※「歴史の授業?いいえ、友人のお家事情です」からの一ヶ月の中の話
スイパラに来るのは大体がカップルや、女性同士。
だがその日のお客様は少々変わっていた。
「お、これ美味い。刹那」
『あー……美味しい。次これ取ってこよ』
「硝子、それ一口くれない?」
「おらよ」
第二土曜限定で行われる時間無制限の食べ放題。今月はピーチフェアを開催しているので、特に女性が多かった。
しかし若い女性達は美しく飾られたスイーツではなく、窓際のテーブルを囲む四人組に熱い視線を送っていた。
黒いキャップから覗く白銀の髪に、ラウンドの真っ黒なサングラス。
首もとの広いビッグシルエットの黒い七分丈のシャツに、青紫のレッグベルトが印象的なデニムの男の子。
上は白で、裾から腹部までの鮮やかな水色のグラデーションが目を引くデザインのワンピースの黒髪の女の子。
斜めに黒と白の二色で切り替えの入った半袖シャツに、裾の緩いベージュのパンツをロールアップした黒髪の男の子。
淡いグレーのサマーカーディガンを羽織った、白いシャツとベージュの裾がゆったりしたパンツ姿の泣き黒子の女の子。
全員が全員美形である。
なんだあの美の塊。サングラスの子は目は此方からじゃ見えないけど、明らかに造形が美。
ダブルデート?泣き黒子の子と黒髪の男の子は色味とか似てるよね?
なんかサングラスの子のレッグベルト、あの黒髪の女の子の目の色にそっくりだよね?デート?色揃えた感じ?かわいいね?
「ショートケーキとシュークリームとタルト取ってくる」
「いってらー」
「行くぞ刹那」
『まだ食べてるんでパス』
「は?まだ?口小さくね?」
「悟が早いんだよ。ほら、一緒に行ってあげるから刹那を引っ張らない」
『いってらー。シュークリーム食べたいですー』
「私コーヒーゼリーな」
「判った、待っててね」
『ありがとー』
「ありがとー」
「オイしれっとパシられてんぞ」
「それぐらい良いだろう。文句言わない」
男子二人が席を立った。………いやでかいな?え?あの椅子にこんなでかいのが収まってたの?
え?脚?脚だな?クソ長いな身体の七割脚????座高低いな?????
超絶イケメン二人がスイーツコーナーに向かうと、その場に居た女性客が色めき立った。
黒髪の前髪がぴょろんと出た彼はゆるりと笑みを浮かべているけれど、サングラスの彼はひたすらにスイーツの方に顔を固定している。
彼が前髪の子の肩を乱暴に叩いて指したのは、桃のタルトだ。
桃のボートにちょこんとお座りしたチョコレートのクマが可愛いタルトを前にして、サングラスの子が感激した声を出した
「おい傑、刹那だ。刹那が桃のタルトに乗ってる…!!!」
「おや、本当だ。刹那は人気者だね」
せつな?せつなってさっきあの黒髪の女の子の事そう呼んでたよね?
なに?あの子はクマなの?凶暴ってこと?
お皿を片付けテーブルのセッティングをしつつ、二人の会話に耳を傾ける。
「傑、コレ全部持ってこ」
「コラ。取り敢えず人数分にしな」
「えっ、でも刹那が見てる……俺に食べてって見てる……」
「気の所為だよ。悟、刹那のシュークリームはどれが良いと思う?」
「んえ?あ、コレ美味そう。桃のクリームとカスタードと二種類ある」
「じゃあ刹那はそれだね。硝子のコーヒーゼリーを探そうか」
「おう」
いや子供か????
すっごい鮮やかにタルトから引き剥がしたね???すぐるくんはママなの???
さとるくんと呼ばれたサングラスの子を引き連れてすぐるくんはゼリーコーナーに向かった。
「あ、クリーム追加オッケーだって。かけまくる?」
「まくらないよ。あとで焼き入れられたいんなら止めないけど」
「ちぇっ」
うん、さとるくんは子供。
あの見た目で悪ガキの凝縮体みたいな中身って、ギャップがひどいな?
穏やかに微笑むすぐるくんは、スイーツが苦手なお客様も楽しめる様に用意してあった軽食コーナーからサンドイッチを取って、席に戻っていった。
「お持ちどー。持ってきたぜ」
『ありがと。美味しそう……ん?タルトも?』
「タルトに刹那が乗ってたから!そりゃ食べるでしょ、タルト!」
「大変だったんだよ?桃のタルト全部食べるなんて言い出して」
「コイツ何時かテディベア詐欺に引っ掛かりそうだな」
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「声がでけぇよ夏油」
ツッコミどころ多いな?テディベア詐欺ってなに???斬新すぎない?選ばれた精鋭しか引っ掛からなそうな詐欺だね???
『いただきます。…んー!美味しい!』
「刹那、一口」
『シュークリーム集るなよ……分けにくいじゃん……』
「あ」
『口に入れろと』
「あ」
『はぁ』
「んー、んま!」
『良かったね…次は寄り道せずにシュークリームも取ってくるんだよ…』
「全部取られてんのウケる」
「可哀想に。サンドイッチ食べる?」
『いや、悪いよ。それ傑のだし』
「じゃあ半分こしないか?そしたら私も同じくらいで食べ終わるから。そしたら一緒に取りに行こう」
『ふふ、じゃあ貰おっかな。ありがとう傑』
「どういたしまして」
「お前もこれぐらい気を遣えよ」
「?刹那のが美味そうだったんだもん。刹那、口開けろ」
『あ』
「硝子、このハムサンド硝子の好きそうな味だよ」
「サンキュ。五条、口許拭きな。粉砂糖ついてんぞ」
「俺今忙しいの。硝子拭いて」
「チッ」
仲が良い。
あーんを外で此処まで照れもなくやる関係もなかなかないぞ?
見たところさとるくんが末っ子、せつなちゃんが二番目で、すぐるくんとしょうこちゃんが一番上って感じだろうか。
さとるくんは絶対一人っ子か末っ子。だって甘やかしてオーラすごい。
せつなちゃんはさとるくんの面倒を見つつすぐるくんに甘やかされているから、真ん中っぽく見える。いや、甘えるの苦手な一人っ子もあるな。
すぐるくんとしょうこちゃんは絶対長男と長女。面倒見の良さがすごい。
「刹那ー、サングラスじゃまー。取って」
『絶対に食べる手は止めないの笑う』
「最近ね、前より更に燃費悪ぃの。直ぐガス欠になる」
「バッテリー換えろ」
「仕方ねぇじゃん?眼精疲労治す様になって気付いたんだから」
『サングラスずっと掛けとけば?』
「いーやーだー!やっと頭痛治ったんだぞ!?取って!!」
「掛けとけ」
「やだよ!オマエらの顔見えねぇじゃん!」
「というか硝子は大丈夫なのか?悟がこんなに糖分を欲するって事は、硝子も似た様なものじゃないの?」
「違ぇよ。私は感覚派、コイツはめちゃくちゃ演算してロスなく使う。頭回すからガス欠すんの」
「俺頭脳派だからさー?感覚論って訳ワカンネ」
「表出ろよ五条。黒ひげ危機一髪やってやる」
「待って?やめて?俺今度はあんなにワルイコトしてない」
「wwwwwwwwwwwwwwwww」
「傑?笑ってないで止めろ???」
『傑、食べ終わったよ。行こ』
「刹那?頼むから止めろ???」
「『じゃっ!』」
「裏切り者!!!!!!!」
結局サングラスははずして貰えないまますぐるくんとせつなちゃんはお代わりに行ってしまった。
楽しそうにケーキを見ている二人の背を眺めながら、さとるくんがぽつりと溢した
「……刹那、少しは元気になるかな」
「アンタには楽しくなさそうに見える?」
「……楽しそうに見えっけど。アイツ気ぃ遣うじゃん。だから、楽しいフリしてねぇかなって」
「あの子は何時も私らには素直だろ。だから、心配すんなよ」
しょうこちゃんが黒いキャップの上からさとるくんの頭を撫でた。
サングラスをそっと外してやって、彼女は笑う。
……いや待って?さとるくんおめめヤバいな?綺麗過ぎない?
何あの目宝石?睫毛真っ白だね?なんかもうきらっきらだねすごいな?
いっそ美の暴力みたいな存在じゃん?君実は神様かなにかなの????
さとるくんの御尊顔を見てしまったらしい周りの女性客がざわめいた。
それに煩わしそうに眉を寄せ、さとるくんがタルトのクマをフォークに乗せた。
「この一ヶ月忙しいってのは私も刹那も覚悟してるさ。だから、アンタは何時もみたいに好き勝手すれば良いんだよ。
私らは自由に生きてる五条を見るのが好きなんだから」
「パパ……」
「外で言うなよポンコツ」
クスクス笑ったしょうこちゃんがさとるくんのキャップのつばを弾いた。
帽子の位置を直しつつ、さとるくんも笑う。
楽しそうに笑っている二人の許に、トレーを持った二人が合流する。
「やぁ、楽しそうだね。なんの話?」
「五条はポンコツだなって」
『珍しい、ポンコツって言われて笑ってたの?』
「刹那、タルトちょーだい」
『何の躊躇もなく奪うじゃん』
「だから言っただろう?二つ取ってきて正解だったね」
『ほんとだね』
「コーヒーお代わり行くかな」
「俺メロンソーダ」
「三人目は一緒に取りに行く係な」
『じゃあ私も行くよ。傑、何飲む?』
「アイスコーヒーを頼んでいい?」
『いいよー』
座っては動いての四人組は、結局時間いっぱいスイーツを楽しんで帰っていった。
……多分一番スイーツを食べていたのはさとるくん。最近ちらほら出ているスイーツ男子ってやつなのだろうか。
ちょっとした休息を
刹那→最近許嫁だったり殺されかけたりでお疲れな人。大好きな人と甘いものに囲まれて幸せだった。
五条→お疲れなテディちゃんが喜びそうなものを考え、スイーツバイキングを思い付いた人。クマの乗った桃のタルトを少なくとも十個は食べた。
硝子→五条が刹那をそわそわした様子で見ていると思ったら、楽しんでいるか心配しているという内容だったのでほっこりした人。
コーヒーゼリーがお気に入り。
夏油→桃のタルトを食い尽くした五条を爆笑した人。前半は何処と無くそわそわしていた五条が後半は純粋に楽しそうだったので、硝子がフォローしたんだろうなと察した。ハムサンドがお気に入り。
とあるスイパラ店員の話
戻/
top