切実にふざけてはいない夜蛾正道

「只今より、五条悟育成計画途中報告会を開始する」


『せんせー』


「どうした刹那」


『ママが死にました』


「何時もの事だろう。捨てておきなさい」


「とうとう捨てられたwwwwwwwwwww」


「夜蛾先生、質問が」


「なんだ、七海」


「何故我々も此処に呼ばれたのでしょうか?」


そう、この場には何時もの三人ではなく、笑って動けない語部さんと困惑する黒川くん、ニコニコしている灰原と苦い顔の七海も居るのだ。
私達は兎も角、七海と灰原は悟が設けた縛りの影響で本校舎に入れない。
なので今日は、別校舎の空き部屋にわざわざ先生が人避けの帳まで降ろした特設会場なのである。


「なんか興奮しますね!育成計画ってエヴァみたいで!」


「灰原、先輩の育成計画だぞ?良く見ろ可笑しい事しかないんだ」


「え?でも五条先輩は人間としては一歳なんだよ?育てて何が可笑しいの?」


「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「これはひどいwwwwwwwwwwww」


「うわぁ……」


「やべえwwwwwww光のボケだwwwwww」


『先生、これはただ単にゲラとボケを増やしただけでは?』


「先生、何故私と灰原をこの場に呼んだんですか。せめて分けないと進捗報告も捗りませんよ」


私と七海の声に神妙な顔で頷くと、先生は一旦語部さん、黒川くん、灰原、七海の四人を別室に待機させた。
結果、何時もの三人である。


「何時もの面子じゃんwwwwwwww」


「灰原がああもポジティブに解釈しているとは思わなかった」


『光のボケって結構なパワーワードじゃない?』


「語部さんかwwwwwwwwwwwwww」


「このクソゲラもあっちに投げりゃあ良かったのに」


「メインとサブの問題もある」


『一気に機械感出た』


「私らメインウェポン?」


「エヴァかな」


笑いの収まってきた傑が呟くと、先生が頷いた


「初号機を止めるには零号機に特攻をさせ、弐号機と三号機で鎮静化を図るしかないだろう」


先生がボタンを押す。
スクリーンに映ったのは零号機の頭を帽子みたいにちょこんと被った黒いテディベアと、同じ様にエヴァの頭を被るクマのあるウサギと黒い犬。
その映像がぬるっと動いた瞬間傑が死んだ


「妙に凝ってるwwwwwwwwwwwwww」


「建物よりでかいぬいぐるみwwwwwww」


『ねぇ先生、何でこんな妙に凄いの作るの?ちゃんと休んでる?』


「最近徹夜が多い」


『寝ろ』


「まってwwww初号機被ったさとるっち出てきたwwwwwwwwwww」


「ブッコロスゾ!!じゃねぇよwwwwwww」


綺麗な映像の中で零号機がぽん、と飛んできたものをキャッチして、突如後方に向かい走り出した。電線をぴょーん!する辺りとてもエヴァ。機械だから電力は大事。
後ろの弐号機は槍を構え、何故か首もとから腕を生やした三号機をタコ殴りにしている。


「ロンギヌスの槍wwwwwwwwwwww」


「まってwwwwww私乗っ取られてるwwwwwバルディエルになってるwwww」


『仲間割れが過ぎない?私三号機目掛けてN2爆弾持って走ってるけど?』


「零号機と三号機は良く考えたら大破しているだろう」


『良く考えなくても一緒に死ぬね』


「弐号機よけたwwwwwwwwwwwww」


零号機が爆弾ごと暴れる三号機に突っ込む。
一瞬でホワイトアウトして、爆発音が教室の中に響いた。
大きく抉れた地に零号機の帽子と三号機の腕が落ちていて、とてもかなしい。


「零号機が死んだwwwwwwwwwww」


「私も死んだwwwwwwwwwwwww」


『うわ、さとるっちとしょうこっち無傷か』


「ターマヤーじゃねぇwwwwwwwwww」


「冷静に考えると悟と硝子は死なないが、お前達二人はメンタルケアが必要かと最近考えている」


「だからって殺すなwwwwwwwwwww」


『先生、私達悟にメンタルケア()受けてるから大丈夫ですよ。寝てください』


「てかこれなにを伝えたかったのwwwww」


「お前達の危うさを」


「口で言えwwwwwwwwwwwwwwwwww」


何処に死にそうだなと思った生徒をアニメーションで殺す教師が居るんだよ。しかも傑が乗っ取られて敵になるとか妙にリアルで嫌だ。
エヴァの原作、ほんとは三号機殺すの初号機だろ?悟じゃん。最悪なシナリオかよ


『何で傑はバルディエルなんです?』


「仲間が乗っ取られて敵になるのは良くある話だろう」


「なんつー笑えない冗談を……」


「ひーwwwwwwwwwwww私wwwww乗っ取られてるwwwwwwwwwおえwwwww」


「仲間の爆死も良くあるだろう」


『おいヤクザこっち見んな』


「お前らそろそろ殴っても怒られねぇぞ」


「ブラックジョークがwwwwwwwwwやばいwwwわたしすぐしぬwwwwwww」


いや、実際闇堕ちフラグ悟に押し潰されてるけど。多分他人事だなって思えてるから傑も爆笑してるんだろうけど。
……うん、良かったね傑!闇堕ちを笑い飛ばせて!!


「因みに刹那が使徒に喰われる未来もある」


『なにそれ』


「弐号機は諸事情により凍結、三号機はバルディエルとなり初号機が討伐。
その後零号機がN2爆弾を手に使徒に特攻。失敗して取り込まれ、初号機が零号機を救う為に世界を壊す」


「おっっっっっっっっっっっっも。五条直ぐ世界滅ぼすじゃん」


「また私がしんだwwwwwかならずしぬwwwwww」


『私なんか使徒に喰われたけど???なんなの??N2爆弾マブダチなの????』


「wwwwwwwwwwwwwwww」


「先生なんでこんなシナリオ考えたのwwwwwwwwwwww」


「因みに零号機のゲノム配列を読み込んだ使徒はそれを使ってネルフ本部に侵入する」


『私可哀想過ぎない?自爆して食べられてネルフに侵入する鍵にされるの?ピクミン??』


「きょうもーあそぶーたたかうじばくーそしてーたべーられるーwwwwww」


『しょうこゆるさない』


「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「もうやめてくれwwwwwwwwwwwww」


「良し、資料に移るぞ」


『嘘でしょ??正気か????』


「wwwwwwwwwwww」


「なんで続けられんのwwwwwww」


平然と資料を開く夜蛾先生に傑が死んだ。硝子もぷるぷるしているが、先生は無視してスクリーンの映像を変えた。


《さとるのしんかツリー》


《ユキミボタモン(幼年期T)》(一年時)


《ニャロモン(幼年期U)》(現在)


《ウサギちゃんと 犬くんと テディちゃんのあいじょうをうけて すくすく 育って いるよ!!
このちょうし で たっぷり あいじょうを そそごう !!》


『おいwwwwwww』


「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「まだwwwwwwニャロモンwwww幼年期wwwww」


「来年にはきっとプロットモンになれる」


『そうじゃないの。先生、生徒をデジモンに例えたのは何で?』


「判りやすいと思った」


『真顔じゃん』


「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「むりwwwwwwwしぬwwwwwwwwwww」


この先生真顔なんですけど。マジで?何で?何でこんな授業を本気でやってくるの?絶対に笑ってはいけないを毎度個人開催するのはなぜ???真顔で報告会を完遂するポリシーでもあるの???
先生は画面を切り替えた。
ニャロモンから何個か線が出て、その先のシルエットにハテナが付いている


《???》(成長期)


《あいじょうを じゅうぶんにうけると しんか するよ !
ただしさと やさしさを 大事に するよ !》


《???》(成長期)


《あいじょうが すこし 足りないと しんかするよ !
ひじゅつし を さる と よぶよ !》


《???》(成長期)


《あいじょうが 足りないと しんかするよ !
すべて を こわしたい と おもって いるよ !》


「これは通常の進化だ。しかし最近、此方の進化の可能性が出てきた」


次のページ、の指示に従いページを捲る。
私と硝子の目が死んだ


《ルーチェモン》(成長期)


《あいじょう を じゅうぶん に うけると しんかするよ !
ウサギちゃん と 犬くん と テディちゃん の ためなら すべて を こわしても へいき だよ !》


『なんでこんな恐ろしい文章を図鑑風に書いた??????』


「和むと思った」


『こわいよ???』


平仮名にしたってすべては全てである。全て壊しても平気なのである。こわいわ。


「ルーチェモンwwwwwよりによって闇堕ちデジモンwwwwwwww」


「傑は笑ってるぞ」


『あれはゲラ。捨てておきなさいって先生言ったじゃん』


「そうだったな」


「いともたやすく捨てられたwwwwwwwwwwwww」


「おねがいひろってwwwwwwwwwwwwwwww」


ひいこら言ってるママは無視。
これプロットモンと進化条件同じなのに将来フォールダウンする天使になるの?
シルエットからすると猿呼びがレナモンで愛情足りないのがピコデビモンかな?


「せんせー、プロットモンとルーチェモンの進化条件何が違うの?」


「ニャロモンの素質による」


『あ、じゃあ私達無罪ですね』


「生まれてから長期間ユキミボタモンだと、愛情による進化での反動が大きいものと考えられる。
因みにこのユキミボタモンの進化は時間経過ではなく、愛情を貰えたかどうかだ」


「まじめにwwww解説しないでwwwwwwww」


「つーかそれ五条家の責任では?」


『ほんとそれ』


「恐らくはそれ故にニャロモンによる五条家バルサン作戦が決行されている」


「wwwwwwwwwwwwwwwww」


『ニャロモンがこわいwwwwwwwwwww』


「復讐してるwwwwwwwwww」


「本当はブラックウォーグレイモンと迷ったが、見た目がより奴に近いのがルーチェモンだった」


「見た目で天使になった悟wwwwwww」


『先生詳しいですね』


「付き添いで見ていて覚えた」


「せんせ、子供居るの?」


「黙秘権を行使する。次のページ」


「wwwwwwwwwwwwwwwwww」


次のページに載っていたのは三大天使デジモンだった。
そしてまた傑が死んだ。


ケルビモン夏油傑》(智天使型・究極体)


《きゅうきょく の 善 に いちする も その きょくたん さ ゆえ に たいきょく で ある 悪 に 染まり やすい いちめん も あわせ もって いる
みんな の ママ》


オファニモン家入硝子》(座天使型・究極体)


《慈愛 と 慈悲 を つたえる 聖母 てき そんざい
怒る と やき を いれる
みんな の パパ》


セラフィモン桜花刹那》(熾天使型・究極体)


《自ら の 命 と ひきかえ に 氷 の せかい を 作り出す ぜったいれいど を 使う
みんな の テディベア》


『もうちょっとまともなのなかった?』


「わたしwwwwwwまたwwwwwやみおちwwwwwwwwww」


「聖母なのにパパってなに????」


「因みにケルビモンは闇堕ちする」


「やっぱりおちたwwwwwwwwwwwww」


「そしてオファニモンもセラフィモンも封印される」


「だろうと思ったwwwwwwww」


『何故簡単に生徒を酷い目に遭わせるのか…』


「愛ゆえに」


「うそだろwwwwwwwwwwwwwww」


バリバリの天使キャラがテディベアってどうなの?なぜ私達までデジモンに例えたの?あれか?傑の闇堕ちイジリ?
というか絶対にもう少し紹介文どうにか出来たよね?
爆笑する傑を完全放置で報告会は進む。
次のページにはさとるっちがバルサンを運ぶイラストが載っている。
もうあれかな?バルサン特攻は先生公認なのかな?


《さとるっちのせいちょう》


《・さいきん バルサン を 焚いても でぐち を ふさがなく なった よ !

・すぐ に かみつかなく なった よ !

・いらいら しても さんかい は たえる よ !

・相手 の きもち を かんがえる よう に なった よ !

・ごめん が 言えるように なった よ !

・ひとの なまえ を おぼえた よ !

・こうはい の 面倒 を みている よ !》


「wwwwwwwwwwwwwwwww」


「さとるっちのwwwwせいちょうwwww」


『うわぁ…色々出来る様になりましたね』


「改めて文面にすると成長が良く判るだろう。悟も頑張っている」


もう突っ込むのも疲れた。
せいちょう一覧の最初の文が何よりヤバいのだが、そこの所傑は兎も角硝子は気付いているだろうか。


『先生、最初のハチャメチャにやべぇ文章は?』


「上層部のバルサン特攻事件の際、悟は御丁寧に出口を封鎖してバルサンを焚いた。そしてそこに花火玉を放り込んだ」


「まじかwwwwwwwwwwwwww」


「結局花火玉で壁が壊れ、上層部の方々は死なずに済んだが、流石に死者が出れば幾ら悟でも子供の悪戯じゃ済まなくなるだろう」


『子供の…イタズラ……?』


「殺意しかないのに???」


「加減が判っていないだけですと言えば納得した」


「…いやそれ上層部大丈夫???」


『ほんとそれ』


火気厳禁って知ってて花火玉ぶん投げてくるのに?そもそも人が居るのにバルサン焚いたのに?子供の悪戯???
おじいちゃん達子供を何だと思ってんの?核兵器か何か?人型のゴジラか何かだと認識していらっしゃる???


「だから、もし次バルサンするならせめて出口を塞がない様にしろと言うと、それを護る様になった」


「怒られない犯罪のススメwwwwwwwww」


『先生も加担してるwwwwwwwwwww』


「おい教師wwwwwwwwww」


爆笑する私達の前で、先生は溜め息を吐いた


「俺だって上に対して何も思わん訳じゃない。まだお前達には早いと言っているのに毎度の如く釣書を送ってくるし、キナ臭い贈り物まで最近は届く様になった。
……これぐらいのアドバイスなら、問題はないだろう」


『「「先生………」」』


え、先生私達の為にそんなに疲れてるの?ごめんね?護ってくれてありがとう。
三人で目を合わせ、感謝を伝えようとしたら────


「俺は疲れていたのだ。
いつもの様にせつなっち製作と共に悟に………あれを、見せてしまった」


スクリーンに映るのは白くてひょろ長い男と、子供が二人。場所は多分、外だ。


「ん?あれ津美紀と恵か?」


『ほんとだ』


「なんだ……?なんか積んでる…?」


悟と津美紀と恵が三人で、細長い板みたいなものをどんどん繋いでいく。良く見たら三角定規もセットしてあるし、滑車の役割を果たしそうなバケツとテープカッターの回転部もあった。
他にも野球ボールやら脚立やら、まぁ様々な物を積んだり傍に置いたりと動き回る


《さっちゃん、これでいいの?》


《そーそー。津美紀、それは俺がやるから寄越せ。チビは怪我するぞ》


《はーい!》


《さっちゃん、これは?》


《恵そこ登んな!落ちる!!》


「いやなんだこの癒しの映像」


「先住猫が新しくやって来た子猫の世話をしている映像かな」


『わー…かわいい』


めっちゃ和む。
傑に至ってはあの悟が子供の世話をするなんて、とハンカチを目許に当てている。
頑張ったねママ、伏黒さん家が教員寮に入るって決まってから先ず小さい子はバブちゃんだから、優しくしなさいって何度も教えてたもんね。


《っし!かんせーい!!!》


《やったー!!》


《できた!》


わーい、と拍手する三人は可愛い。
でもこれ何を作ったんだろう?歪な蛇みたいなそれのスタート地点、悟に抱えられた津美紀と恵が握っているのはビー玉だった。


《ほい。じゃあ恵、それ転がして》


《つみき、いっしょやろ》


《うん!》


《《せーの!!》》


小さな手がビー玉を転がした。
コロコロとガラスの球体が転がって、作られたレールの上を進んでいく。
快調に進むそれは滑車のゾーンもS字カーブも通り過ぎ、最後に小さな板の上に辿り着いた。
コツン、と板をビー玉が叩いた瞬間、ぽーん!と板の先に置いてあった真っ黒なボールが飛んでいった。
それが前方にあった屋根に飛んでいき────


「あれ、さとるっちか?」


『え?』


《ピタッ♪》


《ゴラッ♪》


《ピタッ♪》


《ゴラッ♪》


ボールが向かった先に、白いもふもふなレールがあった。因みに撮影はさとるっちを真上から映している。
歌いながらさとるっちがボールをヘディングして、どんどん奥へと進めていく


《フフッフフッフフーン♪》


「ピタゴラスイッチ歌ってない?」


「何だろう、嫌な予感しかしないな」


『何処行くんだろう、これ』


《ピタッ♪》


《ゴラッ♪》


《ピタッ♪》


《ゴラッ♪》


《ピタッゴラッ♪》


もふもふの端っこにボールが辿り着いた。
最後のさとるっちがていっとヘディングする


《スイッチ!》


ぽーん!と飛んだボールが向かいの建物の、たまたま空いていた隙間からすぽっと滑り込み────建物が、爆発した。


《ピタッゴラッスイッチ♪》


「「『』」」


《よーっし!!だーいせーいこーう!!
こんなトコでコソコソ集まって骨董市開いてんなよジジイ共!!》


《》


《》


《ん?津美紀?恵?どした?おーい??》


《《ピタッゴラッスイッチ♪》》


最後に映り込んだすぐるっちとしょうこっちのグッドサインに突っ込むべきか。撮影係だったんかお前達。
というか子供達の顔が。まだ小さい子にうわ…って顔させるな。
映像が終わり、沈黙が降りた。
全員が黙り込む中で、傑が重々しく口を開く


「一緒に楽しく遊びなさいとは言ったけど、そうじゃない…!!
なんで悟にピタゴラスイッチを見せたんだ…!!!」


《ピタッゴラッスイッチ♪》









ブラックジョーク!!!!









夏油→ゴミ箱原作で五条に殺され遺体を乗っ取られてメロンパンになっちゃう人

刹那→ゴミ箱原作でメロンパンに自爆特攻:絶対零度をかまして五条の前で死んじゃう人(偽夏油が氷像になった刹那の頭を砕くので、五条には二重ダメージ)



後から見た人達の反応

灰原→やる気に満ちた
七海→いとも容易く殺す先生に狂気を見た
語部→あまりのブラックジョークに発狂した
黒川→胃が…

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