これでオマエら俺のもの

結果として最初の読み通り、語部さんと黒川くんは私達を挟めば悟も会話可能である事が証明された。
ただ問題は菊田さん。
彼女が近付くと顔を背けるし、私達の誰かに話し掛けようものなら蒼で吸い寄せて距離を取らせる。
前に三人して抱え込まれた時、硝子が「お前ダイソンか」とツッコミを入れた事で傑が爆笑したのは印象深い。


「なぁあの女何であのレベルで刹那より動けるとか言ったの?身体強化(笑)じゃん。ちょっと速くなるだけの誤差じゃん。まだあの眼鏡とメッシュの方が使えんじゃん」


「悟、名前はちゃんと覚えようね。確かにもう少し出来ると思っていたんだけど、拍子抜けだったな」


白いクズはねるねるねるねを混ぜながら、黒いクズはココアシガレットを咥えながらとある女子生徒を扱き下ろしていた。いや、結構強いよあの人。あんたらが人外なだけで。


現在、私達は屋上に氷で作った塔の上で優雅にボイコットを決めている最中である。


モデルはエンテイの結晶塔。
今日は春にしては暑いので、氷に囲まれるぐらいで丁度良い。
氷のテーブルでヤバい色の物体を混ぜる悟とタバコみたいにココアシガレットを咥える傑を見て、硝子が首を傾げた


「何あれ駄菓子ブーム?」


『最近悟に駄菓子ブームきてんの。任務終わりに駄菓子屋行って、それを私に押し付けるまでがルーティーン』


「刹那、チョコちょーだい」


『チョコ?高い系?安い系?』


「オマエの気分は?」


『GODIVA食べたい』


「じゃあ両方」


『聞いた意味何?』


ねるねるねるねのヤンキーに、鉄扇から出したGODIVAのチョコとピーナッツチョコを渡す。
傑と硝子にも渡して、自分の口にGODIVAを放り込んだ


『語部さんと黒川くんは良い人なんだけどね』


「菊田は私と刹那に当たり強いよな」


「彼女、悟狙いだからかな」


「オ゙ッ゙エ゙ー、あんな自己肯定感天元突破の雑魚キャラ無理。来世でお会いしましょう先逝っててね♡ってヤツじゃね?」


「こら、人の死を願うものではないよ。それに、どうせ来世でもオコトワリするんだろ?」


「あったり前じゃんマジで無理」


蛍光色のもったりしたそれに仕上げの蛍光ピンクのパフをまぶし、悟はそれを口に入れた。
お気に召したのか、サングラスのない蒼がキラキラしている。あいつ、割と何でも喜んで食べてるな。嫌いなものってある?


「アレか?五条の見た目に騙されてるとか?」


『キラキラだから?だとしたら可哀想じゃない?』


「あ???」


「悟の性格を知らないなら好きになった事を後悔するしかないだろう」


「人の事言えねぇだろ傑」


「おや、何の事かな」


ぴっとスプーンで指す悟と、ぽりぽりとシガレットを噛む傑。人にスプーンを向けるなと注意する辺りはやっぱりママ。
最強コンビを尻目に、私は塔の手摺に凭れながら買ってきたシャボン玉で遊び始めた。硝子は隣でタバコを吸っている


「そういや傑、この間ホテルに連れ込んだ人妻どうだったよ?」


「よさないか悟」


「夏油、私もこの間あんたが茶髪の大学生っぽい女連れてホテル街に行くの見たよ」


「よさないか硝子」


『ママ、私に黙って女の人に会ってたの…?』


「止めなさい刹那!そんな目で私を見ないでくれ!!!」


「オイ待てママが女食ってるとか字面がヒデェ」


『だってママ(♂)だし』


「ママ(♂)wwwwwwwwwwwwwww」


「おい五条お前声がでかいんだよ。夜蛾にバレんだろ声落とせ」


硝子が注意すると、悟は何とか爆笑を堪えようとしていた。
しかしそれを親友が妨害した


「ママですが、何か????」


滅茶苦茶良い声で、キメ顔で、傑がそう言ったのだ。
その一撃に悟が噴き出した。私と硝子は噎せた。良かった、今シャボン玉吹いてなくて。危うく洗剤飲むトコだった。


『げほwwwwwwwwげっほwwww』


「くっそwwwwww煙飲んだwwwwwwww」


「うえwwwげっほwwwwwwwwwおえwwww何か?じゃねぇよ問題しかねぇwwwwwwwwwwwwww」


「最近刹那を養子に出来ないか検討中だよ」


「同い年の娘wwwwwwwwwwwwww」


「情報バグってんなwwwwwwwwwww」


『マジじゃんwwwwwwwwww』


「妹というよりはやはり娘だよね。刹那、夏油という名字も似合うと思うんだけど、どうかな?」


『良いんじゃないかなwwwwww桜花って名字に愛着ある訳でもないしwwwww』


そもそも私を買った家の名字が桜花というだけで、もしかしたら他の名字だったかも知れないし。
笑いつつそう返せば、やっと笑いの収まった悟がプラスチックのスプーンを宙で揺らした


「ならオマエら全員五条だよ。つーか傑と硝子にも俺ん家の家紋入りの何か持たせたいんだけど、良い?」


「何で?」


「え、キモ」


容赦ないな。硝子に笑いながらシャボン玉を吹く。割れない様にゆっくり大きくしていく私をじっと眺めながら、悟が言った


「刹那はさ、一年の時から鉄扇使ってるからもうある程度浸透してると思うんだよ。アレは五条悟のお気に入りって。
でもオマエらは今んところアレじゃん、俺の近くに居るけど、後ろ楯がない」


「それは私が一般家庭出身だからかな?」


「そ。硝子んトコも大きくねぇから、御三家辺りがちょっかい出して来ても泣き寝入りだ。傑も縁談なんかがホイホイ舞い込む様になってる訳だし、オマエは何より家の援護がねぇから今が狩り時って周りから思われてる。
夜中、任務先のホテルで目が覚めたら女が跨がってましたーとか実際有り得るからな、これ。戸締まりと結界は必要」


「え、五条それやられたの?」


「夜中、部屋に近付いてきた女の腕捥いだ話する?」


ああ、侵入される前にボコったのか。
きゃぴっ☆ってしている悟に思わず乾いた笑いが漏れた。


『ちゃんとくっ付けてあげた?』


「知らね。五条のお近づきになりたかった身の程知らずってのは覚えてるけど」


大きなシャボン玉の中に小さなシャボン玉を作る。ゆっくりとそれを空に放ち、凍らせた。
虹色の球体に白が走る様を眺めながら、またシャボン玉を吹く。


「傑は知ってるか判んねぇけど、呪術界じゃ生まれた家がデカければデカい程発言力を持つ。一般出身とか家が大きくねぇ奴は、大概が何処かの派閥に入る。
それが、理不尽な任務で死ぬ確率も減らせるからだ」


「死ぬ確率?…呪霊との戦闘に、何故家が関わってくるんだ?」


「────等級の見誤りって、あるでショ」


冷めきった悟の声が大きくもないのに空間に響いた。
凍ったシャボン玉を悟は蒼で引き寄せて眺めている


「呪術界で先ず優先して保護すべきって考えられてるのは御三家の術師。つまり俺ね」


悟が自分を指差した


「そんで次が、術師の家排出の優秀な術師。刹那と硝子ね。刹那はほんとは一般出身らしいけど、ガキの頃に買われてる時点でコッチに入る。
更にこいつらは“女”だから、ある程度は配慮される。理由は判んだろ?あいつらは胎として硝子達を使いてぇから。
正直胎がありゃ手足なんぞあってもなくても良いけど、傷はねぇ方が見映えが良いって認識」


硝子が舌打ちした。


「その下に家の派閥に入ってる術師。御三家に近ければ近い程庇護は厚くなる。
そこに属していれば家専属の窓の情報も貰えるし、任務がちょっと怪しいと思えば助力も仰げる。上層部の奴等も派閥には下手に手を出せない。
気に入らねぇ一般出身をつついて虎なんか起こしたくねぇからな」


すっと、白い手が傑を指差す


「そんで最後に────一般出身の、何処の派閥にも所属してねぇ術師。
傑、オマエだ。
あいつらは腐ってるから、自分より優秀な術師が非術師から出てくるのが気に入らねぇ。でもオマエは俺と同じぐらい強いから、簡単に死なない。つまりサクッと殺せない。
だから使い潰す。エグい任務に当てまくる。休みなく任務を詰める。油断すれば遠慮なく冤罪を作り上げる。ミス一個が命取りな環境に突き落とす。
そうやって心も身体も疲れて、疲れて、疲れまくってあーもう今すぐ寝てぇ〜!!って時に────」


かしゃん、と凍ったシャボン玉がすらりとした指に突かれ、壊れた


「三級だった筈の呪霊が実は特級!サプラーイズ☆
……なーんてクソみてぇなドッキリかますのが、あいつらの常套手段なんだよね」


四人の間に重たい空気が流れた。
改めて示された私達の立ち位置。そして傑の立場の危うさ。
そっと腕を擦る私を引き寄せて、悟は膝に乗せた。


「最近禪院がキナ臭ぇ。上が俺のお気に入り刹那を禪院に押し込もうとしてたのも気になるし、オマエらの事を会議の場で出したってのも鼻に付く。
…だから、オマエらは正式に俺のお気に入りだって周りにアピールして欲しいんだよ。そうすりゃあいつらは俺からの報復が怖くて下手な事は出来なくなる。
五条家次期当主に喧嘩売るなんて度胸、あいつらにはねぇからさ」


私の髪を指に巻き付けながら、悟は傑と硝子を真っ直ぐに見つめた


「俺が助けるのは、俺が助けたい奴。
…だからさ。ねぇ、お願い。五条の家紋、着けてよ」


懇願する様な声。
蒼は不安そうにゆらゆらしていて、それでも二人から反らされる事はなかった。


沈黙。


暫し経って、傑がゆっくりと口を開いた


「悟、私達が悟の“お気に入り”になったとして────私達は、ちゃんとお前の親友で居られるか?」


それが二人の懸念だったんだろう。
五条の庇護下に入るという事は、今までとは違い、正式に悟に護って貰うという事。
そこには確かに上下関係が出来るし、真面目な傑はそれを気にせずにはいられない。


庇護下に入っても、対等で居られるのか。


それを聞かれると最初から判っていたのだろう。悟は私の頭をぺしぺしと叩いた


「良く見ろ、コイツが前例だ」


「「………ああ、それなら」」


『えっ?納得したの?え???』


頭を叩かれているんですが?え?納得したの?なんで???
三人の間で視線をうろうろさせれば悟に馬鹿を見る目を向けられた。


「……オマエあれだな。感性が非術師のまま術師の家で育ってるよな」


『えっ』


「なーんか“五条悟”の呪術界での影響力の認識が傑と同じレベルっつーか、はぁ…」


『いや待って?傑よりはまだ理解してる……筈』


…え、大丈夫だよね?御三家とかは頭に叩き込んであるもん。大丈夫だよね…?急に不安になってきた。
ぐっと悟が私の顔を覗き込んだ。
白い睫毛に覆われた蒼が光を乱反射する


「じゃあオマエ、俺の目どう思ってる?」


『綺麗ですね』


「俺の術式は?」


『便利ですね』


「はーーーーーーーーーーー馬鹿じゃん」


溜め息を吐いて、それから悟はふにゃりと笑った


「……オマエ、ほんとそういうトコだぞ」














急募:目が覚めて何時もの様に準備して、いざ制服に着替えましょうとなった時に、制服がハチャメチャにカスタムされていた時の対処法











『お疲れ様でーす!!私の学ラン勝手にカスタムしたのだーれだ☆』


「お〜れだ☆」


『やっぱお前か!!!』


丁度何時ものメンバーしか居なかった教室で、きゃぴっ☆としながら挙手したのはやはり五条悟だった。
お前追い剥ぎした学ラン返さないと思ったら勝手にカスタムしたんか…


単独任務を終え昨日の夜に帰ってきて、仮眠を取ってから教室に顔を出した私はカスタムされていた学ランを身に纏っていた。
だって予備の学ランが無くなっていたから。これを着るしかなかった。
現在着ている学ランはファーの付いたフードに、振袖の様に長い袖。腰元を締める紫のベルトから下はプリーツが入っていてスカートの様だ。
可愛いけど、問題は袖である。


「めっちゃ派手だね」


「白地に赤と青か。綺麗な柄じゃないか」


『ありがと。でもこれ制服で通る?しかも任務で汚れない?綺麗だから大事にしたいんだけど』


袖は上腕途中から白くなり、右には赤い梅や桜が、左には蒼い線で描いた白い紫陽花が咲いている。めっちゃ綺麗。これ普通に高いだろ。
というか何故人の学ランを勝手にカスタムしたの?自分のやりなよ。あんたの学ランこそスタンダードなんだから


「刹那、くるっと回って」


『はーい』


言われた通りにその場で回る。
すると、やらかした本人は満足そうに笑った。勿論サングラスは外しているので六眼でガン見である。やめて、焦げそう。


「うん。ちゃんと赤、青、紫が際立ってて良いじゃん」


「何でその色?」


「コンセプトでもあるのかい?」


硝子と傑が首を傾げた。
そういえば二人も腕に五条の家紋が入った腕章を着けている。
これが五条派アピールかぁ、なんて他人事として捉えていたのがいけなかったのだろうか。
悟がにっこりと笑った


「無下限術式の術名の色」


「「『ん??????』」」


するりと長い指が左太股の鉄扇のホルスターを撫でた。白地に水色で刻まれた家紋を指先がなぞる


「このホルスターで俺の色は表してるだろ?だから、次は無下限術式の色にしてみた」


にこにこと天使みたいな顔で悟が笑う。
思わず全員黙りこくった。


「収束する蒼、発散する赫。そんで、蒼と赫をぶつけて全部消し飛ばす茈。ほら、俺の色だろ?」


そこで五条家の色、じゃなくて俺の色と言う辺りがそこはかとなくこわい。
ひえっとなる私を引き寄せて、悟は簡単に持ち上げた。頭上に持ち上げてぐるぐる回るのはやめて。やられる側は怖いです。ええ、私は人間です。テディベアではありません。


「エグい。理解出来てない癖に執着心がエグい」


「悟…流石にこのアピールは……」


「え?だって傑と硝子には腕章あげたじゃん。一人にだけやらねぇのは仲間ハズレって奴なんだぜ。仲間ハズレは駄目だってタカトも言ってた」


「誰だよタカトって」


「ギルモンのパートナー」


「ああ、そういえば君らテイマーズ一気してたね」


「コイツの学ランのモチーフもテイマーズから来てんの。レナモンシリーズがモデル」


「そういえば刹那のアームカバーもレナモンっぽいな」


「だろ?だから袖付けてタオモンっぽくした。ファーはレナモンかキュウビモンかなー」


『私はデジモンだった…?』


「オマエもテディベアになったりデジモンになったり忙しいな」


『お前の所為だぞ判ってる????』










自分の持ち物には名前を書きましょう







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