人間を無碍に不幸に突き落としたいとは、思わないのだ。
ちらり、目隠しの奥で視線をカレンダー
に向ける。
それからゆっくりと、視線を黒髪の男子生徒に向けた。
…取り敢えず、これだけは確かめておこうか


「…夏油。君は、小さな集落には向かったのかい?」


そう訊ねた瞬間、家入と学生の五条がむっと表情を歪めて────


「ああ、スケキヨカーニバルの事かい?」


「なんて???」


「wwwwwwwwwwwwwwww」


「スケキヨwwwwwwカーニバルwwwwwオマエ変な渾名増やすなよwwwwwww」


笑い転げた。
それをしれっとした顔で流しながら、桜花と夏油が笑顔で言う。


『■■村ですよね?一昨日行きましたよ。
傑が村人を地面に刺して、私が撮影しました。私達それで一ヶ月謹慎なんです』


「なんて??????」


「だってムカついたから。大丈夫、ちゃんと呪霊で耕したふかふかの土だよ」


「違う…そうじゃない…何度人間を土に刺すなと言えば判るんだ…」


『あ、池にも一体刺しましたよ。傑がリアリティーを追求しようって』


「アレは足の角度も再現出来てたね」


『ねー。傑刺すの上手になったね。一発で綺麗に決まってた』


「ありがとう。刹那も撮影が上手になってるよ。迫力のある写真だった」


『ほんと?やった』


「やめろお前達…生け花を一発で綺麗に活けられたかの様な会話をするな…」


「もうやめろwwwwwwwwwwwwwww」


「はらがwwwwよじれるwwwwwww」


こんなにゲラゲラ笑う家入も珍しいが、取り敢えず夏油と桜花が言った言葉の数々が大体理解出来なくて、五条は戸惑った。


え、無量空処?まさか僕が無量空処食らってんの?情報完結しないんだけど???


え?人を土に刺すの?呪霊で耕した土に?人を?刺すの?刺すの???いや待って人を刺すってなに???
えっ、わかんない。狂気の沙汰じゃね?
なんで?あれって僕の知る限りじゃ傑が村人殺して呪詛師堕ちしちゃった事件なんだけど?
それを?スケキヨカーニバルにしちゃったの?村人112人?スケキヨにしたの???
どういうこと???どうして人を土に刺そうと思ったの???
しかもスケキヨって事は頭から?頭から刺すの???人間を???土に?嘘でしょ???
なんで???人は土に刺しちゃいけないんだよ???
どうやってその思考に至ったの???


困惑する五条を他所に、学生の五条が笑いながら口を開いた。


「で?わざわざそれを傑に確認したって事は?そこで傑居なくなったの?」


「は?」


「は?」


「えっ」


『えっ???』


一瞬で笑い声が消えた。
そして次は、ぽかんとしていた五条が笑った


「正解!流石僕じゃないけど僕。解っちゃった?」


「判りやす過ぎるだろ。オマエ何度もカレンダー見てたし。そんで傑にそれを聞くなら、オマエが独りで最強になった理由も推測出来る」


しゃあしゃあと言葉を並べる学生の五条。
ただし他の四人は置いてきぼりである。


「もうどっちでも良い。俺達に判る様に説明しろ」


疲れたのだろうか。
悟と書かれた方に、スケキヨカーニバルと投げやりに書き捨てた夜蛾は、溜め息混じりにそう呟いた。
そんな彼を見て、五条はちらりと学生の五条に目を向ける。
幼い自分はオマエから言えと呟いて、膝の間に座らせた桜花の頭に顎を乗せた。
そういえばこの体制を誰も咎めないんだが、何故なのか。


明らかに距離感バグってない?せめて担任は注意するべきじゃない?
よく見て?女の子を膝の間に座らせて抱っこしてんのよ?お腹に腕回してんの。これ普通にセクハラ案件じゃね?
ていうかあの傑が何も言わないの可笑しくない?
僕の方の傑なら話し合い(物理)だよ???


またもごちゃごちゃする思考を一旦脇に押しやって、あの日からの出来事を簡潔に、且つ淡々と口にした


「九月八日、■■村に行った傑は村人112人を殺害して、呪詛師になった」


「「「『』」」」


「その十年後の十二月二十四日、夏油傑は呪霊と呪詛師を用いた大規模テロを実行。僕が殺した」


かん、とチョークが手の震えによって黒板を叩いた。
教壇で夜蛾が、口許を覆って呻いていた。
夏油は頭を抱えている。家入は額を押さえ俯いた。桜花は顔を覆って丸くなった。
五条からすれば想像の範囲内の動きだ。
ただ学生の五条は、にこにこしながら桜花に覆い被さっている


「大丈夫だよオマエら。だって傑は帰ってきただろ?アイツの過去と此処の未来は違うよ」


「そうだけどそうじゃない…」


「?なんで?傑は呪詛師になってないんだよ?それで良くない?」


「二歳児に共感と同情はまだ無理か…」


夜蛾と夏油の言葉にぱちりと目を瞬かせると、学生の五条はかくりと首を傾げた。
その顔は純粋に不思議そうで、動きは人形染みていて。
五条は彼を、改めて自分とは別の存在なのだと認識する


「え?だってアイツの世界の傑が呪詛師になっても、俺達には関係無いだろ?
良く考えろよ、アイツの世界の傑が猿を殺して呪詛師になっても、此方の傑が呪詛師になる訳じゃないんだよ?だって別人だし。もっと言えば、その呪詛師になった任務も傑はクリアした訳だし。
此処はアレだろ?此方の傑呪詛師堕ちしねぇじゃんやったー!って喜ぶ所でしょ?
なのに何で?何でオマエらそんなに悲しそうなの?」


「………あー、これマジで僕?」


怒濤の質問に、思わず漏らしてしまった言葉がこれである。
五条の言葉に四人が無言で頷いた。そうか、幼児か。
恐らく自分もクソガキではあったが、これはまた別のベクトルでクソガキである。
あー、と意味もなく言葉を漏らした夜蛾が、眉間を揉みつつ口を開いた。


「悟、勿論彼方と此方に関係がないのはお前達の発言から理解している。
ただ、俺達は傑が呪詛師に堕ちる可能性があった事、それから五条の世界の傑がそうなってしまった事を嘆いているんだ」


「んー…?傑は?なんで悲しいの?」


「私は私が呪詛師になってしまう可能性があった事を自覚していたからさ。
そしてそれを回避出来た事に感謝しているし、堕ちてしまった彼方の自分の気持ちにも共感した感じかな」


「ふーん…硝子は?」


「私はこいつがたまに怖い顔してるの知ってたから、あー…って感じ。納得した。
もし私が止められてたかって言うと思い浮かばないから、あっちの私も受け入れるしかなかったんだろうなって」


「ふむ…?刹那は?」


『私?ぶっちゃけ言うと私も村人殺そうとしてたから、気持ち判るなぁって』


「「「「えっ」」」」


思わず五条も声を出した。
え?殺そうとしたの?この子が?…あー、真面目そうだもんな…
これで驚いていないのは夏油のみ。そうだったねとのんびり返す姿が恨めしい。


『めぐと津美紀とそんなに変わらない年頃の子達が、動物用の檻に閉じ込められて傷付けられててさ。それで、その子達を罵ったおばあさんの指から呪霊が生まれるのを見て……こいつら生きてる意味ある?って、思った。
でも私を止めてくれたのは傑だったから。
どっちかって言うと、殺したそっちの傑の気持ちが判る。
でも…傑は支えてくれたのに、そっちの私は傑を支えられなかったんだなってちょっと情けなくなった』


「刹那…」


学生の五条が柳眉をきゅうっと寄せて、微笑む桜花を抱き締めた。
ぎゅうぎゅうに抱き締められた彼女の頭を、ゆるりと微笑んだ夏油が撫でる


「私だって、刹那が居てくれたから冷静になれたんだよ。刹那が傍で一緒に怒ってくれたから、このまま殺しちゃダメだって気付けた。
あの場で怒りに任せて猿を殺せば、私達は悟と硝子と一緒に居られなくなる所だったからね。
…だから、私を止めてくれてありがとう、刹那」


夏油の言葉に、桜花が感極まった表情を見せた


『ママ…だいすき…』


「ふふ。私もだよ可愛い娘」


「えっ?傑の娘なの???どういうこと???」


いや待って???娘???同い年で???
てか待って?ママ???傑が?何で???すんごいウケるね???
堪らず待ったを掛けた五条を、めんどくさそうな顔で夏油が見た。
オイ、僕を混乱させてるのはオマエだよ。そんな顔すんな


「…娘との語らいを邪魔する無粋な目隠しめ」


「うわぁ辛辣ぅ。いやなんで娘?同い年じゃん?そして何でオマエがママなの?」


訊ねた五条に、至って真剣な顔で夏油は言ってのけた


「ママですが、何か???」


はーい、と隣の家入も挙手する


「パパですが、何か???」


はいはーい!と元気に学生の五条も手を挙げた


「人間歴二年の二歳児ですが、何か???」


最後、五条が目を向けると、アイマスク越しでも判ったのだろう。
桜花がにっこりと笑った


『娘ですが、何か???』


「…随分仲が宜しい様で」


せめて小学生くらいであって欲しかったなぁ、僕。
顔を見合わせてくすくすと笑う四人に水を差せる訳もなく、五条はそう独りごちた。


……あ。
僕の世界に桜花刹那なんて存在は居ないって、言い損ねたな。












教室に籠りっきりもつまらないだろうと、さしすせカルテットに連れられた五条は中庭に出た。
建物自体は自分の知るものと同じなのだが、草むらからひょこっと顔を出すものが違った。
白猫の呪骸と共に、変な前髪の黒い犬の呪骸、それから茶色のウサギの呪骸も現れる。
何でもアリかよ。此処は何時からジブリワールドになったのか。
興味深そうに藪を眺める五条を、桜花が呼んだ


『五条さん?どうしました?』


「ん?いや、この呪骸達が気になって」


「ああ、さとるっち達か」


「そりゃあ初めて見るなら気になるかもね」


ひらひらと硝子が手を振れば、呪骸達はそれぞれ挨拶を返した。
というかあのウサギ。明らかに咥えているものが煙草なんだけど、アレ中身綿でしょ?焼けない???


「コイツらも皆術式持ちか…夏油のだけは術式が違うのは何で?」


『ん?……………悟』


「んあ?何つったっけ…流石に呪霊操術を呪骸に持たせたらやべぇなって夜蛾センセが思ってたら、“絶対に見付ける術式”になってたって言ってた様な?」


「へー」


「まぁ…万が一私の術式を持っていれば、彼等も無駄に狙われるかも知れないしね」


夏油の術式は貴重だ。
相伝でもなく、突然現れた毛色の違うそれを、手に入れたいと思う者は敵味方関係無く多いだろう。
不特定多数の魔の手を警戒するぐらいなら、頭数が増えようと狙われずに済む“絶対に見付ける術式”である方が遥かに使いやすい。


「すぐるっちが索敵全振りになったお陰で、呪骸は盗まれた事ないんだと」


〈アタリマエ ダロ! ナカマ ヲ ネラウ ヤツ ボッコボコ !!〉


『頼りになるね、さとるっち』


「はぁ???俺の方が頼りになりますけど????」


『はいはい、悟もとっても頼れる男だよ』


「もっとちゃんと褒めて!!!!」


『めんど…』


猫のぬいぐるみと張り合う己というのは絶妙に見たくない光景だ。
目を尖らせる過去の自分と、宥める様に頭を撫でる桜花。うわぁ、幼児…


「…ていうか、刹那ちゃんを学生の僕が抱えてるのは何で?」


「顔が遠いんだと」


「顔が遠い…?」


何それ?物理的な距離の話?
いや外歩くなら我慢しろよ。まさか高専の外でもそんな事しないよね…?


「悟は刹那を抱えさせていれば、悪口だって三回は聞き流せるんだよ」


「幼児じゃん」


「最近の五条は目が合った非術師を殺気出して追っ払うのだってしなくなったんだ。偉いだろ」


「幼児じゃん」


「いやいや、初手で黙れ猿を決めなくなったのは凄い成長だよ。ねぇ硝子?」


「最近は一分耐えてから、何コッチ見てんだ雌猿殺すぞだからね」


「クソガキ極まってる幼児じゃん…」


人を猿と呼ぶな。それは呪詛師のエセ教祖が言ってたヤツだから。
二人から聞く限り、この世界の僕は大分ヤバい。何がって、情緒が。
確かに僕自身もクソガキであった事は認めよう。
だがあれは、当時の自分なりに生きてきた上での人格形成だった。
しかし、この世界の五条はどうだろう。
勿論五条の学生時代と重なる面もある。けれど、重ならない面が圧倒的に多い。
特にあの、教室で見せた幼子の様な表情。
己は決してあんな顔はしなかった筈だ。
寧ろあんな顔を同期がしたら「なんだそのツラ生まれたてのバブちゃんでちゅか〜???」くらい煽ると思う。


「この世界の僕、妙に子供っぽくない?
何をどうしたらああなったの?」


最早頭をぶつけてそれまでの記憶が飛んだレベルじゃないだろうか。
ポケットに忍ばせていた飴を口に放り込む。
五条の問いに答えたのは、煙草を咥えた家入だった


「前に刹那が任務で死にかけて、あの子は自爆技を得た。
そしたら、それを使わせたくなくて縛りを強要する五条とあの子がぶつかって、喧嘩になったんだよ」


「あれはなかなかな被害だったね。校庭はあちこち悟が抉った上に、刹那の水でドロドロ。
おまけに校舎も何割か逝ったんだったかな」


「へぇ、あの子が…あんな風に見えるけど、ちゃんと呪術師なんだね」


恐らくその辺りまでは自分と近かっただろう。人の術式に干渉する縛りを強要するなど、正しくクソガキの所業なので。
学生の時は、他者を慮るなぞ弱者の習性だと嘲笑ってきた己だ。この世界の五条も、自分が正しいと意見を押し付けたのだろう


「それから一週間くらいかな。刹那は仲直りをする切っ掛けを探して何度も話し掛けたりしたんだけど、五条はカオナシみたいな反応しかしなくてさ」


「私はカンタかな?って思ってた」


「オマエらジブリから離れろよ」


やめろ。二人で話すと脱線するから片方だけ喋って。


「そんで、一緒の任務に入ったんだっけ?その時に和解して、バブちゃんになった」


「待って、一気に判らなくなった」


「それから私達はノートに観察日記を付けられるレベルで悟に見られてるよ」


「待って。アレただのヤベぇヤツじゃん」


幼児どころか人の心が知りたいモンスターじゃん。
思わずすんっとした顔になる。
そんな五条を見て、家入は鼻で笑った


「その程度で引くなよ」


「その程度…?観察日記を付けられてるのに…???」


「五条さん、刹那のペンダントと呪具、良く見てみなよ。悟と同じ眼を持っているなら判るだろ?」


夏油に笑いながら言われ、五条は目隠しをぐいっと押し上げた。
少し先でくるくると回っている二人。その抱えられて笑っている方を、奇跡の蒼で凝視する。
そして────五条の表情が死んだ。


「なにあれ」


「ガチヤバヤンデレ呪具です」


「確か呪力を流しながら五条を呼べば、何処にでも召喚出来るんだったか?」


「刹那には遊戯王風の召喚台詞を教えておいたから、何時かやって貰おうと思って」


「海馬風に?」


「取り敢えず、最初に私のターン!って言うのは教えた」


「いや何を平然と教えてんのオマエ」


「そういえばペンダントの方も、刹那のバイタルが可笑しくなったら、さとるっちの判断で赫を放つ様に細工したらしいよ。
バイタルの細かい判断の仕方を私に聞きに来た」


「ああ、さとるっちは勝手に飛梅から出られるしね」


目が死んだ五条の傍で、何でもない事の様に二人の会話は進んでいく。
お願いだからちょっと待ってほしい。
まずペンダント。あれも普通にヤバい。
見た目こそ水色の宝石のペンダントだが、込められた呪力量が常軌を逸している。あれ赫どころか茈レベルで呪力が込めてあるぞ。
しかもしれっと刹那ちゃんのバイタルを察知する仕組みまでしてある。盗聴出来る術式まで仕込んである。あの子のプライバシーどこ?


そして何よりヤバいのが、あの左太股の呪具だ。


表側は大人しく擬態している。
ただ、六眼の前ではその異質さを誤魔化せない。
あの呪具、表には桜花の呪力を纏っているものの────その皮を捲れば、五条の呪力で満ちているではないか。
満ちているどころではない。あのペンダントの様にただ呪力を込めるだけならば、あんなに何重にも継ぎ足した様な呪力と術式にはならない。
強いて言えば、あれは────


「術式の改造……まさか、材料は僕か…?」


「おお、やっぱり見る者が見れば判るものなんだね」


「うわ、マジかよ」


呆然と呟いた五条の言葉に夏油は笑いながら頷いて、家入は米神をひくつかせた。
どうやら家入は知らなかった様だが、知っていたらしい夏油は苦笑いをしている。


「“複製”の術式に“無限”を細かく縒り合わせて…“吸収したものを複製して無限に収納する”術式に書き換えてある。
書き換えなんて禁書の類いだろ?
あのレベルの術式の精度と細かい書き込みをするには、間違いなく“無限”の材料は僕しかなり得ない」


確かに呪具に術式を付与する方法はある。
ただそのやり方としては、元より呪具の保持する術式が壊れない様に緻密に術式を書き加える為の眼が必要だし、何より継ぎ足す情報源が重要だ。
情報源が呪具に提供するのは、少なくともそれなりの量の血液が必須だった筈。
あと情報源の肉と唾液と体液だったか。爪とか髪もあったな。
唾液や体液、爪や髪なんかは兎も角、肉と血液は死に直結する。
おまけにやはり情報源の質も重要で、強い者ならより良しとされた。
洗練されたものが美しいのと同じ。
同じ術式でも、使い込まれ磨き上げられたものの方が、呪具に落とし込んだ時の精度が上がる


当時は適当な術師が情報源とされ、たまたま術式の書き換えが上手くいってしまった。


その所為で、強力な術式を持った呪具を増やそうとした馬鹿共により、無駄な犠牲が多く出た筈だ。
そりゃそうだろう、術式は常人には見えない。
六眼があって漸く、術式を組み込む事が現実的なレベルになる程度なのだ。


「多分アイツ、毎日ちまちま血とか肉とかあの呪具に与えて術式を書き換えていったんだろうね。一日でやろうモンなら間違いなく死ぬし」


「そんなに代償が重いのか?」


「血液10Lは必要だよ。肉も腕一本分くらいは欲しいかな」


「改めて聞くと気持ち悪いな…」


「あいつがやる事大体ヤバいの何でだろうな」


「術式の書き換えってね、ガラスのトランプでトランプタワー作る様なモンなの。
ちょっと場所がズレれば崩れるし、書き込む量を間違ったら全体が粉々になる。
…それを違和感ないレベルで成し遂げるのは僕って感じだけどさ」


ミリ単位ですら間違えられない呪力量と、書き込む術式。
そしてそれを組み込む為に捧げる大量の血液と、肉。
その全てを了承した上で、あの少女の為に、呪いの結晶の様な呪具を作ったのなら。


目隠しを戻す。
それから、ため息混じりに呟いた


「……アレは僕から見ても…ちょっと、イカれてるよねぇ」













「あ、夏油さーん!」


さしすせカルテットとのんびり敷地内を散策していると、明るい声に背後から呼び止められた。
この声は、五条も知っているものだ。
…ただし今は、もう二度と聞けないけれど。
ゆっくりと振り向いて、思い描いた通りの姿に静かに目を細める。


「やぁ、灰原。任務の帰りかい?お疲れ様」


「お疲れ様です!夏油さん達はお散歩ですか?」


「まぁそんな所かな」


灰原雄。
夏油が離反する少し前に任務で殉職し、五条がその任務を引き継いだ。
九月十日までには死んでいた筈。だが夏油と話す彼は、明らかにぴんぴんしている。
…そうか。この世界のオマエは、助かったのか。


「あ、お客さんですか?」


夏油と少し話してから、灰原が此方を見た。
懐かしい、教え子に似た素直な輝きを宿す双眸を見下ろして、五条はゆるりと口角を上げる。


「やぁ、僕は五条の家の者だよ。はじめまして」


「はじめまして!もしかして五条さんのお兄さんですか?」


「んー、当たらずも遠からずってトコかなぁ」


どうせ今だけの付き合いだし、出任せで押し通せるだろう。にこっと笑って返していれば、灰原が来た方向から三つの影がやって来るのが見えた。
その影を何とはなしに見て────五条は、目を丸くする


「へ?」


『五条さん?』


「うわ、間抜けヅラ!傑ー、写真撮って!」


「そういやコイツって写真残んの?」


「え、私今から心霊写真撮るの?」


ぱしゃり、と本人に無断で写真を撮る夏油に、その周囲でポーズを決めるさしせの三人。因みに夏油は撮影方法を自撮りに変えた。なんだコイツらノリノリだな?パリピか?
好きな様に写真を撮ってから、そこで漸く彼等は五条が見ている方向に興味を示した


「あ、直哉と七海と恵じゃん」


「あれ、恵くんも居る。どっかで会ったのかな?」


「ああやって並ぶとやっぱあいつら顔似てんな」


「伏黒先生もあの顔だし、禪院の顔って言うのがあるのかな」


『ああ、禪院の人って切れ長な目のイメージある』


「待って?お願いだから待って???」


灰原が居るのはもう…上手くいったんだろ、それで良い。
でも後ろ。後ろから来る手を繋いだアイツら何?
金と黒のツートンカラー、おまけに穴だらけの耳。あんなの禪院の論外男しか僕は知らない。
しかしアレは確か禪院の純粋培養で、高専には通っていなかった筈だ。
そして、ソイツと手を繋いで歩いているあのウニ頭。
……あれ恵だな???
何で?何で此処に居るの?
僕が探しに行くのですらまだ後だよ?
それに夏油、伏黒先生って言わなかった?
え?まさか?あの男が教師してんの?嘘でしょ?あの術師殺しが???


「あー!皆居るやん!お疲れやす!」


「お疲れ様です」


「お疲れ、怪我は?」


「見たら判るやろ?無傷や!俺強いさかい!」


『お疲れ様。こんにちは、めぐ。めぐも一緒に来たの?』


「うん!あのね、パパといっしょにいたんだけどね、パパどっかいった」


「おや、緊急の任務かな?」


「たまたま私達が通り掛かって、少し預かってほしい、と」


「かもな。オマエらが謹慎な訳だし、俺と甚爾めちゃくちゃ酷使されそう。…でも俺今日休みだな?何で?」


「三人学校に居るのにお前だけ酷使したらバルサンされるって思ったんじゃね?」


もう駄目だ、判らない。
あの禪院思考1000%の顔だけ男が、あんなに素直そうな顔で恵と手を繋いでいるのも経緯が謎過ぎるし、明らかに伏黒先生は甚爾という名前だし、何よりバルサンが不穏過ぎる。


ねぇ直哉よく考えて?
その子供、将来オマエの当主の地位を脅かす存在よ?呑気に手ぇ繋いでんの無理じゃないの?
オマエって性格的に今の内に殺すタイプじゃないの???


固まる五条に気付いたのか、切れ長の目が此方に向けられた。
そして、何処かつんとした雰囲気がふわりと崩れ、禪院直哉は人懐っこく笑った。


「ん?悟くんに似てるな。五条の人?
俺、二年の禪院直哉どす。宜しゅうおたの申します」


「二年の七海です。宜しくお願いします」


「ふしぐろめぐみです!」


「……はじめまして、僕は五条。宜しくね」


ちょっと待ってほしい。
そろそろ頭がパンクしそう。













なんと、此処には伏黒一家が住んでいるらしい。
津美紀もパンダも合流し、男児二人を男子生徒が。津美紀を家入と桜花が見ている様だった。
遊んでいる子供達を段差に腰掛け眺めていれば、学生の五条が隣で足を止めた。


「────で?
オマエの世界、どのくらい欠けるの?」


歯に衣着せぬ質問に、思わず笑みが漏れた。


「もう少し隠せよ。オブラートって知ってる?」


「傑が呪霊玉飲む時に使ってるヤツ」


「そうなんだ?此方は直で呑んでたと思うよ」


…そういえば。
傑はあんな不味そうなモン呑んでも平然としてたな。
オブラートで包むって事は、やっぱり不味かったのか。
パンダを肩車している夏油をぼんやりと眺めながら、頬杖を付いた


「…僕の世界はね、そもそもこんなに人が居ないよ」


「そうなの?」


「そうなの」


しゃぼん玉が飛んでいる。
三人で座った女子組が、色とりどりのストローで虹色の球体を飛ばしていた


「伏黒一家は此処に住んでないし、禪院直哉も居ないし、灰原も死ぬし、傑も僕が殺す。
…それに、あの子も居ない」


最後の暈した言葉に、学生の五条は頷いた


「やっぱりね」


「気付いてたんだ?」


「硝子と傑は名字呼びなのに、アイツの事だけ名前呼びでちゃん付け。
硝子と傑は、彼方で同じ様に呼んでたから名字呼びなんだろ。
それなら、オマエの世界に刹那は居ないって考えれば、辻褄が合う」


音の外れた、それでも楽しそうな歌が此処まで聞こえてくる。
目隠しを指で持ち上げて、五条はその光景を直に目に映した。


将来対立する筈の二人が、けんけんぱをして遊んでいる。
等級違いの任務で命を落とす後輩が、出会う事のない小さな子供の頭を撫でている。
存在を知らなかった少女が、自分が後見人となった小さな子供としゃぼん玉を飛ばしている。
…自分が殺した親友が、未来で瀕死に追い込む呪骸を肩車して歩いている。


そこは笑顔で溢れていた。
誰もが笑って、しあわせを体現していた。


「……もし、あの子が僕の世界に居たら」


五条悟はたらればなんて考えない。
無駄だからだ。悔いても戻らない事を考えるくらいなら、救える一秒先を選ぶ。
それでも、この光景に。
幸福を詰め込んだ様な、ささやかでも大切なそれに。
思わずそれを、呟かずにはいられなかった。


「刹那ちゃんが僕の世界に居たら、傑は、傍に居たのかな」


風が吹く。
同じ色の髪が揺れる。
全く同じでありながら、その実違う存在は、菫青を見つめたままでこう返した


「知るかよ。刹那が居ない世界なんて、俺は要らない」












────目を開けた。


アイマスクの奥でぱちりと目を瞬かせる。
眠った…訳ではない。しかし、今のは眠りから目を覚ました時のそれに近かった。
己は今まで、高専で子供が遊ぶ光景を眺めていた筈だが。
五条はゆるりと首を倒し、軽く筋を伸ばす


「んー…?」


「お目覚めですか、五条さん」


前方から声を掛けられ、そこで此処が移動中の車内であると気付いた。
…妙にリアルな夢を見たな。
寝たつもりはなかったが、そういう事なのだろう。
ポケットに手を突っ込んで、飴を引っ張り出す。
掌に乗せた所で、目を瞬かせた。


包装の中の飴が、なくなっていた。
食べた覚えはない。


……いや、食べたな。
でもあれは夢の筈で…
そこまで考えて、五条は静かに口角を上げた。


「ねぇ伊地知、僕夢を見たんだ」


「夢…ですか?」


「そう」


口の開いた包装をポケットに押し込んで、足を組み直す。


「そう。幸せな────悪夢をね」










眠らない方が良かったな










刹那→不審者を発見した人。
ガチヤバヤンデレ呪具の作り方は知らない。

五条→不審者を自分だけど違う自分だと秒で看破した人。
五条先生からすると心を知らないモンスターに見えるらしい。

夏油→不審者を見て二度見した人。
五条がこんなに柔らかく話せる様になるのか…ってびっくり。

硝子→不審者を見て催涙スプレーは効かなそうだなって思った人。
五条を見て五条先生がフリーズするのが面白かった。

夜蛾→不審者を見て五条がまた妙な事を始めたのかと思ったら、分裂していた。
落ち着きがある様でない五条先生に何とも言えない顔をした。

灰原→不審者を見ても動じない。

七海→不審者を見て一瞬近付くべきか迷った。

直哉→不審者を見ても動じない。呪術師は目を隠すものなので。

恵→不審者を見ても動じない。いざとなれば「きょせいしてやる!!!」と叫べば良いとパパから聞いたので。

五条先生→原作軸がベースの五条先生。
自分が知っている筈の知らない世界は、ただただ幸せな悪夢だった。


アスター(ピンク)の花言葉「甘い夢」

目次
top