第一話 嚆矢濫觴―凡てのハジマリ―
下らない、変わらぬ日々。
信者が、亡者が溢れる。
私に、私なんかに人々は救いを求め、私はそれに応えるだけ。
変わることない、当たり前。
でも、何でだろうか。
――――あぁ、何故か、お腹が空いて仕方がない
◆◇◆◇◆
「……ほう?」
只の気紛れだった。
両面宿儺は死者すら蘇らせる神の御技を使う娘がいるという噂で、死体を操る術式か、真に生き返らせるような術式か、反転術式か……とにかく、鏖殺を繰り返す自分とは真逆の「人間を救う側」の存在に興味を持った。
本当に奇跡のような力を持つならば、幼い女子であるのだし裏梅に特別丁寧に料理させて喰らったらさぞ美味だろうと思い、その噂の屋敷に赴いた。
だが、件の屋敷には何やら可笑しな結界が張られていた。噂の娘を護るためのものかと思えばそうではない。外からは簡単に入れてしまうのだ。逆に入ればこの両面宿儺の力をしても破れない強固な檻。裏梅がそれに警戒しているが、何やら、面白いことになる予感がすると宿儺は嗤った。
屋敷に入るとむわりと慣れた血の薫りが漂い充満していた。足を進めると、血に塗れた死体。
「裏梅」
「はっ……宿儺様、心臓が失くなっているようです」
「そうか。先へ進むぞ」
「御意に」
奥に進むに連れて心臓だけが綺麗に抜き取られた死体が夏の蝉の死骸のように哀れな程無惨に数多床に転がっている。恐怖の表情で血を吐いて死んだ者達は皆まだ新しい。腐敗もしておらず、蛆も湧いていない。まだドクドクと抉られた箇所から血が流れ出て床に血溜まりを作る。それらを踏みつけ濃い、呪霊のもののようにも感じる呪術師のものと思われるとてつもなく膨大であり禍々しさの呪力を感じる場所に向かう。
着いた先は豪華絢爛な部屋。そこにある死体は此処までで一番著しい数だ。幻術で隠された奥の扉を裏梅が慎重に開く。宿儺はそれに悠々と奥に足を踏み入れた。
先程の部屋とは違い、部屋の様子は質素で、光はうっすらと隙間から入る程度。ぴちゃん、と数多ある水鉢の中の金魚が跳ね、ゆらりと水面が光を反射しながら輝く。その場に一つの物陰。
――――湖のように透き通る美しい童女がいた
齢は七ほどの童女。長い真っ直ぐに伸びた艶やかな御髪にスッキリした小さい白い顔。その中の一つ一つが完璧に配置されており、パッチリとした長いけぶるような睫毛に縁取られた年輪のような無垢な瞳が宿儺達を見つめていた。小さな花弁のような赤い唇はてらてらとひかり、口端からポタリ、と赤い雫が滴り落ちた。愛らしく、麗しい国一番と言える傾国の美貌の子供。その童は、突然現れた見知らぬ大人二人に純粋で無垢な視線を向けている。疑心はなく、懐疑もなく、恐怖も畏怖もなく。ただ純粋な興味を宿した瞳。
凡人であれば、この美しい童女の無垢な魔性に惑わされてしまうだろう。だが、宿儺と裏梅は騙されない。騙されは、しない。それが警戒に繋がるかと聞かれれば――それは否、と言えるが。
「小娘、あれらはお前のしたことか?」
「……ぁ……ぅぃ……」
「……?喋れんのか?言葉は――」
宿儺が話しきる前に少女の手元に巻物と筆が現れ、少女は慌ててサラサラと書いた。
『申し訳ありません。言葉は判ります。喋れないというよりも話すことを禁じられていたので声の出し方が判りません。この屋敷にいた者は私が食べました』
ビッと見せられたそれに愉快だと宿儺は嗤う。この童、中々に度胸があり、賢い。そして自分達と同類だ。
「何故、喰らった?」
宿儺は問うた。
それに童女は
『お腹が空いて、空いて仕方なかったのです。貴方も美味しそうです。とても沢山の美食を食べた人に見えます、食べたくなります』
裏梅は後半に「無礼な……!」と怒りそうになったが宿儺が声を上げて嗤ったのに佇まいを改めた。無礼だと自身は思ったが宿儺様はそう思わなかった、気に入ったと理解した。
「裏梅、喉を触れさせてやれ」
「御意に」
裏梅は宿儺の思惑を瞬時に理解した。喋り方は判らないが理解力は高い童女に喉の動きを直に触れさせて練習させるつもりなのだろう。
「手を出してください」
「……」
小さな白魚のような手が裏梅に差し出される。その手を取り、裏梅は少女の前に跪いて視線を合わせ、自身の喉に触れさせた。
「私の真似をして声を出して見てください」
「…………ぁ」
こくり、と少女は頷いた。それに裏梅は話す。
「彼は宿儺様です」
「…………ぅな……ぁ」
「一言ずつ話してみましょう。す」
「ぅ……す」
「く」
「く」
「な」
「な」
「さ」
「さ」
「ま」
「ま」
「宿儺様」
「すく、なさ、ま」
「ほう、出来たか。お前の名も教えてやれ」
「はい、私は裏梅。う」
「う」
「ら」
「ら」
「う」
「う」
「め」
「ぇ…え…め」
「裏梅」
「う、らう、め」
「良く出来ました」
裏梅は艶やかな少女の髪を撫でた。それにじっと裏梅を見る少女。不思議そうに、でも少し嬉しそうに。それを傍らから見る宿儺はすぐに少女がどのような扱いを受けていたのかを理解した。
別にそれを憐れに思うことなどないが、自分達に気圧されず、寧ろ関心と親しみを覚えるこの童女はもう食らう気にはならなかった。宿儺の行動の指針は己の快・不快だ。それに素直に従う。だから、宿儺は少女の前に立つ。それにより裏梅は横に控えた。見下ろしながら宿儺は問う。
「童女よ、名は」
『「姫様」と呼ばれていました。これは名前なのでしょうか』
「ふむ……ならお前は今日から
「御意」
また裏梅が先程と同じように少女に言葉を話させる。
「か」
「か」
「ぐ」
「ぐ」
「や」
「や」
「赫奕」
「か、ぐや」
「出来ましたね」
それに宿儺は軽くしゃがみ、童女を抱き上げた。
「!」
「宿儺様、彼女を連れ行くのですか?」
「ああ、気に入った。術式も見たところ強力だろう。裏梅、こいつの食事は人肉だけにしてやれ。それ以外は腹に溜まらんのだろう」
「はっ」
宿儺は己の片腕に抱き上げられパチパチと目を瞬かせる童女に嗤う。
「喜べ、赫奕。お前は今日から俺の「妹」よ」
「……!、……ぁ、すく、なさ、ま……ぁ!!」
それに意味は判ったのかパァァと華やぐ少女にまた宿儺は嗤った。可愛げのある童女だ。純粋に自身を見つめるこの童女――赫奕は宿儺にとって実に気に入った。殺す必要はない。これは自分達にきっと従順だ。そして、今は話せはしてないが此処から連れ出そうとしている自分に感謝すらしているのだろう。童を育てるなど、自分らしくはないが気が向いたのだ。自分のしたいように生きるのが宿儺だ。ならば、これは必然なのだ。
「さて、まだ腹が空いているだろう赫奕よ」
「…………!」
コクコクと頷く赫奕に宿儺は裏梅に声をかける。
「そうだろうな。近隣に小さいが村があったはずだ。そこで腹ごなしとするぞ。裏梅、調理は任せた。期待しているぞ」
「勿論でございます」
「では行くか」
そうして赫奕は宿儺と裏梅と共に生まれて初めて屋敷の外に出た。初めて、名を貰い、優しく褒められ触れられて。ポカポカする宿儺の腕の中で赫奕は少し、安心して眠りについた。
◆
「兄上!裏梅!」
パタパタと、可憐で麗しい幼い少女が異形の男とその傍に控える者へと走り寄り、異形の男に抱き着いた。
「兄上、ちゃんとわたし出来ていましたよね?」
興奮してその特徴的な瞳をキラキラ耀かせて男――宿儺を見る。それに宿儺は四本の内の一本で小さな少女――己の妹とした赫奕を抱き上げ、また一本の腕で優しく頭を撫でた。
「あぁ。よくやった」
嗤う宿儺にふんわりと微笑んで甘える赫奕は他の人間や呪霊が見ればぎょっとされることだろう。
あの、両面宿儺が幼い童女を可愛がっているというだけでも驚きなのに、その童女も本当に純粋に恐怖もせずに厄災とも言える両面宿儺を慕っているのだから。
裏梅はその光景を微笑ましげに眺めながら、そっと近付いた。
「宿儺様、赫奕姫」
「裏梅」
「裏梅!わたし、出来ましたよ!」
褒めて!と言わんばかりの期待の眼で裏梅を見る赫奕に裏梅はゆるりと眼を細めてゆったりとした動きで頭を優しく柔らかに撫で、艶やかな髪を梳いた。
「えぇ、よく上手に出来ました。綺麗に殺れているので今日の夕食は楽しみにしていてください」
「はい!兄上と裏梅の指導のお陰で術式や呪力の操作も格段に上手になってこれたと思います。お二人には全然まだまだやっぱり及びませんが……」
しゅん、とした赫奕にまた宿儺は撫で、頬をぷに、と指の爪先でつついた。
「それは仕方ない。お前は俺たちにまだ呪術のことは習い初めて一月程度。まだまだこれからよ」
「そうですよ、それにしっかりと話せるようになったのですから、それだけでもとても立派です。宿儺様の言うこと・やることをキチンと聞いて見て覚えていけば自ずと出来るようになります」
「……はい、これからも頑張ります!」
ふんす、と両手を握ってやる気を出す赫奕。
――――赫奕が宿儺に連れ出されて一ヶ月が経とうとしていた
赫奕はあの後「
術式の扱いは元々感覚で使えてたのもあって使いこなすのに然程時間はかからなかったが、問題は体術だった。宿儺達が赫奕を連れ出してからはちゃんと「食事」しているがそれまでは“あの日”以前はなかったのだ。つまりは慢性的な栄養失調だった。なので実年齢は判らないが赫奕は小さかった。90cm程しかなかった。それにあの屋敷に監禁され、宿儺達が赫奕を見つけた部屋とその前の豪華絢爛な部屋のみしか行動を許されていなかったのもあり、とてつもなく非力かつ体力が無かった。動けばつく、と考える者が多い中、宿儺と裏梅は赫奕を抱きかかえて移動することが多かった。正直努力すれば治るというものではないと判っていたからだ。歩かせない訳では無いが長距離等は特に宿儺が抱きかかえ移動することが殆どだった。宿儺が戦闘する際は裏梅の近くでことにもなっていた。いくら強くなっても宿儺と裏梅にとってどこまでも赫奕は唯一無二の庇護者なのだ。
「さて、飯とするか。裏梅頼んだぞ」
「はい」
「裏梅のご飯はいつも美味しいので楽しみです!兄上、私の獲った獲物はちゃんと美味しいでしょうか……?」
「案ずるな。お前が失敗しているわけがなかろう。それに裏梅が調理するのだ、心配は要らん」
赫奕を膝に乗せ、座りながら頭を撫でて宿儺はそう赫奕に諭した。それに赫奕は「ありがとうございます」と身体を預け甘えた。
そうしている内に裏梅が調理を終えて二人を呼びに来た。ホカホカのお米と肉と野菜。色鮮やかな料理はこの時代では裏梅ほどこのように美しく盛り付け美味しい料理を作る者はいないだろう。
「わぁぁ……素敵です、裏梅!」
「流石だな」
「有難きお言葉です」
「あれ……ねぇ裏梅」
「何でしょうか、赫奕姫」
恭しく礼をする裏梅に対して赫奕はホカホカと湯気の立つ料理の1つを指差し尋ねた。それは1つの肉の料理だった。
「これはなぁに?初めて見ると思うのです」
「それは「角煮」と言うものですよ。簡単に言うと肉を角切りにして味付けした汁の中で長時間煮込んで柔らかくするのですよ。味見してみたので問題は無いはずです」
「へぇ……調理方法も色々あるのですね……料理ってやっぱり奥が深いです……。それを沢山知っていて考える裏梅はやっぱり凄いです。それでは早速食べてみます。いただきます!」
パクリ、と小さな口いっぱいに肉の角煮を詰め込んだ赫奕はその特徴的な目をキラキラさせながら頬を染め、モグモグと口を動かした。そしてゴクンと飲み込んで興奮冷めやまぬ様子で裏梅に言う。
「凄いです裏梅!お肉がほろっと蕩けたんです!味も美味しくて染みていて味わい深くてわたしこれ大好きです!また作って欲しいです……!」
「喜んで頂けて何よりです」
「確かにこれは旨いな……裏梅」
「はっ、また作らせて頂きます」
赫奕の喜びように裏梅は頬を緩め、宿儺の命令に恭しく従う意を示した。
これが、三人の日常である。
◆
コツコツ、コツコツ。
足音が静かな場に響く。人は2人。袈裟を纏った額に縫い目のある男と、女か男か判らない優美な顔立ちに白に赤の模様の付いたボブヘアーで着物の人物。その人物――裏梅が男――羂索に問う。
「あの時封印してから赫奕姫に関しては何も触れていないな?」
それに羂索が答える。
「触れてないよ。君達を怒らせちゃうし、私にとっても彼女は核爆弾みたいな存在だから粗雑には扱えないしね」
「ふん……その言葉信じるぞ。まぁこの後分かる事だ」
2人はトントンと階段を降りて地下へと歩いていく。
「周囲の強化とかは時代毎にしてたからね、中身は問題ないはずだ。知ってるだろう?」
「まぁ……契約通りだな。赫奕姫に何かあれば貴様を殺す」
「過保護だねぇ、遠慮しとくよ」
そして荘厳な大きな両開きの扉の前に着く。扉についた南京錠を特殊な鍵で羂索は開け、扉を左右に広げた。中はしんとして外以上にヒンヤリとしている。そして飾り紐が垂れ下がり羂索と裏梅が進むとリンリンと鈴が当たり鳴る。奥まった奥座の台座には、座らされた状態の幼い等身大の美しい人形があった。深い湖のような色合いの透明にも見える不思議な髪、同色の長い睫毛が瞳を隠す。赤い小さな唇は固く結ばれ白くまろい頬は透き通る陶器のようだ。幼いながらも国一番の可憐で純美な傾国の美貌というその完璧な人形に裏梅は近付く。そして冷たく硬い頬に手を添えて囁く。
「赫奕姫、お目覚めのお時間です」
「さぁ、渇欲の姫君。この現代に蘇り給え!」
ぶちん、と羂索がとある契約の紐を千切ると固く硬質だった人形に命が宿る。髪には天使の輪が輝き柔らかく靡き、白い肌は白くとも血のあたたかさを感じる色になり、表面は柔く見える。すぅと開かれた瞳は赤の年輪のような模様に新橋色のそれはキラキラと煌めく。そっと少女――赫奕は頬に添えられた裏梅の手に柔らかく白魚のような綺麗で小さな自身の手を重ねた。
「おはようございます、裏梅。随分変わりましたね」
「えぇ、おはようございます赫奕姫。待ち侘びました」
「後は……兄上だけですね」
「はい、宿儺様の件もそろそろ。なので起こしに参りました」
「有難う、裏梅」
ふんわりと優しく邪気なく無垢に笑うこの少女が食人鬼だとは誰も思うまい。それほど純真で清純な笑みだった。それに裏梅は懐かしいと思いながら赫奕を抱き上げる。そして微笑んだ。
「いえ、光栄です赫奕姫」
「ふふ、やっぱり兄上や裏梅の腕の中は落ち着きます」
「それは嬉しいですね」
そんなやり取りをしていたら、羂索が口を挟む。
「あー2人の世界に入ってるところ悪いけど私のことも忘れないで欲しいな〜」
「……袈裟?あぁ羂索ですか、その縫い目は」
「そうだよ、久しぶりだね赫奕姫」
「えぇ、久しぶり」
「それで赫奕姫お腹空いてない?」
そう羂索が問うと赫奕はお腹に手を当て答えた。
「空いた、ペコペコ。何か食べたいわ」
「そりゃあ千年は眠ってたんだもんね。何が食べたい?」
「心臓の活け造りが食べたい……裏梅、お願い出来ますか?」
「勿論です。沢山用意しますので安心下さい」
「嬉しいです!本当に大好きです……!」
ぎゅうっと抱き着く赫奕を柔く抱き返す裏梅は目線で羂索に今は余計な事を言うなよと脅しをかけていた。
――――最凶の姫君「渇欲の姫」こと赫奕姫、2018年2月18日覚醒
◆
「羂索はここで兄上が戻られると言っていましたよね?」
「そうですね……あれのことですから信用なりませんが」
「ですよねぇ……普通には復活してくれ無さそうです」
場所は宮城県の仙台の杉ア第三高校。月は6月、時間は夜。今、両面宿儺の指の封印が解かれて校内は呪霊による大惨事が起こっているにも関わらず赫奕と裏梅はただ気配を赫奕の術式で完全に消して見て回っていた。呪霊は美味しくなかったと赫奕もスルー、祓う義理もないと裏梅もスルーである。2人はただひたすらに宿儺の気配を追っていた。急ぐこともなくゆったりと。羂索曰くここで宿儺が今日受肉するとのこと。なので2人は羂索のことだから何かあるだろうと隠れながら様子を見に来たのだ。
「あ。あそこに兄上の指と呪術師と非術師の……ん?」
「どうなさいました、赫奕姫」
「いえ……非術師の一人が羂索と血が繋がっている……?ように見えます」
「それは……何かありそうですね」
赫奕と裏梅が目の前でそう話していると呪霊が現れ非術師を庇い呪術師が呪霊の攻撃を受ける。追撃で怪我をし術式も解けて絶体絶命の中、非術師の少年が超人的な身体能力で攻撃する。
「……あの子、羂索が何か仕組んでそうですね」
「はい、そう見えますね」
赫奕や裏梅からの羂索への負の信用がある意味あった。
そして呪術師が言う。
「呪いは呪いでしか祓えない」
それに非術師の少年は呪術師の少年と話しながら考える。
「なあなんで呪いはあの指狙ってんだ?」
「喰ってより強い呪力を得るためだ」
そう答えた呪術師に非術師は呪術師にとっては思いもよらない事をし出かした。
「なんだあるじゃん全員助かる方法」
「あ?」
「俺にジュリョクがあればいいんだろ」
「なっ馬鹿!!やめろ!!」
非術師の少年は両面宿儺の指を飲み込んだのだ。それを赫奕と裏梅は宙に浮かびながら様子を伺う。問題なく宿儺が受肉すれば問題なく合流するが問題があった場合はまだ接触しない方がいいと判断している為だ。
「どう出ますかね……」
「羂索が関わってますので何とも……」
瞬間。
パンッと呪霊が一薙で祓われる。非術師の少年は自身の祓った手を見て嗤い出す。
「ケヒッ、ヒヒッ」
ゲラゲラと嗤う少年は先程の少年とは思えない。つまりは――宿儺が受肉した。
「ああやはり!!光は生で感じるに限るな!!呪霊の肉などつまらん!人は!女はどこだ!!」
そして宿儺はこの時代を感じ嗤う。
「!いい時代になったのだな。女も子供も蛆のように湧いている。素晴らしい、鏖殺だ」
それを見て赫奕と裏梅は姿を現そうとしたが瞬間やめた。宿儺が自分の首を締めたのだ。これは可笑しい、宿儺が乗っ取れていないと2人は判断した。そしてそれは正解で宿儺は抑えつけられ沈められた。それから現代最強の呪術師が来たりして出ずにいて正解だったと赫奕と裏梅は思うものの宿儺の事を案じていた。拠点に戻り赫奕と裏梅は羂索に文句を言う。
「羂索!兄上の受肉体に何を仕込んだのです!」
「おい!宿儺様が自由に出来んではないか!」
そんな2人の怒りに羂索はまぁまぁ落ち着いてと言う。
「こっちにもこっちの事情があるんだ。君達と彼をすぐに会わせてあげれないのは謝るよ。でも理解して欲しい、あの宿儺の受肉した人間――虎杖悠仁は台風の目なんだ。これから楽しくなるし忙しくなるよ」
「虎杖悠仁とは何なのです」
「それは――」
羂索が語ったそれに一旦の納得をする赫奕と裏梅。
「それじゃ、ここからもよろしく頼むよ。まずはとある呪霊の集団と手を組む」
「呪霊と?」
「ですか?」
眉を寄せる裏梅と赫奕。それに羂索が言う。
「宿儺を完全に復活させるにせよ、私の計画を実行するにあたるにも邪魔なものがある。現代最強の呪術師、五条悟だ。君達見たんじゃない?」
「あぁ……あの白髪の方ですかね。見たけれど、わたしなら……いえ、わたしはキツイですかね。でも兄上なら勝てると思いますよ?」
「そうかもね。宿儺なら勝てるかもしれない。でもそれは完全体での話だ。赫奕姫ならもう少し現代になれないと勝つとすると難儀するだろう。それほど現代最強は伊達ではないのさ」
「倒す気はない……となると封印か」
「正解、裏梅。それに海外に行ってやっと手に入った獄門彊を使う」
「獄門彊……それって生きた結界、源信の成れの果てですよね。日本の呪いが、何故海外に?」
「その辺りは誰かが持ち出したのだろうとしか。でも国内になくてよかったかもしれない」
「あぁ……天元か」
「天元さんがいたら隠されていたから海外にあって良かったと?」
「そういうこと。実際に多分獄門彊「裏」は天元の元にあるっぽいしね」
はぁと溜息を吐く羂索に裏梅は苛ただしげに問うた。
「それは問題ないのか?」
「ないとは言い切れないけどこっちの方が優先度が高い。だから大丈夫だよ」
「ふん……」
そこで赫奕が話す。
「呪霊と手を組むとして宛はあるの?」
「あるよ。とある思想を持った集団でね。その呪霊達は自然や人が元の呪霊だから特級ばかりで使えるんだよ」
「なるほど。ではわたし達は貴方が同盟を結んでからの合流になるのですね」
「そうなるね。それまでは好きに「食事」しててくれてもいいよ」
「やった♪裏梅、沢山食べたいです!」
「分かりました、いい場所をピックアップしておきますね。調理も現代は調味料や調理方法も増えてますので楽しみにしていてくださいませ」
「はい!裏梅大好きです!!」
ぎゅうっと抱き着く赫奕に抱き返す裏梅は優しく赫奕の艷やかな御髪を梳いた。それにうっとりとする赫奕のまろい頬を撫で、あやすように可愛がった。尚、羂索は蚊帳の外だった。
――――2018年6月、両面宿儺受肉
――――又、羂索・赫奕・裏梅行動開始
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