※「冬はもふもふ。」の後の話









わいわいガヤガヤ、周囲を音が満たしている。
此処は夢の国と呼ばれる巨大テーマパークだ。
年明けには傑が特級になると悟が教えてくれたので、実質私達がこうやって予定を簡単に合わせられるのは今が最後だろう。


「刹那はやっぱクマかなー」


「ダッフィーって事?」


「いや、此処はミニーかミッキーを被せるべきじゃないか?だってほら、こうやって被せたら…」


傑が顎の下でマジックテープで留めるタイプの帽子を私に被せ、二人の方に身体を向けさせた。


『どう?変じゃない?』


「勿論。可愛いよ」


「違和感ないな。テディベアじゃん」


「テディだ……刹那がテディになった………」


傑以外のコメントが可笑しいのはこれツッコミ待ちなんだろうか。
目をキラキラさせて此方を見ている悟に苦笑いして、マリーの帽子を手に取った。


『悟、しゃがんで』


「ん」


「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「うそだろwwwwwwwwwwwwwwww」


「ん?オマエ何被せた?」


『マリーちゃん』


「えっ」


近くにあった鏡を覗き込んだ悟の頭からは白猫の耳が生え、ピンクのリボンでちょんまげを作っている。
爆笑する二人にイラッとした顔をしつつ、悟はカチューシャを選び始めた。


『マリーちゃんで良いの?』


「オマエが似合うなって思ったんでしょ?じゃあコレにする」


『……そういうトコだぞ五条悟…』


「?なんで照れてんの?あ、見て刹那。デイジー傑にしよ」


『デイジー傑wwwwwwwwww』


「マリー悟がなんか言ってるwwwwwww」


「マリー悟wwwwwwwwwwwwww」


『なんでそんな芸名みたいにwwwwwww』


「じゃあ硝子はイーヨーにしようwwwww」


『イーヨー硝子wwwwwwwwwww』


「私もかよwwwwwwwww」


「名前がやべぇwwwwwwwwwwwww」












友人と二人で来た夢の国。
二人でアトラクションの行列に並んでいると、ふと後方の四人組が目に入った。
お洒落な服装の男女二人ずつの彼等は、冗談抜きに顔が良い。
特に背の高い白銀の髪の男の子はやばかった。キラッキラの青い目に黄金比の顔。睫毛まで白い。天使か?
モナリザが裸足で逃げ出すレベルの美しさ。美の暴力。美がぶん殴ってくる感じだった。
というかあの美貌でマリー被ってんのなに?あざとくない?あの長身でマリーとか狙いすぎじゃない?????
ラウンドのサングラスをずらして一緒に来たのだろう三人を見ている彼を、周りの女性客がガン見している。
私もそっと友人の肩を叩いた。


「なに?」


「あっち見て。美が居る」


「は?………ヴァッ」


やべぇ声が友人の口から漏れた。
わかる。とてもよくわかる。
あれは多分顔面で人を殺せる。


「なぁジェットコースター乗ってる時って何処見りゃ良いの?」


『え、正面じゃない?』


「そもそも首そこまで動かせないだろ。シートベルト着けるんだし」


「寧ろ悟は何処見たいの?後ろ?」


「え、隣に座る奴の絶叫顔見ようかなって」


さとるくんというらしい白銀の彼がそう言うと、隣に立っていたミッキー帽子の女の子が前の二人の腕を掴んだ


『え?まさかこの並びのまま乗りませんよね?』


「ははは、悟をよろしくね」


「刹那ガンバ」


『息する様に見捨てるじゃん』


「テディは生贄だよ?それで悟の被害が収まるなら安いものだと私は思うんだ」


『ママ??????????』


「目がマジじゃんwwwwwwwwwwwww」


「wwwwwwwwwwwwwwwwwww」


デイジーカチューシャの塩顔超絶イケメンに目を大きく開いて詰め寄るミッキー帽子の美少女。
それをイーヨー帽子の泣き黒子が色っぽい美少女とさとるくんが爆笑している。
めちゃくちゃ仲良しだ。多分高校生ぐらいかな?って感じの子達だけど、性別の違いとかそういうのは一切感じさせない。


「刹那、チュロスちょーだい」


『どうぞ』


「刹那、私のチュロス食べる?」


『ありがとう傑』


「五条、それちょーだい」


「ん」


「硝子、少し私も食べて良いかな?」


「ほら」


それぞれがそれぞれの手にした物を貰って食べている。
めちゃくちゃ仲良しだね?間接キスとか気にしないの?


『悟、めっちゃ食べたな…?』


「ごめーんね☆俺のあげるから許して?」


『許した』


「刹那、もっと悟の食べな。ソイツ刹那の三倍は食べてるよ」


「刹那の口ってちっちぇよなぁ。あと咀嚼もゆっくりだ。だからあんま食わねぇのかな」


『沢山食べてるよ』


「ウン、俺のチュロスめっちゃ食ってんな。俺もたーべよ」


「いやそれもうお前らチュロス交換しろ」


せつなちゃんというらしいミッキー帽子の女の子とさとるくんは何故か、お互いに握ったチュロスを食べるというよく判らない事態に陥っていた。付き合いたてのカップルかな?あ、ダブルデート?ダブルデートか!
仲良し四人の中でカップルが二組発生してそのまま夢の国ダブルデートに来たとかなのかな?


「ねぇあのカップルめっちゃかわいいね?チュロス食べてんのかわいいね?」


「ねー…彼氏欲しいな」


「言うなよ浮気野郎思い出すじゃない」


「結婚詐欺に遭った私に勝てるとでも???」


「ごめんね」


「良いよ」


友人と共に可愛いダブルデートを眺める。
寒いからかぴったりとくっつくせつなちゃんとさとるくんは、携帯を構え写真を撮っていた。
それから四人で撮る。
凄いなさとるくん、腕が長いから良いアングルで撮れるのか。
写真を撮っては携帯を覗き込み、ああだこうだと何かを言い合って笑っている。


「良いねぇ、青春だね…」


「私らもあんなにキラキラしてたのかね…」


「さぁ?」















「パレード?何それ?」


「キャストがライトアップされた巨大カートに乗ってランド内を移動するんだよ」


「なんだ、大名行列か」


「一気に夢のない言い方になったな」


『花火も上がるって。見る?』


「今の内にアトラクション行くって手もあるよ?」


「あー、並ぶの短ぇならそれでも良いのか」


遊び回ってすっかり日が暮れた。
レストランで食事を済ませ、私達は次に何処に行こうかと相談していた。
私にぴったりとくっついて川を眺める悟はあまりパレードに興味はなさそうだ。
傑もどちらでも良い派。かく言う私もどちらでも良い派。
ポップコーンを口に放り込む硝子もどちらでも良い派だろう事が窺えるので、結局私達は入場客がパレードに向かっている間に人気のアトラクションを攻める事にした。


「ビッグサンダー・マウンテン行こうぜ」


「いや此処はスプラッシュ・マウンテンじゃないか?」


「は?」


「ん?」


「なんでコイツら直ぐ意見割れんの?」


『方向性の違いかな?』


指の間まで隙間なく密着させる繋ぎ方で捕らえられた手が緩く揺らされる。
そちらを見れば、傑と言い争っていた悟が此方を見下ろしていた。


「刹那は?どっちが良い?」


『私?んー…スプラッシュ・マウンテンはちょっと寒いかな……』


「でもビッグサンダー・マウンテンも寒くない?」


『確かに』


「オイ硝子、どっちの味方だよ」


「私は刹那の味方だよ」


『パパ、すき』


「私も好きだよ刹那」


格好良い硝子にニコニコしていたらマリーちゃんにこつんと頭突きされた。


「もー、刹那抱っこしちゃダメ?顔クッソ遠いんだけど」


『あんたに近い顔の位置の女の子とかそうそう居ないよ』


「身長伸ばせ」


『ヒール履けって?やだよ、何かあったら動けないだろ』


「俺が居るんだから良いじゃん。刹那に怪我なんかさせねぇよ?」


「アイツ最近息する様に口説くな」


「あれで無自覚なんだから一歳児は怖いね」


後ろをのんびり付いてくる二人の言葉に苦笑いする。
……優柔不断だというのは判っているけれど。
もう少しだけ、このままの距離で居たいと思ってしまうのだ。












笑い合えるなら何処だって











刹那→ミッキーの人。
来年からは夏油も特級かぁ、と少し焦り始めた。
何故か買ったものを全て五条と半分こする羽目になる人。
五条とティーカップに乗ったらガンガン回されそうになって死を覚悟した。
山ならスペース・マウンテン派。

五条→マリーちゃんの人。
最近息する様に口説いているスパダリ。
皆の買ったものにぱくっと食い付くのが好き。しあわせ。
シューティングゲームで満点を叩き出すタイプ。
山ならビッグサンダー・マウンテン派。

夏油→デイジーの人。
年が明けたら任務で忙殺されるんだろうな、と薄々勘付いてる。
買ったものに食い付くドラネコが居るので、何時も少し多めに買っている。
絶叫系でも笑顔を崩さないタイプ。
山ならスプラッシュ・マウンテン派。

硝子→イーヨーの人。
来年また面倒な事が起きそうだなと予感している。
買ったものに食い付くドラネコの頭を叩きつつ分け与える。
絶叫系でストレス発散に大声を出すタイプ。
山ならスペース・マウンテン派。


夢の国へ


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