口から煙がふわり、独特の匂いは風と共に消えていく。あまり生徒達が立ち入らない屋上は私にとって落ち着く場所でもある。サボりの時はよくいる。そして今なおサボっている最中。グラウンドには生徒達が体育の授業をしている。そう自分のクラス。
眺めながら、咥えようとしたらそれは私の指から無くなった。あれ?背後から聞こえた声に振り返ると煙草を消している嵐がいた。

「もう...また吸って駄目でしょ~?」

「いいじゃん、べつに~」

わざと口を尖らせて言えば、うふふと私の唇に指をあて、耳元で「だーめ」と低いトーンで言われゾクッとくる。いつの間にか目の前に嵐の顔があって、小さくリップ音が鳴る。今起きた事に自分自身の顔が熱くなるのを感じた。今、キスされた...。

「煙草の味がするわね~悪くないかも」

ふわふわとしている私に嵐はもう1度してきた。限界だ...ああ、やばい。その場にへたり込む私をあらあら、と支えて同じ目線で嵐の綺麗な瞳がじっと私を見つめている。

「好きよ、名前」

好き...?嵐が私を?
こんな野蛮な女子のどこがいい。
明らかに私の方が男勝りだ。嵐はとても綺麗で私と釣り合わないいや釣り合う筈もない。けど、私もホントは嵐が好き。言っていいのか不安で片想いしてた。頬に伝う何かが、嵐もそれに吃驚して指で拭いてくれた。

「ちょっ「...好き」」

嵐は、私の言葉に嬉しいと言いながら
「名前、愛してるわ」とまた柔らかい感触が唇に伝わった。そして煙草は没収された。