・呪術師100%な五条の表現あり
・無理せず逃げて下さい
かったりっべでーす!!!!!
上層部襲撃事件のさしすせカルテットは可愛かったですね。リップからの微笑みの爆弾経由お昼寝五刹最高でしたね。何あれ夫婦?ゆらゆら背中ぽんぽんで寝ちゃう刹那ちゃん可愛過ぎん???
起こされた後五条に何て言ったと思う?ゆりかご…?って言ったのあの子。
それを聞いたさしすは呼吸困難になる程ゲラった。ぐうかわ。それはあなた専用のゆりかごですよ…ゆりかごも満更でもない顔でゆらゆらしてましたわよ…てえてぇ。
そう言えば黒川とも話したんだけど、この世界、大々的に原作から道を逸れている気がする。
だって、伏黒一家が高専に居るのだ。
本来なら既に死んでいる筈のママ黒も生きているし、何なら甚爾さんは体術講師を勤めている。
という事は?此処は幸せ時空ですか?
夏油もこのまま一緒に卒業するし刹那ちゃんは微笑んで氷像になったりしないんですよね?????そうだよね???
ぶっちゃけ天内ちゃんどうなるん?とは思うが突っ込まない。そこから甚爾さん引っこ抜くと五条覚醒ナシ?とも思うが突っ込まない。
だって私は知ってしまった。
彼等は紙の世界のキャラクターじゃない。
もう、私は彼等の温度を知ってしまったから。覚えてしまったから。テレビ越しじゃない、彼等の生の声を聴いてしまったから。
原作なんてどうでも良い。さしすせカルテットが、その周りの人達が幸せなら、それで良い。
「おい、オマエら」
「はいっ」
「えっ、俺なんかしました…?」
不意にイケボが降ってきて、反射的に顔を上げた。
其処に居たのは絶世の美貌でありながら性格のヤバさに定評のある五条悟。
今日はしっかりサングラスを掛けていた。なんかもうサングラス姿が珍しいんだけど何で?それはね?五条がヤンデレ故にしすせの感情を一つも見落としたくないからだよ。答えがそこはかとなくこえぇ。
でもしすせの誰も居ないのに此方に絡んでくるなんて珍しい。
ガクブルしてる黒川を放置して、五条はぺっと私の机に何かを放った。
雑に置かれたそれを見て、私は言葉を失った
「ん…?…これって、夏油達が着けてる腕章?」
私の代わりに黒川が呟いた。
それに鷹揚に頷いて、五条が言う
「オマエら、アイツらと仲良いだろ。…オマエらが死んだら、アイツらが泣く。だから、それ着けてろ」
それがありゃあ威嚇ぐらいにはなんだろ、と呟いて五条は行ってしまった。
机に置き去りにされた二つの腕章は、確かに存在している物で
「え????さが愛するしすせを悲しませない為に私達に魔除けのお守りを…?
広義的には私達はさの愛を示すアイコン…?つまり私達はこれから毎日教室の中心でしすせに愛を叫ぶの…???」
「落ち着け。魔除けなのは確かだけどアイコンじゃないから」
「おい良く考えろ黒川。これはさがしすせの事を思って渡してきた魔除けだぞ?私達しすせに好かれてなかったらコレ貰えてないんだぞ?つまりさのしすせへの愛だろ?
ほんとは私達なんてどうでも良いけど、しすせが傷付かない様に私達は保護されるんだぞ?
つまり私達はさの愛の証明。しすせにオマエらを愛してる証拠ですって生きてるだけでアピールする存在になる。
つまり私達は五条悟の歩く愛情広告塔です」
「いやだ……何でそんな恥ずかしくなる事まで言うかなお前は」
「オタクは早口で溢れるパッションを叩き付けたくなる生き物です。ごめんな黒川、私お前の事布教対象だと思ってるから」
「謹んでお断り致します」
致すな。
ぶすっとした黒川の頬を引っ張って、早速貰った腕章を腕に通した。
後で五条にお礼しなきゃ。黒川は律儀な奴なので、一緒に何か選んでくれるだろう。
────そんなハッピーな日に、爆弾がブチ込まれた。
「桜花刹那様ですか?」
『?はい、そうですが……どちら様でしょうか?』
ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwww
やべえwwwww髪の毛ピンクきたwwwwまたピンクwww前回女子組に絡んできたのもドギツいピンクだったぞwwwなんでwww絡む系夢女頭ピンク縛りでもあんのかwwww
内心草生やしまくっている私の傍で刹那ちゃんは愛想笑いを浮かべている。だが得体の知れない女に警戒している様で、私を下がらせ、静かに左手をホルスターに伸ばした。私を護ってくれる刹那ちゃんしゅき…
今日は任務が一緒だったからお茶をしてから帰ってきたのだが、門の前に居るという事は待ち伏せか?
ハデハデな着物の女は刹那ちゃんを上から下まで値踏みする様な目で見ると、鼻で笑った。
「悟様のお気に入りというからどんなものかと思えば、大した事ないのね」
「は?????????」
『語部さんが怒ってどうすんのwwww』
ふざけんな刹那ちゃんは女神だぞ?モブにも優しいしさしすにも何時もニコニコしてる気遣いを忘れない天使だぞ?
お前目玉デカいだけだろちゃんと見えてる?その原色なら可愛いじゃろ!みたいな赤目マジでやめろ。郵便ポストの色だぞそれ。
刹那ちゃんの目見ろよ菫青だぞ光の角度で青っぽかったり紫っぽかったり細かい光がキラッキラに瞬いてたりするんだぞ。お前とマイエンジェルを比べるな無礼者プラナリアからやり直せ。
そこまで脳裏で捲し立て、はたと気付く。
刹那ちゃんがお腹を抱えてプルプルしていた。え?何時の間に攻撃受けたん?アイツ?原因アイツ?処す?処す???
慌てて覗き込もうとして、気付いた。…笑ってない?え?何で?
そう思っていると、顔を真っ赤にした女が此方を睨んでいた
「うわパプリカじゃん。割ったら種出る?」
『もうやめてwwwwwwwwwwwwwww』
「アッ(察し)」
これはアレだな?脳直で暴言吐いたな?度々黒川に「もっと落ち着いて喋れよ…?」って憐れみの籠った目で見られるヤツ。お前はママか。
ひいひい言っていた刹那ちゃんが暫くすると復活して、女に問い掛けた
『あー笑った。……で?どういう用件でしょうか?』
「私は悟様の婚約者よ!!五条家から正式に認められた存在なの!!!」
えっ、あんだけバルサンされてんのにまだ懲りずにそんな事したの五条家?アレなの?バルサンを息子の照れ隠しとでも認識してんの?超ポジティブ。見習いたい。
アッでもバルサンからシュールストレミングキャロライナリーパー(煙幕を添えて)になったんだっけ?
どっちもどっちだな、死ぬ確率が低いのってどっち????
『うわ、五条家って死にたがりの集まりなの?』
「構ってちゃんの集まりでは?」
『構ってもバルサンか破壊なのにね』
婚約者という事はそうか、これがオオサンショウウオ…あれ。じゃあコイツはサナギ?おたまじゃくし?どれだ?
「刹那ちゃん」
『うん?』
「あれってサナギとこけしとダンゴムシとおたまじゃくし、どれだと思います?」
『んっっっっふwwwwwwwwwww』
しまった、刹那ちゃんがゲラッた。
お腹を抱えて爆笑する刹那ちゃん大変可愛い。そしてバチギレな婚約者(サナギ?)めっちゃウケる。
ごめんな、マイエンジェルが笑ってるのあんたの大好きな悟様の所為。
「刹那ちゃんに何の御用でしょう?」
「あんたには関係ないでしょ!!」
「いや本人只今手が離せませんので」
『電話かwwwwwww』
「あ、戻りましたので代わりますね」
ゲラからちょいゲラまで回復した刹那ちゃんが一度すっと息を吐く。
────空気が、ぴんと張り詰めた。
うっっっっっっっっっっっわかっけええええええ一瞬?一瞬で切り替えて空気支配しちゃうの?かっこよすぎない?ひえ、しゅき……
今の今まで爆笑していたなんて到底思えない顔と声で、刹那ちゃんは問い掛けた
『それで?五条家に正式に認められた
「簡単な話よ、悟様に近付かないで」
『判りました。私からは近付きません』
「……ふぅん?随分物わかりが良いじゃない」
『ですが』
ふんわりと微笑んで、刹那ちゃんは口を動かす
『悟から近付いてくる回数も多いので、それは拒みませんよ?ほら、私悟に愛されてるので』
口角を上げて、目は相手を蔑む様に。
…あ、これどっかで見たな?夏油だ。夏油の煽りスマイルやってるじゃんキャーーーーーーーーーー!!!!!!!!
内心うちわぶん回し。文字は勿論蔑んで♡
特大サービスを受けたというのに婚約者(おたまじゃくし?)は目を見開いて激おこぷんぷん丸?…いやルナティックなんちゃらの方か?取り敢えずブチキレていた。ひじょうにぶす。
てか確か婚約者と許嫁は厳密に言うと違うな?
婚約者はお互い好きで結ぶ関係だけど、許嫁は親が勝手に決めた関係だっけ?じゃあお前婚約者じゃなくて許嫁では?
煽った刹那ちゃんは鉄扇をしっかり握っている。まって、あれはハリセン(鉄)かます気では?顔面にアイアンビンタかます気では?
え、ダメじゃね?とか言うイマジナリー黒川を蹴り飛ばして私は拳を突き上げた。いいぞ!!もっとやれ!!!!
すう、と許嫁(ダンゴムシ?)が深く息を吸い込んだ
「“今すぐ死────」
『「あ」』
たった今、何かをしようとしていた許嫁(こけし?)は────轟音と共に一瞬で、消えた。
ついでに門も丸く切り取られた様に抉れていて、その近くにぐちゃぐちゃになった石畳や門の残骸と許嫁(カナブン?)が転がっていた。
刹那ちゃんと顔を見合わせる。
これはあれですね。ただごじょって刹那ちゃんが蹴散らす格好良いイベントかと思ったら、愛が重い人が乱入するイベントだったんですね。
乙女ゲーならスチル手に入るヤツで……
「────調子乗んなよ、雑魚が」
こっっっっっっっっっっっっっっわ。
目ぇかっ開き瞳孔ガン開き殺気駄々漏れスチルとか誰得???世紀末過ぎん???製作陣疲れちゃった?何徹?一回寝てからもう一回スチル描いて???
校舎の方からゆらりと現れた五条は刹那ちゃんにつかつかと近付くと、彼女の肩をがしっと掴み、上から下まで舐める様に見た。いやいや視線で穴開ける気かお前は
『ただいま悟。今丁度ごじょってた所だったから助かったよ』
「怪我は?虫の言葉を全部聞いてはいねぇな?視た感じ呪力に問題はないけど。気分は?可笑しな箇所はねぇ?呪力に変な感じは?」
『はは、めっちゃ心配するね。大丈夫だよ。ありがとう、悟』
ふにゃっと笑う刹那ちゃんの心臓はオリハルコン製なのかな???
怖くないの?そいつ目ぇかっ開いてるけど?なんなら今頭からぱくっと食べそうな顔してるよ?控えめに言って通報不可避。
そんなルーチェモンフォールダウンモードみたいな男の頭をよしよしするテディちゃんがやべぇ。危機感isどこ???
細い指に暫く撫でられると、そこで漸く落ち着いたのか、目を閉じた五条はぐりぐりと額を刹那ちゃんの額に押し付けた。
はわわ…かわええ……これこそがスチル…そうだよさっきの世紀末みたいなスチルは乙女ゲーじゃないんだよ。あれは明らかにRPGのラスボスのヤツ。
「……安心、した」
『そっか』
「ふざけんなよ呪言師の言葉を馬鹿正直に待つ奴があるか何で直ぐに潰さねぇんだ馬鹿」
『え、あの人呪言師だったの?』
「崩れだけどな。…実力的にオマエに効かなかったとしても、オマエに死ねなんて言おうとしたあの虫は殺す。良いよな」
『え、殺すの?』
「殺すよ」
『やめてよ寝覚め悪いじゃん』
「は???????」
低い声が威圧する様に地を這った。
すとんと表情の抜け落ちた五条を文字通り目の前で真っ直ぐに見つめ、刹那ちゃんは口を動かす
『そりゃあね?いきなり突っ掛かってきて死ねとか言われたらいらっとするけど。でもそれで殺すのは違うよ』
「何で?呪言師擬きが死ねって言おうとしたって事は、オマエを殺すつもりだったんだよ?多分実力的にアッチが反動だけ喰らってきっとオマエは無傷だった。
けど俺はそれが許せねぇの。
オマエを殺そうとしたって事実が万死に値するって言ってんの。……いや待て、何笑ってんだ馬鹿真面目に聞けよ」
『聞いてるよ?いや、悟も成長したなぁって』
嬉しそうに笑う刹那ちゃんに毒気を抜かれたのだろう。五条は目を半開きにして、拗ねた表情になってしまった
「……どうせ一歳だよ。悪かったな」
『違うよ、ちゃんと私の実力を認めた上で怒ってくれてるって判るから、嬉しいんだよ』
「はぁ??…それが嬉しいの…???」
『うん』
「……変なの」
不思議そうに呟いた五条にくすくすと刹那ちゃんは笑った。
『私の代わりに悟が怒ってくれたし、もう良いよ。それよりお腹すいた、今日のご飯なに?』
「…傑がお好み焼きするっつってた」
『そっか、楽しみ。あ、此処の後片付けはどうすんの?』
「俺がするから良いよ。帰んぞ」
『はーい』
刹那ちゃんをひょいと抱き上げ、五条は歩き出した。すたすたと此方に来たかと思えば、ちら、と視線を私に向けてくる
「……怪我があったら硝子に言えよ。アイツ、今日は家に居る」
「え、あ、ありがとうございます」
「ん」
…キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
五条悟が私を認識して声掛けてきたああああああああああああ!!!!
私個人に!!声を!!会話が成立した!!!
すたすたとバチクソ長い脚で遠ざかっていく姿を呆然と見ていると、ひょこっと刹那ちゃんが顔を出した。
『おつかれー。報告書は私が書いとくからー』
「あっ、あっ、おつかれー」
あっあっじゃねぇよカオナシか。
内心突っ込み手を振り返し、その背が完全に見えなくなった所で滑らかに振っていた手で合掌した
「てえてぇ……五刹てえてぇなぁ…」
・これより呪術師100%表現があります。
・読んだ後の苦情は受け付けません。
────私は五条の分家の出だった。長らく相伝に恵まれなかった我が家で産まれた私は待望の術式持ちで、蝶よ花よと育てられた。
…私が転生者であると思い出したのは、五条家で行われた見合いに向かい、位置に着いた時だ。
教職ではなく高専生という事は、彼はまだ性格的に尖っているだろう。年齢も私の一つ上、時期的に星漿体護衛がもうすぐ来るか来ないか、それぐらいだ。
最初こそ辛かろう。けれど、私ならば耐えられる。
そして、夏油傑が居なくなった彼に寄り添うのは私だ。
広間に集められた他の婚約者候補と比べても私が一番美しかった。
これなら簡単に蹴散らせる。
五条悟は、私のものだ。
そう確信し、大広間で待っていた。
そして、
「────あ?畳に虫並べてんじゃねぇよクソジジイ。片付けろ」
信じられない言葉が鼓膜を刺した。
サングラスすら外さず、座る事すらなく、廊下に立った状態で彼はそう切り捨てたのだ。
「オオサンショウウオにも虫にも興味ねぇ。帰る」
「しかし悟様!何時までも婚約者も付けず遊ばれるのは五条としても見過ごせませぬ!!
外で子を作るなら報告をと何度も…!!」
「俺が何時猿と獣姦したって?ヤってねぇよ童貞ですぅ」
「ならばせめてこの中からお選び下され!!一人でよいのです!!!」
「良いのですじゃねぇわハゲ。虫に興味ねぇって言ってんだろ。その耳は飾りか?耳に錐でも突っ込んで風通し良くしとけ」
廊下に立ったままで、何故かビーカーを手にする家令と口論を始めた彼。
…嘘でしょう?まさか、私も含めて虫だと言ったの?この女達なら判るけど、私に?
「ならば高専で囲っている女共に子種を仕込めば良いではありませんか!!」
家令の男がそう言った瞬間、空気が、ぐっと重く、冷たくなった。
「────あ?」
「桜花の女と反転術式を使える女でありましょう?
どちらも良い脚と乳ですし、呪力も豊富です!
桜花は禪院の傘下ではありますが落ちぶれた家ですし、あの女は本家でも爪弾き者と聞いております!
悟様が孕ませたと宣言すれば簡単に────」
ガァン!!とビーカーが叩き付けられ、割れた。
頭から血を流す家令が汚い悲鳴を上げ、踞る。丸まった身体を長い脚で廊下から蹴り落とし、彼は男に向き直った。
完全に背を向けられた私には、彼の表情は判らない。
しかし────指先一つ動かせば、心臓が停まると、停められてしまうと、確信していた。
「────刹那を、涜すな」
冷たい、怒りを煮込み過ぎていっそ温度すら感じさせない様な、ぞっとする激情。
たった一言で家令は竦み上がって、その場で平伏した。
そのまま黒い影は消え、離れが半壊し、突如地下から煙が上がった事で縁談は流れた。
────諦めるものか。
この程度で。この私が。
五条悟は私のものだ。
あの美貌も、財も、権力も全て、私のものだ。
……ほうら、やはり私があの男に相応しいのだ。
後日五条家より届いた正式な文書に、私は笑い声を抑える事が出来なかった。
「────桜花刹那様ですね?」
落ちぶれた家の女。
調子に乗った女を殺そうと、術式を使おうとして────
どさり、と身体に衝撃が伝わる。
湿った土と、草の臭い。
此処は、何処だ。
慌てて目を開けるが、視界は黒いまま。
手も足も、動かない。
なぜ、なんで?何がどうなっている?
パニックになる私の頬を、尖ったものがつついた。
ざり、と言う音が直ぐ傍から聞こえる。…爪先で蹴られたのか。この、私が
「何時まで寝たフリしてんの?
狗巻程じゃなくても呪霊祓えんだろ?ああ、ちゃんと口は使える様にしてあるよ。
呪言師擬きなんだし、口と舌があれば十分だろ?」
────なんて、恐ろしい事を言っているのだろう。
私は任務に出た事なんてない。
だってそれは、下級の呪術師がすれば良い事だ。私の様に選ばれた者は、下手に傷付いて大事な身体を傷付けたりしない様に、家の切り盛りの仕方や作法を修めるものなのだから。
首を振る私を見た筈の男は、鼻で笑った。
何故?この私が、こんなにも震えているのに?
「俺さぁ、こう見えてヤサシーんだけど?
それでも大事に大事にしてるテディベアに手ぇ出されたらさぁ?そりゃあキレるよね」
「優しい…???お前が…???」
「報酬カットな」
「わーヤサシー」
「金の亡者か」
「世の中金だぞ」
「アンタがギャンブルでスるからだろ」
「今度競馬行かねぇか。面白さを教えてやるよ」
「イケナイ遊び学生に教えてんなよオッサン」
頭上でぽんぽんと会話する男達。
…言葉から推測すると、伏黒甚爾と五条悟だ。
何故敵役の男が高専に居るのかとか、そんな事はどうでも良い。
「なんで……っ」
「あ?」
喉を痛め付けんばかりの声で、私は叫んだ
「なんで!!お前は私のものでしょう、五条悟!!!!!
私は愛されて、大事にされて!!全てを手に入れるべき存在なのに!!!!
お前は何故、あんな落ちぶれた家の女に尻尾を振って喜んでいるのよ!!!!」
私は転生者であるのだから、美しいのだから、愛されて当然だ。この私が望むのだから、五条悟は私のものになるべきだ。
それなのに、何故お前は私をあまつさえこんな場所に転がして、あの女を大事にしているのか。
心のままに叫んだ。
何時しか目の前の二人は沈黙し、ただただ喉を酷使した私の荒い呼気だけが聞こえている。
「────オマエなんかのものになった覚えはねぇぞ、羽虫」
不意に、背筋を凍らせる様な低い声が落ちてきた。
あーあ、と何処か投げやりな男の声。
「俺はさぁ、傑と硝子と刹那を愛してるよ。俺が愛そうと思ったのは、アイツらだけ。これからもそれは変わらない。
でも、俺が尻尾振るのは刹那にだけだ。
だって────“女”なのはアイツだけだから。
自分のモノにはマーキングなんて、猿でも判るだろ?
あ、ごめんごめん。オマエ虫だっけ?判んなくて当然か」
ぐっと、背中に硬いものが叩き付けられた。
…踏みつけられている。
痛い、痛い、ひどい。
目隠しの奥で涙を溢す私の上から温度のない雨が降り注ぐ
「幾ら他の虫並べられたって展覧会にしか見えねぇし、どうしてもってなったら俺は刹那が良い。アイツじゃなきゃ嫌だ。虫にちんこ突っ込みたくなんかねぇし、猿にガキ作らせたって、きっとそのガキを自分の子だとは思えねぇ。だって猿じゃん。
猿から産まれたガキは小猿だろ?人じゃない。
つまり無理。異種交配なんか願い下げだわオ゙ッ゙エ゙ー」
「お前やっぱお嬢ちゃん好きなの?」
「?好きだよ?」
「……………………あー。理解した。お嬢ちゃん大変だな」
「ハァ?」
重い脚が退けられた。
そのまま遠ざかっていく足音にはっとして、私は声を張り上げた
「ちょっと!!私をどうするつもり!?」
ざり、と足音が止まった。
「俺、今日は甚爾に頼んでゴミ捨てに来たんだよねぇ。
此処、呪霊の巣窟らしくてさ」
「自殺の名所ってヤツだ。不法投棄にゃ打ってつけだろ」
「ワルイ事知ってるよね、甚爾」
「そりゃ金さえ積まれりゃ色々やったからな。ナマモノの不法投棄なんざ可愛いモンだ」
……何を、言っているのだろう。
「────ねぇ知ってる?
相手を殺そうとするのはさ、殺される覚悟がある奴しかやっちゃいけないんだってよ」
嘲る様な低い声。
がたがたと身体が震え出した。
「あ。ちゃんと刹那との約束護ってんだぜ?俺“は”、殺してねぇもん☆」
「知ってるか、坊。それ屁理屈って言うんだと」
「なんで???事実だろ????」
「俺もそう思うんだがな。嫁は大概屁理屈だってキレんだよ」
「それは甚爾が悪いんじゃね?ママ黒サン嘘言わねぇもん」
「お前の嫁への信頼度なに?????」
妙に和んだ声が、どんどん遠ざかっていく。
完全に声が聞こえなくなると、今まで居なかった筈の存在が、じわりと空気を淀ませ始めた。
着物の上から這い寄る冷気。
じわじわと動けない私に覆い被さって、押さえ付けてくる
「ひっ…ひぃ…っ!!!」
足首にぐちゅりと粘性のある物体が触れた。その瞬間、触れた場所から刺す様な激痛が走り、悲鳴が喉から迸る。
「いいい亥イぃイイいいィっしょョョに」
「シ………シ…四、師、し、死の」
「……“死ね”!!!」
複数の呪霊の存在を認識した瞬間、喉から呪力を込めた言葉が飛び出した。
ぱあん!!と弾けた音が直ぐ傍で聞こえた。
しかし、身体に圧し掛かった呪霊は祓えていなかった。
「くそ……“死────」
ぐちゃり。
或る女の筆跡