「冬はもふもふ。」の後の話
十二月二十四日。
世間で言うクリスマスイブ。
そこからお正月に掛けてやれ繁忙期やれ恋人が欲しいと人は騒ぎ、動き、疲れ果てていく。師走とは良く言ったもので、見事に働き通し、駆け回る日々。
そうして疲弊した人々の負の感情が、私達の休みを潰すのだ
「クーリスマスがーこーとーしーもーやってくる♪」
「あのCM見るとケンタッキー食べたくなるよな」
『帰り買って帰る?』
「たーのしーかったーでーきごっとっもーけーしさーるよーうーにっ♪」
「まってwwwwww楽しかったのに消すのwwwwwwwww」
悟の歌に傑が爆笑した。
ん?まって?楽しかった出来事も消し去るの?なんで?楽しかったのに?
急に笑われた悟はきょとんとしている
「ん?俺間違ってた?」
『楽しかったのに消すんだっけ?』
「私、楽しかった思い出を引き裂く様にだと思ってた」
「硝子wwwwwwwwwwwwww」
「傑がまたゲラじゃん。おい腹筋に力込めろよクソ目立ってんだけど」
「ぶっちゃけお前ら二人が居るだけで目立ってんだけどな」
『ほんとの歌詞わかる人ー』
「わたしwwwwwwwwわかるよwwwwww」
「オマエは笑うの止めてから手ぇ上げろよゲラ」
渋谷のスクランブル交差点で傑がゲラになったものだから、まぁ目立つ。
ただでさえ目立つのに。私と硝子は心なし距離を取ろうとして、がっしりと悟に腕を掴まれた。
周囲の女性からの視線が痛い。穴空きそう。
ちらりと見上げると悟がふにゃっと笑った。
「なぁに?あ、喉渇いてない?そこにカフェあるよ」
『違うんだよなぁ。目立たない様に生きていきたいだけなんだよなぁ』
「?オマエも硝子も二人だけにしたら目立つじゃん。猿に集られるよ。良いの?」
『硝子がちょっと綺麗すぎるのどうにかなんないかなって最近思ってる。二人で買い物とか行くと視線が鬱陶しいんだよね』
「あんたも十分見られてるって気付きな。綺麗なんだよあんたも。
私この間刹那の尻撫でようとした男の足ヒールで踏んだぞ」
「あ゙??????」
『え、ありがとう。私もこの間硝子にわざとぶつかろうとしてる男の靴の裏凍らせて転ばせたよ』
「は??????」
「ありがと。今度何処行こっか?」
「「ちょっと待て」」
折角次は何処が良いかなと二人で話していたというのに、男二人が割り込んできて私達は眉を寄せた。
「なんだよ、折角次のデートの予定立ててんのに」
「は??????オマエら今の会話聞いてハイそーですかって行かせて貰えると思ってんの?無理だから」
『え?なんで?硝子は私が護るよ?』
「良く考えてごらん?女の子二人で買い物に出掛けて痴漢に遭いかけているだろう?
此処は私達が居た方が男避けになると思うんだけどどうかな?」
「たまには女同士で遊ばせろよ。なに?お前ら私らからのクリスマスプレゼント、もうネタバレされたいの?
へぇそっかー、私らが選んだのはねー」
「アッ待って!俺楽しみにしとく!もう言わない!!サプライズを此処でバラすのはナシだろ!!!」
「悟!裏切る気か!」
「だって当日に何くれんのかな?ってワクワクしながら開けんのが醍醐味だろ!?
それを今バラされるんだったら俺大人しくする!!!」
「裏切り者め!」
やいのやいのと喧嘩を始めた二人を他所に、硝子と信号を待つ。
今日の任務は街中のクラブで発生した一級の祓除。
クリスマスに愛憎劇の片付けとか縁起でもない事を命じられた訳だが、そもそも何故学生にクラブなんて行かせるのか。
「刹那!傑が頑固!!」
「硝子!悟が屁理屈なんだけど!!!」
「『何時もの事じゃん』」
クラブに出た呪霊は愛憎劇の産物の所為か、なんか妙にピンクの肉がデロデロしている。
『気持ち悪ぅ…』
「オッエ゙ー、ンだよコレ肉の爛れたイソギンチャクじゃん。真ん中に口あるし」
「鮑だろ。愛憎劇の産物な訳だし」
「硝子、もう少しオブラートに言って。ウチの子は純粋なんだよ」
『鮑かぁ…暫く食べられなくなりそう』
「ほら、気付いてない」
『?』
何の事だと二人を見るが、にっこりと笑った傑に頭を撫でられただけだった。
クラブのVIP席に鎮座するデロデロ鮑を前に鉄扇を構えた私の肩が後ろから引かれる
「刹那、硝子、此方来い。コレ多分女に反応するから。傑に任そう」
「おや、私に丸投げかい?特級呪術師ともあろうものが」
「ソイツの腕、女が触れたら不味いヤツなんだよ。男なら媚薬で済むっぽいし。ガンバ!」
「五条、女が触れたらどうなんの?」
「溶けるよ」
『えっ』
デロデロに触ったら此方をデロデロにしてくるって事?
硝子と共に静かに悟の袖を掴んだ。悟がにこにこになった。
そんな私達を見て傑が笑う
「それなら仕方無いか。悟、二人は頼んだよ」
「ん」
五分後。
びにょびにょでデロデロの呪霊は無事傑が取り込んだ。
呪霊玉を包むオブラートのケースを見て、残量が少ない事に気付いた悟が言う
「あ、傑。新しいケース置いとけよ。落書きするから」
「ふふ、せめてちんことかやめてくれよ」
「私と刹那で殆ど埋め尽くしてから五条に回すわ」
「え?なんで?イジメ?」
『人の物に猥褻物を描くなって話ですね』
それ傑が外で使うんだぞ?判ってる?傑が猥褻物書かれたケース使ってるって認識になるんだぞ?
お前傑の評価落としたいの?
「よーし終わった!ケンタッキー行こ!」
『え、明日クリスマスパーティーで食べるんじゃないの?』
「連日ケンタにすれば良くね?」
「馬鹿か、飽きるわ」
「間を取って、今日の所は蕎麦にしないか」
『それ傑が食べたいだけじゃんwwwwww』
十二月二十五日。
午前一時、わたしはかなしい。
『ねむい……ねむい…』
「ほら気張れよ。オマエがサプライズの要だぞ」
『ねむい……さむい………』
「うんうん今寝たら凍死しちゃうから起きようね。…っかしいな、ちゃんとブラックコーヒー飲ませたのに眠ぃの?」
悟に抱えられつつ、私は家の屋根の上に居た。
原因はこのクズ。
こいつ、突然私を起こし外に連れ出したのだ。せめて理由を言え。それ次第で優しく殴るから。
もふもふパーカーに顔を埋め、私をしっかり抱えている馬鹿猫にしがみつく。
ぐりぐりと額を押し付けると宥める様に背中を叩かれた
「刹那、雪降らしてくれない?」
『なんで』
「だってクリスマスだよ?ホワイトクリスマスって定番だろ?」
『定番…?』
「それに急に積もってたら傑も硝子もビックリするだろ?チビ達も雪降らないの?って聞いてきたし、きっと積もってたら喜ぶよ」
『………………』
…皆が喜ぶなら、やる価値はあるだろう。
くっつきたいと嘆く目蓋を持ち上げて、鉄扇を開く。
空に向け、水の塊を飛ばして印を組んだ
『………縛裟・雪花』
小さな雪雲を形成し、天元様の結界に触れない高さから雪をばら蒔く。
何個も自動ばら蒔き装置を空に作っていると、ぎゅむっと悟に抱き込まれた
『寒くなった?』
「刹那が冷えると思って」
『部屋で術式使おうよ。そしたら暖かいよ?』
「じゃあ雪が積もるまでマリカする?」
『あ、バイオハザードする?それかサイレントヒルしよ』
「なんでクリスマスにホラゲー?」
『灰原が面白いですよ!って貸してくれた』
「猿の想像力の貧弱さを笑ってんの?アイツ善人面して実はヤバイな?」
『その考え方するお前がヤバい奴』
「は??????」
『ねむい…ねむいよ……』
「でも刹那、今寝ちゃったら夜眠れなくね?」
『それでも……ねむい…』
「かわいいね。んー…十五分ぐらいなら良いのか…?」
俺にぐりぐりと額を押し付けるテディちゃんをしっかり抱き締めて、よしよしする。
外では子供の楽しそうな声が響いていた。
時刻は午前九時。硝子は緊急の呼び出しで家に居ない。
「珍しいね、刹那がおねむなんて。夜更かしして雪積もらせたの?」
『三時までサイレントヒルしながら雪降らせてた……』
「三時まで?頑張ったね。十二時には眠る子が三時間も……」
「お陰で今はねむねむテディなの。可愛いだろ?」
「悟、ゆらゆらしたら寝るよ」
「あ」
つい癖で身体を揺らしていた。
動きを止めて覗き込むが、クマちゃんフードをすっぽり被った刹那の顔は見えない。
でも動かなくなったし、多分寝た。
「すぐるー、寝たっぽい」
「やっぱり」
「マジで直ぐ寝るなコイツ」
抱えてゆらゆらしたら秒で寝る。
首筋で深い呼吸に変わった刹那の頭をそっと撫でて、ソファーに寄り掛かった。
「なぁ、傑」
「ん?」
「オマエ、年明けたら特級になるよ」
俺の言葉に細い目を瞬かせ、傑がソファーに座り直した
「…つまり、特級任命審議に掛けられるって事?」
「ん。落ちるなんて有り得ねぇから特級確定。オメデトウ、これでオマエも筆頭馬車馬」
「すっごく嫌だな。断れない?」
「無理だろ。もう掛けられてんだし」
コーヒーを引き寄せ、くるくるとカップを動かして水面を揺らす。
波打つ黒を眺めていれば、傑が落ち着いた声で言葉を紡いだ
「私が特級になれば、悟の負担は減るか?」
「任務面ではすんげぇ楽になる。権力で言うなら……俺がオマエを“夏油”っていう術師の家として興せば良い」
「出来るのか?」
「んー…先ずは来年の夏頃には俺が五条の当主になる。もう特級なんだ、任務もそれなりにこなしゃあ家の奴は俺に降るしかなくなる。親父を降ろして、俺が立つ。
そうして俺の側近に刹那と傑を置けば、まぁ術師の家として興せるわな」
「でも私の家は私以外は非術師だよ。私がそうなれば、両親が危ないんじゃないか?」
「つーか、家より派閥に近いか?
例えば硝子と語部、黒川、七海に灰原を“夏油”に連なる術師って事にしちまえば良い。昔の家臣みてぇにな。
そうすれば五条と夏油の二重防壁になる訳だ。特級二人の派閥をつつく奴はそうそう居ねぇ。
ただ、桜花は家が小せぇし、刹那は一級だ。一級じゃまぁ現実的なランクって訳で、他の分家にマウントされる。
だから刹那も二重防壁の中に仕舞う。そうすりゃ雪光と時雨もより安全。皆がベリーハッピーってな」
「つまり刹那が私の娘になるんだね????」
「俺の話聞いてた????」
なんでそうなる?刹那はあくまでも俺らで囲うって話じゃなかった?何時オマエの名字にして良いって言った???
ふふっと笑った傑がコーヒーを口にして、冗談だよと言う。
いやオマエ判りにくい。特に娘関連の冗談判りにくい。
「伏黒さん一家はどうなるんだ?」
「今は高専自体が俺の縄張りになってるから、そのまま俺の庇護下に居て貰う。夜蛾センセもそう。
そんで、傑が夏油の当主になれば防壁は二重になる」
「つまり、私が“夏油家”を興せばより色んなものが護りやすくなるのか」
「そう。権力で二重バフ掛けてるって思えば良い。…ああ、オマエの両親が心配なら警護がしっかりしたトコを用意するよ。
それか此処ん家に張ってる結界を刹那にコピーさせて張れば良い。確かコレって呪力登録者以外は弾く機能あんだろ」
「……ああ、刹那が前に盗んだ図書室の結界か」
「飛梅で取り込んで放出すれば簡単だろ?もし非術師の暗殺者が怖いなら、それこそ呪骸を配置すれば問題ない。
各自三体ずつ。ローテで回せば呪力の温存も出来るし、暗殺者が来ればクソ猫が俺らの方に知らせる。
万が一怪我してもしょうこっちが回復させるし、俺らの誰かが駆け付ける間ぐらい呪骸が稼げる。どう?完璧じゃない?」
つらつらと計画を諳じると、傑が何でかドン引いた顔で此方を見ていた。殴るぞ
「…悟、君は何処まで読めてるんだ…?」
「こんなモン将棋と一緒だろ。此方のルートに進んだらこれをこう備えるべき。そういうのをぜーんぶ考えて、可能性も頭に入れとくってだけ。言うだろ?備えあれば憂いなしって。
因みにこの計画は刹那を当主にするって決めた時には大体浮かんでた」
「なんでこう……頭が良いのにポンコツなのか………」
「あ゙????喧嘩売ってる??????」
「怖い声出すと刹那が起きるよ」
傑の言葉に素早く口を閉じ、首筋に顔を埋める黒いクマちゃんを見た。
……まったく動かない。しかばねのようだ。
「オイ爆睡してんだけど。これ絶対起きねぇよ」
「悟っていうゆりかごがそんなに良いのかな」
「この俺の腕の中だぞ?最高に決まってんじゃん」
「私の方が満足させる自信があるのに」
「テディちゃんは俺のしなやかな腕に抱かれるのが好きなんですー。筋肉枕は嫌だとよ」
「悟みたいななよなよよりずっと気持ちいいと思うよ?私は筋肉を纏ってるからね」
「あ゙??????」
「刹那が起きるよ」
「」
「「「『メリークリスマス!!!』」」」
ぱぁん!!とクラッカーが弾け、紙吹雪が降り注ぐ。
午後十時。全員が揃った所でパーティーが始まった。
「クーリスマスがーこーとーしーもーやってくる♪」
「もうやって来てるけどな」
『はい傑、チキンどれが良い?』
「ありがとう刹那。刹那もピザ選びなよ。早い者勝ちだよ?」
「たーのしーかったーでーきごっとっもーけーしさーるよーうーにっ♪」
悟が上機嫌にそう歌った瞬間、傑が消えた。
崩れ落ちたゲラを尻目に、私達はお皿にチキンとピザを取っていく。
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「まーたゲラだよ。傑、オマエの傑って名前はすぐゲラるの略なの?」
『すぐゲラるwwwwwwwwwwwww』
「すげぇ名前wwwwwwwwww」
「そんななまえいやだwwwwwwww」
「だってオマエすぐゲラじゃん。だから夜蛾センセが生きてるだけで楽しそうとか言ってくんだよ」
シーフードを取った悟が先端をぱくりと食べた。
綺麗な蒼をキラキラさせて美味を言外にアピールする悟に笑いつつ、チキンを割く。
『結局ほんとの歌詞ってどうなの?』
「楽しかった出来事も消し去る様に?」
「楽しかった思い出も引き裂く様に?」
『ロクな歌詞じゃないな』
「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「おいゲラうるせぇ。お前のピザも私が食べるからな」
「やめてwwwwwwww一切れは食べたいwwwwwwwww」
『なんで一切れwwwwwwwwwww』
「イジメかよwwwwwwwwwwww」
チキンを口にする頃、漸く傑が復活した。
目尻を拭いながらピザを食べる傑の隣に硝子がコーラを置いた
「なぁなぁ、クリスマスってホームアローンやるじゃん?」
『そうだね』
「まぁ定番だよね」
「あれってさぁ、こんな風になるから皆もやってみてね☆って事?」
悟の問いに三人が黙った。
素早く視線を交わし、頷く
「それは違うかな。第一あんな間抜けな強盗も滅多に居ないだろ?」
「ペンキまみれとか上からバケツとか楽しそうじゃね?」
「片付け面倒だろ」
「知ってる?俺の隣に無限をダイソン扱いする女が居るんだけど」
『よく考えてほしい。ペンキは無限じゃ取れないよ?』
「床に付く前に無限で囲えば片付けも楽じゃね?」
「お前何時から防水マットになったの?」
『防水マットwwwwwwwwwww』
「つーかビー玉とか小麦粉とかぶちまける系なら俺が片付け出来るんじゃ…???」
「自分からダイソンに立候補してんじゃねぇか」
「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」
『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』
何故だろう。何をどう言っても悟はホームアローンをやりたいらしい。
あれって地味に家の被害凄いよ?あの子誰も居ないのを良い事に、家の中魔改造するよ?
『あ、硝子。これ食べる?』
「ありがと。刹那、これ食べな」
『ありがとう』
硝子とピザを交換して、隣の悟にのし掛かられる。
ちらりと見ると目が合ったので、試しにピザを差し出すとぱくっと食い付いてきた
「んまー」
『見て、ピザで悟が釣れた』
「五条の至宝がピザで釣れたな」
「海老で鯛を釣るってヤツかな?」
「俺はそんなに簡単じゃねぇっての」
『はい悟、あーん』
「あーん!」
むすっとしていた癖に、ピザを差し出すと笑顔で口を開けた。
それを見た傑と硝子が爆笑する
「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「簡単すぎるwwwwwwwwwwwwww」
『wwwwwwwwwwwwwwwwww』
「仕方ねぇだろ!刹那があーんって言うから!」
「チョロいwwwwwwwwwwwwww」
「悟wwwwwwwwwwwwwwwwww」
『wwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
一頻り笑って、目尻に浮かんだ涙を払いつつコーラを飲む。
それからまだ済んでいない事があるのを思い出し、三人を見た
『そういえばプレゼントまだ交換してなかったね』
「ああ、確かに。取ってこよっか」
「あ、俺も部屋だわ」
「私もだな。取ってくるよ」
全員プレゼントを持ってきていなかったので、部屋に取りに戻った。
そして全員が揃った所で、悟がはーいと手を挙げる
「俺、最後が良い!」
『はいはい。じゃあ私達からで良い?硝子と一緒に選んで来たんだけど』
「じゃあ私はその次かな」
硝子と一緒にプレゼントを二人に渡す。緑の包みが傑で、青が悟だ。
それぞれ受け取った二人は嬉しそうに顔を綻ばせている
「なぁ!開けて良い?開けて良い?」
『どうぞー!』
「ナリはでかいのにまんま反応が一歳だなアイツ」
「ふふ、でも貰ったらやっぱりはしゃぎたくなるものだよね」
目をキラキラさせて、それでも丁寧に包みを開いていく悟と、柔らかく笑いながらゆっくり包みを開ける傑。
どちらも包み紙まで大事なものとでも言う様に開けていってくれるのが、何だか擽ったい。
同じ事を思っただろう硝子と目を見合わせて笑っていると、先に包みを開いたらしい悟が嬉しそうな声を上げた
「コートだ!え!マジで!?選んでくれたの!?」
「お前のサイズなかなかなくて苦労したんだぞ。大事にしろよ」
『コートが黒だから、少しは黒以外のトップス増やしなね』
「傑!今度選びに行こうぜ!」
「良いよ、今度行こうか。
悟のはロングコートで、私の方はチェスターコートか。良い色だね」
『悟は寒がりだから裏起毛だよ。傑は裏起毛だと暑いかなって思って、コットンを使ってるっていうコートにしました』
悟のはシルバーのファーフードが付いたベロア生地のロングコート。
黒いコートにシルバーの金具がアクセントになっている。ちょっとヤンチャにも見える所が本気で悟だった。
傑はゆったりした作りのグレーのチェスターコート。
落ち着いた雰囲気のコートは一目見て、「『これはママ』」と二人で呟いた一品だ
「うん、凄く気に入ったよ。ありがとう」
「ありがとな!」
笑ってくれた二人に硝子とハイタッチする。
今回のプレゼントは二人でちょっとお高い物を選んだのだ。喜んでもらえてよかった。
因みに私と硝子もお揃いのコートをお互いに贈り合っている。今度デートする時に着たいな
「じゃあ、私も渡そうかな」
綺麗にコートを畳んだ傑が背中からそっと包みを三つ、取り出した。
差し出された包みを礼を言って受け取り、許可を貰ってそっと開ける。
包みから出てきたのは硝子が香水で、私が綺麗な紫のキーケース、悟が長財布だった
『え、キーケース買い換えようと思ってた。知ってたの?』
「使ってるものがそろそろ交換かなって思っていたら、刹那に似合いそうな物を見つけてね。ほら、悟の色縛りにもキッチリ対応してるよ」
『色縛り……ありがとう傑。すっごく可愛くて嬉しいんだけど、色縛り………?』
「私の香水切れそうだって言ったっけ?」
「最近アトマイザーを出す回数が減ったから、少ないのかなと思って。合ってたなら良かったよ」
「洞察力がキメぇ」
「ははは、酷いな」
「え、傑。俺財布換えてぇなって言ったっけ?」
「そろそろ飽きる頃合いだと思って。財布は人に買って貰った方が良いらしいから、次に誰かに買って貰うまでちゃんと使えよ」
「ん!大事にする!ありがとな傑!!」
「んん、こういう時ほんとかわいいなこの一歳児……」
傑が悟にやられたのを見て笑いつつ、コーラを口にする。
無事ママが生き返った所でトリである悟が背中から包みを三つ、取り出した。
「メリークリスマス!愛するオマエらにプレゼント!!」
「ふふ、ありがとう。愛されちゃったな私達」
「ありがと。相変わらず愛情の圧が凄ぇな」
『ありがとう悟。私も大好きだよ』
菫青の包みを解くと、真っ白なケースが現れた。
ゆっくりとそれを開ける。
出てきたそれに、傑が固まっていた。硝子も白いクッションに鎮座するそれを凝視している
『………腕時計?』
「そ!お揃いにした!」
細身のシルバーのバンドに、長方形の文字盤。縁は繊細な模様が入っていて、綺麗な純白の輝きを放つライトストーンが長方形を縁取る。
文字盤には四つ、蒼と黒と茶色と青紫の石が四方に飾られていた。
硝子の時計は私と色違いのピンクゴールドの様だ。
傑はバンドが黒いものだった。
私達のものよりバンドが太いのはメンズだからだろう。
「ほら、俺も着けてる。オソロ!」
『ふふ、ほんとだ。ありがとう悟、毎日着けるね』
「ん!オマエらもちゃんと着けろよ!折角揃えたんだからさ」
悟の時計はバンドに蒼いラインが走ったものだった。しっかりした手首に収まる腕時計を見てお揃いと笑う悟がかわいい。
……そういえば、傑と硝子はなんで固まってるんだろう?
Merry Christmas!!
刹那→十二時から寝ないと眠い。
皆からのプレゼントににこにこした。
皆で贈り物をするという時間が好き。
腕時計を着けていると五条がにこにこするのでかわいい。
ライトストーンが沢山あしらわれた腕時計だと思っている
五条→楽しかった出来事も消し去るタイプ。
プレゼントが、というか、プレゼントを贈る時に宝物が自分の事を考えてくれているという時間が好き。
同時に、宝物の為にプレゼントを作り上げるのも好き。つまり宝物の事を考えるのが好き。通常運転。
時計はオーダーメイド。
ライトストーンではなくダイヤモンド(最高ランク)
四方の石もアクアマリン、黒真珠、ブラウンダイヤ、アイオライト(最高ランク)
バンドも時計自体もそう簡単には壊れない特注品。
腕時計を贈る意味は「あなたと同じ時間を過ごしたい」
夏油→悲しかった出来事も消し去るタイプ。
終始笑ってしまって正しい歌詞は言えなかった。
プレゼントを貰った人が喜ぶ顔が好き。
時計の金額が明らかにヤバイと一瞬で気付いた人。
香水を贈る意味は「親密になりたい・自分が好きな香りを付けて欲しい」
キーケースを贈る意味は「何時も傍に居たい・あなたと一緒に居たい」
硝子→楽しかった思い出も引き裂くタイプ。
こいつにはどれが似合うかなと相談しながらプレゼントを選ぶのが楽しい人。
明らかに「私、高級ですけど?」という顔をしている腕時計(高額)に目玉が取れそうになった。
メリークリスマス!
戻/
top