皆で遊ぶのは楽しいね♡


「ごめんね……メジャーで腰骨の長さとか腰の太さとか色々測ってた…ごめんね…」


『……因みにそれは一回だけ?』


「…………一ヶ月に一回」


「ダウト。悟、本当の事を言いな」


「一週間に一回デス…」


「多いな。有罪」


「悟、流石に頻度が……」


「だって!もしかしたら変化があるかも知れねぇだろ!?足の爪も手の爪も整えないと危ねぇし!!」


現在取っ捕まえた悟を縛り上げ、正座させて三人で見下ろしながら回っている。
リアルかごめかごめされている悟ががばっと顔を上げ放った言葉に傑が制止を掛けた。


「ストップ。足の爪と手の爪?」


「あ゙」


「原告、答えろ」


「……刹那が寝てる間に爪を整えてます」


『寝てる間に…?何故起きない…???』


「私に聞かないでくれ。自分の事だろう刹那」


「オマエもっと危機感持てよ。爪切っても爪鑢かけてもマニキュア塗ってもトップコート塗っても起きねぇってどんだけだよ」


『ああ、だから爪綺麗なんだ。最近伸びないしぴかぴかだなーって思ってた』


「刹那………」


傑が頭を抱えてしまった。
え、ごめんね?だって気付いたらぴかぴかだから、良く判んないけどラッキーだなって。
そう言うとケラケラと硝子が笑って言った


「寝てる間にこっそりって、こんなでけぇのが妖精役かよ」


『でも妖精さんのお陰で爪切りから解放されてるしなぁ……無罪?』


「こら刹那、そんなに簡単に…」


「ホント!?」


此方を見た悟が目を輝かせている。
揺れる尻尾が見えそうな光景に笑って────地味にヤバい発言にその笑みが引き攣っていくのを感じた


「じゃあ毎晩測って良い!?最近ちょっと痩せてるから細かく記録取りてぇの!!一日の食事も教えて!あとハンドクリームとボディクリームも新しいの試したい!」


「………………いやこれ犯罪じゃね?」


「悟……寝ている女性になんて事を……」


『私は実験動物か何かだった…???』


記録取りたいってなに?しかも毎晩?
確かに夜蛾先生の授業で私の様々なデータを記録しているのは知っていたけど、そんなに書く事ある???
そういえば最近塗った覚えもないのに身体から良い匂いしてたけど、寝てる私にボディクリーム塗ってたの?柔軟剤かと思ってたよ?
ぽかんとする私にNOの気配を感じ取ったのか、綺麗な蒼がうるうると潤み始めた。


「せつな、だめ……?」


「オイコラ白いクズ、顔で押し切るな」


「刹那、しっかりするんだ。持ち掛けられているのは詐欺だよ」


「オイコラ前髪ちょろりん。ふざけんなよかわいい妖精さんのお願いだろうが」


「何処に可愛い妖精さんが居るって?あざとい妖怪さんの脅迫だろ」


『妖怪wwwwwwwwwwwwwww』


「はー???俺が妖怪に見えんの?目ぇ見えてる?そのほっせぇ目の黒いの実は瞳じゃなくてビーム出す為の穴じゃね?」


「目からビームwwwwwwwwwwww」


「私の目は正常だよ。だってほら、縛られて正座させられたぬりかべが見えているからね。
悟の目は白一色なぬりかべが適当に持った絵の具で落書きしたみたいにムラがあるけど、それ自作?随分な画伯だな」


『キラキラしてるのをwwwwwwムラってwwwwwwwwww』


「画伯wwwwwwwwwwwwww」


「へーーーーーーーーーーー?????
俺前から思ってたんだけどさぁ、傑の目よりピアスの方がでかくね?
もうそれそのちっこいビームの穴に刺しとけよ。その方がよっぽど可愛いおめめだぜ?ブサカワマスコット枠狙えば?」


「前から思ってたんだけど、悟の睫毛って長くて邪魔だろう?だからいっそハサミで切って筆にでもしたらどうかな?
その筆で今度こそ上手にムラだらけのおめめを塗ると良いよ。ウザカワマスコット枠狙えば?」


「「────あ゙?」」


ぶちり、と力に任せて縄を切った悟がゆらりと立ち上がった。
私と硝子は最早言葉を交わすまでもなく、同じ行動を取る。
たったかたーと作戦会議の為に宛がわれていた部屋を飛び出して、丁度此方に向かっていたらしい四人に向け声を張った


『全員避難ー!!スマブラ開始しまーす!!!』


「死にたくなきゃ引き返せー!」


「「「「はぁ!?!?!?」」」」


────轟音。
屋根どころか建物が一瞬で瓦礫の山になった。
高専関係者はそろそろ泣いて良い。
















「そういえば、作戦は?」


『考えてないね』


「はぁ?やる気あんのかよオマエら」


「お前らの喧嘩の所為だろクズ共」


一日目、団体戦。
広大な森というフィールドの中で、私達は一ヶ所に集まって会議を開いていた。


「あの、こんな所に居て良いんですか?団体戦はもう始まっているんですよね?
それなら各個撃破の作戦を取った方が」


「オマエは頭堅いね。こんな馬鹿でけぇフィールドなら早々見付けらんねぇよ。
仮に見付けたとして、全員居る此方にたった一人で来たって無駄。飛んで火に入る夏の虫ってヤツ」


七海にそう言うと、悟はゆっくりとした動作で辺りを見渡した。


「どうする?吊り上げて火炙り?」


「落とし穴なら悟が穴を開けて刹那が水を入れれば良いんだから、簡単じゃないか?」


「それじゃあ安直じゃね?五条かさとるっちの無限で透明な箱に閉じ込めるとかどう?」


『全員が罠を張る気なのは何故です…???』


なんで?なんでただ倒さずに罠に嵌めたいの?
恐る恐る問い掛けると、三人がけろっとした顔でこう返してきた


「は?あの雌猿俺の刹那の魅力が判らないんだよ?炙るでしょ」


「あの女の子もそうだし、離れた場所に居た京都の生徒も私の娘の魅力が判らない様だったから。落とすでしょ」


「あいつら全員私の娘を馬鹿にしやがるからな。閉じ込めて振り回すだろ」


『えっ、原因私…???』


「あわわわわわわさしすの愛がしゅごい…」


「落ち着きなさい語部。小声で言え。あと拝むな」


「先輩達、仲良しだなぁ」


「それで片付けて良い問題か…?」













結局全部罠を張り、追加で新たに思い付いた罠を仕掛け、私達は各自散開してフラフラと歩き回る事になった。
のんびりと森の中を進みつつ、隣を歩くさとるっちに声を掛ける。


『さとるっち、皆から連絡はない?』


〈ナイヨ!〉


『そっかぁ』


…現状マジでお散歩なんだが、良いのかこれ。
一応呪霊を探すというルールはあるのだが、そんなものそっちのけでお互い殴る気満々だった。
交流会なんて名ばかりで、交わるのは拳である。そして今年も此方が一方的にサンドバッグの刑に処すんだろう。


……鉄扇を開く。


キイン!!と扇の面を叩いた物が足許に落ちて、溜め息を溢した。


『これ去年も言いましたけど、交流会は殺しは禁止ですよ?』


「去年も言ったでしょ?バレなきゃ平気だって」


木の幹から姿を現したのは、去年水没させた先輩だ。
拳銃を握った先輩が連続で引き金を引く。印を結び水の壁で防ぐと、頭上に影が掛かった。


『!』


────真上から、切っ先を此方に向けて飛び掛かる影が一つ。


『さとるっち!』


〈オマカセアレ!〉


「!?」


ぴたり、と額目掛けて突き立てられた刃が宙で動きを止める。
肩に飛び乗ったさとるっちを乗せたまま、鉄扇から引きずり出した水で襲撃者を押し流した。


「きゃあ!!」


『ほらほら逃げなきゃ押し流すぞ!』


〈ヤッチマエ!〉


バキバキと周囲の木まで薙ぎ倒す濁流に、拳銃の先輩と襲撃者…無礼系お嬢様が呑み込まれた。


〈キケン! キケン!〉


『ありがと!』


さとるっちの警告でその場を飛び退く。
刹那────ばくん、と地面から巨大な顋が飛び出して、私が立っていた位置を喰らった。


「なんやその猫。便利やなぁ」


背後から振るわれた一撃を無限が留める。
しかしそこで呪力切れとなったのか、さとるっちが肩から落ちてしまった。
白い身体を受け止めて、背中を撫でる


『ありがとうさとるっち。助かったよ』


〈チョット キュウケイ……〉


鉄扇の中に戻っていったさとるっちを見送ると、別のさとるっちが飛び出してきた。
ひょいと肩に飛び乗った彼の頭を撫でていると、京都校の生徒が顔を顰める


〈センシュ コウタイ!〉


「なんや、その猫使いほかしか?えらい酷い事するなぁ」


『猫が反復横跳びして自己増殖しました』


「なんて??????」


ぽかんとした彼の背後からのっそりと近付く大きな影。
影が掛かった所で振り向くが、もう遅い


「がっ!!!!」


────氷で出来た熊が、京都校の男子生徒を張り飛ばした。
本物に寄せた膂力に敵わず吹っ飛ばされた彼は、木の幹に叩き付けられがくりと首を垂れた。
押し流した女子も不意打ち系男子も戦闘不能。これは私、活躍したのでは?


『MVP貰っちゃう感じ?』


〈せつなっち ダイショウリ!!〉


『判ってるねさとるっち!』


すりすりしてくる白猫の頬を撫でていると、ぴくぴくとさとるっちの耳が動いた。
そういえば今、悲鳴が聞こえた様な…


〈イヌガミケノ イチゾク センシュケンヲ カイシシマース!!〉


『なんて??????』













「えーただいまよりー、犬神家の一族選手権を開始しまーす!!!」


「「「うぇーい」」」


「嘘だろ…やめてやれよ…かわいそうだよ…」


今、俺の前では地獄が開催されようとしている。
隣には暗器をマイクの様に握る語部。目の前には正座させられ、震える京都校の面々。その正面に立つのはさしすトリオ。
幸いな事に二年コンビと桜花はこの場には居なかった。
あの三人は呪霊捜索に向かわせたからだ。俺達は行くと見せかけて、三人が散らばったのを確認してから再び集合した。
何故って?トラブルメーカーが呼び掛けたから。


────アイツら刹那が俺と寝て五条に移ったって噂立ててやがんの。
確かに刹那は可愛いけどさぁ?…俺の刹那を下卑た目で見るのはアウトだろ?アウトだな?アウトだよなぁ?
………ねぇ。俺ら見たら震えるぐらいのトラウマ植え付けたいんだけど、どんなのが良いと思う?


それがこの犬神家の一族選手権〜スケキヨ大乱立〜の発端である。
御丁寧に並べる予定地は夏油の呪霊で土を掘り返してふかふかにしてあるから、良く刺さる仕様。全然有り難くない親切。
そしてただただ地面をふかふかにしただけの呪霊がミミズか耕運機の扱いでとてもかわいそう。


「はい参加者はこの二人!!五条悟と夏油傑の最強コンビでーす!!!」


「さーて、どのスケキヨブッ刺すかなー」


「重さとバランスは重要だよ。下手に重心のズレたスケキヨを刺すと上手く刺さらずに倒れそうだ」


「しっかりやれよクズ共。きっちり立てろ」


「おー」


「勿論」


間違ってもそこで正座して震えている彼等はスケキヨではないし、そもそも人間は地面に突き刺す為の設計なんて施されていない。


人間は、地面に、刺すものではないのだ。


それなのに捕虜の目の前でしゃがみ込み、嬉々としてスケキヨ()を選ぶ五条も、その少し後ろで微笑みながらスケキヨ()を品定めしている夏油も普通にこわい。
ついでに言うと家入もダメ。しっかりもきっちりも立てちゃダメ。
語部はもう言わずもがな。実況するな。暗器危ないから下ろしなさい。


「……ああ、オマエ確か刹那の具合がどうとか抜かしやがったよな?」


「ひぃっ!!!」


五条が指差したのは正面で震える男子生徒。外したサングラスを家入に預けると、五条は男子生徒に立てと命じた


「傑、俺コイツね。オラ立てよ」


「ひ……っ」


「大人しく刺されるのと、マジビンタかまされてから刺されるの、どっちが良い?」


「……………っ!!!」


顔面蒼白で冷や汗をぼたぼたと落としながら、男子生徒は立ち上がった。震える生徒を御丁寧に木の枝で引かれた線の前に立たせると、五条は背後に回ってぐっとしゃがみ込む。


「んー、こんぐらいか?」


「ひぃっ!!!」


長い腕ががっしりと男子生徒の腹部に巻き付いて、彼が悲鳴を上げた。
それを華麗に聞き流し、五条が腰を上げる。


「さぁさぁ五条選手、位置についたー!!スケキヨを持ち上げる!!倒れない様にそのほっせぇ腰をしっかり据えたぁ!!!」


ぐっと持ち上がる男子生徒。絶望一色に染まった彼の顔。
高く高く持ち上げられた彼は、そのまま背後に勢い良く────


「そぉい!!!! !!!!!!」


「ぎゃあああああああああああああ!!!」


────突き刺さった。
ずぼっと首までしっかり刺さったそれから手を離し、ブリッジの状態から五条が上体を起こす。
それから腕を組み、突き刺さった哀れな男子生徒をまじまじと見て首を傾げる


「んー、バランス悪くね?」


「あまりスケキヨを持つ位置が高すぎてもバランスが悪くなるのか」


「はい、審査員の家入さん。只今の五条選手の得点は?」


「刺しが甘い。四点」


「うっえ、超辛口じゃん」


べぇ、と舌を出した五条と交代で、泣き出した男子生徒の襟首を掴んだ夏油がラインに立つ。とてもいいえがお。こわい。


「さっき悟は腹の辺りだったよね。じゃあ私は鳩尾でいこうか」


「折れる折れる折れる折れる折れる折れる折れる!!!!!!!!」


「傑、スケキヨがもっと抱き締めて♡って言ってんぞー」


「ははは、私はブサイクを抱く趣味はないよ」


「さぁ夏油選手がリングイン!!五条選手の記録越えなるかー!?
因みにその男の罪状は刹那ちゃんの胸の触り心地を訊ねた事です!!!」


「死刑」


「死刑」


「さぁ、殺ろうか」


語部は終始ノリノリである。
笑顔の夏油が腰を上げる。逞しい腕にぎっちぎちに鳩尾をホールドされた男子生徒が浮いて、もう地には届かない足で空を掻きながら────


「せいっ!!!!!!!!!!!!」


「ごべぇっ!!!!!!!!!!!!」


突き刺さった。
二の腕辺りまで深く刺さったスケキヨ()を見て、夏油は顎を撫でた


「これはなかなか良いんじゃないか?」


「審査員の家入さん。只今の夏油選手の得点は?」


「十点満点」


「ははは、やった」


「うっげぇゴリラかよ。なんでこんなに刺さんの?やっぱ持つ位置?」


「筋肉量じゃないか?」


「パンプアップすりゃ筋肉張りますぅ」


「見た目だけだろ。ほら、次のスケキヨ選びなよ」


「チッ」


舌打ちした五条が次の犠牲者を選びに行く。刺さっているスケキヨ()達は息が出来ているんだろうか。
これって確か冥冥さんの術式で中継されてるんじゃなかった?地獄絵図観てる先生達今どんな顔をしているの…?
ふかふかの地面に突き刺さったスケキヨ()達は、五条が刺した方が斜めに立っていて、夏油の方は二の腕辺りまでずっぽり真っ直ぐに聳え立っていた。
リアルに悪夢。夢に見そう。
死んだ目をしているであろう俺の前で、五条が次のスケキヨ()を引き摺ってきた


「おっし、次は腹まで刺す!」


「やめてください…ゆるして…ゆるして…」


「突き刺して♡ってさ」


「お望み通り、奥まで貫いてやるよ」


泣いて震える男子生徒の鳩尾を長い腕でホールドし、五条が腰を落とす


「さぁ五条選手が再びスタートラインに立ったー!!次は腹までブッ刺せるのかー!!
因みにその男の罪状は刹那ちゃんの小さな口で■■■を想像したとか抜かした事です!!!!!!!」


「殺せ」


「殺れ」


「殺すわ」


がっと遠慮なくスケキヨ()が浮き上がった。譫言の様に謝罪を繰り返す男子生徒に耳を貸す事なく、勢い良く五条が背を反らす


「死ね!!!!!!!!!!!!」


「ああああああああああ!!!!!!!」


……宣言通り、男子生徒は腹まで深く土に潜り込んだ。
ぴくぴくと痙攣する手が憐れだが、正直発言が発言なので庇えない。いや、それでも人を地面に突き刺すのは人間としてどうかと思うが。
渾身の死ねを放った五条が、ぜえぜえ言いながら身を起こす。
今更だけど五条めちゃくちゃ柔らかいな?ブリッジから普通に上体起こすってしんどくない?
夏油の手を付いてバク転みたいに立ち上がるのも格好良かったけど、此方は柔らかくてびっくりする。


「良し、死んだな」


「百点満点」


「っしゃ俺が優勝!」


「よし、次はスケキヨ投げにしよう」


「なんだそれ。槍投げ?」


「スケキヨを地面に向かって突き刺すんだ。…ああ、でも槍の数が足りないな。一回ずつか」


「チッ。刹那の方に何匹か流れたか?こうなりゃ素材狩りに……」


『…………なにを…なさってるんです…???』


心底ドン引いた声が落ち、全員が固まる。
ゆっくりと振り向いた先で────桜花と灰原と七海が固まっていた











犬神家ごっこやろうぜ!オマエスケキヨな!!!!














刹那→普通に戦った人。
さとるっちは呪力切れになると自動交代。休んで元気になったらまた出てくる。
合流したら親友達が人間を地面に刺しててドン引いた。

五条→俺の刹那に下卑た目を向けた挙げ句、勝手に脳内で汚したので一生消えないトラウマを植え付けようと思いました。(反省の色なし)

夏油→私の娘が発情期の猿に脳内で汚されたので、一生消えないトラウマを提案、実行しました。(反省の色なし)

硝子→私の娘が単細胞共に盛られていたので、あとでタマナシを実行しようと思っています。(反省の色なし)

語部→ノリノリである。

黒川→胃が破裂しそう。

七海→この人達、倫理観生きてる…???

灰原→え?どうやって刺したの???


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