今日は悟以外用事のある人が居なくて、私達は教室で黒板に落書きをしていた。
「暇だね」
「ねぇなんか面白い話して」
『黒川くんって居るじゃん。あの人結界で囲えば木の枝でも呪霊祓えるらしいよ』
「何それ凄いな」
「どうやって使うの?」
『えーと』
黒板に簡単に図を描きながら、同じクラスではあるもののあまり話した事のない彼の術式の説明をした
『これ本人から話しといてって言われたんだけどさ、結界っていう呪力で一時的に呪具を作って呪霊祓ってるんだって。これから組む事があるかもだから、伝えといてってさ』
「ああ、だから極論木の枝でも祓えるのか。結界はコーティングなんだね」
『らしいよ。そういえば菊田さん降格って何したの?』
「家が金積んで一級になってたんだって。誰かさんが証拠集めて上層部にバルサンかましたから二級に落ちたってよ」
「悟は上層部をゴキブリだと思ってるのかな」
『悪い猿とは言ってたけどね』
「そもそも人が会議してるトコにバルサン放り込むなよ」
バルサン特攻で犯人が特定される不思議。
今は居ない悟は確か五条家のお呼び出しだった筈。バルサン特攻で怒られるのかな。今日も荒れて帰ってくるんだろうか。
「サングラス描いたら悟になるの凄くないかい?」
『それはただの雪だるまでは?』
「アイツ白いし似た様なモンだろ」
その原理だと白ければ悟になるな。
じっと消しゴムを見つめていれば、傑がそれもサングラスを描けば悟だよと笑った。それだとサングラスが悟なのでは?五条悟の定義ってなに???
「ねぇなんか面白い話して」
『闇堕ちを圧倒的闇で押し潰された話する?』
「待って、急にやべーのブッ込むのやめな?」
流石硝子、危険を感じ取ったのか即座に嫌そうな顔になった。
だが残念、君も押し潰される側
『じゃあ、カウンセリングという名の洗脳であいつらは猿♡を日々刷り込まれていく刹那ちゃんの話する?』
「かわいそうwwwwwwwwww」
「それはきついwwwwwwwww」
『おい傑、お前は此方側だろ』
けらけら笑う二人を睨む。
白いサングラスを考えていたらサングラスのもふもふになった。
これはただのさとるっち。そういえばさとるっちは先生の所に居るんだろうか
「え?お前ら何でそんな事になったの?」
「刹那と話してて、本当に時々、非術師が猿みたいに思えるって話をしてたんだ。そしたら悟が乱入してきた」
『それでね、私達の肩に人類の命が乗せられました』
「なにそれウケる、頑張れよ」
「ははは、逃げられる訳ないだろうパパ。君も道連れだよ」
「ははは、ふざけんな」
『三人で人類三等分?』
「いや、三人それぞれ五十億越えだろ」
「クソ重いじゃん。肩もげそう」
『もうめり込んでるんじゃない?』
そもそもあれだ、傑がちょっとメンタルやばいです、みたいな話をしていただけなのに圧倒的闇で擂り潰されたんだ。
あの時の蒼を思い出して悪寒がした。瞳孔ガン開きのかっ開き六眼はトラウマです
『私達が病んだら悟は世界の人間を殺すそうです』
「なにそれウケる。ヤンデレ?」
「世界の人々を人質に取られたよね」
「闇堕ちを闇で擂り潰すヤンデレwwww」
『もし病んだら四人でアダムとイブですよ』
「この間観たエヴァの映画みたいだね」
『アスカとシンジ誰がする?』
「私は刹那も硝子も首を絞めたくないから、悟がシンジで良いんじゃないか?」
「私は五条がアダムとか無理」
『流れる様に押し付けられた』
「大丈夫、刹那には優しいだろアイツ。優しく首を絞めて来るよ」
『何も大丈夫じゃない。首絞める時点でアウトー』
「気持ち悪いって言ったら地球が死ぬから気を付けてね」
『あいつは核爆弾か何かかな?』
「核爆弾の方が可愛いだろ。勝手に動かないし喋らない」
散々な言い様ではあるが、否定出来ないのが何とも切ないね。
硝子が磔の初号機を描き出したのを見ながら、隣でキティちゃんを描く傑を見る。
『でもさぁ、正直な話…悟の生態系云々の考え方は良いなって思った』
「生態系?」
『うん。カウンセリング()で言われた。呪術師はライオンと同じだって話』
「────刹那、呪術師はさ、簡単に非術師を殺せるよ。
術式を使えば一発だ。オマエは水で顔を覆えば溺死させられるし、傑は見えないナニカで簡単に殺れる。俺は指なんて動かさなくても肉の塊に出来る。
それをしない理由、判る?
俺達は、生態系でいうライオンだからだよ。
力あるものが雑魚より多けりゃピラミッドが逆転するだろ?
そうなれば簡単に俺達が雑魚を食い尽くして食糧難、それから共食いで全滅。生命が秒でゲームオーバーしねぇ様に、大体の数は上手いこと回る感じで決まってる。
ライオンは草食動物を食う。でも俺達は無駄に猿を殺す必要はない。
だってアイツらに見えない呪霊を祓ってやれば、勝手に猿が金を払ってくるから。
つまり俺達にしか狩れない獲物を狩れば、猿が飯を置いていくんだよ。ご恩と奉公?いや違うな、等価交換か。…いや、護ってやるから金寄越せって事は王権制度か?まぁ何でも良いや。好きな名前付けちゃってよ。
俺達は生態系の頂点だからこそ数が少ない。
でも頂点だから、選ぶ権利がある。
俺達は、助けてやっても良いなって思える猿だけ生かしてやれば良い。
クソだなって思う猿は放置だ。呪霊が猿の踊り食いするのを見ながらポップコーンでも食えばオッケー。
寧ろアイツらキショいマッチポンプで勝手に数減らすから、クソしか居ねぇなって思ったんなら呪霊がそいつら食い尽くすのを待ったって良い。
言い訳?急行しましたが既に死んでいましたで押し通せるよ。生きようが死のうが祓えば一緒。
どうせ上のジジイ共だって、猿の生死なんてどうでも良いんだから。アイツらだって同じ猿の癖にな。
そう、俺達は猿を助けなきゃいけないんじゃねぇ。
俺達が猿を助けてやってるんだ、それを忘れるな。主導権は俺達にある。
選べ。自分で判断しろ。惰性で救うな。それぐらいなら全部救わねぇ決断をしろ。
思考を止めるから猿を助けなきゃ、なんて発想になるんだよ。
ボランティアが強迫観念になるならそんな思想捨てちまえ。
オマエが何より大事にすんのはオマエ自身だよ。
そうじゃなきゃ俺は猿を殺す。呪詛師になるよ、俺。あは、オマエらの為なら俺は呪詛師になる。良いの?俺の事護らなくて。愛してるでしょ?助けてよ。
ねぇ、かわいい刹那。
オマエはオマエを護って、そんで俺から世界を救えば良い。
そしたらオマエは自分の身も、世界も、俺も救えるんだよ。ほら、簡単だろ?」
「最後にやっぱり世界を人質に取る五条悟」
「世界どころか自分の身まで人質にし始めた五条悟」
『最早あいつがラスボスかな?って最近は思い始めました』
これを寝る前にめちゃくちゃ綺麗な微笑みで、恋人繋ぎで甘い声で囁いてキスしてくるあいつは悪魔。マジで悪魔。
もうね、キスは恥ずかしいからやめてほしいんだよ。そういう接触してる間にぽかぽかが明確な名前を持ちそうで怖いの。
される此方は最近脳内で悟は猫、悟は猫って唱えてるの
「ははは、否定出来ない。ところで伝説の勇者は誰がやる?」
『そりゃ傑でしょ。私サポート向きだし』
「じゃあ硝子がヒーラーかな」
『悟は?魔法使い?』
「魔王でしょ?敵じゃね?」
「仲間外れは拗ねるよ。寂しんぼなんだから」
「でも魔王連れた勇者のパーティーってただのカオスだろ」
『これ勇者が悪者扱いされない?』
「もうどうしようもなくなったら皆で呪詛師堕ちしちゃう?」
「世界終了のお知らせかな」
『朝日よサヨウナラ』
「朝日?良い奴だったよ」
「寝起きにやたらと眩しいのはムカつくけどな」
妙に凝った初号機とゆるふわキティの間にツカモトを描く。なんであの呪骸、ツカモトなんて名字みたいな名前なんだろう
『思ったんだけど、普通に愛されてる自覚持ってる五条悟厄介だね?』
「アイツ最近愛してるでしょ?じゃあ俺優先してを普通にかますからな」
「私達を愛してるからって軽率に世界を背負わせてくるんだけどどう思う?」
「イカれてんな」
『手遅れですね』
「御愁傷様、私達。厄介な奴に好かれてしまった」
『死ぬ時は一緒だよ♡』
「実際刹那が居れば世界が滅亡しても生きていけそうなのが何とも…」
「鉄扇で食料事情が解決するね」
『リアルで開拓ゲームする感じ?』
「蒼でブッ飛ばせば大体拓けそう」
『地形変えるレベルの開拓ゲームってなに?』
「私らが原始人になんの?」
「原始人がスタイリッシュ過ぎないか?」
「スタイリッシュ原始人開拓ゲームwwww
wwwwwwww」
『字面がひどい』
「家畜枠で呪霊出す?」
『そんなおどろおどろしい家畜やだよ。あ、ウシ丸鷹野信なら家畜枠で良いか』
「私の呪霊に変な名前を付けるのやめなさい。最近アイツウシ丸さんで反応するんだから」
「ウシ丸さんwww鷹野信ってどっから来たwwwwwwwwww」
『フィーリングで』
「フィーリングでピカチュウにねずみって付けるのやめな?」
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
想像してみる。
壊れた瓦礫まみれの世界で、笑顔の悟。苦笑する傑。溜め息を溢す硝子。そして悟に抱えられて笑う私。
『あれ、四人で楽しく暮らしてる未来しか見えないのは何故???』
「そりゃあ呪術師だからな、イカれてんだよ」
硝子の言葉に傑が笑った。
「うーん、実は私達も悟に絆されているのかな」
君が選んだ未来なら