なんで俺がこんな……こんな、太宰の尻拭いなんかしなきゃいけねえんだ!
太宰の執務室はまるっとそのまま残っており、庶務机の一番上の引き出しには丁寧に鍵がかけられていた。鍵穴に銃口を突きつけ、一発。鍵は難なく開いた。
「チッ」
舌打ちも一発。子供でも開けられるような鍵をかけやがって。
引き出しを開ければ、極秘と記載されたファイルが一番上で「よくぞ見つけてくれましたね」と小莫迦にするように笑ってやがる。巫山戯やがって。まるで、俺が太宰の庶務机を漁るところまで計算済みだったようで気味が悪い。そして胸糞悪い。
極秘と記載されたファイルを開くと「今日の帽子のセンスも壊滅的」と一筆添えた紙が一枚挟まっているだけだった。頭にどんどん血液が集中してくる感覚が判る。
「莫迦だなあ。中也、君はまったく莫迦だ。その上、阿呆。センスも悪い」
太宰がそう云って、脳内でゲラゲラ嗤っていやがる。見えるわけない。太宰はここにはいない。幻想だ。妄想だ。頭では判ってはいるが、叫ばずにはいられなかったし発砲せずにはいられなかった。
「太宰ィイイイ! コロス! コロス! ぶっ殺す!!!」
床に数発弾丸を打ち込めば、太宰の幻覚を殺したような気になれて、漸く気持ちも落ち着いた。ああン? 発砲した床辺の下は何やら材質の違うものが現れた。脚で邪魔な床辺を払えば、出て来たのは金庫だった。ンで、金庫が床に埋め込まれてんだよ。趣味が悪いのはどっちだ。
金庫に触れ、異能を発動させる。空気のように軽くなった金庫はあっさりと地上に運ぶことが出来たが……暗証番号式か。抑々、だから、なんで俺がこんな、太宰の尻拭いなんかしなきゃいけねえんだ!
「わたしはこれから重大な任務を遂行するべく、観覧車に向かいますので、申し訳ないのですが、中原さんはお使いを頼まれてください」
クソみてえな要求をしてきた部下の言葉を思い出す。言葉では云っているものの、全く申し訳なさそうにはしていなかった。思い出すと、また沸々と怒りが込み上げてくる。何が「太宰さんの執務室にあると思われる極秘資料を探してきてください」だ。俺が上司で上司は俺だ! 手前が部下だ! ボケ! 先ず何の任務に向かうか報告しろ! 怒りのままに、運び出した金庫をガツンと一発蹴り込めば、金庫は一面回転し、扉が開いた。……一寸不用心すぎやしねェか? 不審に思いながらも中身を確認するべく、覗き込むと、そこには――。
「中原さん」
「ヒッ!」
声を掛けて来たのはお使いを頼んできた張本人だった。
「ヒッ! って、なんですか。ヒッ! って。もっと雄々しく驚いてくださいよ」
「手前な……」
「それでも上出来です。有難うございました」
「おい、その金庫の中身は……ッ!」
苗字が口を開く。
「おっぱいですよ」
20160925