バラ(青)

※ヤクザの別バージョン







「あーもう死ね。クソハゲ死ね」


『ああいうタイプは百歳まで生きますよ』


先輩の傍からハイボールを避難させつつブルームーンを口に含む。
レモンが先駆け、そのあとにジンに付き添われながらパルフェタムールの花の様な香りと甘味が抜けた。
ショートカクテルを磨き上げられた木製のテーブルに戻すと、バーの扉が荒々しく開けられた。


「ふざっけんなよマジで!!」


「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ兄さん」


落ち着いたバーの雰囲気をぶち壊す怒鳴り声と、それを宥める媚びへつらった声。
カウンター席で飲む私達の直ぐ傍にそいつらは座った。嘘でしょ、あっち行けよ。
先輩が無言で端に寄った。私も椅子ごと着いていく。
此方にじっとりと向けられる視線は無視だ。きっと目を向ければ100%絡まれる


「オヤジも頭が堅ぇよなぁ?今時ヤクなんか大学生のガキでもやってんぞ」


「此方でヤクばら蒔けば良い金になりそうですけどねぇ」


「『(これアカンやつ)』」


無言で先輩を見る。先輩が頷いた。
帰ろうか。はい、帰りましょう。
我々一般人は明らかにヤクとかばら蒔くとか言うヤバイ奴等の近くに居てはならない。
鞄を持って立ち上がろうとして────肩を、がっしりと掴まれた。


「なぁ姉ちゃん達、俺らとお話しようぜ?」


「うわ、どっちも綺麗な顔ですねぇ。ヤってから売ります?」


「まぁヤク使えばヤれるだろうしなぁ」


ふざけんなよどんだけ一方的な会話してんだ。
取り敢えず酔っているであろう先輩が捕まらない様に気を配りつつ、肩に触れた手の感触が気持ち悪くてぶん殴りたいのを堪える。
バーのマスターが此方に近付いて来るのを確認しつつ、男に目を向けた


『離していただいても?』


「まぁ待てよ。お話しようぜって言ったろ?」


『此方は了承した覚えはありませんので。これ以上絡むなら警察を呼びますよ』


「気が強ぇ女ってのは挿れてやると良く善がるんだよなぁ。アンタ、乳はねぇけど綺麗な顔だし。そっちの姉ちゃんは良い乳だ。楽しめそうだなぁ」


「今すぐ股間爆発して死なねぇかなこのジジイ」


『先輩、はしたないですよ』


こっそりと右手を鞄に突っ込み、とある物を指先で探す。
こつんとぶつかった筒状のものをしっかりと掴み、引っこ抜く。


筒状のそれ────催涙スプレーを、男の顔面目掛けて発射しようと指を掛けた、瞬間


「オイオイオイオイ、ヤク使って女ヤるとか猿並みの知能じゃん。
つーかやっぱオマエらが禪院から此方のシマにヤク流してたんだ?」


直ぐ後ろから低い嘲る様な声がして、男の腕が捻り上げられた。
悲鳴を上げる男の部下らしき男も、黒髪のスーツの男の人に拘束されていた。
…この人達、後ろの席で呑んでた二人だ


「桜花!」


『先輩…』


「ああ、ごめんねお姉さん達。コイツら俺らが片付けるから……」


直ぐ後ろに立っていた人が真上からずいっと覗き込んできて、驚いて目を丸くする。
染めたんだろうか、白銀の髪にサングラス。
…そしてその奥の蒼い瞳がまん丸くなって私を見ているんだが、どういう感情?
え?あんたから覗き込んできたじゃん?なのになんで目を丸くする???
恐ろしく綺麗な顔でじいっと此方を見つめてくる男の人に、気まずいので愛想笑いを浮かべれば、はっとした表情で彼が動いた。


「え?えっ???……すぐるー!!!かわいい!見て!かわいい!!なにこれかわいい!!!この子持って帰っていい!?」


「馬鹿。せめて本人口説きな」


……絡んでくるのがオジサンヤクザ(仮)からイケメンヤクザ(仮)にグレードアップとか、そんなアプデ要る?














バーでオジサンヤクザに絡まれ、イケメンヤクザに絡まれるという非日常な事件が起きて以降、私と先輩はちょくちょくヤバい輩とエンカウントする様になった。
行く店を替えても何故か居るのだ。白いのと黒いのが席に座っているのだ。
奇遇だね!じゃないんだよ何故居るんだ。


「桜花はなんでこう…変な奴に絡まれるんだろうね?」


「あーほんとそれな。刹那、なんでセンパイと仲良いの?
コイツ変じゃない?直ぐ酒飲んでベロベロになって刹那に頼るじゃん?友達やめたら?」


「私はお前の事を言ってんだよヤクザ。私の可愛い後輩に近付くな帰れ」


「えーもうちょっと下手に出りゃめちゃくちゃ調子乗ってくるじゃん。
カタギめんどい。すぐるー、撃っちゃダメ?」


「悟、普通の人は悟の冗談が冗談に聞こえないから止めな」


「えー?刹那は判るよね?俺今の冗談だったんだけど。判るよね?」


『いやちょっと判んないですね』


今夜も二人で選んだバーに五条と夏油が居て、私達は溜め息を溢した。
店に入った手前逃げる訳にもいかず、スーツの二人の間に座らされお酒を飲んでいるのだが、先輩が輩に遠慮がないのは何故だ。あんたそのうち撃たれそうで怖い。


「刹那、この間もそれ飲んでたね。ブルームーン好きなの?」


『美味しいから。飲みたいなら頼めば?』


「俺下戸なの。だから刹那のそれ気になるけど、飲めねぇ」


気になるのか。
テーブルに伏せる様にしてじいっと青紫のショートカクテルを覗き込む姿はあどけなくて、ちょっと可愛い。
何とはなしに眺めていると、不意に綺麗な蒼と目が合った。
サングラスを外した恐ろしく整った顔をしている男は、私を見て嬉しそうにふにゃっと笑う


「コレ、刹那の目に似てるな。綺麗な菫青だ」


『えっ』


「おいヤクザ、人の後輩口説くな!」


「?俺元々刹那を口説くつもりしかないけど。センパイ帰って良いよ?傑に送って貰う?」


「お前今私を邪魔って言った!?」


「言ってねぇし。帰れば?って言っただけ。被害妄想ヤバくない?ヒスはモテないよ?」


「黙れ白髪!!!!!!」


「あ゙ーーーーーーー撃ちたい。ダメ?」


「刹那に嫌われたいならそうしなよ」


「じゃあやめとく」


…心臓がうるさい。
いや待て、これはヤクザの新しい遊びだ。多分綺麗なお姉さんで遊ぶのに飽きて、私みたいなちんちくりんに手を出してるんだ。きっとそう。これは火遊びみたいなもの。
…そうじゃなきゃ、こんなに綺麗な男が私なんかに興味を持つ筈がない。
一度息を吐き、ゆっくりとカクテルを口に運んだ。












仕事を定時で上がり、帰宅の途につく。
コンビニで今日の自分へのご褒美、シュークリームとプリンを買って家に向かっていると、前方から白銀の髪の男が歩いてきた。
……男だけならまだ良いが、明らかにヤバい男達を数人連れて、歩いている。
私が顔を引き攣らせるのと、男が此方に気付きぱああっと顔を明るくさせるのは同時だった


『げ』


「刹那じゃーん!!!なに?仕事帰り?お疲れ、今日もかわいいね。
ちょっと疲れてくたっとしてるトコも年季入ったテディベアみたいでかわいい」


『褒めてんの貶してんのどっち????』


「?褒めてる!!!!」


『褒め方ヘタクソか』


思わず何時もの調子でツッコミを入れた。
普段なら五条がケラケラ笑って終わる話だが、此処には私達以外の人間が居るという事を失念していたのである。


「おい女、五条さんに何生意気な口聞いてやがる!」


『えっ』


後ろに居たガタイの良い男が前に出てきて、私を怒鳴り付けた。
大声に肩を震わせた瞬間、男がアスファルトの上に転がっていた。


『……え?』


何が起きたか判らず目を丸くする私の前で、五条が嫌味な程長い脚を高く上げた。
そしてその靴裏が、地に伏せた男の顔面に叩き込まれる


「ぎゃああああああっ!!」


『!』


ぼきっと絶対に人体から聞こえてはいけない音がした。
男の顔面を踏みつけたまま、怖い程表情のない五条が黒のハーフグローブに包まれた右手をジャケットの内側に差し込む。
出てきたその手が握っている黒いものに、心臓が止まりそうだった。


「生意気な口聞いてやがんのはテメェだよ。雑魚が俺の女にナマ言ってると────殺すぞ」


安全装置を外す。
黒い銃口が、男の心臓に向けられていて。
引き金に長い指が躊躇いなく掛けられて────


『ご、五条!!』


名前を呼んだ瞬間、ぴたりと指が止まった。
この場に立っているだけで、男が発する冷たい空気で足が震えそうになる。
肌を刺すひりひりとした空気は、殺気だろうか。
引き金に指を掛けてはいるものの、そのままの体勢で待ってくれているんだろう彼に、出来るだけ明るい声で話し掛けた


『…今日、プリンとシュークリーム買ったの。よ、よければ一緒に食べない?』


…本当はとても怖い。銃を躊躇いなく向ける人が、怖くない筈がない。
けれど目の前で人が死ぬのは嫌だし、五条が人を殺すのも見たくなかった。
飲み屋でほぼ毎度遭遇するという奇妙な関係性であっても、話をして楽しいと思えた相手が誰かの命を簡単に奪うだなんて、思いたくもないし見たくもない。
声が震えない様に精一杯笑みを浮かべて問い掛けると、人形みたいな顔で五条が此方を見つめた。
暫し私を見つめてから、安全装置が元の位置に戻される。
黒いものを胸元に戻すと、五条はにっこりと笑った


「あは、ごめーん☆俺、直ぐ熱くなっちゃうから。じゃあお邪魔しよっかな。
……オマエらは予定通りお宅訪問してきて。僕は気が向いたら行くから」


「はい」


「あとソイツ、部屋に転がしといて」


「はい」


「じゃ、行こっか」


『あ、うん』


にっと笑った五条が隣に並び、身体が強張った。しまった、と思うものの五条はサングラス越しに此方を見つめるだけで何も言わず、ふわりと微笑むだけ。


……怖がってるの、バレてるな。


そしてそれを見ないフリで部屋に上がろうとしているのだから、なかなか性格が悪い。
誘ってしまった手前、仕方なく部屋に上げる事を決めた。
……いざとなったら催涙スプレー使おう。










…今更ながら異性を部屋に招くとか普通に警戒心が死んでない?え?私大丈夫???いくら人が死にそうだからって自分を生贄にするのは違わない???
五条がジャケットを脱いでいるのを見て慌てて背中を向けた。黒いのは危険だ。あれはヤバい。一般市民は見てはならないものである。
キッチンでコーヒーを淹れてテーブルに運んだ。
シュークリームとプリン、どちらを好むか判らなかったのでそれらはテーブルの上でポリ袋に入ったままだ。
…あ、変なものを入れていないというアピールの為に目の前でコーヒーを淹れた方が良かったんだろうか。
コーヒーの粉入れるの毒だとか疑われてないよね?家に青酸カリなんかないけど。スティックシュガーをクスリだとか思わないよね?
ぐるぐる考えながら席に着くと、じいっと此方を見つめていた五条がくすくすと笑った


「大丈夫だよ。オマエが毒を盛るだなんて思ってないから」


『!!!!!!』


「んっふ、嘘吐けないもんね、オマエ。視線がうろうろするし青ざめるしで判りやすい」


……バレてた。
固まった私を見て爆笑した男を見つつ、そっとスイーツを差し出す。
それを見た五条が目を輝かせ、それから私を見た


「刹那!俺どっちも食べたい!半分こしよ!!」


『えっ』


「ん?なぁに?シェア嫌いなタイプ?」


『いや、そうじゃないけど』


五条の方がシェアが嫌いなタイプだと思っていた。
なんだろう、こう…全部俺のもの!みたいな。ジャイアンチックな雰囲気を感じていたので。
ぶっちゃけこのシュークリームとプリンもどちらも五条に取られると思っていたのだ。
だから、分けてくれる事にびっくりした。
…言わずとも通じたのか、五条がむうっと口を尖らせた。顔が良いとそんな顔も可愛いから腹が立つ


「俺だって好きな女には優しくしますぅ」


『エッ』


「…ねぇ前から思ってたけど、オマエ好きって言葉苦手?俺に言われるのやだ?」


覗き込んできた綺麗な顔からそっと目を逸らす。
しかしがっしりと頬を挟んで固定した上に、至近距離から目を合わせてきた。逃がすっていう慈悲を持ち合わせてないヤクザこわい。


『………怖い、わけでは』


「じゃあ俺の女って言っても嫌じゃねぇのに好きって言葉には必ず視線を斜め下に逃がす理由言ってみ?」


『え』


「ああ、気付いてなかった?その単語が自分に向かうとオマエ必ずそうしてたよ。
…最初は俺が怖くてそうすんのかなって思ってたけど、どうにもそうじゃねぇっぽいし?」


この短期間でめちゃくちゃ人を観察してるヤクザこわい。
固まった私の頬を親指でもにもにしつつ、蒼い目が細められた。


「ンーーーーーー………親に言われたかった?友達?恋人?…ああ、一方的に好かれたのね。それで?ストーカーでもされた?
…ふむ、告白は?された?そっかぁ。ソイツに好きって言われてトラウマになった?
…そっかそっか。可哀想に、怖かったね。
片思い拗らせた男にストーカーされるなんて、オマエも運が悪い女だねぇ」


………本当に待ってほしい。
私は一言も発していない。なのに過去のストーカー未遂の話まで引っ張り出すとはどういう事だ。しかもこの言い方は可能性とかじゃなくて、確信してる。
固まった私の頬をふにふにしながら五条は得意気に笑った


「不思議そうな顔してんね?職業柄、思考回路と感情のトレースは得意なの。
ほら、お宅訪問した時とか?カノジョに留守のカレシの居場所聞いたりする事あるし」


『嫌な特技ぃ……』


「特にオマエみたいに嘘が苦手なタイプはさ、こうやって目を合わせればぜぇーんぶ教えてくれるから、とっても助かる♡」


五条が離れ、コーヒーにスティックシュガーをぶち込み始めたのを見て問い掛けた


『…嘘が上手になる方法ってある?』


「オマエあれだろ?嘘吐いた!どうしよう!って罪悪感ヤバいタイプだろ?じゃあ無理。自分の嘘を正当化出来なきゃ無理。無理」


『なんで三回も無理って言った?』


「刹那ちゃんはこれからも正直に生きていけば良いって話。
あ、好きって言葉が苦手なら変えるね。愛してる」


『んぐっ』


唐突な一撃に噎せた。いやこれ私は悪くない。コーヒー飲んでるのにそんな事言う方が悪くない???
真っ赤になっているだろう私の口許をティッシュで拭きながら五条が笑う


「弱点みーっけ。ふふ、真っ赤になっちゃってかわいいね」


『もうやめて…死ぬ…やめて……』


「恥ずかしくて死んだ奴なんか居ねぇよ。だから遠慮なく照れとけ」


『なんなの…?そんな事言って恥ずかしくないの…?』


愛してるとか普通言えなくない?好きだよも結構ハードル高くない?
やはり見た目の通り外人?イタリアとかフランスとか、愛の表現が多彩そうなヨーロッパ系の血が流れてるの?
口許を手で隠しつつ問い掛けると、きょとんとした後、五条はへにゃっと笑った


「良い感情を相手に贈るのに戸惑う意味なんかあんの?言ったもん勝ちでショ。
俺がオマエに好意を持っている。それを伝えられてるから、オマエは俺を男として意識してる。伝えられる言葉に赤くなる。
…ほら、言わねぇメリットとかある?」


『……内に秘めたなんちゃら的な』


「そういうのはフィクションだから良いんだろ。現実は頭に吹き出し付いてる訳じゃねぇし、幸せなシナリオなんてねぇ。確定で幸せになるルートもない。
そんな状況で好意をずっと心に秘めて接しろって?無理無理、こちとら只でさえヤクザっつーハンデ背負ってんだぞ。
指咥えて眺めてる間に馬の骨にかっ拐われんのが関の山だよ。
押して押して押し倒すぐらいじゃなきゃ巻き返せねぇし、秘めた所でヤクザなんで?悪巧みしてる様にしか見えねぇっつーの」


『………………』


なんも言い返せない。ヤクザの癖にめちゃくちゃ正論言うじゃん…
口を閉ざした私ににししと笑い、五条がシュークリームの袋を開けた。


「だから、好きなだけ逃げてよ。オマエが落ちるまでずぅーっと口説くから」


『お、落ちなかったら…?』


プリンの蓋を開けつつ聞くと、五条はゆるりと目を細めた。
噎せ返る様な色気を漂わせ、低い声が甘く踊る


「落とすよ。知ってる?惚れた方が負けって。負けた奴はね、恥なんて知らないよ。形振り構ったりしない。
欲しいから。その心も身体も全部欲しいから、恥も外聞もぶん投げてオマエの愛を乞うよ。
…だから、俺はオマエを落とすまで、諦めない」


『………』


…顔が、きっと真っ赤になっている。
プリンの蓋を剥がす動きのままで固まった私を見て、五条は薄い唇に見せ付ける様に赤い舌を這わせた。


「────へぇ?言葉責め、随分クリティカルしちゃってない?
もっと防御上げてけよ。バフ積まないと直ぐ落とされちゃうよ?」


『う、ぇ………色気を、もう少し…引っ込めてくれませんか……』


「ふふ、エロいの弱いんだ?かわいいね。恥ずかしい?…ああ、エロい目で見られるのが恥ずかしいんだ?
俺に女として狙われてるって再認識させられちゃって照れて恥ずかしくなっちゃうのね、ふーん?」


『読むな!!此方見んな!!!』


「なにこれかわいいwwwおこったwwwwwwwwwwwwwwww」


…五条がゲラになった事でしっとりとした雰囲気が霧散して、ほっと胸を撫で下ろした。
いそいそとプリンをスプーンで掬い上げ、口に招き入れる。
上品な甘さとほろ苦いカラメルソースに思わず頬が弛んだ瞬間、ちゅ、と。


『は、?』


「んー、美味い!あ、ココ、付いてたよ?」


口の端を真っ赤な舌の先で舐め上げられ、ぽんっ!と音がしそうな勢いで赤面したのを感じる。
あつい。もういやだ。心臓が、破裂しそう。
気が動転しているのか涙まで滲んできて、慌てて顔を下に向けた。
しかしそれで見逃してくれる様な男ではない。
顎を大きな手で掬い上げると、五条は蒼い瞳をゆうるりと眇め、笑った


「……あんまりかわいい顔するなよ。我慢出来なくなっちゃう。
今すぐ白旗振っても良いけど?」


『っ…まって。一分!一分下さい!!私は落ちてない!!!』


「パニックからのリカバリー早いね。まぁ俺としては何時でも良いよ?
俺は好きなだけオマエを可愛がるし。耐えられなくなったら降参って宣言してね」


これはあれだ。
この男のあ………アピールにルールを設けるべきだ。
そうじゃなきゃ攻撃力が強くて無理。耐えられない無理。
微笑む狼から目を逸らし、私はプリンを食べていく。
甘い筈のプリンの味は、ちっとも判らなかった。











もう少し手加減して!無理。













桜花刹那→一般人。
「クサギ」と同じ世界線で、「クサギ」とは違う状況でヤクザと出会った人。
恋愛経験はゼロ。清く生きてきた。手も繋いだ事がない。
高校生の時に告白してきた同級生が自分のストーカーだった。
それ以来「好き」という言葉がちょこっとこわい。めちゃくちゃストーカーに好きと言われたので。
相手はヤクザなので恋しちゃいけない。
そう思っているのだが逃げられるビジョンが浮かばないし、ちょっとでも遊びじゃない?なんて疑念を滲ませようものなら相手がガンガンに攻めこんで解らせてくるので逃げるのは無理。
生きる上での作戦名は「いのちだいじに」


五条悟→ヤクザ(若頭)
「クサギ」とは違う状況で声に惚れ、顔を見て完全に落ちた人。
此方は出会い方からして違うので、ヤクザみが強い。すーぐ殴る。
恋愛経験はゼロ。だって寄ってくる女は俺をブランドバッグか何かと勘違いしてるので。なので、触ったら蹴ります(真顔)
運命に出会った時点で惚れた自分が敗けだと一瞬で悟ったので、引き分けに持ち込む為にガンガンに攻めている。
職業柄()感情を読み取るのは得意。惚れた女ならより読み取る。
何時でも良いよ?落ちるまで(落ちても)ガンガンに攻め続けるだけだし。ただし落ちたらオマエは俺の嫁(真顔)
因みにしれっとプリンを掠め取ったのはこいつもファーストキスだった。
作戦名は「ガンガンいこうぜ」


夏油傑→ヤクザ(右腕)
カウンターで飲む二人組の声を聞いた瞬間に動かなくなった五条を見て「御乱心か?」と思った人。


先輩→一般人
後輩がヤクザに狙われていてどうにかしたいが無理。


バラ(青)の花言葉「一目惚れ」

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