私はしがないランジェリーショップの店員である。
明るい店内で日々客を捌いて生きている。
基本的には女性ばかりだし、綺麗な人を見るのは目の保養になるし、売っている下着は可愛いしでサイコー!!
とか思っていたら
「いらっしゃいま……」
────どえれぇイケメンが来た。
脱色だろうか、綺麗な白銀の髪に白い肌。ほっそりした顎。すっと通った鼻梁。薄い唇。明らかに造形が整ってないと似合わないラウンドのサングラス。
それだけで凄いのに、ハチャメチャに身長が高い。
何あれ?2mありそう。
黒のアウターに白いVネックのシャツ。濃紺のダメージジーンズという格好が文句ナシに格好良い。
脚が長いな?嫌味なぐらい長いな?リアル脚長族じゃん。
造形美の頂点みたいなイケメンにびっくりしていると、直ぐ後ろから黒髪の女の子がひょこっと顔を出した。
ひえっ…綺麗…綺麗系の美少女だ…おめめぱっちりだね…青紫のおめめ…髪もツヤツヤだし唇もぷるぷるだね…
水色のシアーなビッグシャツに白のシャツと黒のスキニー似合ってるね…
店内の誰もが入店した二人に目を向けていて、女の子の方がそれに気付いてぎこちなく笑った。
ひえっ、可愛い…同い年のカップルかな?
「ふぅん…初めて入った、こういう店」
『悟、目立つから一旦奥行って』
「ん」
声まで良いってなに?最早何を損なってるの??
さとると呼ばれた彼は素直に頷いて、店の奥に進んだ。
女の子の脇腹辺りに手を添えるさとるくんは、ゆるりと店内を見回しつつ彼女を見る。
「刹那、オマエのサイズどこ?」
『…マジで選ぶの?』
「当たり前。オラ、とっとと案内しろよ」
『はーもう何でこんな事に…』
せつなちゃんというらしい女の子は溜め息を吐いて、さとるくんをサイズ別のコーナーに連れていった。
そこでせつなちゃんが立ち止まると、さとるくんが徐にサングラスを外し、て…
「くぁwせdrftgyふじこlp」
聞くに耐えない呻き声を我が口が発した。
ちょっと待てよ、イケメンが天元突破してますけど???
え?なに?睫毛まで真っ白なの?しかも長くない?そのびっしり睫毛に覆われたアイスブルーの瞳とか王子か???漫画の世界から来ちゃった???
嘘でしょ?下手な俳優より格好良くない?というか女優より美では???
店内の人はランジェリーではなくさとるくんをガン見である。おまけに肉食獣の眼でさとるくんを見ているレディーも居る始末。
お待ちくださいお客様、王子は彼女とご来店してます。絶対にお声掛けなさらないで下さいませ。
「んー、こういうのは?」
さとるくんが大きな手で持ち上げたのは、水色の花の刺繍を大きくあしらった白のブラショー。
それを見た一部のレディーがうっと胸を押さえた。
待って、さとるくんそれ自分の色かな…!?せつなちゃんに至って自然に水色と白薦めるじゃん…!!
『えー、可愛過ぎない?』
「じゃあオマエどういうのが良いの?」
『んー、こういうのとか?』
せつなちゃんが指差したのは無地の黒のブラショー。
それを見たさとるくんは素早く首を振った。
「やだ」
『やだって何だ』
「コッチにしろ。はいけってーい」
『あ゙』
店内に用意された小さな買い物カゴにさっさか入れられて、せつなちゃんが呻いた。
カゴはさとるくんが腕に通していて取り返せない様で、せつなちゃんは溜め息を吐きつつも受け入れる事にした様だ。
「後はー、コレとコレと…」
『待て。待たれよ。水色と白多くない?』
「ん?ウン」
『他も選ぼう?色合い似過ぎてると上下バラバラ多発するから』
「………じゃあ上下バラバラでも違和感ねぇ様に全部この色で合わせる?」
『馬鹿だな????????』
あ、そう来る?じゃあやめるねじゃないんだ?全部合わせる方でいくんだ?
思わず笑ってしまった。店員もお客様も何人か笑っている。
というかこれ、皆で可愛いカップル見守っちゃってるな?
「知ってた?毎日白と水色身に付けてないと乙女座は不幸が訪れちゃうんだよ」
『星座占いバグってんね』
「だから俺が不幸にならない様に選んであげてんの。優しくない?」
『あ、このレモンイエローかわいい』
「聞けよ」
きみたちがかわいいよ。
肉食系レディーはつまらなそうだったが、他のレディーはにっこにこである。かわいい。
さとるくんがちぇっとつまらなそうに呟いて、新しい色を取った
「じゃあ選んで良い色を決めよう」
『何で?』
「赤と、青と、紫と、白と、水色です」
『私の色の好み聞けよ。全部お前の色だよ』
「青紫と黒も良いよ。ハイ、選んで。俺これオススメ」
すっとせつなちゃんに当てられたのは黒地に青い華の刺繍をあしらったもの。
さっとカゴに入れたさとるくんにせつなちゃんは困った様に言う
『自分の好きな色押し付けるのやめな?着るの私だぞ?悟じゃないよ?』
「見るのは俺だろ。だから俺がオマエに似合うの選んでんの」
『見せる予定ないわー』
「洗濯物干す時見ますぅ。そんなに言うなら毎日スカートめくりするからな」
『残念でした私スラックスでーす。硝子にやれば?死ぬけど』
「興味ねぇモン見て何になるんだよ」
『硝子に謝れ』
「あ、じゃあ毎日風呂の時脱衣所覗こっか?」
『倫理を拾ってこい。今すぐ』
どういう会話?まさか同棲してるの??え、君達高校生ぐらいじゃないの???え????
困惑する私を他所に、さとるくんはカチャカチャとハンガーをスライドさせて好みのものを捜している。
というか高校生(仮)で彼女の下着選ぶ彼氏って猛者過ぎない??????
もっと歳上のカップルでも彼氏はドギマギしてキョドるよ????
「そういえば俺さぁ、今日アレ履いてる。シナモンロール。オマエらが俺に似てるって言う白いアイツ」
『外で悟のパンツ聞きたくなかったなぁ』
「傑は今日バツ丸だったよ」
『親友のパンツバラすのやめな?』
「昨日はね、傑キティちゃん履いてた」
『お外だよ。お外で他人のパンツバラすんじゃありません』
「あ、これ似合うんじゃね?」
『自由だなーもう』
ほんとそれ。さとるくん自由過ぎない?
そしてランジェリーショップでパンツバラされてるすぐるくん可哀想。
顔も知らないのにバツ丸とキティちゃんパンツだって事だけ認識してしまった。
君もシナモンロールパンツの彼女の下着選びまくる超絶イケメンとして覚えたからな。
ねぇ何でシナモンロール?可愛いけどそれ此処で彼女に報告する必要あった???
『あ、これ良くない?』
「ん、可愛い。ちゃんと白と水色で偉いね」
『………やめていい?』
「ハイけってーい」
『お前もう色変えろ。茶髪にして』
「んふふ、照れてんの?かわいいね」
『もういい。悟のトランクス全部シナモンロールにするから』
「あ、この間テディベアのトランクス買ったの捨てんなよ。他のは良いけど」
『……せめて嫌がって?』
「なんで?刹那が選ぶんならそれで良いよ?どうせ見せんのオマエらだけだしさ」
…おおっと?さとるくんはあれだな?せつなちゃん全肯定botの気配がプンプンするな?
薄い水色に濃いめの水色のフリルがあしらわれたショーツと白地に水色のラインが入ったブラを選んでしまったせつなちゃんは、綺麗にグロスを塗った唇をもにゃっとさせた。
かわいい。悔しそうなのかわいい。
それを横目で見ているさとるくんはもう、好き!!!!みたいな顔をしている。
目が。アイスブルーの綺麗な目がとろっとろなのだ。
溺愛彼氏かな?高校生(仮)でこれって凄いな?結婚コースかな?
「刹那、見て。パジャマ。触り心地良いよ」
『ん?うん、そうだね』
「!!刹那!!テディベアだ!テディベアの柄がある!!これにしよう!!」
『テディベア愛好家か何かかな????』
ツッコミが的確過ぎて笑う。
下着コーナーからパジャマコーナーに移動して、サテン生地のパジャマを見ていたさとるくんが急にテンションぶち上げた。
可愛いテディベアがプリントされたパジャマをささっとカゴに入れたさとるくんに、せつなちゃんは苦笑いしている。
『テディ着るの?私が?』
「ウン」
『そっかー……サイズは?大丈夫そう?』
「ちゃんと見たっての。今日早速コレ着てね」
『はぁ……はいはい。テディがテディ着るのね、判ったよ』
この会話から推測するに、せつなちゃんはテディと呼ばれているんだろうか。
せつなちゃん、大体さとるくんに押しきられてるけど大丈夫?それって不満とかないの?
「うわ、見ろよ刹那。ぺらっぺら」
高校生カップルはパジャマコーナーからちょこっと過激な下着コーナーに移動していた。
それはさぁ、刺激強くない?大丈夫?
紐みたいなものから透け透けレースからガーターベルト付きセットまで、夜のムードを盛り上げるであろうセクシーなものが数多く展示されているのだ。
案の定、というかせつなちゃんは気まずげだが、さとるくんは興味津々で見ていた。きみは好奇心の塊かなにか???
『悟、気まずくなったりしないの?』
「なんで?」
『…これはね?女の人が着るものですけど?』
「知ってるよ?傑こういうの観てた」
『傑の性癖バラすのやめな?』
「傑最近ナースのAVオキニだって」
『やめなさい』
ねぇすぐるくんの人権どこ????
さっきからすぐるくんのパンツからAVの好みまで事細かに暴露されてますけど???
「うえ、何で此処切れ目入ってんの?下着の意味ある?」
『悟、もう見ないで…此方が居たたまれないわ……』
「んー?……ああ、なるほど、そういう。へぇ、男のロマンってやつ?」
『もうほんとやだ…』
「刹那、可愛いの探そ。オマエにコレはまだ早いよ」
『お父さんか』
「オマエお父さんに下着選んで欲しいの?歪んでんね」
『瞳孔にシャー芯刺してやろうか』
「おっかない事言うなよ」
ケラケラ笑うさとるくんを連れて、近くのちょっぴり値段の張るコーナーに移動した二人。
やっぱり水色と白推しのさとるくんをいなしながら、せつなちゃんはそういえばと呟いた
『悟、何かセクシー系とかニヤニヤしながら勧めてくると思ってた』
「あ?俺を何だと思ってんの?センス良いって言ったろ?」
『うん、まぁそれは否定しないけど』
「だろ?」
ハンガーをスライドさせる手を止めて、さとるくんはふにゃっと笑った。
「刹那に似合うのを捜してんだよ。あんな布切れみてぇなの着てる刹那より、俺の色着た可愛い刹那が見たい。それじゃダメ?」
『………………』
「えっちぃの着てぇなら選ぶけど、要らねぇだろ?ああいうのオマエの趣味じゃねぇし」
『………そういうトコだぞ悟……』
「あ?顔赤ぇな、恥ずかしい?あ、でもちょっと嬉しい?なぁに?なんで?ねぇ刹那?どういう感情だそれ」
ええええええかわいい…なにこのカップルかわいい…
露骨なセクシー路線じゃなくて、彼女が無理せずに着られるのを身に纏って欲しいって事…?可愛い系の、しかも自分の色…?可愛いが過ぎない…???
顔を隠すせつなちゃんをぱっちりした目でじいっと覗き込むさとるくん。
そうだよね、毎日俺の色身に纏ってねとか普通に照れるよね。
しかも可愛い姿が見たいとか殺し文句だよね。そら照れるわ。大丈夫だよ、周りのお客様も無事悶えている
「刹那も俺に色々決められんの嬉しい?俺と一緒?」
『……私の事考えてくれてたのが嬉しいの。色々決めるのはやめな?悟はごり押しし過ぎ』
「えー。つーか刹那の下着なのに似合わねぇの選ぶ馬鹿が何処にいんだよ。
選ぶの俺だぞ?失敗する訳ねぇじゃん」
いや居るのよ。彼女はえーこれ選ぶの?みたいな雰囲気出してんのに露骨なセクシー系選ぶ彼氏。
あの時の彼女は引いてた。ないわーって顔してたけど、あの後どうなった事やら。
「だってえっちぃの選んで高専で着られる?着たら着たで俺多分キレるよ」
『なんという理不尽』
「でも箪笥の肥やしも嫌じゃん?だからこういうのが良い。女の子は可愛い下着でテンション上がるんだろ?甚爾が言ってた」
『あの人しばかれそうな事しか教えないな』
「後ね、女の子はお砂糖とスパイスといろんなステキってので出来てるから、テディちゃんと硝子ちゃんは丁寧に扱えよって時雨が言ってた。
何言ってんだコイツって思ったらマザーグースだったわ」
『あの人なんであんなにまともなんだろう…』
「元刑事だからじゃね?」
え、それどんな知り合い?
学校の先生?異色の経歴ってヤツ?
とうじって方もなんかロクでもなさを醸し出してない?
「見て、刹那の目の色」
『ん?……こんなに綺麗ではないな…』
鮮やかな青紫のブラショーを手にするさとるくんにせつなちゃんが首を捻ると、彼は大きな目をぱちりと瞬かせた。
それからずいっと顔をせつなちゃんに寄せて、じいっと目を見つめる
「綺麗だよ。キラキラしてて夜の海みてぇ。ほら、月の光でキラキラしてる海みたいな感じ?今度見に行く?」
『………………………』
「?なんで赤くなんの?熱?大丈夫?」
…ねぇおでこと鼻先くっ付けて口説く顔面国宝とかどこの漫画からやって来たの?
嘘でしょ?素でやってるの?は????
さとるくん見た目だけじゃなく中身まで完璧なの?きみは何を持ち合わせていないと言うの???
……会計までさとるくんが行い、平然と支払っているのを見て最早王子ではなく何処かの王様なのでは?と本気で考えた私は悪くない。
「ねぇ、気付いた?」
「何が?」
高校生カップルが店を出たあと、同僚がこそっと耳打ちしてきた事に私は愕然とした
「せつなちゃん、着てた服の色まんまさとるくんだったよ」
「ヴァッ」
『わー、水色と白ばっか』
「やっぱり押し切られたか」
『うん……ぽいぽい決められたよね…』
「恥ずかしそうな素振りとかは?」
『全然。終始乗り気だった』
「メンタルやべぇな」
今日悟に買って貰った下着達を並べると、硝子が呆れたと言わんばかりの顔で溜め息を吐いた。
「でも確かに趣味は良いな。刹那に合うヤツばっか」
『私もそう思ったから、セクシー系とか持ってきてニヤニヤするかと思ったって言った』
「そしたら何て?」
『俺がオマエの選ぶんだから、似合うのしか選ぶ筈ねぇだろって』
「あー…」
『あと箪笥の肥やしになるのも嫌だし、あんな布切れみてぇなの着てる刹那より、俺の色着た可愛い刹那が見たいって』
「………そういうトコだぞ五条…」
『私もその反応になった』
目許を押さえた硝子に深く頷いた。
あいつ最近少女漫画のイケメンみたいな行動するのほんとなんで?
そんな事したらクズっていうアイデンティティーが消えるよ?ただのイケメンなんか五条悟じゃないだろ?正気に戻れ?
「あいつ他の奴にはクズなのに、私らには全力で素直なの何なの?腹立つぐらい可愛い時あるんだけど」
『判るー……クズじゃない悟ってなに?』
「ただの顔面国宝」
『五条悟じゃないな?』
「きれいな五条」
『きれいなジャイアンみたいなもん?』
「そうそれ」
それただの聖人君子だな。
白い着物の悟から後光が差しているのを想像して笑った。とても変。
やっぱり学ランで生意気そうな顔してる方が似合う。
「ウチの顔面国宝どこ行った?」
『傑と買い出し。ちゃんとメモ渡したよ』
「なら平気か。
そういや今日の夏油のパンツバツ丸だって五条に言われたんだけど、何でアイツは親友のパンツを私に報告すんの?」
『私ランジェリーショップでそれ報告された』
「wwwwwwwwww」
『昨日はキティちゃんだって』
「夏油の人権どこ??????」
『悟に埋められたかも』
「wwwwwwwwwwwwww」
『悟は今日シナモンロールなんだって』
「なんの報告だよwwwwwwwwwww」
とある二人の休日
店員→綺麗なものが好きなひと。
綺麗?かわいい?大好き!!と思ってたら顔面国宝が穏やかな雰囲気の美少女連れてきてフリーズした。
さとるくんが終始肉食系レディーなんて見る事もせずずーっとせつなちゃんだけ見てるのもポイント高い。
さとるくんを全てを持った完璧人間だと思っている。
いいえ、そいつは性格を持ち合わせていません。
刹那→結局全部選ばれたし箪笥の中は水色と白だらけになった。多分上下違うけど似てるしセーフ…?がこれから多発する。
テディパジャマが絶賛されたひと。
五条→コーデも下着もパジャマも選べてにっこにこ。
独占欲がすごい。
独占したいしされたい。別にシナモンロールでもたれぱんだでも三人がくれるなら喜んで着ちゃうし、何ならキメ顔で写真撮って勝手に人の待ち受けにしてくるタイプ。
独占欲すごいけど、まだ無意識にセーブは出来てる。
硝子→可愛いクズという新ジャンルを発見した。
何でか白いやつに今日のパンツの報告を受けた。なんで???
テディパジャマを絶賛したひと。
夏油→知らない内にプライバシーが侵害された。人権どこ????
テディパジャマを絶賛したひと。
可愛いカップルを見掛けました
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