とある人の懺悔
ーー大魔道士様がいるならどうか、どうか懺悔させてください。
わたしは、ザンクトベル皇国のとある村で女の子を一人産みました。ザンクトベル皇国は、建国当初から黒魔法を正義とする国で、白魔法の使用者はほとんど存在していません。そのため、白魔法自体を疎み、人によっては奴隷のように酷い扱いを受けてしまいます。わたしが産んだ女の子は、ザンクトベル皇国法に則り、すぐに村の施設で血液による魔力検査しました。
ーーその結果は、白魔法使いでした。
わたし達夫婦はこの事実に恐怖しました。まさか白魔法だなんて思っていなかったので…。どうやって家に帰ったかは思い出すことはできませんが、家に帰った後、恐怖で頭が回らなくなった主人から「この子はこの家で育てることはできない。近くの教会に預けよう。」と提案をしてきたので、近くにある教会の神父様とシスターに事情を説明し、神父様も了承してくれたのですが、その時はそれが間違いだと気づくことが出来ませんでした。
数日後、娘の様子を見に教会に向かうと、神父様が出迎えてくれましたが、なぜか娘は教会にはいませんでした。神父様から話を聞いたら、どうやら白魔法の話を聞きつけた皇国専属の研究者が教会から連れて行ったと言っていましたが、実際には神父様が皇国研究機関に通報して高額な金を貰っていたことがわかりました。
なんてことをしてくれたんだという気持ちでいっぱいでした。わたし達は村や街でいろんな聞き込みや貼り紙をしましたが、結果として娘の足取りを掴むことができませんでした。大きい街に寄った際に、皇国兵士さんにも聞いてみても、彼らは「白魔法使い」と聞くだけで笑い者にしていました。
そもそも、わたし達が娘を畏怖したことがきっかけだということは重々承知です。娘が生まれて6年、片時も忘れることはありませんでした。そして、ザンクトベル皇国のあり方について疑問を持ち始めました。いくら黒魔法が正義とする国だとしても、ここまで白魔法を疎む理由はないと思います。サンクトゥアーリウムでここまで白魔法を疎んでいるのはザンクトベル皇国だけではないでしょうか。
大魔道士様。願わくば、娘が生きていれば謝罪をしたいのです。「××。教会に捨ててしまってごめんなさい、信じることができないかもしれないけれど、今でもあなたを愛していますよ。」と伝えたいのですーーー。願いがいつ叶うかはわかりませんが、叶うように精進して生きていたいと思います。
最近、ザンクトベル皇国のヴァルハイト辺境伯という御方が白魔法を使う娘さんがいると聞いたので、恐れ多いですがいつかお目にかかってみたいですーーー。