再会


紫たちが通された部屋には頭のとても長い老人と茶髪に眼鏡の真面目そうな少年がいた。
紫はその少年の瞳になぜか既視感を覚えた。
「ご無沙汰じゃのう、桜。何年ぶりじゃ。」
「んなもんいちいち数えてると思ってるのかい。100年ぶり位じゃないか。」
「お前さんは相変わらずじゃのう。お?後ろにおるのは噂の月華の三代目か?」
「あぁ、紫挨拶を。」
「はい。初めまして、ぬらりひょん様、若頭様。月華組三代目華月(はなつき)紫でございます。」
紫は三つ指をつき、深々と礼をした。
「面を上げなされ。可愛らしい娘さんじゃのう。こりゃ、お前も挨拶せぇ。」
ぬらりひょんは自分の孫に向かって挨拶を促した。
「初めまして、奴良組若頭、奴良リクオでございます。」
その言葉を聞いたとたん紫は思わず声を上げた。
さっきの既視感の正体はこれなのかまだ、彼女には分からない。
「どうしたんだい?紫。お前さんが声を上げるなんて珍しいことがあったもんだ。若さんがどうした?」
「いえ、なんでもございません。」

紫が慌てて言い繕うその姿をリクオは楽しそうに見ている。
この部屋に彼女が入って来た時、リクオこそ声を上げそうになった。
月の綺麗なあの夜に出逢った少女がそこにいたのだから。
それと同時にこの優しそうで、か弱そうな少女が立派に一つの組を背負っていることに驚いた。

―もっと彼女のことが知りたい―

そんな欲求がリクオの中で膨らんでいく。
夜の自分越しではなく、初めて直接見た彼女の顔は戸惑いと驚きが入り混じったような顔をしていて、彼女にこの間あなたが逢ったリクオは自分だと言えばどんな反応が返ってくるだろうか。
それを考えれば自然と口角が上がる。

もうすぐ夜がくる。

夜の自分が先ほどから早く変われとうるさい。
しかしリクオもそう簡単に変わる気など毛頭ない。

―この間は君が独り占めしたんだから、今度は僕が独り占めしたって罰はあたらないはずでしょ―

そう夜の自分に言えば、リクオは口を開いた。
「ねぇ、おじいちゃん。桜さんと積もる話もあるでしょ?その間、紫さんと話していてもいいかな?」
「おう、わしは構わんぞ。桜、いいか?」
「あぁ、紫もこんなとこでじいさんの話聞くより年の近い若さんと話した方がいいだろう。おい、若さん。手出すんじゃないよ。」
「それは、お約束しかねます。」
リクオは人の良い笑みで返した。
「おい!若さん、今なんて言った。」
「では、失礼します。心配なさらなくても今日は手は出しませんよ。さぁ、紫さんこちらです。」
「はい。」
紫は戸惑いながらもリクオに着いていく。
「今日はって、今日はってことはいつかは手出す気か若造!!」
桜のその叫びはぬらりひょんにしか届いていなかった。
「ええじゃないか。若いのぉ。リクオ、ものにして来い。」
「ものにされてたまるか!!あの子はそこらの男にはやらないんだよ!大体あの子をものしようとしてみてごらん。たちまち月華の妖怪が奇襲かけてくるぞ。」
「お前、わしの孫をそこらの男扱いか。じゃが、月華の奇襲は怖いのぉ。まぁ、紫さんがリクオを好きになれば話は別じゃろ。」
「あ、あぁ別だが。」
「わしの孫じゃぞ。」
「てめぇの孫なのが一番心配なんだろうが!あの子のこと泣かせてみろ、明日は無いと思え。」
「女は怖いのぉ。じゃが、リクオが紫さんと夫婦になれば、わしとお前は親戚じゃのぉ。よろしくな。」
「死にさらせ。」

二人が出て行った後の部屋でこんな会話がなされているなど当の本人たちは知る余地もなかった。


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