※呪術長篇「どうも、モブです。」で出てきた話
※ちょっといかがわしい





「ったく、一ヶ所に集まっとけよ雑魚!!」


『いや呪霊にも自由に生きる権利はあるから』


「要らねぇだろ?ぐちゃっとやってポイなんだから。一列に並んどけ」


「うわ、すご……」


準一級、一級の集まる所謂重霊地の定期祓除が今回の任務だった。
とはいえ五条悟が居る時点で秒殺は確定。悟は呪霊があちこちに点在しているのに怒りながら、無限で手当たり次第にぐちゃっとしていく。
私も悟とは被らない様に呪霊を水で裂いて、語部さんも自身にバフを掛けて呪霊を斬り伏せていた。


「っし、終わり。刹那、今日の宿どこ?」


『バスで向かった先にホテルあるって』


「え、ホテル?」


『此処。ん、ビジネスホテルですね』


受け取った資料に記載されていたホテルの名を検索すると、悟がげぇっと顔を歪めた。


「勘弁しろよ。普通のビジネスホテルとかベッド小せぇじゃん。脚はみ出すんだけど」


『切ってしまえ』


「刹那ちゃん???????」


「刹那ちゃん、バスが二十分後に来るみたいですよ」


『調べてくれてありがとう。此処からバス停に向かう頃には丁度良いかな』


三人で任務地だった霊園を出て、バス停に向かう。
時間は午後十時。ホテルに着いたら軽く食事を取って、それから眠る事になるだろうか。


「ホテル行く前にコンビニ行こ。ハラ減った」


『そうだね。語部さんもそれで良い?』


「はい」


泊まりの任務が気心の知れた友人とのもので良かったと思う。
こういう会話もそんなに仲が良くないと地味に緊張するのだ。
刀を鞘に納めた語部さんが竹刀袋に入れて、背負う。
その一連の動きを眺めていると、悟がつんと指先で頭をついてきた


「なに見てんの?」


『やっぱ刀って格好良いなって』


「えっっっっっ天使が此方を見ている…????」


『天使wwwwwwwwwww』


「テディの背中に羽生やすのかよwwww」


何で真顔で面白い事を言うのか。
ケラケラと笑いつつバス停に向かった














ビジネスホテルの一室。
髪を拭きながらスリッパを履く。
部屋に戻ると、語部さんはテレビを観ながらカップ麺を食べていた。


『上がりましたー』


「はーい」


頷いて此方を見て


「ヴァッッッッッッッッッッッッッッ」


語部さんが妙な声で鳴いた。
え?今の声なに?
ごめんね?無理。笑っちゃう。


『なにいまのwwwwwwwwwwwwww』


「え???お風呂上がりの推しとか何のボーナススチル…?水気を帯びた髪がつやつやで綺麗ですね…?お風呂上がりってとてもえっち……お布施はいずこに…????」


『お布施wwwwwwwwwwwwwww』


まって。お布施しないで。スチルってなに?取り敢えずお腹が痛い。
ぷるぷるしつつ冷蔵庫から水を取る。それをコップに注いで飲んでいると、ずぞぞ、と此方をガン見しながら語部さんが麺を啜る。
…待って?瞬きして?ドライアイになるよ?


『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』


「え、刹那ちゃんめっちゃ笑うやん…かわええ…なんでそんなかわいいの…?さしすせは全員尊くて可愛いね…?
えっ、とても綺麗ですね?女神?なんで風呂上がりってこんなに人を色っぽくするの?刹那ちゃんは湖の女神だった…?」


『なんで女神wwwwwwwwwwwww』


「笑っている…女神が笑っている…今日は吉日。明日もきっと世界が平和です。女神様ありがたや…」


『拝まないでwwwwww瞬きしてwwwww』


もうむり。おなかいたい。












髪を櫛で梳かし、唇に最近硝子から貰った唇美容液なるものを塗ってみる。
付け心地は良い。アロマローズの香りも良い感じ。次から私も買おう。
寝仕度も整えたし、そろそろ寝ようか。
そう考えた時、扉がノックされた。
不審者か疑う間も無く、扉の向こうから声がする


「刹那ー、開けてー」


『いや何しに来たのアイツ』


「急用ですかね?」


隣の部屋でもう寝たかと思っていたんだが。
念の為鉄扇を握って戸の前に立つ。
ドアスコープを覗き込むと蒼一色で、めちゃくちゃびっくりした。


『悟!!ドアスコープ覗くな!!』


「wwwwwwwwwwww」


いらっとしつつロックを外す。
部屋に入ってきた悟は私の鉄扇に目を留めると、にんまりと笑った。


「ウン、良い子。ホテルに泊まる時はちゃんと警戒しねぇとな」


『じゃあ今悟叩いてみる?』


「本物だから無限バリアするね☆」


『チッ』


「え?なんで?????」


鉄扇をホルスターに戻し、ベッドに腰掛ける。
枕元のコンセントにケータイの充電器を繋いでいると、ぎしりとベッドが軋んだ。


『何故座る?』


「え?寝るでしょ?」


『いや寝るけど。寝るんだけど?』


「ウン。俺も寝るんだけど」


『え?』


「え?」


「うわ嘘だろ平然と寝る気じゃん……」


語部さんのツッコミが何よりも的確だった。目を瞬かせると、悟もぱちぱちと白い睫毛を上下させる。
私が瞬くと悟も瞬いた。
二回すると悟も二回。
…いやまって?何故マネをする???


『帰りな?出口は彼方です』


「刹那唇に何か塗った?つやつやしてる」


『硝子に貰った唇美容液ってヤツ。帰ろう?』


「え、俺知らねぇヤツじゃん。塗って」


こいつ、帰れって言葉だけ聞いてないフリしてるな。今日は流石に語部さんも同室だから来ないと踏んだのに、これだ。
悟はもう少し異性との付き合い方を考えるべき。
美容液を入れているポーチはサイドテーブルの上だ。
テーブルに手を伸ばそうとして、大きな手が此方に伸ばされているのが見えた。
ぐっと後頭部を捕らえ、そのまま悟がのし掛かってくる


『は?』


……え?押し倒された?
なんで?
きょとんとしているであろう私に乗り上げた悟が、頬に手を添えてくる。
そのまま、恐ろしく整った顔が迫ってきた


『んっ』


薄い唇が重なって、それから少しだけ離れると、もう一度押し付けられた。
やんわりと食む様に包み込まれ、また離れる。後頭部を捕らえた手が地肌を撫でて、ぞわぞわした変な感覚に襲われた。


「ん……刹那、鼻で息して」


『さとるっ、も、やめ…んんっ』


吐息を含んだ声で囁かれ、耳の奥がざわざわした。制止の声を掛けるが無視されて、また唇が吸われる。


……一番恥ずかしいのは、悟が目を閉じてくれない事だ。


息が上手く吸えずみっともない声を漏らす姿を、蒼がじいっと見つめている。
何も見落とさないとでも言う様に、悉に観察されている。
顔を反らそうにも大きな手でしっかりと固定されていて、背中を殴るがびくともしない。何処までも静かな瞳に、こんな姿を映されるのが恥ずかしい。


「ン……は、刹那、息して」


『ひ……ぅ…』


「ほら、まだ口は忙しいんだから。ね?」


甘ったるい声で囁いて、ちゅぷ、と濡れた音が触れ合う唇から聞こえる。
何度も何度も重なって、悟の吐息が肌に落ちる。頬を掠める息が、熱い。
悟の髪が肌を撫でる。初めてこんなに長いキスをされて、どうすれば良いのか判らない。ただただ熱だけが上がっていく。くるしい。あつい。はずかしい。
少しずつふわふわしてきた意識の中、下唇を柔く食んで、漸く唇が離れた。


『………………』


ぜぇぜぇと息を乱す私をじいっと見つめて、それから悟は唇を上下でくっ付けた。
何かに満足したのか、にっと笑って奴は言う


「顔真っ赤だね、かわいい♡」


『………ころすぞ』


「じゃあ死にたくないから寝るね、おやすみ☆」


……にっこり笑った元凶にさっとベッドに潜り込まれ、ついでとばかりに布団を掛けられてしっかり抱き込まれた私は。
……私は、何処にこの果てしないモヤッと感をぶつければ良いのか。


『今なら反転使えそう』


「やっちゃう?良いよ、ホテル壊れるけど」


『…………』


「んふふ、かわいい」


ふにゃっと笑うと悟は目を閉じてしまった。…嘘だろ、マジで寝るの…?
え、マジで…?こんだけ人の事好き勝手しておいて…???
精一杯モヤモヤを詰め込んで、広い背中をぶん殴った











唐突な襲撃











刹那→キス魔に襲われた。

五条→ご機嫌。

語部→推しを見守る壁になりたいという目標を達成した。


本望です(迫真)


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