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古代グルタ文明が栄えていた頃。王家バルミュンケルの執政の元では多くの奴隷達が人間以下の生活を送っていた。

今時分の人々がその暮らしについて考え、お茶の間でほうじ茶を啜りつつ、100円そこいらのお茶菓子を口元に運びながら評価を下すなら、それは紛れもない人権侵害であったことだろう。

だが、古代グルタ文明で暮らす人々にとって奴隷達が人間の暮らしにその生を捧げることは自然の摂理であり、寧ろこの宇宙の尊ぶべき法則なのであった。

しかし、単に奴隷が動物として扱われていたかというと全くの誤解である。いや、そもそも動物や家畜を無造作に扱っていたということ自体が間違いである。

彼らの生活における羊や牛というのは大きな財産であり、富の大きさを示す象徴である。また多くの動物は神からの贈り物であり、恵みであった。

奴隷にしても勿論同じ生物として認識されていた訳ではないが、彼らは動物と人間の中間に位置する特別な存在として、人間からの信頼を勝ち取ってきたのである。

奴隷社会にも誇りと教義は存在していた。という事である。

では、そのように完成された社会システムが何故崩壊したのかという事を考えねばなるまい。

後にグルタ文明で始めて起こった内乱をキャメル戦争というが、ここではその戦争から紐解いていきたいと考えている。

キャメル戦争で反乱軍を率いたリーダーの名をワカバという。幼少の頃、ワカバはグルタ文明の影響が及ばぬ郊外の小さな村で鷹狩りを生業とする一家で生活をしていた。

彼らの村では一人一人が互いの生活を支えあい、分け合い、信頼しあって暮らしていた。皆が貧しかったが、皆が満たされてもいた。

しかし、グルタ文明の勢力圏が拡大するに際して、彼らの村は奴隷狩りに遭い、ワカバと数人の子供はその魔の手から逃れることができたものの、ほかの村人は皆王都へと連れ去れてしまったのだ。

幼少のワカバは自分よりさらに小さい子供達をまとめ、グルタ文明の及ばぬ遠い土地のアメリカンという土地に辿りつき、なんとか命を繋ぎ留めた。

だが、人間が人間に行うこの残虐で理不尽な行いを決して許すことはできなかった。

バルミュンケル王家への復讐を誓ったワカバは再びグルタ文明の中に潜入し、奴隷解放を掲げて密かに仲間を募った。

だが、彼は組織が大きくなる中で自らも奴隷という制度の必要性につきあたってしまうのである。人生というのはあまりに短く、生きるというのはあまりに時間の掛かる作業なのである。人生に特別な意義を求めるためにはやはり分業が必要なのである。

ワカバはその矛盾を建前上は認めず、奴隷という身分の範囲を柔軟化させ可逆的なものとし、それらを市民と読んだ。

奴隷たちは自助力により市民にも貴族にもなり得る権利をあたえられるのである。

当初その考え方は外部から集められた奴隷達を中心として広がり、王家打倒の気炎は高まりをみせた。また、アメリカンとも内通していたワカバは、バルミュンケル王族がアメリカンとキャメルの地で戦争している隙に内部から王都を制圧する計画であった。

しかし、ワカバの反乱は僅か1週間程度と鎮圧されることになる。王家の出払った王都内でワカバ達の計画を阻止したのは、皮肉にも奴隷達であった。

ワカバ達は古くから仕えてきた奴隷達が新たな身分を求めていないこと、更には自分たちの身分に誇りを持ち、人間を支えることを使命としていることを見落としていたのである。

ワカバは反乱軍の首謀者として絞首刑を言い渡され牢獄に繋がれた。

埃っぽい牢獄の中で家畜以下の生活を強いられたワカバは自身の過ちを省みながら衰弱していく。

そんな折に牢獄の窓格子へ影が落ちた。霞んだ目をゾロリと向けてみると、そこには幼少の時から飼っていた鷹がじっとこちらを見ている。

ワカバ「スピリット。お前か。あの日アメリカンにお前を置いて来たことを憎んでいるか?あの土地でお前と獲物を狩る日々を続けていれば、俺はこんな惨めな境遇に追いやられることもなかったかもしれないな」

自虐的に語るワカバの事を、鷹はその鋭い目でじっと見つめ続ける。よく見ると足の爪には紐が掛かっており、それは父が鷹狩りに行く際に必ず持っていった鞄の紐であった。

「もう、お前を」

「ピィー!」

赤く火のついた枝のようなものを牢獄の中に投げ入れると、もうワカバには一瞥もくれることもなく、その大きな翼を広げて再び飛び去って行ってしまった。

ワカバは這いつくばるようにして火の元に行き、覚束無い手つきでその枝を摘んだ。枝の先からはすっと一筋の煙が立ち上り、牢獄内に充満していく。

ワカバは枝を口に咥え、鉄格子の奥の空を見上げた。

スー・・・。

・・・・フゥ。

スー・・・・・。



・・・・・・・フゥ。

ワカバ「なるほど・・・・魂の・・・」


スゥー・・・・。

・・・・・フゥ。








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