御社が主宰を務める日中韓18才以下の囲碁大会のセレモニーが間もなく始まる。
ロビーにわんさと居たお客さんもだいぶ捌け、相川さんは「休憩」とひっこんでしまった。受付には私だけだ。
静まりかえったロビーに扉を開く音が響いた。
扉を開いて出て来たのは茶髪の少年と青年の間くらいの男の子だった。このくらいの年齢の男はどう分類されるのだろう。それから、どう対応するべきなのだろう。私が考えているのを余所に、彼は気さくに話しかけてきた。
「お姉さん、伊角さんの知り合いか何か?」
伊角くんの名前を出されて納得する。そういえば伊角くんの横に居たのは彼だったかもしれない。
「あれ、やっぱり伊角くんだったんだ。中学の時に同級だったから似てるなあと思ってたんだけど」
「へえ。伊角さんにも中学時代ってあったんですね」
そりゃそうかとひとり笑う。体格はしっかりとした男だが、笑えばやはりまだ幼さが残る。
彼は和谷くんというらしい。
伊角くんは囲碁のプロになっているという。和谷くんは伊角くんと囲碁のプロになるための塾のようなものに通っていた時からの友人で、彼もまた囲碁のプロだという。会社が囲碁の大会を主催しようが、私はいまいち囲碁というものが分からない。室長も相川さんも同じだろう。
「囲碁っておもしろい?」
聞けば和谷くんは含んだように笑う。
「伊角さんに聞けばいいのに」
今度は私が含んだように笑う番だった。
20111011
20160828加筆訂正