一分勝負

リビングでテレビを観るでもなくぼんやりとしていると、浴室に繋がる扉が開いた。


「刹那何観てんのー?」


『ただ映してるだけー』


「髪乾かしてー」


『上を着てー』


「俺の事全部みてー」


『おとといきてー』


何となく間延びした会話を繰り返し、ソファーの前のラグに座った悟の髪をタオルで乾かし始める。
綺麗な白銀をぽんぽんとタオルで挟んで水気を取っていると、悟がリモコンを手に取った


「ねぇ刹那」


『ん?』


「明日の個人戦、男と当たったら股間狙っていけよ」


ザッピングしながら何とも言えない事を言ってきた男に、私はどう返せば良いのか。
そういえば今日、親友達がめちゃくちゃ人を地面に刺してて狂気を感じた。
死んだ目をしていた黒川くんは間違いなく被害者。彼の胃はそろそろ穴が開きそう。


『一応聞くね?なんで?』


「奴等に繁殖機能なんざ要らねぇよ。うっすい精子でガチャ回したって不幸な命を作るだけだ。
そもそも外で女にセクハラする奴はタマ要らなくね?」


『なに?語部さんか硝子がセクハラされたの?』


それなら喜んで潰すけど。
訊ねた私の膝に頭を預けた悟が、顎を上げて目を合わせてくる


「違ぇよ。セクハラされたのはオマエ。だから俺達怒ったの」


その言葉で、団体戦が始まる時の事を思い出した。
私がちょっと悪く言われたからって罠を張った三人。実際は罠よりやばい事をやらかし、合流した先生の胃を痛め付けたのだが。
楽巌寺学長なんか作品:スケキヨ大乱立を前にして石みたいになってた。夜蛾先生は胃を抑えていたけど。


『…私、あんなの気にしないのに』


「俺達が嫌なの。俺は俺の刹那の事知りもしねぇ癖に、下卑た妄想に使う猿が許せない。
…そんな奴等、殺したくなるよ。
だって、アイツらが刹那を汚すから。
刹那は綺麗でかわいいのに、俺のものなのに。
俺の刹那を猿が汚ぇ妄想でベトベトにするとか無理」


『そっか』


「……でも交流会は殺しはダメだし、そもそも殺したら刹那が泣くだろ。
だから、しなかった。スケキヨにした。
…がんばった。俺、我慢したよ刹那」


真顔でつらつらと言葉を並べる悟の髪を優しくタオルで乾かし続ける。
これ私の太股が湿ってきたな。良いけど。今日ホットパンツだし良いけど。


『じゃあ私が嫌がるから、殺しはナシでフルボッコしてくれたの?』


「ウン」


迷いなく頷いた悟に苦笑いしつつ、口を動かした


『ありがとう、悟。私の事を考えてくれて』


ぶっちゃけスケキヨは褒められたものではないのだが、あれを咎めると拗ねた悟が固い地面でスケキヨを始めそうなので感謝を伝える事にした。
そもそも人間を地面に刺すな。
誰だ犬神家選手権なんか考えたヤツ。傑かな?(正解)


「…刹那、ぎゅってして」


『ドライヤーかけなきゃ明日ウニになるよ?』


「何時も栗だよ。ねぇ、ぎゅってして」


『じゃあソファーにおいで』


ほら、と手を広げてやる。
すると足許に座っていた悟がソファーに乗り上げ、そのまま覆い被さってきた。
大きな身体を願い通りぎゅっとしつつ、すべすべの背中を叩く


『シャツを何処に置いてきた』


「部屋」


『取っといで。風邪引くよ』


「ガキか。刹那ぎゅっとしとけば平気」


『私は湯たんぽじゃないんですけど?』


「俺のテディちゃんだろ」


『いや……まぁそうだけど』


「だろ?じゃあ良いよな?」


『うん。うん…?』


良いの?まぁ観たいものも特にないし、良いのか…?
首を傾げつつ、首許ですりすりしてくる悟の髪を撫でた。


『これもう明日ウニですね。生乾きです』


「恵とオソロ?」


『ウニが恵だと思うのやめな。…ああ、水分取っちゃえば良いのか』


印を組み、白銀の髪から水分を抜き取った。ピンポン玉ぐらいの水の塊を見て、悟は腕を伸ばす。
指先でつつくと、呪力を纏った水玉がふるりと揺れた


「便利だな」


『でしょ?これで明日も栗だね』


「栗ってこのイケメンに対して失礼じゃない?」


『言い出したのおまえー』


首許ですりすりしてくる髪の毛が擽ったい。水の塊をタオルの上に落として、ぼーっと天井を眺める。
するとまたぐりぐりと首に頭が押し付けられた


『なんです?』


「ぎゅう」


『あー、はいはい』


もぞもぞと大きな背中に手を回す。
細身に見えてしなやかな筋肉に覆われている身体は上手く体重を逃がしてくれているんだろうが、重たい。
肩を覆った大きな手に、本当に同じ人種だろうかと度々不思議になるのは私だけか


「…桜花の当主は慣れた?」


『少し疲れるけど、上手くやれてると思う』


…あったかいな。
少しだけぼんやりしつつ、そう返した。
桜花の当主に正式に就任して、時雨さんにサポートして貰って、何とかやれている状況だ。


『悟が時雨さんを私のサポートに回してくれてるから助かってるよ。ありがとうね』


「ん。時雨も雪光育ててるし、暫くはオマエの補佐に付けるよ。
これからも何かあったら俺に言って。どうにでもしてあげるから」


悟はそう言ってにっこりと笑った。
…何と言うか、こういうところは悟の危うい所だと思う。


私達の為なら、なんでもする。
それでは、もし────私達が間違えたら、どうするのか。


『……悟』


「なぁに?」


目にかかりそうな前髪をそっとどける。
私を真っ直ぐに見つめる蒼が、まぶしい


『…私達の為に、何でもするのはダメだよ』


「?」


『…私達が間違ったら、ちゃんと止めて』


間違った友人を引き戻すのも、友人の役目だろう。
そう考えた末の言葉だったのだが、悟は不思議そうに目を瞬かせた。


「オマエらは、間違ったりしねぇよ」


『……判んないでしょ?そんなの、言い切れないよ』


もしかしたら、怒りに駆られて間違えるかもしれない。
考える事すら諦めて、間違えるかもしれない。
私達が正解だけを進めるとは限らない。
そう呟くと、悟がゆっくりと身を起こした。
上から見下ろして、薄い唇が動く


「間違わないよ。たとえ猿を殺したとしても、それがオマエが考えた末の選択なら、それは間違いじゃない」


『……呪詛師になるのに?』


「仮に呪詛師になんならオマエか傑だ。オマエらクソ真面目だから。でも傑は対処法を見付けたから、確率は低い。
…けど、オマエは」


悟が目を細めた


「やっと自分を優先する事を解ってくれた。けど、急な負荷の対処法を見付けてない状態じゃ、きっと猿を殺すよ。
……ねぇ、刹那。そうなったら、一番に俺を頼って」


『……どうするつもり?』


「隠すよ。上のジジイ共に見付かる前なら、どうとでも・・・・・出来る」


大きな手が頬を撫でる。
悟はふんわりと微笑んで、囁いた


「大丈夫。オマエらは、何があっても俺が護るよ」












交流会、二日目。
早速奴等が煽っている。


「つーかさぁ?俺の相手ソイツら全員でも良いよ?雑魚が何匹来ようが一緒だし」


「おや悟、私にも半分分けてくれよ。サンドバッグが欲しかったんだ」


最強コンビが京都側をボコボコにするつもりしかない件。
そういえば悟がサングラスをちゃんと掛けているのは久々に見る。だってあいつ直ぐずらすか外すし。
蒼い瞳がないとモノクロで、パンダみたいだ。


「じゃあこっから半分俺ね!」


「なら私は此処から半分かな」


「ひ……っ!!」


指を差された生徒達が悲鳴を上げた。
とても可哀想。昨日スケキヨの刑に処されている男子生徒達は最早悟と傑自体がトラウマだろう。奴等を目にするなりガタガタと震え出した。
硝子と共にクズの煽りを眺めていると、昨日押し流してやった無礼系お嬢様が私を指差した


「悟様!私あの女と戦いたいわ!!」


「なに馴れ馴れしく呼んでんだ猿。昨日刹那にあっさり負けたブスだーれだ☆」


「悟、猿は鏡なんて見ないものだよ。だから自分の顔なんて知らないさ」


「ぶ、ブス!?あの女ではなく、この私が!?」


「は?????
刹那は可愛いに決まってんだろ。オマエはブス。刹那は可愛い。これ世の理だから」


「悟」


「んだよ」


「百点満点」


「だろ?」


ハイタッチするなクズ共。
溜め息を吐く私の隣で硝子が腕を組んだ


「これ何時まで経っても決まらないだろ。もう籤引きにしろよ」


『ああ、それが良いかもね。先生、あみだとか籤引きにしたらどうです?』


「少し待て、作ってくる」


「はーい」


「その間お前達はあの二人を宥めろ」


『「拒否〜」』


────五分後。
先生が作った籤を平等に引いた結果、また最強コンビがごね始めた


「せんせー!!二対一に女子が入るのはどうかと思いまーす!!!!」


「先生!!私の娘が野蛮な猿二匹を相手取るなんて母として許せません!!交代を望みまーす!!!」


「結局どうしたってゴネんのかよあいつら」


『ははは、うるさ…』


「刹那ちゃん!!ぶちかましちゃって下さい!!!」


「語部、圧が凄い……桜花、無理はしない様にして欲しいっす」


「桜花さん、御武運を」


「頑張ってください!桜花さん!!」


『はーい、行ってきまーす』


鉄扇を握り、肩に飛び乗ったさとるっちと共に森に向かう。
広大なエリアの中で、相手は二人。対する私は一人。
理由は簡単、厳正なる籤引きの結果だ。
制限時間は十分。倒せば勝ち。
そんな至ってシンプルなルールなのだが、此方は硝子が非戦闘要員だ。
なので変則的に、一試合だけ二対一のものとなり、見事に私がその籤を引いてしまった


『さとるっち。すぐるっちは何か言ってる?』


〈ダンマリ!〉


『そっかぁ』


既に森には諜報の鬼を放ってあるので、此方は連絡待ちに近い。
一日目と同じ様に肩にさとるっちを乗せ、森の中を警戒しつつ進む。
脚を進め、土を踏み締めた────瞬間。


《────入場エントリー確認。
ゲームを、開始、シマス》


『!』


足許から半透明の何かが噴き出して、周囲を覆っていく。
前方は細長く、まるで長方形の箱の中に閉じ込められたかの様に半透明の壁で仕切られた。


《ルールを、説明、シマス。
プレイヤーは、これより一分以内にフィールド内の相手プレイヤーを撃破して下サイ。
勝利条件は立っているプレイヤーの人数です。敗者には死が与えられマス》


『……質問!』


《何で、ショウ?》


『フィールドの広さは?』


《貴女の居る場所から、直線一キロです》


『私を含めたプレイヤーの人数は?』


《三人デス》


…つまり相手に100%有利なルールって事ね。
舌打ちを漏らし、鉄扇を広げる。


《質問は、よろしいでショウカ?》


『……うん。ありがとう』


《それでは、開始シマス》


目の前に一分のカウントダウンが表示された。
直線一キロ。制限時間は一分。恐らく相手は隠れて凌ぐ気だ。
一キロ濁流で流し去るだけで潰せるだろうか。そうなると…長方形の中、全てを一撃で薙ぎ払う必要がある


『さとるっち、皆に緊急避難の指示を』


〈ワカッタ!〉


私はこの壁から向こうには行けないが、さとるっちなら通れる様だし。
一旦飛び出してまた戻ってきたさとるっちを肩に乗せ、念の為、呼び掛けた


『最後通告でーす!!!今出てくるんなら氷漬けで許しますけどー???』


……返事はない。
残り四十秒になった時点で、さとるっちが口を開く


〈ヒナン カンリョウ!〉


『ありがとう。……じゃあ、やろうか』


脚を大きく開き、しっかりと地を踏み締める。
ぐっと腰を落とし、右手を胸元に。
そして、鉄扇を握る左手を真っ直ぐ正面に伸ばした。


〈ブチカマセ!〉


────私が知る、最強の奥義。
耳の奥で、蒼が笑った。









『虚式────茈』
















試合開始、直前。生徒控え室。
五条はモニター正面の椅子にどっかりと座り、長い脚を組んだ。
その隣に先程までごねていた夏油も座り、腕を組む。家入も夏油の隣に座り、頬杖を着いた。俺と語部、灰原と七海もその後ろに陣取る。
反対の列に京都の生徒も座ったが、何と言うか、彼方は何処か空気が浮わついている様に思えた。
最初は最強二人が怖くてなのかと思ったが、どうも可笑しい。


……あいつら、笑ってる…?


俺が気付いたのと同時、夏油がゆっくりと京都側に顔を向けた


「先程からそっちは随分楽しそうだね?私達も混ぜてくれないか?」


夏油の笑顔の威圧にそわそわしていた京都校の…特に昨日スケキヨにされた面々はさっと顔を青ざめさせて、顔ごと反対に向けた。


「……ははは、あの女もお終いよ!!」


そんな中で、女が笑う。
あれは確か、昨日桜花に流された一つ上の先輩だ。
先程ブスと罵られた女子生徒と共に、先輩は笑う。


「気に入らなかったの!!五条くんと夏油くんに擦り寄るだけじゃなく、当主ですって!?
────あんな傲慢な女、死ね、ばっ!?」


全てを言い捨てる前に、大きな手が女を壁に叩き付けた。
頭から血を流す先輩の胸倉を掴む無表情な五条を、ゆったりと夏油が宥める


「悟、ほどほどにしておけよ」


「あ?止めんの」


「そいつが気絶したら、刹那の状況が判らなくなるだろう」


…一瞬でも暴力に訴えるなと言うかと思った俺が馬鹿だったのか。
頬杖を着いたままで家入がモニターを指差した


「おい五条、アレ」


「あ?……ふざけんなよ!!なんだあの術式!!」


モニターに映っていたのは、半透明な長方形の中に立つ桜花だった。
きょろきょろと辺りを見渡しつつ、彼女は電子的な声に耳を傾けている


《ルールを、説明、シマス。
プレイヤーは、これより一分以内にフィールド内の相手プレイヤーを撃破して下サイ。
勝利条件は立っているプレイヤーの人数です。敗者には死が与えられマス》


『……質問!』


《何で、ショウ?》


『フィールドの広さは?』


《貴女の居る場所から、直線一キロです》


『私を含めたプレイヤーの人数は?』


《三人デス》


「……交流会に於いて、殺害は御法度じゃなかったかな?」


「うっかり殺しちゃいましたって言えば良いじゃない?だって、二対一に了承したのはあの女よ?」


ぎり、と掴まれた胸倉が音を立て、気道が圧迫されたんだろう先輩が噎せている。
ふざけたゲームが強制参加なら、相手が有利だ。
彼方は数の利を使い、潜伏しておけばそれで済む。
…明らかに、仕組まれていた。


《質問は、よろしいでショウカ?》


『……うん。ありがとう』


《それでは、開始シマス》


頷いた桜花の目の前に一分のカウントダウンが表示された。
どんどん減っていく数字に灰原と七海が部屋を飛び出そうとして、夏油に止められる


「待つんだ二人とも」


「何故止めるんですか!!このままでは桜花さんが!!!」


「夏油さん!!桜花さんが!!!」


「見なよ。刹那の様子を」


夏油が二人にモニターを指す。
画面の中では、黒髪の少女が肩に乗る猫に指示を出していた


『さとるっち、皆に緊急避難の指示を』


〈ワカッタ!〉


その様子は慌ててもおらず、何時も通り。
…勝機があるのか?
先輩を床に落とした五条が荒々しく席に戻った。
長い脚を組み、鼻を鳴らす


「俺の刹那舐めてんの?
フィールド限定付きタイムアタックなんざ、負ける訳ねぇじゃん」


「おや、その割には怒っていた様だけど?」


「あれは刹那にあんなふざけた術式使ったからだよ。あと死ねって言った」


「ああ、それならあとでお返ししなきゃね」


「だろ?」


やめて差し上げろ。もう壁に強打したんだから許してあげて。
隣の語部がもっとやれと呟いた。恐ろしい事を言ってくれるな


『最後通告でーす!!!今出てくるんなら氷漬けで許しますけどー???』


「かわいい。あんだけやられて素直に出てくれば氷漬けで許すとか優しくてかわいい」


「五条の可愛いの定義ってなに?」


「刹那なら何しても可愛いんじゃないか?」


さしすの呑気な声を聞きつつ、此方はハラハラしている。
え、死なないよな?大丈夫なんだよな?
確かに桜花は強いけど、直線一キロの敵を残り四十秒で見付けるなんて無理じゃないか?


〈ヒナン カンリョウ!〉


『ありがとう。……じゃあ、やろうか』


微笑んだ桜花がその場で脚を大きく開き、しっかりと地を踏み締める。
ぐっと細い腰を落とし、右手を胸元に。
そして、鉄扇を握る左手を真っ直ぐ正面に伸ばした。
それは何時か、紙面で目にした最強の構えに似ていて────


「フィールド限定なら、フィールドごと壊しちゃえば問題ないよね?」


〈ブチカマセ!〉


五条が笑う。
バチバチと鉄扇の先に鮮やかな紫が縒り集まり、そして────


『虚式────茈』


画面が、白く染まった。














「えっ、かわいい。なにあれかわいい。
茈の威力で転がっちゃうの?かわいいね?刹那細いもんね?踏ん張れなかったの?そっかぁびっくりするぐらい可愛い。
転んだの恥ずかしかった?ちょっと顔赤いね?照れ笑いしてるのくっそかわいいな?まってかわいい。まって、可愛い。
もう構えた時点でかわいかったのにクソ猫に埋もれるとか可愛いが過ぎない?
何それオマエ自分の可愛さ自覚してる?あざとい系?
いやんな訳あるか俺の刹那は無自覚で日々かわいいんだよふざけんなどうにかしろ。
というか茈似合いすぎじゃない?茈は刹那の為にある奥義なの?
つまり俺が茈を会得したのは刹那に茈を貢ぐ為…???」


「おい五条が壊れたぞ」


「叩いたら治るんじゃないか?」


「え、五条はもしや私と同じ枠…?」


「やめてやれ。可哀想だから」


茈を放ったあと、モニターに映ったのは真っ白な猫のクッションに埋もれた桜花だった。どうやら威力に耐えられず後ろに吹っ飛ばされてしまったらしい桜花をさとるっちが総出で受け止めたらしく、起き上がった彼女が少しだけ恥ずかしそうに笑っている。
そしてそれを見た五条が壊れた。
語部というより、何となく五条先生みを感じるのは何故なのか。


《勝者、桜花刹那!!》


『あ、勝てたって。ありがとねさとるっち』


〈カッター!〉


〈ヤッタネ!〉


〈ケガ ナイ?〉


『ないよ。護ってくれてありがとう。さとるっち達は怪我してない?』


〈ナイヨ!〉


〈モーマンタイ!〉


〈ムキズ!〉


〈ノーダメ!〉


『そっかぁ、よかった』


猫と戯れている美少女の図は癒される。
だがこれを見た五条が目を覆い、天井を見た


「なんでオマエは使い捨て上等の猫の身を案じるの?優しすぎない?かわいすぎない?
え???オマエどうしてそんなにかわいいの?顔面どうなってる?中身も顔もかわいいってどうやって作ったらそんな奇跡のいきものになったの???神様凄すぎない?人類の神秘?かわすぎてびっくりした。ねぇキラキラするのやめて?心臓がいたい。
ぎゅーってしてきゅんってしてみょーんってした。これが心不全?俺はそろそろ死ぬ…???」


「馬鹿だ。馬鹿が居るぞ」


「ははは、叩いても治らないのかな」


「え、五条さんって桜花さんの事…?」


「私に聞くな、灰原」


五条を見ながらそれぞれ好き勝手に言っているのだが、本人は召されている。
その姿をじーっと見た語部が俺に顔を向けた。


「ねぇやっぱり五条って刹那ちゃん限定でオタクじゃね?」


「やめなさい語部」


「私がさしすせとか五刹の事を黒川に話すテンションと似てない?」


「やめなさい語部」


「今度刹那ちゃんしか勝たん!ってうちわ渡してみる?」


「やめなさい語部……」


本当に握っちゃいそうだから、やめなさい。











茈光一閃










刹那→地味にやばいルールだったので、鉄扇の中のとっておきを使った。本人の様に格好良く踏ん張れず、吹っ飛ばされたのが恥ずかしかった模様。
因みにこれから定期的に茈が補充される。
さとるっちは無敵ガード係。

五条→語彙が死んだ。

夏油→あたまがぱーん!した親友を見た。

硝子→こいつマジでテディオタクじゃね?

語部→こいつ強火過ぎん?もしや同担拒否か???

黒川→胃がキリキリしている。

灰原→え?五条さん…?

七海→うわ……五条さん…

対戦相手→勝ち確だしヨユー!!とか思ってたら紫の光線がカッ飛んできた。
生きてはいる。でも試合のあとは………


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