・芸能パロ
・ゴミ箱シリーズを演じている設定
私は祓ったれ本舗という、明らかに顔で食っていける芸人コンビのファンだ。
最初こそ顔だけの芸人だと思ったが、ネタが洗練されていて面白かった。
そこから今ではすっかりファンで、テレビに出る時は欠かさずチェック。
毎週放送のラジオも勿論聴いている。
「ハイハイ今日も元気か呪霊共。元気?そっかぁ祓ってやるから並んで待ってろ。
ま、それは良いとして今日はゲストをお呼びしてまーす!!!おいで!!!」
『いや呼び方雑』
ヴァッッッッッッッッッッッ
部屋に響いたのは私の鳴き声だった。
まって?今の落ち着いた声はまさか?まさか?????
「改めて紹介しまぁす!!ドラマ呪術廻戦スピンオフ“此処はゴミ箱じゃないんだぞ”シリーズより桜花刹那ちゃんでーす!!!」
『テンション高……皆さんこんばんは、桜花刹那です』
「オマエは喋らな過ぎ。えー、俳優が俳優名そのままに役を演じた大人気ドラマ呪術廻戦において、死に方があまりにも俺の心を抉るツートップとして名を馳せる刹那ちゃん」
『ごめんね』
「あんまりにも救いのないストーリーでファンが呪霊化する事態が多発したので、呪術廻戦スピンオフとして人気キャラクター、五条悟を主人公とした高専時代を小説化。当たり前だけど人気だったのでドラマに。
ゴミ箱のテーマは“誰も欠けない世界線”なので、五条悟のメンタルブレイカー二大巨頭、夏油傑も桜花刹那も死なないし裏切りません。超ハッピー」
『それって良いの?』
「IFの世界線って設定なんだと。あのー、あるじゃん。これがこうなったら良いのに!ってヤツ。
あんまりにも呪霊が多発しちゃってツイッターが阿鼻叫喚だったから、“誰も欠けずに未来へ”って副題付けて作ったんだと。
だからアレだな。ゴミ箱の後に呪術の方やれって言われたら情緒ぐちゃぐちゃになりそう」
『あー…私呪術廻戦だとずっと真顔で真っ直ぐ喋るキャラだからな…ぐちゃぐちゃになってもバレなさそうっていうのはある』
え?刹那ちゃん?刹那ちゃん来ちゃった?五刹?フッツーに喋ってるけどこれ五刹が今私の生きている世界で行われていると言うの…?
ツイッターを開けば仲間の死体が次々と流れてきた。安らかに眠れ。
「ぶっちゃけさぁ、やってて思うのはどうしてこうならなかった?っていう一言なんだよな」
『灰原が死んだからじゃない?』
「まだそこまで進んでねぇからアレだけど、原因の一つはそれだよな。最初は天内の護衛失敗するヤツ」
『ああ……五条悟やらかし事件か』
「そ。呪術じゃ甚爾と時雨が黒幕だったけど、ゴミ箱じゃ俺が二人と組んでる。サイコーにクールなヒールを演じました☆」
『普通に腹が立った』
「は?」
『あの時ね、ヒールと私達で台本違ったんだって。だから私達、本気で、裏切られたの』
「え」
『これ刹那は悟を嫌いになっても許されるなって思った』
刹那ちゃんの発言を聞いた瞬間、五条が一瞬黙った。
それから酷く慌てた声がわっと早口に捲し立てる
「えっっっっっっ???????
ごめんね???あれはアレだよ?俺は刹那達の為にあんな事やらかしたんだよ???
ぶっちゃけ台本貰ってこれ大丈夫?とか思ったけど俺は悪気はなかったんだよ???
嫌わないで???ごめんね????まって?????おねがいきらわないで!!!!!!!!!!」
まってwwwwwwwこれゴミ箱五条じゃんwwwwwwww五条もう普通にゴミ箱五条が混ざっちゃってるじゃんwwwwwww
ツイッターも一気に草が生えた。
『めちゃくちゃ謝るじゃん』
「刹那演じてねぇ時のオマエめちゃくちゃのんびりで判りにくいの!!許すならニコってして!!!
ねぇ!!!!にこって!!!!して!!!!!!」
『んー…良いよー』
「あっかわいい……」
おい今普通にいちゃついたな???
普段は静かな刹那ちゃんの事知ってますアピール+かわいいって言ったな???
五刹かわいい…このふとした時にいちゃつくの最高…
「あ、そういや時間押してるわ。お便りコーナーいっきまーす」
『わー(拍手)』
「…もう少し感情込めな?」
『わー(拍手!!!)』
「違ぇ。拍手荒ぶらせろって言った訳じゃねぇの。声にもっと感情込めな?って言ったの。器用か」
『えーと、ペンネームぺんだこさんからお便りです』
「聞けよ」
かわいい。ちょっとした会話がかわいい。
ニヤニヤする私を他所に、軽快にトークは続く
『はじめまして、刹那ちゃんの大ファンです。え、ありがとうございます。
質問なんですが、刹那ちゃんは五条とどのぐらいキスしたりしてるんですか?…しょっぱなから凄い質問だな』
「え、めちゃくちゃいっぱい。これからも沢山するよ」
『おいやめろ。燃えるぞ』
「いっつも燃え盛ってるからヘーキ」
これはネットが荒れるぞ…
しれっと返した五条に溜め息を吐いて、刹那ちゃんが質問に答えた
『えーと、確か一年生の時にキスしたんですけど、それ以来ちょこちょこしますね。あくまでも役ですので、五条ファンの皆様、刺さないで下さい』
「刹那の唇ってめちゃくちゃ気持ちいいよね」
『悟』
「ふわふわですべすべしてる。甘くておいしい。あ、今度キスシーン結構長いからヨロシク☆」
『いやだなぁ…』
「は????????????」
…ねぇこれ五条、刹那ちゃんの事好きじゃない?
反応がちょいちょいゴミ箱五条と一緒じゃない?
同じ事を思う人は多い様で、ツイッターがざわついている。
「えー、次、ペンネームとげとげさんから」
『お便りありがとうございます』
「ゴミ箱シリーズ大好きです!五条と刹那ちゃんの恋模様が気になります!だって」
『恋かぁ…まぁゆっくりですね』
「ぶっちゃけ付き合ってるって言われても可笑しくない距離感じゃない?」
『刹那がキスまで許しちゃったのが悪いと思う。なんで弱ってる女の子にキスするの……』
「そりゃ好きだからだろ。好きだから普通にキスしちゃうし、何時だってかわいいって思うよ」
『そういうもの?』
「そういうもの」
……確定した。これはリアル五刹ですわ。刹那ちゃんは気付いてないっぽいけど五条めちゃくちゃ匂わせしてるじゃん。
好きだからキスするってフリも、めちゃくちゃ刹那ちゃんの唇気持ちいいアピールも、確実に匂わせ。
とどめに好きだからかわいいって思うの一言。プライベートでも五刹展開したいんですね把握しました。
だってドラマのキス顔五条幸せそうだもんな?目を閉じてる刹那ちゃんを見つめながらキスしちゃうもんな?
そりゃこんな美人と何度もキスすれば惚れるわ。
「そうだ刹那、刹那が食べたがってたケーキ、新作出てたよ」
『そうなの?ありがとう、今度行ってみる』
「一緒行こうよ。俺も食べたい」
『そう?じゃあ予定合わせよ』
「ん」
…とうとう公共電波でデートの約束を取り付けたぞ、この男…五刹大好物なんでけしからんもっとやれ状態ですけど。五刹布教MADとか凄い見ちゃうけど。
ドラマと同じ様にしれっと彼氏面されちゃいそうな刹那ちゃんは落ち着いた声で手紙を読み上げていく。
『ペンネームタコライスさんからのお便りです。
ドラマの休憩中、お二人は何をしていますか?だって』
「俺は日によって色々。遊んだり寝たり傑とネタ考えたり」
『私は次の台詞の復習ですね』
「前から思ってたんだけど、それ意味ある?大概話してたら台本から逸れるじゃん」
『だってカット掛かんないから演技続けるしかないし……でももしかしたらちゃんと進むかも知れないでしょ?』
「知ってた?ゴミ箱で人気なの大概俺らのアドリブよ?台本なんか流れ覚えときゃ問題ねぇって。
明日からは一緒に遊ぼうね」
『えー…』
「なぁにその顔、キスしたいの?」
『顔面捥げないかなこいつ』
「真顔やめて???????」
公式が五刹……キスして…もうラジオなんか気にせずもっといちゃついて良いのよ…?
同士達が次々と死んでいく。
既にやられた仲間達は私達の代弁者、語部の様にてえてぇ…としか書き込めなくなっていた。
「つーかね、ゴミ箱の人気が凄すぎてこの設定のまま呪術廻戦の内容やるんだって」
『へぇ。じゃあ私ロボット卒業?』
「多分な。傑も居るし」
『やった。傑優しいから好き』
「あ゙???????」
まって???????今電波に乗せちゃいけない声出なかった??????
目を瞬かせる私の前で、スマホから聞こえる音声はまたべらべらと早口で捲し立てる
「俺の方が、刹那を、愛してますけど????
ねぇ知ってる?刹那を誰より幸せにしたくてゴミ箱でめちゃくちゃ頑張ってるグッドルッキングガイが居るのね?
ソイツね?自分の幸せは刹那が幸せになる事なのね?だから桜花のボンクラ共にバチギレるしスケキヨするしバルサンしちゃうのね?
これずぇーんぶ桜花刹那に捧げる愛の成せる業なんだけど知ってた????????」
『悟って愛が深いね』
「まだまだ上澄みだわ。ほんとはもっとどろどろに溶かしてあげたい。俺が居なきゃ生きていけないぐらい蕩けさせたいって知ってた?」
『え、それは初耳』
「今言ったから。覚えといて。俺は刹那を愛してるよ」
キャーーーーーーーーーーーー!!!!
告白した!!ゴミ箱五条か祓本五条か判らない様に巧妙にぼかして告白した!!
これ絶対本音だろ!!!刹那ちゃんに告白しただろ!!!
これどう答えるの!?刹那ちゃん!!告白されちゃったよ!!!!
『……ふふ、ありがとう。悟』
………ふわりと耳に滑り込んだ声がひどく柔らかくて、私は目を開いたまま召された。
公式が…公式が交際宣言……
もしも平和な世界なら
ハナビシソウの花言葉「希望」「希望のもてる愛」