んん…?まあっ、きれいなお人形!今あたしに話しかけたのはあなたね?うふふ、やっぱり!こんばんは、お人形さん。ああ、いいえ、はじめまして、というべきかしら。あたし、ジェシカよ。ジェシカ・ブロウズ。あなたの名前は……ええと、ジョ、ゼフ?で、あっているかしら。この紙に書いてある名前、あなたの名前だと思ったのだけれど……ああ、やっぱりそうよね!良かったぁ……。だって、名前をまちがえるって失礼でしょ?だから、人の名前はちゃんとおぼえたいの。ジョゼフね、あなたはジョゼフ。青いひとみのきれいなあなた。うん、おぼえたわ。それにしても、春だというのにここは夜でもあたたかくはないのね。あ、あなたはおうちの中にいるから分からないか……ええ、少しだけさむいの。なにもこんな日に出発しなくたっていいのに……。ああ、ええ、そうよ。あたし、お母さまといっしょに、今日のうちにここを出てしまうの。遠い国に行くのよ。あたし、ここが好きだったから、はなれたくはないのだけれど……だってここ、気持ちのいい風がふくでしょう?あたし、生まれてからいろんなところでくらしてきたけれど、ここほどおだやかな風は知らないわ。それから、本当に遠くだけれど、海が見えるじゃない。あたし、海も好きなの。ええと、ここからは……うぅん、よく見えないわね……でも、あなたはせが高いから、あなたからは見えるかもしれないわね。…あっ、お母さまだわ……。ごめんなさい、あたし、そろそろ行かなくっちゃ。もう少しおはなししていたかったのだけれど……。あたし、必ずここに戻ってくるわ。だからまた、あたしとおはなししてね、ジョゼフさん。さようなら!